細胞培養の実際

細胞培養の実際 細胞を培養する場合には『シャーレ(皿)』や『ボトル(ビン)』を使います。いずれも無菌的なものが必要なのですが、現在ではあらかじめ滅菌されたプラスチック製品が使われます。この図ではシャーレ(ディッシュ)の例を示しています。

凍結されたチューブ(アンプル)は短時間でサッと解凍します。そして、細胞を手早く取り出してシャーレ中の培地に移します(細胞を播くと言います)。これを37度の温度で静かに保温しておく(静置培養)と細胞は分裂を始めます。凍結していた細胞をシャーレに播いた直後はなかなか増えてくれませんが、しばらく待っていると徐々に分裂が始まり、数日の間に勢い良く分裂をするようになります。と言っても培養細胞の場合は、24時間から48時間で1回分裂する程度の早さです(微生物では20分で1回分裂することもある)。

そして、数日から2週間ほど観察していると細胞は増えてシャーレの底いっぱいになりますので、そこで一度細胞を集めてから数を調整して、複数のシャーレに播きなおします。

こうした操作を繰り返すことによって最初に100万個しか無かった細胞が、1億個〜20億個もの細胞に増えるのです。

細胞が十分に増えたところで、細胞を全部集めて数をそろえて『セラムチューブ』や『アンプル』に入れて凍結します。凍結したアンプルは液体窒素の中で保存します。

培養中は、汚染細菌やマイコプラズマなどが混入しなかったか? 細胞を間違えてしまっていないか? 増殖中に性質が変化していないか? などなど様々な疑問が生じます。それは私達自身が操作ミスを犯していないかという自問でもあります。

こうした疑問に対する回答を得ることは、細胞を実際に確認する以外に方法がありません。そこで、それを確かめることは細胞を培養する中での重要な仕事となります。これを私達は『品質管理』と呼んでいます。現在JCRB細胞バンクで確認している点は、①マイコプラズマ・細菌・真菌によって汚染されていないかどうか、②動物の種類が間違っていないかどうか、③特にヒト細胞の場合、他のヒト細胞と混同して間違ってしまっていないかどうか、④染色体の構造が大きく変化していないかどうか、の4つの点です。

こうした問題は先端的な研究の現場にいる研究者も疑問に思う場合もあるのですが、個々の研究課題を先に進めなければならないということが優先されのでなかなか調べられないのが現状です。そこで、『細胞バンク』ではこうした点を十分に確認していますので、そうした細胞を研究に使う勧めています。


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