肝臓由来細胞の一般的培養手法について.

岡山大学医学部分子細胞医学研究施設
細胞生物部門 阿部絵理子


◆培養上の一般的注意

  • 肝細胞の継代については,トリプシンを除去するための作業が細胞に大きな障害を与えるため,特別な理由が無い限り避けるべきである.JCRB04xxシリーズの細胞がうまく生育しないという疑問に対してこの点を指摘すると驚くほど細胞の生存率が上がったという感想が聞かれる.

  • 肝細胞の培養は1ー10日に1回ごとに,細胞密度を4分の1に希釈して継代培養を行い,その間に一度培地交換をするのが適切である.

  • JCRB0401:HuH-6の場合は,細胞がはがれにくいので,トリプシンーEDTA処理を3回おこない,0.5mlほどを残したまま10ー20分インキュベートする.

    細胞データベースに記載されていた培地の処方については,最近のデータを元に大幅に修正を加えた.

◆肝細胞の一般的培養法

低面積25平方cmのフラスコを利用する場合

  1. 培養液を除去する.

  2. 1枚の10cmシャーレあたり2mlのトリプシン−EDTA溶液を加え,全体に良く回した後直ちに0.5ml程度を残して捨て去る.

  3. その後5分ほど37度Cで保温する.

  4. トリプシン−EDTA処理後,新鮮な培地1.5mlを加えてピペット操作により十分細胞を浮遊させる.

  5. 4分の1希釈で継代する場合は,細胞浮遊液を0.5ml残して残りを捨てる.

  6. 4.5mlの新鮮な培養液をこれに加え,ボトルのキャップをゆるめて37度CのCO2インキュベーターに一日静置した後,翌日キャップを閉めて37度で培養を継続する.