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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第19号 2008/2/29】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )
       
トピックス

1.「バイオ研究の舞台裏」(裳華房ポピュラーサイエンスシリーズ)発行。
2.培養細胞におけるウイルスDNA検査の開始。
3.培養細胞のクロスコンタミネーションが世界的に問題に!

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◆ インデックス ◆
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I JCRB細胞バンク
 1.事業の紹介
 2.細胞バンクが出来た頃
  (第19回:最近のエピソ−ドから)

II 実験動物バンク事業
 1.事業紹介
 2.新規マウス分譲情報
 3.疾患モデルマウスの紹介
      【HR(hairless)マウス(脱毛モデルマウス)】

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(19)★★
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JCRB細胞バンクから研究と倫理のお話

━細胞紹介━

我々の細胞バンクでは染色体の詳細解析を実施しています。
そこで明らかとなった興味深い細胞に関して今回は紹介させていただきます。

JCRB0810:ME-180(子宮頸がん細胞)
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ギムザ染色による、自然発生染色体構造異常を分析した結果、染色分体型の
異常(ギャップ,ブレーク等)は0.06±0.035/cellであるのに対して、動原
体を二つ持つ等の染色体型の異常が0.50±0.106/cellと非常に多く観察され
た興味深い細胞です。染色体型の異常はDNA複製前に固定される染色体異常で
あり、異常の起こる単位は染色体全体です。また、不安定型の異常と安定型
の異常に大別され、Dicentric等が不安定型、Translocation等が安定型異常
にあたります。不安定型は細胞分裂時にDNAの均等な分配が妨げられるため分
裂死の原因となりますが、この細胞では不安定型の染色体構造異常が高率に
観察される特徴がありました。
                       (小原 有弘)


 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報

 次回開催予定(募集人員10名前後)平成20年8月28日-29日 
   
       詳細は http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)参照
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
        詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 参照
                   

 ▼クロスコンタミに関する情報

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/qualitycontrol/crosscontami01.html

【クロスコンタミネーションや細胞の誤同定を防止する9ヶ条】

1. 培養作業者の疲労や細胞の不注意な扱いを抑制するために、細胞の培養作
業は可能な限り1日に1回に限定する。

2. 細胞培養でベンチ作業を行う『前』と『後』には、必ずクリーンベンチ内
とその周辺を界面活性剤などで十分に清拭する。

3. 培養細胞を扱う作業を行う場合、クリーンベンチの使用は1回につき1種
類の細胞又は1世代の細胞のみに限定する(使用前後は必ず清拭を励行す
る)。

4. 一つの細胞(株)の播種、継代操作、その他の操作を行った場合は、毎回
クリーンベンチを清拭する。

5. 複数の細胞が同じ組成の培地を使っていても、個々の細胞の播種、継代、
培地交換、トリプシン処理、などに使う試薬は全て各細胞専用とし、断じ
て他の細胞に使ってはならない。試薬を細胞間で共用してはならない。個
々の細胞(株)には、細胞(株)ごとに専用の培地、試薬、サプリメント
のセットを使用する。

6. 試薬や材料が十分に揃っているかどうかを十分に確認してから培養を開始
する。試薬は決して他の研究者や培養と共有してはならない!

7. ディッシュやボトルがたくさんあっても、1本のピペットは一回の操作に
限定すべきである。一回の操作とはピペットに一回試薬を吸い込んで一回
吐き出す操作のことである。一度培地を吸って吐き出したピペットは決し
て培地ビンに戻してはならない。

8. 培養をクリーンベンチに持ち込む場合は、必ず事前チェックをすること。
増殖状況、形態などをチェックする。

9. 細胞(株)を利用する場合は高度な品質管理を通じて細胞の性状を保証し
ている細胞保存機関(repository=細胞バンク)が提供する標準化された
細胞を使う。使用中も繰り返し細胞の評価を行い正しい細胞であることを
確認できるよう論理的なスケジュールを立てて実験に望むこと(シードロ
ット管理と細胞の評価)。十分な確認をしない限り細胞(株)を他の研究者
に提供してはならない。

クロスコンタミネーションの結果誤った細胞を使って研究をしてしまうことは、
研究費等大変な浪費となります。是非多くの方が気をつけて良い研究結果を出
されるよう願ってやみません。 
          
                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(19) 

