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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第14号 2007/ 9/21】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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メルマガが届いていないというご指摘を何度かいただきながら、原因を特定
できないまま8月まで持ち越してしまいました。ようやく問題をクリアする
ことが出来ましたのでご報告いたします。申し訳ございませんでした。

さて、今月号は細胞バンクが出来た頃に代わって、使っている培養細胞が間
違っているよ!という大問題についてお知らせします。日本でも誤った細胞
はかなり使われているようですので是非ご注意ください。

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◆ インデックス ◆
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I 細胞バンク事業
1.クロスコンタミに関する緊急提言!!
2.事業紹介
3.新規細胞情報

II 実験動物バンク事業
1.事業紹介
2.疾患モデルマウスの紹介

III あとがき

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◆I 細胞バンク事業 ◆ 

1◆  ★★ クロスコンタミに関する緊急提言!! ★★
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8月31日の夕刻に飛び込んできたDr.Roland M.Nardone(Cathoric University
of America, the Discovery center for cell and molecular biology.)から
の重要なメッセージについてお知らせします。

ご存知のとおり私達は、細胞のクロスコンタミネーションがかなり深刻であ
ることをホームページなどでお知らせしておりましたが、欧米においても似
たような状況にあることが以前から言われておりました。そのため、この問
題を深刻に考えている研究者らが共同して米DHHS(Division of Health and
Human Services)のSecretary、Leavett に対して、状況を説明してアクシ
ョンを起すように提言したとの連絡でした
(http://cellbank.nibio.go.jp/refman/no6281.pdf)。

私どもに直接メールが来たのは細胞バンク事業をしていることが知られている
こともあると思いますが、今年開催される予定のアメリカの細胞生物学会に演
題を出していることと関係があるようにも思います。メールでは、取りあえず
の緊急提言として、培養細胞のクロスコンタミネーションを防止する方法とし
て、研究者は下記の9項目を守るよう注意喚起しておりますので、以下その部
分のみ訳出しておきましたので是非お読みください。

日本としてこの問題に対応するには、日本組織培養学会などを通じて行う必要
があると考えておりますが、取りあえず私達は細胞バンクとして問題を広く周
知する義務があると考え、このメールマガジンで連絡させていただきます。

以下、クロスコンタミネーションや細胞の誤同定を防止する9ヶ条です。

1. 培養作業者の疲労や細胞の不注意な扱いを抑制するために、細胞の培養作
業は可能な限り1日に1回に限定する。

2. 細胞培養でベンチ作業を行う『前』と『後』には、必ずクリーンベンチ内
とその周辺を界面活性剤などで十分に清拭する。

3. 培養細胞を扱う作業を行う場合、クリーンベンチの使用は1回につき1種
類の細胞又は1世代の細胞のみに限定する(使用前後は必ず清拭を励行す
る)。

4. 一つの細胞(株)の播種、継代操作、その他の操作を行った場合は、毎回
クリーンベンチを清拭する。

5. 複数の細胞が同じ組成の培地を使っていても、個々の細胞の播種、継代、
培地交換、トリプシン処理、などに使う試薬は全て各細胞専用とし、断じ
て他の細胞に使ってはならない。試薬を細胞間で共用してはならない。個
々の細胞(株)には、細胞(株)ごとに専用の培地、試薬、サプリメント
のセットを使用する。

6. 試薬や材料が十分に揃っているかどうかを十分に確認してから培養を開始
する。試薬は決して他の研究者や培養と共有してはならない!

7. ディッシュやボトルがたくさんあっても、1本のピペットは一回の操作に
限定すべきである。一回の操作とはピペットに一回試薬を吸い込んで一回
吐き出す操作のことである。一度培地を吸って吐き出したピペットは決し
て培地ビンに戻してはならない。

8. 培養をクリーンベンチに持ち込む場合は、必ず事前チェックをすること。
増殖状況、形態などをチェックする。

9. 細胞(株)を利用する場合は高度な品質管理を通じて細胞の性状を保証し
ている細胞保存機関(repository=細胞バンク)が提供する標準化された
細胞を使う。使用中も繰り返し細胞の評価を行い正しい細胞であることを
確認できるよう論理的なスケジュールを立てて実験に望むこと(シードロ
ット管理と細胞の評価)。十分な確認をしない限り細胞(株)を他の研究者
に提供してはならない。

以上、クロスコンタミネーションの結果誤った細胞を使って研究をしてしまう
ことは、研究費等大変な浪費となります。是非多くの方が気をつけて良い研究
結果を出されるよう願ってやみません。           
                             (水澤 博)

これについては、先方からのメールを含めてホームページで公開していますの
で、是非参考にしてください。

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/qualitycontrol/crosscontami01.html

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2◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(14)★★
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細胞バンクでの研究と研究倫理のお話。

