民間団体からの資金援助
今年度で打ち切りへ
国の資金で運営望む声も
がん研究に欠かせない細胞、遺伝子の"銀行",厚生省の「リサーチ・リソースバンク」(研究資材銀行)が運営の危機に立たされている。十年前、同省などの「対がん十か年総合戦略」支援を目的に設立され、がん基礎研究に役立っているが、民間団体からの資金援助が今年度一杯で打ち切られる。がん研究者の間からは、国の資金で運営すべきだとの声が上がっている。 細胞や遺伝子のバンクというのは、国内外の研究者の協力を得て収集した細胞、遺伝子を保存、供給する組織。研究者にとっては研究材料を準備する手間が省かれ、研究効率が飛躍的に高まる。
一方、細胞バンクのがん細胞は、がん細胞の増殖メカニズム、抗がん剤開発などに役立っており、老化した細胞の方は、老化の仕組みの基礎研究に使われている。リサーチ・リソースバンクは、施設、備品は厚生省負担だが、人件費を含めた運営費は、がん研究振興財団からの援助(十年間で約二十四億円)。ところが、対がん十か年総合戦略(第一次)が終了した三月、財団側が「ひと区切りついた」と、援助打ち切りを伝えてきた。その後、一年だけは継続となったが、次年度以降の保証はない。 遺伝子バンクを統括する橋本雄之・国立予研遺伝子資源室長は、「バンク事業がようやく軌道に乗ってきたところで、研究者からの存続の要望は強い」と強調。手数料などを取って独立採算にすることも検討したいという。 研究者の独創性もさることながら、実験材料、資材の供給体制が研究の質、量を左右する面もある。「国はバンクの必要性に対する認識が低いのではないか。欧米への依存体質から卒業するためにも、バンクをどう発展させていくか、国の役割は大きい」と、東京医科歯科大の井川洋二教授(がん分子生物学)は指摘している。
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