MC210 と BM Cyclin 1 による
マイコプラズマの除染
2002. 4. 9.
HSRRB、榑松美治, 水沢 博

準備
  • ターゲットの細胞:マイコプラズマ汚染細胞

  • 徐染用試薬:
      MC210(大日本製薬)50μg/ml溶液 冷暗所保存
      BM-Cyclin 1 (Boehringer Manheim 山之内)(注1)

  • 細胞培養器具類及び培養用培地:目的の細胞に合ったもの

手順
  1. 目的の細胞に最適な条件で培養を開始する。(注2)

  2. 細胞を継代する時に、① BM Cycline 1 を 10μg/mlとなるように添加した培地と、②MC-210を0.5μg/mlを添加した培地を、交互に使って継代培養する。継代は個々の細胞の標準的な継代培養に準じて行い、概ね合計4回の継代培養を行う(注3)

  3. BM Cyclin 1, MC210処理後、抗生物質を除去した培養液に変えて約3週間培養を継続する。

  4. 蛍光染色法又はPCRを用いてマイコプラズマ検査を行い、陰性になったことを確認する。

    この段階で細胞を凍結して保存し、一部は継続して培養を行い一定期間後に再度マイコプラズマ検査を実施する(注4)

  5. 継続して培養を実施する部分は、そのまま3ヶ月間(又は30継代)培養を継続し、時々マイコプラズマ検査を実施する。

  6. 3ヶ月めにマイコプラズマが陰性なら、既に凍結した細胞についての除染が完了したとみなす。

    注:
    1. Pleuromutilin 誘導体。Tiamuline と同系統の抗生物質。

    2. 解凍培養の場合は、解凍培養後2日程度置いてからMC210添加培養用培地と交換する。

      浮遊系の場合は遠心分離により培地を取り除き、新鮮なMC210添加培養用培地と交換する。

    3. MC210 -> BM1 -> MC210 -> BM1 で4回の継代培養を意味する。それぞれを2回づつ処理することになる。

    4. 細胞バンクでは、汚染を確実に除去する目的で、抗生物質処理後、可能な限り丁寧に除去されたことを確認している。一般の研究室ではこの考え方を参考に、最適なプロトコルを確定していただきたい。

    抗生物質の添加は、除去作業の時だけ使用することを厳格に守る。常時添加しておくと染色体異常や、耐性菌出現を促すと考えられるので危険。MC210の単独処理またはMC210とBM Cyclin 1 の2重処理法で除去できなかった場合は残念だが細胞は廃棄処分すべきである。

    JCRB細胞バンクでは、2001年に始めてMC210で除去できないマイコプラズマに遭遇した。そこで、竹内らの文献を参考に、BM Cyclin 1を併用した上記の処理方法を試みた結果除去に成功した。

参考文献
    川瀬雅子、水沢博、佐々木澄志:組織培養 12, 293-303, 1986.
    竹内昌男:マイコプラズマの検出法・組織培養の技法 2版、 朝倉書店、p62, 1988.
    森俊雄、二階堂修:組織培養, 15, 382-387, 1989.
    美甘晋介、城子康子、広瀬偉美子他:Human Cell 3:37-44, 1990.