◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第29号 2009/1/13】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )

◆◆  ♪∽新年明けましておめでとうございます。  ♪∽◆◆

今年も皆様に高度品質管理した細胞を提供させていただくとともに、
充実した情報を提供出来るようスタッフ一同努力致す所存ですので
ご指導・ご支援の程宜しくお願い申し上げます。
              
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ インデックス ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
I  JCRB細胞バンク

 1.事業紹介 
   =無血清培養法のヒント=
   =JCRB細胞バンクからのお知らせ=
   =研究倫理に関する活動=
 
 2.新規細胞のご案内 

II  実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウス分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【FAT-UCP2/Xマウス】

III あとがき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆I◆  ★★ 細胞バンク事業 ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

** 無血清培養法のヒント **

「無血清にすると、細胞が接着しない」と言う話をよく聞きます。しかし、
「接着因子は使ってらっしゃいますか?」と聞くと、接着因子を使ってな
い場合が多いようです。細胞自身も自ら細胞外マトリックスなどを分泌し
ていますが、多くの場合、それだけでは十分ではなく、無血清培養の場合、
通常の表面処理された表面ではほとんどの接着細胞が接着できません。血
清は、ラミニン、ファブロネクチン、ビトロネクチンなどの様々な接着因
子を含んでいます。従って、無血清培養を行う場合には、血清の代わりに
あらかじめ何らかの接着因子で培養表面を処理する必要があります。一般
に、無血清培養を行わねばならない実験条件は、増殖因子の影響を解析す
る、あるいは血清により細胞が分化してしまうなどの場合でしょうか。
しかし、その細胞にどの接着因子が向いているかわからないという場合も
あるでしょう。その場合は、血清でコーティングを行うという方法があり
ます。血清をPBSにて50倍程度に希釈し、新しいディッシュに入れて37℃で
1時間インキュベーションした後、PBSで洗って使用します。完全な無血清
培養ではありませんが、おおかたの実験は可能だろうと思われます。もち
ろん、各種の接着因子の濃度を変えてアタッチメントアッセイを行い、そ
の細胞に向いた接着因子の至適濃度を測定すれば、より正確な解析結果が
得られるのは、言うまでもありません。

皆様の培養細胞が、今年も元気に増えますように。

                      (古江−楠田美保)

** JCRB細胞バンクからのお知らせ **

 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
          http://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 るデータを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなりますの
で、是非ご検討ください。
                                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(29)

ヘルシンキ宣言2008年ソウル改正について

2008年10月ソウルでの世界医師会の総会において4分の3以上の票決を
持って採択された(http://www.med.or.jp/wma/helsinki08_j.html、英文
とJMA和訳)。今回の修正は、2000年のエジンバラ総会での修正以降くす
ぶっていた問題、特に医学・生物学研究に対する見解について一応の決着
の努力が見受けられる。この問題で2000年度版の29条のプラセボについて
の考え方に決着がついたと日本医師会の記録は述べている。それは、以下
のようなことを意味している。条文を挙げ丁寧に解説する。というのは、
この問題が現在の「ヒトを科学対象とする医学・生物学」の姿勢を受け入
れるために重要だからであり、今後何回かを通じてみていくように他の条
文にも影響を及ぼしているからである。ヒトの生物学としての(人の)医
療が自覚的に対峙せざるを得ない科学の冷徹な状況を意味する。

2000年度エジンバラ版の29条は以下のように述べている。
「新しい方法の利益、危険、負担および有効性は、現在最善とされている予
防、診断および治療方法と比較考量されなければならない。ただし、証明さ
れた予防、診断および治療方法が存在しない場合の研究において、プラセボ
または治療しないことの選択を排除するものではない。」これは、消極的
とはいえ、プラセボ群や無治療群を置くことを認めざるを得ないことを認
めている。

それに対して、主に米国の意見といわれるが、脚注が付け加えられた。
「WMAヘルシンキ宣言第29項目明確化のための注釈(29条について)
『WMAはここに、プラセボ対照試験を行う際には最大限の注意が必要であ
り、また一般にこの方法は既存の証明された治療法がないときに限って利
用するべきであるという立場を改めて表明する。しかしながら、プラセボ
対照試験は、たとえ証明された治療法が存在するときであっても、以下の
条件のもとでは倫理的に行ってよいとされる。 ・やむを得ず、また科学
的に正しいという方法論的理由により、それを行うことが予防、診断また
は治療方法の効率性もしくは安全性を決定するために必要である場合。
(下線、傍点ともに著者) ・予防、診断、または治療方法を軽い症状に
対して調査しているときで、プラセボを受ける患者に深刻または非可逆的
な損害という追加的リスクが決して生じないであろうと考えられる場合。
ヘルシンキ宣言の他のすべての項目、特に適切な倫理、科学審査の必要性
は順守されなければならない。 』」

