◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン   
◆    【第26号 2008/9/30】         
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ インデックス ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
I JCRB細胞バンク

 1.事業紹介 
=英国・シェフィールド大学から=
=お知らせ=
   =研究倫理に関する活動=
 
 2.新規細胞のご案内 

II 実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウス分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【FAT-CDOマウス】

III あとがき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(26)★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

**JCRB細胞バンクのお知らせと倫理のお話**

=英国・シェフィールド大学から=

今週は、英国・シェフィールド大学に出張で来ています。こちらはすっか
り冬になっていて、町の人々はコートの襟を立てて寒そうにしています。
久しぶりのヨークシャー訛りですが、いまのところなんとかなっています。
英国では、臨床用ヒトES細胞樹立のために、8カ所の研究室に医薬品GMPハ
ードに準拠した専用施設設置の公的予算が配分され、シェフィールド大学を
はじめとして5カ所の施設がすでに完成しています。シェフィールド大学に
おいては、臨床用グレードのES細胞樹立を目指しているところだそうです。
まずは、ヒト由来線維芽細胞とヒト化培地を使用することを考えているよう
です。シェフィールド大学のステムセルセンターには、フィンランド、スウ
ェーデン、中国、タイなどの様々な国からのポスドクが来ています。また、
これまで居た大学院生やポスドクは、カナダ、アメリカ、中国、シンガポー
ルの研究室へと飛び立っていきました。シェフィールド大学のステムセルセ
ンターからヒトES細胞の培養に対する考え方や技術が世界に伝えられていく
のでしょう。最も的確な標準化かもしれません。細胞培養は、たとえプロト
コールがあっても、そこには様々なノウハウがあります。上手に培養を行っ
ているヒトの技術をどう伝えるか。どう学ぶか。これからの日本の大きな課
題かもしれません。           
 古江−楠田 美保

------------------------------------------------------------------
 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報
          
          http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会) 
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
          http://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

  http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 
                          
                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(26)

先回は特許技術を使って作ったマウスの権利関係の話を書きました。
今回はヒトiPS細胞の問題について書きたいと思います。特に、この問題
がどのような「倫理問題」を持つのかという問題について考えて見ます。

ヒトES細胞は大きな倫理問題を抱えるといわれます。それは@ヒト胚を
滅失すること、Aその多能性からヒト個体を作る能力を持つこと。この
2点が問題とされます。一方、ヒトiPS細胞は@ヒト胚の滅失が必要ない
点で、倫理問題のない再生医療の材料として注目されています。それで
は、ヒトiPS細胞はA以外の点ではES細胞と同じなのでしょうか。そうで
はないと考えられています。ヒトiPS細胞は、作る過程で利用する細胞を
患者個人から採取することで、拒否反応のないヒトiPS細胞を得ることが
でき、自己細胞を初期化、再分化させて細胞治療に用いるという道を大
きく開いたと考えられています。

拒否反応のない細胞を用いた治療のためには以下の3つの方策が考えられ
ています。
1.組織適合性の多様性を持つヒトES細胞のバンクを設立して、どのよ
  うな組織適合性の患者にも対応できるようにする。
2.患者の核をヒト卵に移植して治療用のクローンES細胞を作成する。
3.患者の細胞を用いてiPS細胞を作る。

これらの方策の中で3のヒトiPS細胞がもっとも倫理的な負担の少ない方
法でありその確立が再生医療を発展させると考えられているのです。

2については、ヒト卵の採取に関連する倫理問題が議論されている最中
で、日本ではまだ実験ができない状態です。しかし、英国では昨年9月に
医学研究協議会(政府の研究助成機関)が不妊治療の患者さんが実験用
のヒトクローン作成のために卵を提供する場合には、医学研究協議会か
ら支給された研究費から一人当たり30万円ほどを患者の不妊治療費とし
て病院へ支払うことを許可しました。この決定はかなり長く議論がされ
ていたようで、医学研究協議会、ヒト受精・胚規制局、地域倫理審査委
員会の3つの倫理委員会の審査を受けています。今年の6月に英国でこの
問題に社会学の視点から関わっている研究者に会ったのですが、「議論
は尽くした問題はない」という答えでした。もうひとつ面白いのは、こ
のような「研究費でヒト卵を購入する」ような施策がどんな変化を社会
にもたらすかを社会科学的に研究するために、医学研究協議会はヒトク
ローン研究と同じ位の予算を支出するということです。日本の現状とは
全く異なったヒトクローン研究の状態です。

そのようなわけで、iPS細胞は日本でも可能な拒絶反応のない細胞治療を
もたらすと考えられています。しかし、この細胞は4つ或いは3つの遺
伝子を導入したもので、治療に用いるとすると、体から取り出した細胞
に遺伝子導入して体に戻す、Exvivoといわれる遺伝子治療です。日本で
は遺伝子治療の熱はかなり冷め、ひとつの遺伝子の導入ですら難しい状
況です。そのために、遺伝子を別の小分子の薬に置き換えてiPS細胞を作
ろうという研究が活発なのです。ヒトES細胞を用いた臨床研究の指針す
らできていない日本としては、iPS細胞による治療が可能になるのはかな
り難しいことであると考えています。

ひとつ最後に考えておきたいことがあります。新聞や政府の動きなどか
らヒトiPS細胞への期待が現実を超えて大きくなりすぎた問題です。ある
体性幹細胞の再生医療を行っている研究者が「患者からiPS細胞作ります
から細胞くださいと言って細胞を採取することが怖い」と話していたの
です。話を聞くと、患者からそのiPS細胞を使って治療をしてくださいと
要求されたときに、「iPS細胞はまだまだ臨床には使えないのです」とい
う話をして患者を納得させる自信がないということでした。

