細菌による培養細胞汚染の事例

JCRB細胞バンク:水沢 博
HSRRB:榑松美治


細菌によるコンタミの事例をお目にかけます

あまり堂々とは言いたく無いお話ですが,細胞バンクでもたまにはコンタミを起こすことがあります。コンタミした細菌の種類などは同定しておりませんし,汚染したものはすぐに廃棄しますが,近ごろ「コンタミかどうかわからないのですが・・」という趣旨の質問がかなり参りますので,ちょうどコンタミの事例が出ましたので,お目にかけることにします。

普通はコンタミが発生した時はともかくすぐに廃棄するのですが,今回はコンタミした培地の少量をMV1-LU細胞の培養に添加してみました。勿論コンタミが他に拡大しないように細心の注意を払ってやったことですが,こうしたことは特に目的がある場合でなければあまり真似をしないほうが良いでしょう。

下に写真を示しましたが,左の写真がわざと感染させたばかりの細胞の様子を顕微鏡で観察したものです。特に細胞の周囲を眺めてください。小さな粒状のものが散在するのが観察されます(20倍の写真でまるで囲ってある部分が特徴的です)。これらが汚染微生物です。細菌の場合運動性のあるものもあれば運動性の無いものもあります。運動性があれば顕微鏡観察ですぐにわかるのですが,運動性が無い場合は,ごみと区別が付きにくいわけです。運動性が無いものの場合は,ブラウン運動で振動するように動いている様子が観察されますが,このような場合は培地の沈殿物のようなごみとは区別がつかないのが普通です。

汚染が無いきれいな細胞と比較して見てください。

これを37度で3時間ほど放置したものが右の写真です。ここでは,一度増えてしまった細菌をわざと植えたわけですから増殖速度は大変速く3時間で右のようになってしまいましたが,普通のコンタミでも発生すれば6−10時間程度で右のようなところまで行ってしまうでしょう。こうなると顕微鏡を使うまも無く培地が白濁してきますので,汚染とわかりますので,あれこれ悩まないで廃棄するべきです。

細胞バンクでは,細菌汚染が発生した場合にすみやかに確認できるよう,細胞を継代する際には必ず培養液の一部を細菌に適した培地に接種して確認します(汚染検査)。その場合の培地としては,①血液寒天プレート,②ニュートリエント培地(NB,液体),③チオグリコレート培地(TGC,半流動:嫌気性菌の検出も兼ねる)の3種を使用するほか,継代に使った培地の残りもインキュベータの中に放置しておきます。勿論汚染検査をするインキュベータは細胞の培養に使用しているCO2インキュベータとは別のものを準備しています。

細胞バンクでは,培地は 100ml 単位に小分けして滅菌しています。そして,一度開封した培地は必ず使い切ることを前提に使用し,残っても別の細胞の培養には使用しないことにしております。残った培地は無菌試験に使った後に廃棄します。これにより,細菌汚染の拡散の防止と,クロスカルチャーコンタミネーションの防止を兼ねているわけです。


各写真をクリックすると拡大写真(2倍)を見ることができます。

この汚染の場合は,TGC培地とNB培地で1日で+と出ましたが血液寒天培地には7日間放置しても生えてきませんでした。顕微鏡観察では運動性はブラウン運動程度の軽微な運動性でしたが,強い臭気がありました。

どうしても汚染細菌の同定をしたい場合は,同定用のキットが市販されているのである程度突き止めることが出来ますが,細胞バンクではそこまでやっておりません。通常このような状態になった場合にはすぐにオートクレーブで滅菌をしてから廃棄します。

ところで,上の写真ですが,さらに40時間ほど培養を継続したらどのようになるでしょうか。ちょっと眺めたくない光景ですがこのようになります

汚染は浮遊系の細胞と接着系の細胞にかかわりなく発生します。細胞名は伏せさせて頂きますが,最近寄託された細胞を培養した際に発見された汚染の事例を紹介します。培養開始後2時間ぐらいまでは,細胞を顕微鏡で観察ただけでは汚染があることはわかりませんでしたが,6時間後には汚染が確認できました。この培養の一部をバクテリア汚染確認用培地に接種した場合には,TGCとNBで最近の増殖が確認されましたが,血液寒天培地では確認できませんでした。異臭等は特にありませんでしたが,勿論,この場合は汚染ありという結論です。