◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン         
◆    【第25号 2008/8/29】               
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ インデックス ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
I JCRB細胞バンク

 1.事業紹介   
    【無血清培養法って、なあに?】
    【特許問題】
 2.細胞バンク近況 

II 実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウス分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【Ubc13flox マウス】

III あとがき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(25)★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

**JCRB細胞バンクのお知らせと倫理のお話**

【無血清培養法って、なあに?】

無血清培養というと、「血清を入れないで培養すること」と、思ってらっ
しゃる方も多いようです。しかし、Culture without serumと、Chemically
defined serum-free cultureとは、違います。血清には様々な因子がふくま
れており、明らかにされていない因子も多く含まれています。ロットにより
含まれているものも違い、実験結果も異なるのです。たとえば、ES細胞か
らEmbryoid body(胚様体)を作成する際に、使用する血清のロットによっ
て分化誘導されてくる組織が異なることがしばしばあります。
1975年に、Gordon H.Sato博士(1)が、血清の役割とは、それに含まれるホル
モン、増殖因子、接着因子などが細胞の増殖を促進することであり、これら
の因子を基礎培地に加えることにより、血清を代替できることを提言しまし
た。この考えのもとに、様々な研究が進められ(2)、血清添加の条件で培養
されていた多くの細胞が、既知の因子により培養できるようになりました。
さらに、1979年に、Bottenstein JE & Sato GHら(3)により、N2サプリメン
トが開発されました。近年、幹細胞研究分野でよく使われるようになったN2
サプリメントは、今から約30年前に開発されたものなのです。コマーシャル
ベースに販売されているものを安易に使ってはいませんか?今ひとつ、これ
らの論文を読んで、無血清培養の意味を考えてみてはいかがでしょうか。
1. Sato GH.: The role of serum in cell culture. In Litwack G (ed):
Biochemical Actions of Hormones. New York: Academic, Vol 3, 391-396
2. Hayashi I, Sato GH.: Replacement of serum by hormones permits
growth of cells in a defined medium.Nature. 1976 Jan 15;259(5539):
132-4.
3. Bottenstein JE, Sato GH.: Growth of a rat neuroblastoma cell line
in serum-free supplemented medium. Proc Natl Acad Sci U S A. 1979
Jan;76(1):514-7.



 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報
          
          http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会) 
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
          http://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

  http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 
                          
                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(25)

今回は予定を変更し、少し異なった分野の話題をお話しておかなければい
けないこととなり、そのことについて書きます。

それは特許についての問題です。特許の問題は倫理とは関係がなさそうで
すが、特許が知識の公開、共有と其の対価の支払い(特許料)から成り立
っていることを考えると、研究資源の共有の話と根に同じものを持ちます。
まず、特許の及ぶ範囲についての基本的考え方が日本で整理され、私がこ
れまで考えていた様子とかなり異なってきたことを紹介します。

政府の主導の下に2002年の「知的財産戦略会議」が設置され、その夏には
「知的財産戦略大綱」が公表され、2002年の末に「知的財産基本法」の成
立、2003年の施行と同時の「知的財産戦略本部」設置という動きによって、
知的財産という言葉は、研究開発のメインストリームでの合言葉になった
感があります。多くの提言、報告、指針などが公開されています。全国の
大学及び公的研究機関(以下「大学等」という)でもTLOが作られ、自分
たちの知的財産の管理と活用を推進しようという機運が著しいのです。そ
れらの動きは、もちろん広範な範囲の科学研究や開発に関わり、企業のみ
でなく大学にとっても積極的に活動することを求めるものです。知的財産
立国という言葉が行きかうなか、大きなうねりが生まれていることは事実
ですが、これが定着するのにはまだ時間がかかるように思えます。

私自身がこれまで「特許」というと企業の問題、営利活動の問題と考えて
いました。確かに、大学等にいると、「私たちアカデミアには関係ない話」
と考えがちです。ところが、2004年11月の「特許発明の円滑な使用に係る
諸問題について」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/strategy_wg_prob/00.pdf
の中で産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許戦略計画関
連問題ワーキンググループは、大学等と企業、及び営利と非営利の活動と
特許権の効力の問題について検討を加え以下のように述べています。