研究、特に医学生物学研究がヒトの疾患を研究する学問である以上、研
究者は病を治すということを「売り」にして研究費を稼ぐわけです。新
聞記者や政策関係者はその動きを利用することもあるのです。そして膨
らみすぎた期待の危険性を考えない言説が、このiPS細胞への過剰な期待
の話にあるのです。これほど非倫理的なことをしていると研究者、新聞
記者、政策関係者は自覚をしているでしょうか。これは、大きな研究倫
理上の問題といえるでしょう。ただ、昨今の日本の科学技術の「明日何
が役に立つ」という雰囲気の中では、根本的に問題を改めることは難し
いかもしれません。
   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ GFPを遺伝子導入したトランスジェニックラットの骨髄由来間葉系幹細胞
JCRB1310:rMSC-GFP
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1310.htm

○LacZを遺伝子導入したトランスジェニックラットの骨髄由来間葉系幹細胞
JCRB1312: rMSC-LacZ
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1312.htm

○Luciferaseを遺伝子導入したトランスジェニックラットの骨髄由来間葉系幹細胞
JCRB1315: rMSC-Luci
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1315.htm

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.疾患モデルマウスバンクの事業
  ――――――――――――――

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信


2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼近々、次の8系統のマウスの分譲を開始します。どうぞご利用下さい。

 FAT-UCP2/X (生活習慣病/肥満関連)
 AMPK-DN/C (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 AMPK-DN/E (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 LKB1-DN/B (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 LKB1-DN/C (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 NDRG1 flox (コンディショナルKO/末梢神経変性など)
 SIK2-KO (C57BL/6) (生活習慣病/糖・脂質代謝)
 SOCS5 Tg (line5-1)(免疫異常)

3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――
【FAT-CDOマウス】(別名 aP2-CDOマウス)

資源番号:nbio047
由来:(独)国立健康・栄養研究所 基礎栄養プログラム
樹立者・寄託者 :笠岡宣代先生
分譲条件:提供承諾書が必要

脂肪組織特異的にラットのシステインジオキシゲナーゼ(CDO)を過剰発現
させたトランスジェニックマウスです。 CDOはタウリン合成の律速酵素で
あり、脂肪組織でタウリン合成を促進する可能性が期待できます。プロモ
ーターはaP2プロモーターを使用しており、このマウスの脂肪組織では、
CDOが正常マウスの2-3倍過剰発現しています。タウリンと肥満、メタボリ
ックシンドロームに関連する研究に使用可能です。
なお、タウリンは食事から摂取される他に、肝臓のCDOにより合成されて
いますが、最近の研究では、脂肪細胞でもタウリンの合成が行われている
ことが判ってきました。寄託者等の研究(参考文献)に依りますと、高脂
肪食で体脂肪が増え、肥満になったマウスでは、脂肪細胞でのタウリン合
成が減少しているとのことです。また逆に高脂肪食にタウリンを添加して
食べさせると肥満を発症しなくなり、タウリンの抗肥満作用が示されてい
ます。このFAT-CDOマウスは脂肪組織でのタウリン合成と肥満の関連を研
究するのに有用と考えられます。

参考文献
Tsuboyama-Kasaoka N, Shozawa C, Sano K, Kamei Y, Kasaoka S, Hosokawa
Y, Ezaki O. Taurine (2-aminoethanesulfonic acid) deficiency creates
a vicious circle promoting obesity. Endocrinology.
2006 Jul;147(7):3276-84. Epub 2006 Apr 20.

 
分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
III あとがき

スポ−ツ、文化の秋、味覚の秋ですね。彩都では先週から今週にかけて学校
での運動会、文化祭が続いています。小学校の運動会では生徒数が爆発的に
増えているのでお昼を家族でのんびり頂くことが出来なくなりましたが、中
学校の文化祭は地域のサ−クルの展示発表も含め、一人ひとりの作品の展示
が丁寧にされており、舞台もゆっくりみることが出来ました。中学3年生とも
なるとバンドの発表があったり、劇も話題の作品(ちなみに彩都西中学では
ホ−ムレス中学生)を使ったり、先生の知らないところでまとまって先生へ
のメッセ−ジを作り、担任の先生を泣かせたりと生徒の自主性を感じます。
一人では出来ないことも仲間と一緒だともめながらも最後までがんばり、成
長していくのだなあと感じました。一方パソコンの映像を背景に舞台が構成
され、昔のように大道具、小道具を色々作る劇とは少し趣が違いました。
いよいよ10月です。美味しいものを提供してくれる自然に感謝!               

                               (E.T.) 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆☆      JCRBメ−ルマガジンへのアクセス      ☆☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ メルマガ配信・停止の依頼方法
 このメルマガの配信又は停止は、次のURLで受け付けています。
 http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/
 (右フレーム:アドレスを入力して送信ボタンをクリック)

★ 発行済みメルマガの掲載場所。
 http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/
 (左フレーム)

♪☆=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆
★ プライバシーポリシー
  http://cellbank.nibio.go.jp/information/system/privacy.html

♪☆=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆
★ JCRB e-mag へのご意見・お問い合わせ先:
  (独)医薬基盤研究所 メールマガジン発行事務局
  メール: cell@nibio.go.jp

★ 細胞分譲の依頼先
  (財)HS研究資源バンクまでどうぞ。親切丁寧に対応いたします。
  メール: hsrrb@osa.jhsf.or.jp
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ 発信元
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
独立行政法人医薬基盤研究所
◆ 細 胞 バ ン ク (http://cellbank.nibio.go.jp/)
◆ 遺伝子バンク (http://genebank.nibio.go.jp/)
◆ 実験動物バンク (http://animal.nibio.go.jp/)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                                □