前回に引き続き、人体由来の研究資源を利用する予備実験が困難である問題
を埋めるためにどのような指針の形、あるいは研究者側の働きが必要である
かについてお話をしたいと思います。

3. 徹底的な議論のために

 これは先にお話しした適切な責任体制の問題と深く関わることなのです。
現在のいろいろな議論は、公開が重視され、公の場での検討を重視します。
それはそれなりに理由があり、これまでの反省の上に成り立っているのです。
しかし、一つの活動を支えるために、公式な議論と、非公式な議論が必要と
なるのです。うっかりしたことが言えない、すべてが記録される公式の議論
を繰り返しても、問題は解決しません。非公式な議論も必要なのです。予備
実験の問題も、現在の様子を見ていると、その重要性が理解されているとは
思えないのです。その事について、公式、非公式の場を活用して、研究者の
側から働きかける必要があるのです。現在の公式の場だけですべてが決めら
れることがベストだとう考え方は大切です。ただ、そのプロセスの議論は非
公式である必要がある場合も多いのです。徹底的な議論が行われていない素
地に、このような問題があります。

4. 研究のセーフティーネットの必要性

 研究が持つ危険性は何も「被験者の権利侵害」だけではありません。研究
者の側も危険を負っています。この問題を考えるときに、セーフティーネッ
トをどうするかを考える必要があります。もちろん、研究を真剣にやっても
らうためには背水の陣と言う考え方もあります。しかし、それができる人は
少ないのです。研究者も生活者である以上、この問題への対処は重要な位置
を占めます。そして、もっとも恐ろしいことは、研究の持つ危険性が回避さ
れ、安全な研究のみを行うようになることです。予備実験の問題も、危険回
避のセーフティーネットの問題と深く関わっているのです。このように考え
てくると、予備実験の問題は研究計画の根幹に係わるものです。それが議論
の俎上に乗るようにすることが大切と思われるのです。
                            (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ 臍帯由来細胞株
  
JCRB1218:UC701
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1218.htm (近日公開予定)


JCRB1220:UC702
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1220.htm (近日公開予定)


JCRB1224:UC704
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1224.htm (近日公開予定)


♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

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◆3◆  ★★ 細胞バンクが出来た頃(第19回) ★★
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今回も細胞バンクが出来た当時の話ではなく、現在のエピソードをお話し
します。

今年度も再び年度末を迎えておりまして色々と多忙になってまいりました。
『年度末に予算消化のようにばたばたするのはけしからん、早くから予定
を立てて計画的にやりなさい』とお叱りを受ける毎年ですが、限られた予
算を有効に使うためには、どちらかと言えばセーブしながら使って年度後
半で調整するほうが安全なのでおいおい年度末が忙しくなってしまう毎年
です。いずれにせよ計画的予算執行はなかなか難しく反省することが多い
毎年であります。

今年から厚労科研費の中に生物資源研究の枠が新たに設けられ、海外の研
究者を招聘することも出来るようになりましたので、今年度の試みとして
ドイツの細胞バンク(DSMZ)からSTR分析によって細胞のクロスコンタミネ
ーションを研究しているW.Dirks博士をお呼びしました。数ヶ月前にHS研
究資源バンクの佐藤さんと吉田さんが海外視察でDSMZを訪問してSTR分析
結果を細胞バンク間で共有することは出来ないだろうかという相談を持ち
かけられたことがきっかけになりました。

細胞のクロスコンタミネーションの結果誤って同定されている細胞(Mis
identified Cell Lines)が国際的に広く出回ってしまっているという事
態については欧米を中心に危機感が強まっており、細胞バンクがやらなけ
ればならない仕事として、STR分析のデータを研究者に提供して、個々の
研究室でも調査しやすくする環境を整備しなければならないと考えている
関係者は増えています。

つまり、各研究室ではそれぞれが使用している細胞についてのSTR分析デ
ータを得ることは容易に出来ますが、他の細胞との誤認が問題になると比
較する相手の細胞のデータが必要となります。個々の研究者がそうしたデ
ータをそろえるのはさすがに無駄が多いので、細胞バンクで既に得ている
のならそれを公開するのが効率的だと考えておりますので、どのような形
で公開するのが良いかという検討をDirks博士と話し合いました。

