人間を男と女だけに分類しようという考えは、分子遺伝学や脳機能の解明などの斬新医学がますます進歩してゆく二一世紐を前にして既に時代後れで弊害が多く、人権侵害にすらなる恐れがあることを認識すべきであろう。
甲野義太郎の戸籍中、事件本人甲野豊子の身分事項欄「長男」とあるを「長女」と、事件本人甲野花子の身分事項「長女」とあるを「二女」と各訂正する、ことを許可する。〔性転換による性別・名前の変更の許可〕
二 戸籍筆頭者の戸籍中、和美の続柄欄に「二男」とあるを「長女」と訂正することを許可する。〔出生時に男性とされた半陰陽者の性別変更の許可の例〕
戸籍筆頭者の戸籍中、博美の続柄欄に「長女」とあるを「長男」と訂正することを許可する。〔出生時に女性とされた半陰陽者の性別変更の許可の例〕
裁判における牲別決定のあり方
前記の昭和五四年の名古屋高等裁判所決定に用いられた性染色体による男女の性別決定基準は、性別決定基準としては、もはや不適当になっている。
最近の分子生物学、分子内分泌学、分子遺伝学等による機能解明などの急速な進歩によりヒトを男女に二分して性別を正確に決定する基準を設定しようとすること自体が不可能に近い現状であり、このような斬新的研究成果を無視して、法律では定めていない性の決定条件を、裁判官が、鑑定人の証言を参考にして決定する時代では既にないであろう。証言する鑑定人を選定する際に、鑑定人候補者の性別判別に関する国際的最新情報への精通度と最新知識の専門的認識程度をどのように裁判官が判断して鑑定人を選ぶことができるのであろうか。裁判における性別鑑定人は、医師であればよいのではなく、性決定に必要な最先端の研究成果を熟知し、分子遺伝学にも精通している第一線の研究者からなる複数の専門家で構成されるべきであろう。
「精巣性女性化症」という状態は以前からよく知られていたが、最近、二つの異なる原因があることが解明された。
〔第一の原因〕
「精巣性女性化症」では、精巣から分泌されているアンドロゲンには体内で芳香化されて女性ホルモン(エストロゲン)となって働く機能がある上、アンドロゲン・レセプター(受容体)の欠損または障害があるために、アンドロゲンが体内にあるにもかかわらず男性化作用を発揮できないために、脳の発生過程で男性化せず、心理的行動的には脳は女性化し、精巣がありながら肉体的にも女性化している。
〔第二の原因〕
外陰部の男性化は(テストステロン(男性ホルモン)では起こらず(テストステロンが5α還元酵素(5α- reductase)によってジヒドロ・テストステロン(dihydro-testosterone)に変化してからしか起こらない。そのために、5α還元酵素欠損症がある男性の場合には(ジヒドロ・テストステロンができないので外生殖器の男性化が起こらず、内生殖器としてはテストステロンを分泌している精巣もあるのに、外生殖器だけは女性化してしまい、精巣性女性化症という間性(インターセックス)を起こす。
Aさんのようなインターセックスの人たちは、男として登録されるべきなのか、女として登録されるべきなのか、いずれとも決められないのになぜ性別という差別を強制するのか。男でも女でもない人を無視するという不合理さを不思議とも思わないのは、なぜであろうか。昔からの習慣に慣れ切りてしまって気にもならないのか。
性別はいつ脳にインプリントされるか
脳の性分化と脳の性差の問題は、性同一性障害を医学的に論じる場合に大変重要である。なぜならば、性同一性障害は「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認識していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している状態」であると、医学的に定義されているからである。