この注釈の中で重要な点は、「たとえ証明された治療法が存在するときで
あっても、以下の条件のもとでは倫理的に行ってよいとされる。」を認め、
それが「たとえ証明された治療法が存在するときであっても、以下の条件
のもとでは倫理的に行ってよいとされる。」と公式に認めた点である。こ
れは、2000年度版の「現在最善とされている予防、診断および治療方法と
比較考量されなければならない」の姿勢では、ヒトの生物学として医学・
生物学研究を支ええず、それは引いて、診療の質を脅かすものであるとい
う考えに基づく。そのために、世界医師会がこの注釈を加えた意味は大き
いのであり、2008年修正の伏線となる。
   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○抗ヒト成長ホルモン抗体産生(サブクラスIgG1(κ))
 マウスハイブリドーマ細胞株  
 JCRB1222.03:HGH1.17.2
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1222.03.htm (近日公開予定)

○ERα遺伝子とそのレポーター遺伝子を導入したHeLa細胞株、
「化学物質のホルモン様作用を調べるOECDガイドライン」で推奨される細胞株
JCRB1318:HeLa9903
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1318.htm

○ヒト網膜芽細胞種由来細胞株
JCRB1305:NCC-RbC-39
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1305.htm

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/
                            (小原 有弘)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●日本のマウス・ラット資源のデータベースであるJMSR(Japan Mouse/Rat
Strain Resources Database)に新規マウス系統を追加しました。
現在、67系統が利用可能です。詳しくはJMSRのページ
(http://www.shigen.nig.ac.jp/mouse/jmsr/top.jsp)をご覧下さい。
 

1.疾患モデルマウスバンクの事業
  ――――――――――――――

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼次のマウスの分譲を開始しました。どうぞご利用下さい。

 FAT-UCP2/X (生活習慣病/肥満関連)
 AMPK-DN (6ライン、生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 AMPK-CA (4ライン、生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 NDRG1 flox(コンディショナルKO/末梢神経変性など)
 SIK2-KO (生活習慣病/糖・脂質代謝)
 SOCS-5 Tg (2ライン、免疫異常)
 KLF15 (2ライン、生活習慣病/糖尿病関連)
 PGC-1α (3ライン、生活習慣病/筋萎縮)

3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――
【FAT-UCP2/Xマウス】

 別名: aP2-UCP2マウス
資源番号:nbio026
由来:(独)国立健康・栄養研究所 基礎栄養プログラム
樹立者・寄託者:笠岡(坪山)宣代先生
分譲条件:提供承諾書が必要

脂肪組織特異的にヒトUCP2を過剰発現させたトランスジェニックマウスで、
脂肪蓄積を抑制する可能性が期待でき、ヒトの肥満・糖尿病発症の予防や治
療の研究に利用可能と考えられます。このマウスは、5.4kbの脂肪組織特異的
発現のためマウスのaP2プロモーター & エンハンサーを使用しており、
ヒトUCP2を正常の約15倍発現しています。なお、UCP2は、ミトコンドリア内
膜で酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギー消費/熱産生に関与する脱
共役タンパク質(uncoupling protein)の一つで、骨格筋、肺、白色脂肪細
胞など広範な組織に発現しています。(脱共役とは、電子伝達で得られたエ
ネルギーをATP合成反応に共役する、すなわち利用するのを阻害させ、このエ
ネルギーを熱として放出させることを言います。)

分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。

医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
III あとがき
 年末から大掃除が研究室で続いております。事業が拡大するにつれ、人員も
少しずつ増え、研究室が手狭になりつつあるので、レイアウトなどを再考して、
仕事がしやすいように改善しております。整理していると古い資料が出てくる
ので、当時の思い出が沢山出てくるようです。デ−タ管理のメモリ自体バンク
が出来た当時から随分変わり若いスタッフが知らないようものもあります。
大切に置いておくもの、思い切って廃棄するもの等色々ですが、歴史を感じ
ながら作業を進めています。
                            (E.T.)