遺伝子のパターンは個人個人で異なっているということが現在では明らかになっています(多様性)から、その違いが実験の結果に影響を及ぼしてくることは十分に考えられることなので、そうした点にまで注意を払って実験をすることが必要になります。
しかし、個人という人間を直接対象としなくても済む実験であれば、そうした点を考えなくても済むような実験材料を使ったほうが実験のデザインは容易になります。勿論、直接人間を使った実験というのは原則許されない問題であるということも十分に考えておかなければならない問題でもあります。
こうした点を考えると『培養細胞』というのは大変都合の良い実験材料であるということになります。一度樹立されてしまえば、後は比較的簡単な手続きで実験に利用できるようになるからです。培養細胞は、長期保存技術や運搬の技術なども既に確立していますので、研究者どうしで培養細胞を共有することが可能で、地球のこちら側とあちら側とで、同じ実験材料を使って実験をすることが出来るのです。
そこで問題になるのが、こちらで使った培養細胞とあちらで使った培養細胞は『同じな名前で同じヒトから採取した細胞』だと記述されていても本当にそれが正しいのかどうかということなのです。この点は実験結果に再現性が無かったという場合には、必ず問題にされます。実際、当細胞バンクのホームページの本編のほうの『CellID』のデータを見て頂ければわかるのですが、細胞のクロスコンタミネーションという問題が最近クローズアップされるようになり、意外に多くの細胞に誤りがあるということがわかってきましたから、そうした点にまで注意を払わなければならないということなのです。
実験条件を一致させて実験の再現性を確認するということも意外に難しい問題を含んでいます。