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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第28号 2008/12/1】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )

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◆ インデックス ◆
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I  JCRB細胞バンク

 1.事業紹介 
   =今、培養技術がトレンド?=
   =JCRB細胞バンクからのお知らせ=
   =研究倫理に関する活動=
 
 2.新規細胞のご案内 

II  実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウス分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【SLWマウス】

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業 ★★
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**今、培養技術がトレンド?**

10月に湘南国際村で開催された内藤カンファレンス「幹細胞の維持と分化
の分子基盤」に参加してきました。中日には、とてもきれいに富士山が見え
ました。このカンファレンスでは、研究者間の交流を深めるためという目的
で、参加者は相部屋となります。まるで学生のようにおしゃべりをして、
しっかり今後の交流を約束して戻ってきました。今回、山中先生を始めとし
て、Dr. Austin Smith, Dr. Rudolf Jaenisch, Dr. Kevin Eggan, Dr. Azim
Suraniなどなど、そのほかにも豪華なメンバーが参加し、一緒に丸3日間缶
詰になりました。人数も少ないので、じっくりと話ができ、交流は深まりま
す。ご存じの通り、幹細胞の分野は目まぐるしい早さで進歩し、めまいがす
るほどです。でも、よく聴いていると最新の技術とともに大事なのは、培養
技術なのではないかと思えてきました。培養条件によって、iPS細胞作成の
効率が違う、なんて論文もでてきたり、ヒトES細胞にしても、iPS細胞に
しても、ちょっとしたことに気をつけることにより、その未分化性がきれい
に保てたりします。とりあえず、「細胞が増えればいいや」、という気持ち
でやっていたのでは、ESやiPS細胞を培養できないでしょう。培養技術の基
礎をきちんと守って培養することが大事です。地道な努力が、トレンドな研
究に結びつくのではないかと、感じる今日このごろです。

<無血清培養のポイント>
無血清培養ですと含まれるタンパクが少ないために、微量の物質でも培養に
影響を与えます。たとえば、微量に残っている洗剤は、血清添加の条件では
なんの影響も与えませんが、無血清では細胞毒性があります。無血清培地を
使う場合には、洗剤で洗った瓶は使わず、市販の1xPBSを使用しましょう。
                        (古江−楠田美保)

** JCRB細胞バンクからのお知らせ **

 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
          http://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

  http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 
                                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(28)

前の回ではGenome Wide Association Study(GWAS)の発展を中心に解説
いたしました。今回はGWASの代表格Wellcome Trust Case Control
Consortium(これについては前に述べましたので)その生成したデータの
取り扱いについて解説します。
この研究の成功が、Scienceの2007年の科学研究のトッピクスのトップに
Human Genome Studyが上がった理由です。この研究が成功するまでは、多
くの研究者はGenome Wideで何かわかるはずだと思いながら、その確証が高
くはなかったのです。Genome Wideの成功の最初は、理研の田中先生たちの
仕事が上がります。その点で、日本の研究者は貢献をしているのです。
2003年、HapMapプロジェクトが軌道に乗り始めたあたりから、英国の研究
者からのGWAS研究への研究助成の要請が多くあがり、それをまとめ、WTCCC
へと動いた過程がありました。そのことについては、前に書きました。
その成果は2つの形で公表されています。@疾患ごとに2000人(対象)をま
とめた形で示すようなもの。それと、A使用申請をして審査委員会の承認
を得て利用できる個人の解析結果。これら2つのものを考えたときに、Aは
個人情報に抵触しそうでその取り扱いに注意を要するという考えが@につ
いては、問題はないだろうと考えられていました。ところが、2008年8月に
高密度SNPジェノタイプアレーを用いた、多人数の解析結果に、特定の個人
のデータが含まれているということを検証することができるという論文が
発表されました。その結果、NIH, WTCCはその@のタイプのデータを公表サ
イトから削除して、登録者のみが閲覧できるサイトに移しました。
この方法でできるのは、ある個人のジェノムアレーの結果がわかっている
場合に、例えば数千人規模のまとめたデータにその個人のデータが含まれ
ているかを識別することができるのです。NIHはこの論文の著者に1000人分
のまとめたデータと、100人分の個人データ、1000人に含まれる人と、含ま
れない人、そして含まれている人の血縁者のデータを提供して検証を要請
した結果、1件のみが誤りであったということで、この方法の有効性を確認
したということです。この方法自体は、殺人や傷害事件の現場に体液が混
じったサンプルがあった場合に、容疑者のサンプルが含まれているかを検
証する目的で開発をされた方法であるということです。11月に出席したP3G
という国際的なゲノム研究推進機関の会議では、その個人のゲノムアレー
のデータが入手可能であるという前提が困難である以上、この方法の問題
性はそれほど一般的なものではなく、NIHとWTCCCの反応は過剰であるとい
う手紙をScienceに送るという決議をしました。多くの問題を抱えながら、
その中で進み続けるゲノム研究の姿を垣間見るエピソードです。
   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。