「大学等での研究活動については、我が国の特許法が営利又は非営利目的
により他者の特許発明の実施に区別を設けていないことをかんがみると、
実施者が企業(営利機関)か大学等(非営利機関)であるかの相違によっ
て特許権の効力が及ぶ範囲が異なるものではない。これまで非営利機関で
ある大学等を訴える利益に乏しかったこと等のさまざまな配慮により、実
際に大学等が特許侵害により訴えられることはほとんどなかったが、今後
産学官連携が進み活発化していけば、大学等が訴訟当事者となる場合も想
定されることから、第69条第1項(試験又は研究の例外)について正しい
認識が求められる。(36−37ページ)」

この見解の根拠として、この報告書は広範な諸外国(米国、英国、ドイツ、
フランス、欧州、台湾、韓国、中国、インド、シンガポール)における
「試験又は研究」の例外について検討をし、特許技術の改良目的とした研
究開発のみを「試験又は研究」の例外とすることが妥当であると結論して
います。ということは、特許技術を使用した研究開発はすべて特許権の効
力の及ぶ範囲であるということです。

大学等の研究者にとっても、特許問題がただ取得すればよいという問題で
はなく、自分たちが他人の技術を使ったときに、それが特許技術であるか
を意識する必要が生じているのです。例えば研究使用限定で市販のベクタ
ーを買って、それを使ったシステムで特許をとろうとすれば、ベクターの
特許権を持つ会社と交渉しなければいけないということなのです。

次回は、国際学会での論点についてご報告したいと思います。

   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ β-gal欠損マウス由来, SV40不死化線維芽細胞SV(JCRB1207)に
ヒトβ-gal遺伝子を導入した細胞
JCRB1198:GP8
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1198.htm

○β-gal欠損マウス由来, SV40不死化線維芽細胞SV(JCRB1207)に
変異型ヒトβ-gal遺伝子(R201C)を導入した細胞
JCRB1199: R201C
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1199.htm

○β-gal欠損マウス由来, SV40不死化線維芽細胞SV(JCRB1207)に
変異型ヒトβ-gal遺伝子(I51T)を導入した細胞
JCRB1225: I51T
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1225.htm

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆3◆  ★ 細胞バンクの近況 ★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

細胞バンクが出来た頃の変わりに・・・・

『細胞バンクの舞台裏』が『科学に佇む心と体』というブログに取上げ
られてしまいました。

昨年(2007年)11月に『細胞バンクの舞台裏』を執筆させていただきまし
たが、これが一般の方(かなりの曲者のようですが)の目にとまりブログ
に取上げられてしまいましたのでお知らせいたします。

掲載されたのは今年の3月だったのですが私が気がついたのは半年遅れ
て8月も半分過ぎた20日ごろでした。細胞バンク関連の調べものをし
ている時に検索にひっかかってきたのですが、最初は単純に喜んだので
すが、結構辛らつな書き方についへなへなとなりました。気をとりなお
して、私のほうからコメントを送らせていただいたところ、ではという
ことで、新しいブログのページを作ってくださいました。それが2段目
のURLです。お恥ずかしいのを我慢してお知らせします。細胞バンクが
一般市民の方の目にどう映ったかという点をごらんください。

http://ep.blog12.fc2.com/blog-entry-1068.html
http://ep.blog12.fc2.com/blog-entry-1182.html

まあまあ、本音で細胞バンクの事業を進めてきた私としては、一般の方
にも注目して頂けるようなそんなものに育ってきたことは大変有難いこ
とであります。注目を浴びれば真面目にやらなければならないという緊
張感も生まれますし、何より細胞というものを見るときに、その細胞は
ちゃんとしてるのですねぐらいの質問が一般の方から専門家に発せられ
ることにもなるでしょうから、それも大事なことです。

このブログには、細胞バンクがらみで興味深い批評がまだ出るようです
ので、紹介させて頂きました。

3月のブログでは『しなしなの執事さん』みたいな書き方をされてしま
いましたが、けしてしなしなしているわけではありません。細胞バンク
だからこそ出来る面白いテーマを追求しておりますので宜しくお願いい
たします。
                (水澤 博)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.疾患モデルマウスバンクの事業
  ――――――――――――――

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信


2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼近々、次の8系統のマウスの分譲を開始します。どうぞご利用下さい。