このような試みはJCRB細胞バンクだけではなく、理化学研究所細胞バンク
やATCCなど他の有力細胞バンクとも連携をとろうと、今回はDirksさんに
理研細胞バンクも訪問して頂いてデータの交換について議論して頂きまし
た。各細胞バンクにおいてデータの記載フォーマットが違う点が気になり
ましたが、今回はフォーマットの共通化にまでは踏み込まず現時点までの
データを試験的に統合する試みを行うことにしました。

なお、この問題については、実験医学にJCRB細胞バンクと理研細胞バンク
で明らかにしたクロスコンタミネーションを起こした細胞の一覧表を掲載
した情報を掲載しましたので是非参考にしてください(実験医学、2008年、
3月号)。
                        (水澤 博)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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1.疾患モデルマウスバンクの事業
  ――――――――――――――

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。


○疾患モデルマウス関連情報発信


2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼次の5系統のマウスの分譲を開始しました。 

 nbio054 RP58 KO マウス(脳異常)
 nbio055 Translin KOマウス(免疫異常)
 nbio056 ATF4 KO マウス(小眼球症)
 nbio057 SOCS1 KO (BALB/c congenic)マウス (免疫異常)
 nbio058 SOCS1 KO (C57BL/6J congenic)マウス (免疫異常)


3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――

【HR(hairless)マウス(脱毛モデルマウス)】

資源番号:nbio003
由来:東京大学医科学研究所
樹立者:不明
分譲条件:無条件
(ただし,発表時は東京大学医科学研究所由来であることを明記)

脱毛は発見されやすいため,これまでに脱毛を特徴とするマウスが数多く
報告されていますが,本系統はアメリカより東京大学医科学研究所に導入さ
れたヘアレスマウス(詳細不明)よりhr遺伝子が医科学研究所にてBALB/cバ
ックグラウンドに導入されたものです。その後,1981年に国立予防衛生研究
所/国立感染症研究所に導入され,胚凍結保存されたものが分譲対象となっ
ています。

このHRマウスは胎生期から始まる第1毛周期は正常ですが、2-3週齢に頭部か
ら尾部に向かって始まる第2毛周期がありません。それゆえ,2-3週齢に達
するまでは被毛がありますが,その後頭部から尾部に向けて脱毛するという
特徴があります。

基本的にホモ系(脱毛)マウス雌は保育ができないため(乳腺異常によると
思われます),系統維持はヘテロ系(有毛)雌マウスとホモ系雄マウスとの
交配によります。紫外線、化学変異原に高感受性で皮膚腫瘍が生じやすいこ
とから,皮膚関連の研究に用いられています。

参考文献:
Fukui M, Ito K, Kawamura S, Sudo K, Suzuki K. Glomerular changes in
hairless mice: a light, immunofluorescent and electron microscopic
study. Jpn J Exp Med 1975;45: 535-540.

分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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III あとがき
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今回ドイツより来て頂いたDirks博士はとっても陽気でフレンドリー。ドイ
ツ版鉄ちゃんであり、カメラマニアという事もあり、業務以外の話題も事
欠かなかったようです。スタッフの自宅で家庭のたこ焼きを食べてもらお
うと企画しました。たこ焼きの生地はパンケ−キと似ていると言いながら、
作業を興味深く見学。せっかくの機会なので他にもポテトの国ドイツを意
識しての粉ふき芋や焼き芋、おにぎり(のり、辛子明太子)酢の物を味わっ
てもらいました。たまたまあった富山の黒作り(イカ墨の塩辛)も意外と
抵抗なく、たこ焼きにつけても美味しいとのことでした。博士は歴史的な
ことも踏まえ、ご自身で作った折鶴を持って広島へも。また子供を思う親
は何処も同じで、毎晩自宅とスカイプで連絡を取っておられました。研究
室では英語以上にわからないドイツ語も飛び交い、そういえば学生時代・
・・、と感じた次第です。
                             (ET)
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  (独)医薬基盤研究所 メールマガジン発行事務局
  メール: cell@nibio.go.jp

★ 細胞分譲の依頼先
  (財)HS研究資源バンクまでどうぞ。親切丁寧に対応いたします。
  メール: hsrrb@osa.jhsf.or.jp
  
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★ 発信元
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独立行政法人医薬基盤研究所
◆ 細 胞 バ ン ク (http://cellbank.nibio.go.jp/)
◆ 遺伝子バンク (http://genebank.nibio.go.jp/)
◆ 実験動物バンク (http://animal.nibio.go.jp/)
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