** 細胞バンクの技術普及 **

 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報:
http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)
   。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
  詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照

 < ★PR★ =受託検査業務=>
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。
詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 参照

                              (小原 有弘)

** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(14) 

個人情報保護をしながら、できる限り障害の少ない、効率の良い利用を考え
る必要があると、この英国の報告書は述べています。それは、何よりもこれ
らの点が、医学研究のために自からの情報や試料を提供した患者の意思であ
るということが重要な点です。ただ、患者の意思がそこにあるからといって、
全く規制のない利用が提供を受けた情報や生体試料に許されるわけも在りま
せん。重要な点が2つあるのです。ひとつはSecurityとConfidentialityです。
もう1つは、利用の科学性であると言えます。日本語になりにくいので、
SecurityとConfidentiality という言葉を使いました。Securityは外部から
内部の個人情報を略取されないように防衛することであり、Confidentiality
はそれを取り扱っている人たち(内部の人たち)が外へ漏らさないこと、と
分けて考えることができます。日本では「守秘と漏洩の問題」といわれます。
すなわち、個人情報保護の問題は、これに関わる情報を取り扱っている内部
の人たちだけの問題ではなく、外部の人たちも略取の主体として働かないこ
とが重要です。情報を取り扱う内部と外部の問題として個人情報の保護の問
題を取り扱うことは、大事であると思われるのです。というのは、個人情報
にもっとも近い外部者が内部へ手を伸ばすことが、深刻な信用の失墜を招く
のです。例えば、医療機関の関係者が、その人の権限外の医療情報を覗いた
り、外部への漏洩の手助けをすることがある場合は、悪意の第三者が関わる
場合よりも深刻な、医療や医学研究の信用の失墜を招きます。

もう1つの問題は科学性であるといえます。最近ネット上に発表されたUKバイ
オバンク(英国民の40歳から69歳を対象とした50万人の20年から30年にわた
る追跡研究資源インフラの構築計画)の研究の手順書は、その人数から可能
な解析力についての記述から始まります。もちろん、科学研究はうまくいく
かわからないものです。しかし、科学的に行われた、すなわち検証可能な手
順を踏んで行われたものは、それが予想通りに運ばなくても重要な知見を与
え、次の研究への道を開きます。その点で、提供を受けた人試料等は科学的
に利用されることが重要なのです。

Lowrance博士の報告書は、和訳して、論評を加える予定です。より詳しい問
題は以下のホームページで今年度中に報告いたします。 
                            (増井 徹)


研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
 http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆3◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○遺伝性疾患線維芽細胞株 ファンコーニ貧血患者由来
  
 JCRB3006:FA9JTO hTERT-1
 http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb3006.htm (近日公開予定)

 JCRB3007:FA18JTO hTERT
 http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb3007.htm (近日公開予定)


○ マウス骨芽細胞様株

 JCRB1202:KUM6
 http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1202.htm (近日公開予定)

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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**疾患モデルマウスバンクの事業**

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

**疾患モデルマウスの紹介**

 MPSマウス(マイコプラズマ易感染性マウス)
 資源番号:nibio005
 由来:医薬基盤研究所(国立予防衛生研究所)
 分譲条件:無条件

MPSマウスは、Mycoplasma pulmonis(肺マイコプラズマ、マウス・ラットに
慢性呼吸器病を起こす病原体)に対する感受性を指標にYok:ICRマウスコロ
ニーから選抜育種して樹立されたマイコプラズマ易感染性マウスです。一方、
ヒトにマイコプラズマ肺炎を引き起こすMycoplasma pneumoniae(肺炎マイコ
プラズマ)は、一般的にはマウスには感染しませんが、このMPSマウスには感
染することが知られているなど、MPSマウスは呼吸器系感染モデルとして有用
と考えられます。なお、MPSマウスは、近交系であり、由来系統であるICRの
特徴を引き継いでおり、繁殖能力は良好です。
                           (松田 潤一郎)
 
  分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。

医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。


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III あとがき
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朝夕はしのぎ易くなりましたが、日中はまだまだ、酷暑が続いております。
先日東京出張した職員は大阪に戻るとむっとしたと申してましたので、大阪
の暑さはすごいのかもしれません。もうすぐ運動会シ-ズンで学校では子供
たちが練習に励んでいるかと思いますが、まだまだ注意が必要ですね。

先日彩都内に一部外来もあるようですが、ガン治療専門の病院がオ−プンし
ました。公園に面したホテルのような外観で最新の機器が導入されペ−パ−
レス化されているようです。屋上には天文台らしきものがあり、ロビ−の大
画面で星空を観望でき、一部屋4床のゆったりした病室が配置され病院での生
活を快適に過ごせるよう配慮されているようです。とはいえ病院のお世話に
なることのない生活を送りたいものですね。
                               (ET)