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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○抗ヒト成長ホルモン抗体産生(サブクラスIgG1(κ))
マウスハイブリドーマ細胞株
 JCRB1222.04:HGH1.35.2
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1222.04.htm

○抗zearalenone(カビ毒)抗体産生(サブクラスIgG1(λ))産生
マウスハイブリドーマ細胞株
JCRB1311:ZEN
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1311.htm

○ヒト網膜芽細胞種由来細胞株
JCRB1303:NCC-RbC-83
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1303.htm

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● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/
                            (小原 有弘)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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1.疾患モデルマウスバンクの事業
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○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信


2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼次のマウスの分譲を開始しました。どうぞご利用下さい。

 FAT-UCP2/X (生活習慣病/肥満関連)
 AMPK-DN (6ライン、生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 AMPK-CA (4ライン、生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 NDRG1 flox(コンディショナルKO/末梢神経変性など)
 SIK2-KO (生活習慣病/糖・脂質代謝)
 SOCS-5 Tg (2ライン、免疫異常)
 KLF15 (2ライン、生活習慣病/糖尿病関連)
 PGC-1α (3ライン、生活習慣病/筋萎縮)

3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――
【SLWマウス】

資源番号:nbio070
由来:岡山大学大学院自然科学研究科
樹立者・寄託者:国枝哲夫先生
分譲条件:提供承諾書が必要

本マウスは岡山大学で新たに樹立された突然変異マウスで、四肢と尾が
短く、頭部が丸みを示し、また全身的な矮小を示すことから、Short-limbed
Dwarfism (SLW)と名付けられました。遺伝形式としては、常染色体単一劣性
遺伝を示し、原因遺伝子としてC 型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の受容
体の遺伝子(Npr2)が同定されています。SLWマウスは、軟骨形成不全のため
に体型が小型化すると考えられています。また、消化管機能の異常により多
くの個体は離乳前後に死亡します。本マウスはヒト軟骨形成不全症の優れた
モデルであると共に、消化管機能を解析する上でのモデルともなり得ると考
えられています。

参考文献
Sogawa C, Tsuji T, Shinkai Y, Katayama K, Kunieda T.
Short-limbed dwarfism: slw is a new allele of Npr2 causing
chondrodysplasia. J Hered. 2007 Sep-Oct;98(6):575-80.Epub 2007 Aug 28.


分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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III あとがき
 いよいよ師走で、あわただしくメルマガの配信も遅れてしまい申し訳ありま
せん。彩都も寒くなり、紅葉がきれいになって参りました。
 彩都ではその位置づけからでしょうか、11月には当所の一般公開以外にも
サイエンスイベントが行われました。一つは、研究所の研究員が中学校に出
向いて染色体や遺伝子についての講義と実験が行われました。もう一つはサ
ンデ−サイエンスという子供たち向け(?大人も楽しんでいる人はいると思
いますが)のイベントが小学校、中学校で行われました。小学校のステ−ジ
では、家庭で廃棄される色々なものを使ってシャボン玉を作ったり、ロボカ
ップ(ロボットのサッカ−リ−グ)のお話とその中型ロボットの実演や、星
のお兄さんの面白い四季の星座のお話、サイエンスマジックでは水素のエネ
ルギ−の実験など子供たちが興味を持てるように組み立てられていました。
また、中学校のブ−スでは体験型の実験や物づくりのコ−ナ−があり、子供
たちがお父さん、お母さんと色々取り組んでいたり、盛況でした。このよう
な体験を身近に出来ることは非常にありがたいことだと一住民として思って
います。             
                              (E.T.) 
              
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★ JCRB e-mag へのご意見・お問い合わせ先:
  (独)医薬基盤研究所 メールマガジン発行事務局
  メール: cell@nibio.go.jp

★ 細胞分譲の依頼先
  (財)HS研究資源バンクまでどうぞ。親切丁寧に対応いたします。
  メール: hsrrb@osa.jhsf.or.jp
  
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★ 発信元
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独立行政法人医薬基盤研究所
◆ 細 胞 バ ン ク (http://cellbank.nibio.go.jp/)
◆ 遺伝子バンク (http://genebank.nibio.go.jp/)
◆ 実験動物バンク (http://animal.nibio.go.jp/)
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