脳の特定の部分に脳の性差を示唆する現象のあることについて多くの研究が報告されている。脳は、性ホルモンの標的器官の一つであり、性ホルモンは脳に多様な作用、すなわちニューロンの成長と生存、神経回路網の構築、神経内分泌調節、性行動や、ある種の情動行動に決定的な役割を果たしているばかりでなく、最近では認知機能や記憶の保持にも重要な役割を果たしていることが明らかになっている。例えば、以下のようなことである。
ヒトの周生期に胎児精巣から分泌されるアンドロゲンが脳に働くことによって、下垂体前葉からの性線刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌や性行動パターンの性分化の決め手になることが明らかにされている。しかし、アンドロゲンはそのままの型でニューロンに作用するのではなく、ニューロン内の芳香化酵素の働きによってエストロゲンに転化されてから作用する場合が多いのである。脳においてアンドロゲンは、さらに、芳香化酵素発現を調節する働きも有することが分かってきた。
エストロゲンは、細胞レベルばかりでなく、生体レベルでも、発生過程で軸索や樹状突起の伸展やシナプス形成を促進することが知られている。エストロゲンが老齢女牲の認知能力や記憶保持の能力の低下を防止するという報告や、アルツハイマー病の発症を低下させるという報告などが散見される。
ラットで発見された内側視索前野で大型の濃染するニュートロン群の体積は、雄では雌の約五倍もあるとされ、「視索前野の性的二型核(sexually dimorphic nucleus of the preoptic area; SDN-POA)」と呼ばれた。このニューロン群に相当すると考えられるニューロン群がヒトの脳でも発見され、四つの亜核からなる前視床下部間質核(interstitial nucleus of the anterior hypothalamus; INAH)が報告された。しかし、SwaabらとGorskiらの発見者によって多少見解が異なっている。Swaabらは、性的二型核は、前視床下部間質核一型であり、男性のは、女性のものより三・五倍大きく、ニューロン数も二・二倍多いと報告している。同性愛男性の大きさは異性愛男性のものと有意差はみられないが、男性から女性へ性転換した性同一性障害者では、異性愛男性と同性愛男性の前視床下部間質核一型より有意に小さく「女性の前視床下部間質核一型に等しいと報告している。
Gorskiらは、前視床下部間質核の二型と三型の二つの亜核に男女差があり、共に男性の方が女性よりも大きいと報告している。
LeVayは、エイズで死亡した同性愛男性の脳で、前視床下部間質核の三型が異性愛男性のものより有意に小さく、女性のものにほぼ等しいという結果を報告している。
Xhouらは、分界条床核の大きさにも男女差があり、女性の方が小さく、また男性から女性への性転換者でも女性と同じく小さいが、同性愛男性と異性愛男性とでは差がなかったと報告している。
出生時に正しい性別が判定できるか
出生時の外性器の肉眼的観察の結果判断した性別を出生証明書に記載することを、医師や助産婦らに対して法的に義務づけてその性別をひと度戸籍に記録してしまえば、多くの場合に永久不変のものとして、一生、いや死んだ後まで、その人の性別となってしまう。出産直後の短時間にただ目で見るだけで判定する性別が、どれだけ医学的に発生学的に正しいといえるのであろうかと、真剣に考えてみたことがあるのであろうか。
従来、性の判定には、単に、
一 染色体の性の判定:性染色体がX染色体か、Y染色体であるか?
二 生殖腺の性の判定:生殖腺が精巣であるか卵巣であるか?
