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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第21号 2008/4/24】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )
       
トピックス

 ○培養細胞におけるウイルスDNA検査の開始。

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◆ インデックス ◆
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I JCRB細胞バンク
 1.事業の紹介
 2.細胞バンクが出来た頃
  (第21回:『物流組織』構築を振り返って)

II 実験動物バンク事業
 1.事業紹介
 2.新規マウス分譲情報
 3.疾患モデルマウスの紹介
    【Lck-creマウス(T細胞特異的Cre酵素発現マウス)】

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(21)★★
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JCRB細胞バンクから研究と倫理のお話

━液体窒素細胞保存容器について━
 ――――――――――――――

前回液体窒素細胞保存容器のお話をしましたが、今回は液相型と気相型
の保存容器のお話です。細胞バンクでは430リットルサイズの液相型
(アンプルが液体窒素に浸かった状態で保存)の容器と気相型(アンプル
液体窒素に浸からない状態で保存)両方を使用していますが、最近では気
相型でも液相型と同等に低温を維持できるタンクの開発が行われています。
液相型は長期間安定保存を目的とする場合には非常に優れていますが、そ
の反面バイアル中への液体窒素の混入による破裂事故や微生物の混入など
の危険性があり注意して使用しなければなりません。大学の研究室等で使
用する液体窒素細胞保存容器も技術開発によって、より安全・安定な保存
が出来るようになるのも近いかもしれません。

                       (小原 有弘)
 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報

 次回開催予定(募集人員10名前後)平成20年8月28日-29日 
   
       詳細は http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)参照
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
        詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 参照
                          
                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(21)

今回は英国でのインフラとしてのコホート研究資源について述べたいと思い
ます。というのは、科学的伝統のある、また疫学発祥の地として知られる英
国は、コホート研究が多く存在します。コホート研究とはある集団の健康状
態などについて追跡調査を行うことによって、例えばどのような生活習慣が
特定の病気の発症に関係するかというような研究を行う息の長い研究です。
このような研究は、成果が出にくいのに、多くの手間がかかるという点で、
研究者を育てることの難しい分野です。しかし、地道な研究としての評価が
英国では定まっているのでしょう。続々とそのような研究計画が行われてい
る様は、以下の歴史的な研究のリストの一部を見ていただいただけでも明ら
かでしょう。これらの研究資源の利用についての詳しいレポートを和訳しま
したので次のメルマガまでにHP上に公表いたします。

*1946 Birth Cohort(1946年出生のコホート)(National Survey of Health
and Development, NSHD).
1946年3月の1週間に生まれた人々の健康と成長を追跡している進行中の研究。

*Aberdeen ‘Children of the 1950s’ Cohort(アバディーンの「1950年代
出生小児」コホート).
1950〜1956年にアバディーンで生まれ1962年の障害児学校教育研究に参加し
た12000名からなるコホート。1998年から参加者大半について追跡調査開始。

*1958 Birth Cohort (1958年出生のコホート)(National Child Development
Study, NCDS) .
1958年3月の1週間に生まれた英国住民の身体的発育、及び教育、社会性、経
済的発達についての進行中の研究。

*1970 British Cohort Study(1970年英国コホート研究).
1970年4月の1週間に生まれた英国民に関する進行中の研究。

*ALSPAC(Avon Longitudinal Study of Parents and Children(親と子に関
するAvon縦断的研究)).
1991〜1992年に登録したBristol地域の妊婦14500例を対象に小児の健康と成
長に影響する要因を調べる進行中の研究。

*Millennium Cohort Study(2000年コホートの研究).
2000〜2001年に英国の4地域で生まれた小児18000名以上を対象に徹底した記
録を行ったコホート研究。

*Southampton Women’s Survey(サザンプトンの女性に関する調査研究).
数千名の妊婦を対象とした進行中の研究で、生まれて来た子供たちの後期健
康に与える様々な胎児期及び出産前因子の影響を研究している。

*Hertfordshire Cohort Study(ハートフォードシャーコホート研究).
1931〜1939年にハートフォードシャーで生まれ現在も住んでいる3000名を対
象とする進行中の研究で、ゲノム因子や早期環境因子と後の慢性疾患発症と
の関連を研究。