 FAT-UCP2/X (生活習慣病/肥満関連)
 AMPK-DN/C (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 AMPK-DN/E (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 LKB1-DN/B (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 LKB1-DN/C (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 NDRG1 flox (コンディショナルKO/末梢神経変性など)
 SIK2-KO (C57BL/6) (生活習慣病/糖・脂質代謝)
 SOCS5 Tg (line5-1)(免疫異常)


3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――

【Ubc13flox マウス】

 資源番号:nbio067
由来:大阪大学微生物病研究所
樹立者・寄託者 :審良静男先生
分譲条件:提供承諾書が必要

Ubc13はユビキチン結合酵素(E2)に分類される酵素で,ユビキチンの63番目
のリジン(K63)にユビキチンを付加することによりポリユビキチン鎖を作
ります。このK63を介したポリユビキチン鎖はタンパク質結合ドメインとし
て機能し,シグナル伝達やDNA修復に関与します。例えば,Ubc13による標的
タンパク質へのK63ポリユビキチン鎖の付加が,転写因子NF-κBの活性化を
もたらす免疫受容体シグナルの伝達に必須です。大阪大学微生物病研究所の
審良先生のグループは,このUbc13floxマウスを利用してUbc13遺伝子の組織
特異的な不活化の影響を調べ, Ubc13がマクロファージの活性化やB細胞の
形成,機能に重要な働きをしていること示しました(参考文献参照)。

このUbc13floxマウスは,標的改変によってUbc13ゲノムの第2,3,4エクソ
ンを挟むようにloxP配列を導入した129/Ola系マウス由来ES細胞(E14.1)を
用いてキメラを作成後,C57BL/6系マウスとの交配によって樹立された系統
です。Cre酵素を発現するマウスとの交配により,Ubc13遺伝子を不活化する
ことができます。Cre酵素の発現を誘導するプロモータを選択することによ
り時期や組織特異的不活化が可能となっており,このUbc13floxマウスは時
期・組織特異的なUbc13の研究に有用な系統といえます。

なお参考文献によりますと,いわゆる「Ubc13ノックアウトマウス」もこの
Ubc13floxマウスとは別に作られましたが,胎生致死であったそうです。ま
た,組織特異的ノックアウトにてToll-like receptor/IL-1Rシグナルの異常
が見られたそうです。

参考文献
Yamamoto M, Okamoto T, Takeda K, Sato S, Sanjo H, Uematsu S, Saitoh T,
Yamamoto N, Sakurai H, Ishii KJ, Yamaoka S, Kawai T, Matsuura Y,
Takeuchi O, Akira S. Key function for the Ubc13 E2 ubiquitin-conjugating
enzyme in immune receptor signaling. Nat Immunol 2006;7: 962-970. 
 
分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
III あとがき
昔は毎日あった地域のラジオ体操も最近は短くなっているようです。それで
もスタンプ押してもらって最後に頑張ったね!と渡される景品を子供たちは
楽しみにしてくれています。そういう夏の風景から来週明けは9月。沿道では
通学の子供たちが行きかい、幼稚園バスの送迎でお母さんたちの集団に圧倒
される景色になります。一度涼しくなってまた暑くなりそうな気配。皆様く
れぐれも健康管理にご留意下さい。            (E.T.)  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆☆      JCRBメ−ルマガジンへのアクセス      ☆☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ メルマガ配信・停止の依頼方法
 このメルマガの配信又は停止は、次のURLで受け付けています。
 http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/
 (右フレーム:アドレスを入力して送信ボタンをクリック)

★ 発行済みメルマガの掲載場所。
 http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/
 (左フレーム)

♪☆=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆
★ プライバシーポリシー
  http://cellbank.nibio.go.jp/information/system/privacy.html

♪☆=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆
★ JCRB e-mag へのご意見・お問い合わせ先:
  (独)医薬基盤研究所 メールマガジン発行事務局
  メール: cell@nibio.go.jp

★ 細胞分譲の依頼先
  (財)HS研究資源バンクまでどうぞ。親切丁寧に対応いたします。
  メール: hsrrb@osa.jhsf.or.jp
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ 発信元
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
独立行政法人医薬基盤研究所
◆ 細 胞 バ ン ク (http://cellbank.nibio.go.jp/)
◆ 遺伝子バンク (http://genebank.nibio.go.jp/)
◆ 実験動物バンク (http://animal.nibio.go.jp/)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                                □