三 外生殖器の視診による印象:特に陰茎あるいは陰核と患われるものの長さによる判定
四 骨盤内、鼠径部あるいは骨盤底の画像診断や手術などによる内生殖器の観察
五 脳の分化の性差
などが使われてきている。
出産直後の性別判定においては、三のみであるが、不確かなものである。性差の発生異常の原因の研究は、最近の遺伝子の解明を含めて、ここ一○年以内に限っても長足の進歩をしており、詳しく解明されてきているのである。
したがって、結論を先に言えば、出産直後に、すべての赤ちゃんの性別を判定することは不可能であり、無謀なことである。男か女かのいずれかの性別のみを記録することを義務づけている現行の法律は、現状に即さなくなっているので、即刻改正するべきであろう。
しかし、法律の制定や改正に携わっている政治家や法律家などの多くが、性別判定を困難にしている医学的・生物学的・分子遺伝学的な根拠について、現状をご存じないために、関心がないに等しいのかもしれない。が、放一置しておいてよい問題ではない。
〔性染色体とその異常について〕
性染色体がX染色体かY染色体であるかで性別が判定できると単純に考える時代は既に去っている。以前は、Y染色体があれば男性と簡単に言われていた嫌いがある。
受精卵の染色体の数や組合せの違いなどにより、性器の発生に種々な奇形を含む異常が起こってくる。
受精卵の染色体にY染色体だけでX染色体がなく、45YOならば、ヒトは発生しない。つまり、男児となるには、父親から受け継いだY染色体は絶対に必要ではあるが、それだけではヒトにはなれず、母親から受け継いだX染色体もなければヒトとして発生できないのである。それに反して、X染色体が一つだけでもヒトとして発生できる。つまり、XO性染色体からなる45Xモノソミー(monosomy X)の女性として生まれる。ただし、この場合には、正常女児ではなく、ターナー症候群(Turner Syndrome)をもって生まれる。
男児は、X染色体を一個だけ母親から受ける。それに反して女児は、父親と母親の両方から一個ずつのX染色体を受けている。それゆえ、女児の場合には、一個のX染色体に異常があっても、もう一つのX染色体が正常ならば全く問題は起こらない。それに反して男児の場台には、もし一個だけしかないX染色体に異常があれば、必ず悪い影響が起こるので、女児に比べて不利な条件下にあり、男女間には発生時に差があるのである。
XXXと3個のX染色体かちなる47XXX女性は、一〇〇〇人の女児新生児に一人くらいの頻度で生まれる。47XXYの男性は(一〇〇〇人の男児新生児に一人くらいの頻度で、クラインフェルター症候群をもって生まれるが、小児期から女性型体型で女性型乳房がみられ、往々にして無精子症である。しかし重篤な知能障害を伴うことは少ない。47XYY男性も一〇〇〇人の男児新生児に一人くらいの頻度で生まれるが、この場合には、外性器の形態などに異常はなく正常染色体構成の男性と外見上区別することが困難であり、細胞遺伝学的検査をしないと診断がつけられない。
〔ヒトのY染色体の重要性とその異常について〕
一九七五年に大野乾博士が「受精時に接合子(受精卵の発生学的導門用語)の性を決定する際に、染色体に存在するHY抗原が雄性決定因子としての役割をもつ」という仮説を提唱してから、この方面の研究が急速に発達した。
ヒトのY染色体には、精巣決定因子(testis-determining factor: TDF)があることが知られていたが、それは、Y染色体の性決定遺伝子(sex-determing region Y: SRY)であることがー九九〇年に確認された。SRY遺伝子は精巣形成過程に関与し、SRY関連遺伝子であるSOX9は、精巣形成と骨の形成の両者に関与している。
XY染色体がありながら発生中に性転換が起こった二二名の女性の大部分の人において単純な生殖腺発生異常のある「XY女性」は、彼女たちの性転換の表現型をSRY遺伝子の中での突然変異、まだ同定されていない部分の突然変異、あるいは性決定過程の初期に作用する他の染色体遺伝子の中での突然変異が、原因していると報告されている。
46XY男性の外生殖器の正常発生を障害するまれな原因であるライディッヒ細胞形成不全において、黄体化ホルモン受容体遺伝子におけるミスセンス突然変異(missense mutation)や他の突然変異が原因として認められている。