*Whitehall and Whitehall II(ホワイトホール及びホワイトホールII).
ホワイトホール研究事業は1967年に始まった、公務員男性の「社会環境の違
い」に関連した健康格差について研究。

*Caerphilly Prospective Study(ケアフィリー前向き研究).
1979〜1999年にかけMRC南ウェールズ疫学部門は、ウェールズの男性数千人
を対象に心臓血管やその他健康面の調査。       
   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ 抗スコポラミン抗体産生マウスハイブリドーマ細胞株  
JCRB1301:SC78.H81.C81.A9

http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1301.htm(近日公開)

○ 抗ヒト成長ホルモンレセプター(GHBP116)抗体産生マウスハイブリドーマ細胞株

JCRB1226:GHBP116

http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1226.htm(近日公開)

○ ヒト網膜芽腫細胞株

JCRB1223:NCC-RbC-T1

http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1223.htm


♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

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◆3◆  ★★ 細胞バンクが出来た頃(第21回) ★★
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**『物流組織』構築を振り返って**

細胞バンクが設立された当初、新設の研究室に正規雇用の職員は私一人で
残りはリサーチレジデントと非常勤職員の方々でした。そのうえ私は細胞
の培養が出来なかったわけですから、今風に言えば『非正規雇用』の職員
の皆様に大変お世話になったということになります・・・というより彼ら
が居なければバンクは成立しませんでした。その後研究員は4名に増えま
したがこの構造は今でも変わっておりません。

さて、当時細胞バンクをスタートさせながら色々勉強しました。その中で
培養細胞には間違いがあるものだとか汚染されているものだとか色々な問
題が潜んでいることが判ってきましたし、そうした問題を解決することが
必須な課題になると直感もしましたが、収集した細胞を分譲するという
『物流組織』をまずしっかり構築しなければ研究の役に立てることは出来
ないだろうという理解もしました。

しかし、こうした考えはけして研究者の間では評判が良いものではありま
せん。『科学者たるもの物流屋に成り下がるとは何事か』という批判はい
つもあるものです(物流に携わっている方には大変失礼な言い方でお詫び
します)。しかし、極端な言い方をすれば、ある細胞を利用したいと思い
立ったら翌日にはその細胞が手元にあるというシステム(注)を研究者は欲
しいと思っています。『物』をあっちへやったりこっちへやったりするの
は研究者の仕事ではなかったとしても、今それが無いなら『私』がそれを
作るか、はたまた『誰か』がそれを作ってくれるまで待つかの2者択一で
しかありません。待てばできるものなら待てば良し、待ってもできなけれ
ば自分で作れば良いでしょう。ということで細胞バンクの基礎作りは『物
流組織』の構築から始めたのです。1985年のことでした。

実はATCCやCIMRには分譲部門や情報部門がしっかり確立されています。少
人数でも職員を配置してオンライン回線による輸送システムが当時既に出
来あがっていました(1985年)。まだインターネットも一般の人が利用でき
る時代ではありませんでしたから大いにびっくりしたものです。この頃、
ATCCのHay博士は細胞の情報を巨大なドラム式の紙インデックス方式から
IBMのオフィスコンピュータに移行させたと自慢をしていたのを懐かしく
思い出します。

そしてそのころ16ビットのパーソナルコンピュータ、IBM-PC/AT、が市販さ
れ、何とかそれを手に入れて細胞バンクの物流に無くてはならない管理プ
ログラムを作成しました、JDACS(JCRB DAta Control System)。SEを雇用す
るほどの運営費はありませんでしたので、このシステムの基本設計は私が
行い、コーディングを業者さんに依頼して格安で仕上げてもらったうえで
ソースコードも納品してもらいました。その結果僅かな手直しは自分自身
で行いながら現在まで使い続けています。

こうして細胞バンクを構築しながら思ったことは、このシステムを構築す
るにはマルチタレントな人材が必要だということでした。要するに論文を
書く作業から、物流システムを構築することまで全部をこなしてしまう人
材が必要だということです。これは難しい要求のように思えますが、戦争
で疲弊しきった日本が驚異的な回復をしたのはやれば何とかなるという頑
張りのようにも思いますが日本には結構このような人材が多いということ
なのではないでしょうか。

