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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第15号 2007/10/22】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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◆◆♪∽独立行政法人 医薬基盤研究所 一般公開のお知らせ∽♪◆◆

開所して3年目となりました当研究所ですが、地域住民の皆様にも研究所を
身近に感じ、理解していただくために毎年一般公開を開催しております。
小学校低学年の子供たちが多い地域なので毎年楽しいイベントも企画して
おります。今年は第3回目と言うことで何が出てくるでしょうか・・・・。

今年度の開催予定日は、平成19年度11月10日(土)となっております。

詳細は当所ホ−ムペ-ジ http://www.nibio.go.jp/cgi-bin/new/view.cgi?no=79
でご確認下さい。
         
◆◆◆新規マウスの分譲開始のお知らせ◆◆◆

 次の5系統のマウスの分譲を開始しました。

 nbio054 RP58 KO マウス(脳異常)
 nbio055 Translin KOマウス(免疫異常)
 nbio056 ATF4 KO マウス(小眼球症)
 nbio057 SOCS1 KO (BALB/c congenic)マウス (免疫異常)
 nbio058 SOCS1 KO (C57BL/6J congenic)マウス (免疫異常)

詳細は疾患モデルマウスバンクのホームページ http://animal.nibio.go.jp/
をご覧下さい。

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◆ インデックス ◆
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I 細胞バンク事業
1.事業紹介
2.新規細胞情報
3.細胞バンクが出来た頃
(第14回:細胞分譲の有償化)
II 実験動物バンク事業
1.事業紹介
2.新規マウス分譲情報
 3.疾患モデルマウスの紹介
III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(15)★★
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細胞バンクでの研究と研究倫理のお話。

**細胞キャラクタライズのための染色体詳細解析**

我々は細胞バンクの発展ならびに利用者へのサービスの向上を目指し細胞の
キャラクタライズ研究を行っています。染色体の詳細解析はその一部であり、
細胞の染色体数、染色体写真の提供を基本とし、正常細胞に近い形質を有す
る細胞に関してはGバンド解析やアレイCGHによる染色体詳細解析情報を付加
して細胞の情報提供を行っています。

(染色体詳細解析例http://cellbank.nibio.go.jp/pictures/clp10950.jpg)

これらの詳細解析によって非常に興味深い知見が得られることがあります。
その新たな知見が新しい研究に発展することを我々は願って、細胞のキャ
ラクタライズを実践しています。
                       (小原 有弘)


 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報:
http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)
 
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
  詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照

 < ★PR★ =受託検査業務=>
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。
   詳細は
http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 参照

                             (小原 有弘)


 ▼クロスコンタミに関する情報
http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/qualitycontrol/crosscontami01.html

【クロスコンタミネーションや細胞の誤同定を防止する9ヶ条】

1. 培養作業者の疲労や細胞の不注意な扱いを抑制するために、細胞の培養作
業は可能な限り1日に1回に限定する。

2. 細胞培養でベンチ作業を行う『前』と『後』には、必ずクリーンベンチ内
とその周辺を界面活性剤などで十分に清拭する。

3. 培養細胞を扱う作業を行う場合、クリーンベンチの使用は1回につき1種
類の細胞又は1世代の細胞のみに限定する(使用前後は必ず清拭を励行す
る)。

4. 一つの細胞(株)の播種、継代操作、その他の操作を行った場合は、毎回
クリーンベンチを清拭する。

5. 複数の細胞が同じ組成の培地を使っていても、個々の細胞の播種、継代、
培地交換、トリプシン処理、などに使う試薬は全て各細胞専用とし、断じ
て他の細胞に使ってはならない。試薬を細胞間で共用してはならない。個
々の細胞(株)には、細胞(株)ごとに専用の培地、試薬、サプリメント
のセットを使用する。

6. 試薬や材料が十分に揃っているかどうかを十分に確認してから培養を開始
する。試薬は決して他の研究者や培養と共有してはならない!

