7. 科学の基礎としての検証可能性

医療は、一回性をもつ。どのような症例であれ、二度と同じ経過をたどることは無い。その一回性という医療の不安定・予測不能な性格を少しでも克服し、次の患者の治療に活かすことのできる、確実なものとするために、症例を集めて検討し、医学という体系にしていく作業がなされてきた。医学は科学であるが、それと同時に医療のもつ一回性という「非普遍的」性格も引き継いでいる部分がある。

一方で生物学は観察をもとにした実験を重視 する。そして、実験動物については、徹底的に均一性、再現性、普遍性が追求されている。そして、実験には再現性が要求される。それは、科学の基本である以下の2点^(注)を支えるためである。

① なんぴとも最終発言権を持たない。
② なんぴとも検証を受ける。

この基本から最も遠いのは「私が言っているのだから正しい」という姿勢である。最終発言権をもって、検証を拒否しているからである。

実験を再現し、検証するためには、同等の材料を入手して、同じ方法を採る必要がある。特に、同じ材料を用いることが必須である場合が多い。そこで、国際的科学雑誌では、投稿規程のなかで、発表された研究を検証するため、あるいはその結果をさらに発展させるために、そこで用いられた研究資源（材料）を公開・共有することが求められている。

そして、この原則は、ヒト資料といえ例外ではない。

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出典：増井徹、人のことはヒトでという時代の中で−人体由来資料に依存した医学生物学研究の基盤整備について−、臨床評価、30(1), 71-82 (2002).

(注：Rauch,J. Kindly Inquisitors, The Univ. Chicago Press, Chicago, 1993.)

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