注:思い立ったら翌日にというのはいくらなんでも不可能です。これはあ
くまでも私の理想像で、現実には最短で1週間となっています。平均的には
2週間程度でしょうか。ともあれ、何でも遅いと非難される公務員が『迅速
なサービス』を実現させたら面白いだろうと目論んだものです。

                        (水澤 博)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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1.疾患モデルマウスバンクの事業
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○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。


○疾患モデルマウス関連情報発信

2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼今年2月と3月に、次の合計20系統のマウスの分譲を開始しました。
当バンクのホームページhttp://animal.nibio.go.jp/ に解説があります。
どうぞご覧下さい。

 nbio023 FOXO1マウス(廃用性筋萎縮モデル)
 nbio060 TAK1floxマウス (コンディショナルKO、免疫異常など)
 nbio061 ADAMTS13 KOマウス(血液凝固系異常)
 nbio062 NDRG1 KOマウス(末梢神経変性)
 nbio063 Ubc13floxマウス (コンディショナルKO、免疫異常など)
 nbio025 Lck-Cre(T細胞特異的Cre酵素発現)
 nbio034 GLUT4-2K/C(生活習慣病関連)
 nbio035 GLUT4-423/A(生活習慣病関連)
 nbio036 GLUT4-423/B(生活習慣病関連)
 nbio037 GLUT4-442/C(生活習慣病関連)
 nbio038 GLUT4-442/E(生活習慣病関連)
 nbio043 GLUT4-MEF2/B(生活習慣病関連)
 nbio044 GLUT4-MEF2/D(生活習慣病関連)
 nbio047 FAT-CDO(生活習慣病関連)
 nbio059 MEF2A(生活習慣病関連)
 nbio064 Cmah Tg VH-G(免疫系異常)
 nbio065 Cmah Tg VH-H(免疫系異常)
 nbio066 Cmah Tg VH-JA(免疫系異常)
 nbio069 C57BL/6-ypc/ypc(貧毛)
 nbio070 SLW(軟骨形成不全、消化管機能異常)
 

3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――

【Lck-creマウス(T細胞特異的Cre酵素発現マウス)】

 資源番号:nbio025
 由来:大阪大学医学系研究科
 樹立者・寄託者 :竹田潤二先生
 分譲条件:提供承諾書が必要

 T細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現し、組織特異的遺伝子破壊に利
用されるトランスジェニックマウスで、T細胞に関連する免疫系研究に有用
です。cre酵素の発現制御には、T細胞特異的なLck近位プロモーターが用い
られています。なお、Lckは、p56とも記載され、lymphocyte protein
tyrosine kinaseであり、Srcチロシンキナーゼファミリーに属します。また、
トランスジーンはチロシナーゼ遺伝子と連鎖していることから、7番染色
体に挿入されていると考えられています。

参考文献
Takahama Y, Ohishi K, Tokoro Y, Sugawara T, Yoshimura Y, Okabe M,
Kinoshita T, Takeda J. Functional competence of T cells in the
absence of glycosylphosphatidylinositol-anchored proteins caused
by T cell-specific disruption of the Pig-a gene. Eur J Immunol.
1998 Jul;28(7):2159-66.  

分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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III あとがき
新緑の美しい季節になりました。目を癒してくれる景色が目前にある私の
席は特等席です。彩都も里山に隣接しておりますので、山に入れば、きっ
と旬のものが色々見つかるのだと思いますが、素人のこと、雑草との区別
がつかないので見つけられるか?です。そこで、車を走らせて地黄の青空
市を覗きに行きました。ゲットしたのは、筍、こごみ、のびる、烏骨鶏の
卵。筍は筍ごはん、灰汁が少ないのでさっとゆでわさび醤油で食べると最
高!こごみ、のびるも天ぷらに。烏骨鶏の卵は栄養はあるのでしょうが、
小さく味は赤玉とトントンでした。ス−パ−に行くと何でも揃うので季節
感がなくなりますが、旬のものを美味しくいただきたいと思いますね。

                            (ET)