7. ディッシュやボトルがたくさんあっても、1本のピペットは一回の操作に
限定すべきである。一回の操作とはピペットに一回試薬を吸い込んで一回
吐き出す操作のことである。一度培地を吸って吐き出したピペットは決し
て培地ビンに戻してはならない。

8. 培養をクリーンベンチに持ち込む場合は、必ず事前チェックをすること。
増殖状況、形態などをチェックする。

9. 細胞(株)を利用する場合は高度な品質管理を通じて細胞の性状を保証し
ている細胞保存機関(repository=細胞バンク)が提供する標準化された
細胞を使う。使用中も繰り返し細胞の評価を行い正しい細胞であることを
確認できるよう論理的なスケジュールを立てて実験に望むこと(シードロ
ット管理と細胞の評価)。十分な確認をしない限り細胞(株)を他の研究者
に提供してはならない。

クロスコンタミネーションの結果誤った細胞を使って研究をしてしまうことは、
研究費等大変な浪費となります。是非多くの方が気をつけて良い研究結果を出
されるよう願ってやみません。           
                             (水澤 博)

** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(15) 

この数回、個人情報保護という観点からの話をしてきました。しかし、内容
からおわかり頂いたと思いますが、研究を進めるということが持つ問題は、
被験者個人に関わる問題だけではなく、次の世代への今の世代がもつ責任と
いう表現ができるのです。もちろん、次世代のためにどれだけの犠牲を払う
かは、私たちの覚悟に掛かっているのだと思いますが。

そして、科学という営みが持つ性質は、本来は未来へ続くものであるのです。
もちろん、それが明るいものだけでは無いことは、普通の人の営みと同じで
す。その点で、法律も経済活動もそして科学研究活動もそれぞれの分野で未
来への責任を負っているのです。科学研究だけが、そのような足かせから自
由であるはずもないのです。

何度も申し上げたように、科学研究を飼い慣らして、良いモノだけを得よう
とする姿勢は世界中で蔓延しています。しかし、その解決策には、かなりの
開きがあります。特に、規制をどのように捕らえるかの問題はかなりの差が
あるのです。先の述べたLowrance博士の報告書は、明らかに規制の中での自
由を確保するために、その歯止めとして規制というか枠を設けて、その中で
は自由を確保しようという姿勢です。ところが、日本では指針はある側面そ
のように言いながら、すなわち、この範囲内では自由だよと言いながら、現
実には議論をすればするほどその枠が狭くなるということが起こっているよ
うです。そのあたりは、規制が同じでも議論の組み立て方が異なる、あるい
は、規制がどうして必要であるかという基本姿勢が異なっているのかもしれ
ません。

ここで難しいのは、医学・生物学の研究は、人を研究対象にするとはいえ、
多様なタイプが存在します。そこで、それぞれについて、この場合はこのよ
うにということを明確に規定して書込むことが難しいのです。また、同じよ
うな研究でも関わる人たちの意識で全く異なった研究計画のデザインが要求
される可能性もあります。そのように考えてくると、原則を定める研究倫理
指針が、明確で、そのまま研究計画の評価に用いられる可能性はないのです。
となると、研究倫理指針に沿った議論では、前提とする「そもそも私たちに
とって、人を研究対象とする際に、どうして研究指針が必要なのか」あるい
は、「何を護るために私たちはこのようなこと(例えば研究倫理指針の策定
や、倫理審査委員会の運営や、インフォームド・コンセント)をおこなって
いるのか」、という問題を考え直す時期にきているのです。

研究倫理問題への対応ということが、どうして必要なのであるか。その根本
に又戻りました。この次には、研究倫理が支える、予備実験という視点を考
えてみたいと思います。というのは、この研究スタイルが、これまで研究倫
理指針が支えようとしていた「研究」と全く異なった性質を持つからです。
そして、この問題を論じることで、私たちの研究活動に、どうして研究倫理
指針が必要なのかという問題を問うてみたいと思います。
                            (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ 子宮内膜癌由来細胞株
  
JCRB1193:HEC-1-B
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1193.htm (近日公開予定)


○ 子宮頸癌由来細胞株

JCRB1205:HCSC-1
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1205.htm (近日公開予定)


○ マウス骨芽細胞様株

JCRB1204:KUM7
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1204.htm (近日公開予定)

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

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◆3◆  ★★    細胞バンクが出来た頃(第14回)    ★★
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**対がん10ヵ年総合戦略終了、細胞分譲の有償化**

対がん10ヵ年総合戦略の支援を目的に設置された細胞バンクでしたが、分
譲数は順調に増加し、戦略が終了した1995年には年間4500アンプルを提供
するまでに成長しました。