九番染色体短腕に新たな欠失のある女児新生児に性の転換を認めた一例では、SRY遺伝子は見かけ上正常であった。
〔性分北の機序とその異常〕
性分化(sex differentitation)の過程には、三つの主要な鍵がある。
人間の生殖器の正常発生における重要点を含めて、解説しておく。
受精卵は、接合子(zygote)と呼ばれて分化し始める。接合子は、細胞分裂(cell division)とは全く異なる機序の卵割(cleavage)を繰り返し、桑実胚の段階を経て、第一週目ごろに胚盤胞(blastocyst)となって子宮内膜に着床し始め、発生第二週中に着床が完了して、胚子(embryo)となって成長する。
46XY胚子では、性別がまだ分からない未分化生殖腺(indifferent gonads)が分化し始める。発生第八週ごろから胚子の中で発生しつつある精巣の中で、ライディッヒ細胞が、ヒト絨毛性ゴナドトロピンの影響を受けて分化し始めて形成され、テストステロンを分泌し始める。そのテストステロンの作用で未分化胚子の男性化が始まり、ボルフ管(Wolffianduct)が分化して、内生殖器が発生し始め、精巣上体(epididymis)、精管(vas deferens)や精嚢(seminal vesicle)が発生する。
人間の胚子を男性化するのには、前述したように、テストステロンとジヒドロ・テストステロンの二種類の主要な男性ホルモンが関与している。後者は、前述の通り、5αリダクテイスという酵素によって、テストステロンから転換して生じるホルモンである。
外陰部と尿生殖洞(urogenital sinus)では、テストステロンではなく、ジヒドロ・テストステロンの作用によって男性型二次性徴化が始まり、前立腺へ陰茎及び陰嚢が形成される。なお、ジヒドロ・テストステロンには、思春期の男性に二次性徴を起こす作用もある。
〔男性ホルモン受容体の機能とその異常について〕
男性ホルモン受容体(androgen receptor)を介してのみ、テストステロンもジヒドロ・テストステロンも機能することができる。未分化生殖器に働くこれらのホルモンは、男性ホルモン受容体が機能している場合には未分化生殖器を男性化するが、男性ホルモツ受容体が不完全あるいは無機能の場合には男性化が不十分か欠如する。
それゆえ、男性ホルモン受容体の欠損あるいは機館障害のある46XYの人の場合には、精巣もあり血中テストステロン値も正常(時には正常値以土)であるのに、生殖器の男性化程度は低く、アンドロゲンヘの感受性が欠如あるいは異常低下を伴うアンドロゲン感受性異常症候群(androgen insensitivity syndrome; AIS)が起こる。男性の場合には胚子の発生中に消失するべきミューラル管(Muellerian duct)が瘢痕的あるいは不完全に残存していたり、外陰部の女性化も起こることがある。
男性ホルモン受容体遺伝子は、X性染色体の長腕にあり、ほぼ九一九個のアミノ酸からなる蛋白の遺伝暗号を規定している。AIS患者の男性ホルモン受容体には、少なくとも一五〇の異なる突然変異が既に同定されている。
AISには、部分型(PAIS:partial AIS)と完全型(CAIS:complete AIS)の二型がある。PAISでは、出生時に外陰部が多種多様な不完全男性型の表現型を示すことが多いが、その範囲は、極端な場合には陰核肥大とか陰唇癒合を伴う女性型表現型からへ尿道下裂や矮小陰茎のような程度の低い男性型二次性徴を伴う低度の男性型表現型をも含む広範な異常が含まれている。CAISの場合には、出生時には正常女性型の表現型を示すが、精巣が迷入している陰唇内ヘルニアあるいは鼠径ヘルニアが起こっていることもある。通常、思春期になっても月経もなく陰毛やワキ毛も生えないことが多いが、多少の二次性徴が起こることもある。
〔尿道下裂の場合〕
尿道下裂(hypospadias)は、多くの生殖器の先天異常患者に最もよく見られる異常症状であり、悪性疾患も含まれている。Albersら(1997)は三三例の重症尿道下裂患児の検査の結果、原因の診断がついた一一例の患者について報告している。三例のウイルムス腫瘍を伴うドラッシュ症候群患者(Drash Syndrome with Wilms tumor)、二例のAIS、二例の真正半陰陽、および各一例ずつの染色体異常、ミューラル管抑制物質不足、5αリダクテイスの部分的欠損やXX—男性化症候群が認められた。