その後対がん事業は第二期に入りましたが、細胞バンクは独立して国立医
薬品食品衛生研究所の正式な事業として一般会計に移されることになりま
した。この際、総務庁は細胞バンクを調査し『事業の内容は評価できるが
無償分譲は有償化する』よう勧告したのです。

諸外国に目を向ければほとんどの国は有償分譲なので、私どもも有償化に
ついて検討しておりました。実は、アンケート調査なども行っいました。
『有償化は絶対に反対』という声が大きいかと予測していたのですが、意
外にも有償化しても良いのではないかという意見が多く驚かされました。

そうはいっても、実際に有償化してみると分譲数はがっくりと減少して、
年間分譲数は1700アンプルと急減し、このままではJCRB細胞バンクは消滅
することになってしまうのかとかなり悲観的になったものです。この間の
分譲数の推移はホームページにも掲載しておりますのでご参照ください。

http://cellbank.nibio.go.jp/jisseki.html

1995年の有償化から2000年頃までは、細胞の移動作業に追われていたので、
分譲数が増えないほうがかえってよかったのかもしれませんが、その後増加
に転じて2007年現在、年間分譲数3300アンプルまでに回復してきました。

何か秘策はあったのかと聞かれることもありますが、そのようなものはあり
ません。まず、細胞バンクの基本を忠実に実行することが第一でした。細胞
をコンスタントに収集して質の高い細胞を提供するということに尽きるので
はないでしょうか。

もう一つあるとすればそれは情報公開です。ちょうどこの頃インターネット
が世の中に出現した時期で、細胞情報をデータベース化していた私達はすぐ
にホームページを開設したのです。
   (水澤 博)

http://cellbank.nibio.go.jp/


  
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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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1.疾患モデルマウスバンクの事業**
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○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

 次の5系統のマウスの分譲を開始しました。
 nbio054 RP58 KO マウス(脳異常)
 nbio055 Translin KOマウス(免疫異常)
 nbio056 ATF4 KO マウス(小眼球症)
 nbio057 SOCS1 KO (BALB/c congenic)マウス (免疫異常)
 nbio058 SOCS1 KO (C57BL/6J congenic)マウス (免疫異常)

3.疾患モデルマウスの紹介**
  ―――――――――――
 ATF4 KOマウス(小眼球症)
 資源番号:nbio056
 由来:大阪大学微生物病研究所
 樹立者・寄託者:審良静男先生
 分譲条件:提供承諾書が必要

ATF/CREBファミリーに属する塩基性ロイシンジッパー型転写因子であるATF4
(activating transcription factor-4)を欠損したノックアウト(KO)マウス
です。ATF4 KOマウスの眼球は、胎齢14.5日までは正常な水晶体(レンズ)構
造を示しますが、その後水晶体線維細胞の発生分化の異常のため水晶体の変性
をきたし、生まれてきたマウスは水晶体が欠損し、重度の小眼球症を示します。
ATF4は多くの組織で普遍的に発現していますが、ノックアウトした場合には、
水晶体の形成異常のみが特徴的に見られます。眼球以外の組織では、おそらく
ATF/CREBファミリーの他の因子がATF4欠損を補っている(代償している)と考
えられます。
  
  分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。

医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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III あとがき
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秋も深まり、肌寒くなって参りました。もうすぐ紅葉の季節ですが、一足
早く、秋を感じに篠山市に行ってきました。丹波篠山といえば栗と黒豆が
大変有名ですが、大木も多く、小原のイチョウ、藤波のケヤキなどが有名
です。10月上旬に黒豆販売が解禁されましたので(黒豆にこういう日があ
ることは知りませんでした・・・。)道路沿いでは、傍の畑で黒枝豆を収
穫しつつ、枝つきで販売をしている光景を多く見かけました。また栗も新
鮮で安く手に入ります。栗といえば隣接している能勢では、地元でしか手
に入らない「銀寄」という栗があります。丹波栗と比べると少し小さいで
すが、旨みは強いようです。黒枝豆、栗ご飯、栗の渋皮煮とおいしく頂き
ましたが、松茸は高嶺の花で、篠山でも里山に入ると誤解されて通報され
るから注意するように聞きました。食欲の秋です。なかなかダイエットは
出来ません。