このように一見重症尿道下裂と診断され治療されている患者でも、上記のような多種な疾患を合併しているために、性別の特定を一層困難にしていることもあることを、認識する必要があることを示唆している。
〔先天性腎上体過形成患者の性別判定の難しさ〕
腎上体(suprarenal gland)は、かつては副腎(adrenal gland)と言われていた内分泌器官である。先天性腎上体過形成(congenital adrenal hyperplasia)は、種々な原因によって起こり、過剰分泌される男性ホルモンなどの影響で、生殖器に男性化が起こることが多く、性別の判定に困難をもたらすことが多い。
腎上体におけるグルココルチコイド(glucocorticoid)の過剰分泌を抑制するための腎上体の数種の酵素の中の酵素欠損によって先天性腎上体過形成が起こる。XX性染色体の患者の場合、肥大した腎上体から、男性と女性の正常腎上体それぞれが分泌する血中男性ホルモン分泌量の中間くらいの量を分泌するので、陰核は陰茎と陰核との中間くらいの大きさになり、部分的に陰唇も癒合して一見陰嚢と見間違えるようになるので、性別判定が困難になる。
女の子の場合、子供のときにはおてんば娘で、男の子が好む遊びを好むことが多い。成人になってからは、ほとんど異性を愛するheterosexualになるが、正常な女性よりもレズビアン(lesbian)になり易いかもしれない。
医学的原因も多種多様であり、その歴史的背景も複雑で、医学的対応も難しいだけに、インターセックスなどをめぐる倫理的対応も時代の変化に伴って変化してきている。今やインフォームド・コンセントを基盤としたバイオエシックスが重要な役割を果たし、患者本人自身の自己決定権の尊重が最も大切な時代になってきている。
しかし、患者本人自身が自己決定できるのは成人してからであり、出生後二週間以内では、代理意思決定者による判断によらなければならない。その場合に、次のような道が開かれていることを知っている国民はまれなのではなかろうか。
昭和二三年年一二月一日民甲 一九九八号 民事局長回答により「出生当時男女の性別を判定できないため出生証明書が作成不能であり、一同書面を添付できない出生届であっても、監督法務局長の指示により、追完を前提として出生届が受理される」道が開かれている。しかし、この規則は、一般国民には広く伝達されてきているものではないので、インターセックスの新生児の性別に自信が仁いのに、男または女として出生証明書を作成して出生届を出したために、子供が長じてから苦労している場合が多い。
出生届の用紙に、「『男女識別不能』あるいは『性別判定が可能になるまで性別記載保留』の項目に該当する場合にはそのいずれか該当する項に印をつけ、性別を記入しない出生証明書を添付して出生届を提出することが可能である」と印刷がしてあれば、たとえ監督法務局長の特例を知らない一般国民も、いずれかに印をつけて、届けを済ますことが可能である。このような人権擁護のための配慮が全くなされていない現状に、人道的立場並び医療の倫理の見地から憂えるものである。
さらに、生殖器をはじめ全身の状態が、現在可能な形態学的・医学的検査で診断して疑いなく男女の区別が可能な人の中に、本人自身の社会生活における感覚的・感情的判断によるジェンダー意識では、医学的判定による性別とは逆の性に属すると本能的に信じて苦しんでいる性同一性障害の人々もいることは前述の通りである。諸外国ではもちろん、わが国でも、性同一性障害は既に医学的に認められているのではあるが、自分の信じている性に馴染む身体になるために「性別再指定手術」を受けた後で、戸籍に登録されている性別や名前を変更するのは自由とは言えず、社会的に(法的に、国民の権利としで容認されているとは言えない現状であると言わざるを得まい。
医学的にも性別の判定がいかに難しいことであるかを知った上で、現行の法律などを国民に強制している識者たちに、性別の判定をめぐる諸問題の理解に真剣に取り組んでいただきたいと切に願っている。 法律の改正を含めた抜本的な改正をするまでの過渡期的処置として、出生届の用紙に、前項で述べたような暫定的処置について提言し、その実施を切望するものである。