国立感染症研究所及び国立遺伝学研究所との共同研究により、VERO細胞の全ゲノム配列を解読し、 ゲノム構造を統合的に明らかにしました。この研究成果が米科学誌DNA Research電子版に掲載されましたので、お知らせいたします。 なお本研究は日本学術振興会・科学研究補助金および武田科学振興財団助成金の成果です。

【原題】
Genome landscape of the African green monkey kidney-derived Vero cell line.

【邦題】
アフリカミドリザル腎由来Vero細胞のゲノム構造決定

【掲載誌】
DNA Research(2014年9月28日(日本時間:9月29日)オンライン公開)
http://dnaresearch.oxfordjournals.org/cgi/authordata?d=10.1093/dnares/dsu029&k=c3be9d16

【概要】
 VERO細胞は、アフリカミドリザルの摘出腎臓から約半世紀前に日本国内で樹立された培養細胞株 です。VERO細胞は、多様なウイルスの増殖性がよく、さまざまな細菌毒素の感受性にも優れてい ることから、世界中で微生物学の研究だけでなく、病院での病原体検査や医薬品メーカーによる ウイルスワクチン生産にも汎用されてきました。
 我々は、日本で保存されていた比較的初期のVERO細胞(登録番号:JCRB0111)を用いて その全ゲノム配列を解読し、核型解析やRNA-seq解析の結果も合わせてゲノム構造を統合的に 明らかにしました。
 その結果、VERO細胞の2.95 Gbのゲノムには、25,877の遺伝子が見出され、さらに、さまざまな興味深いゲノム構造異常も発見できました。例えば、12番染色体には9 Mbの欠失が見つかり、この欠失のためにウイルス増殖を抑制する役割を持つI型インターフェロン遺伝子のクラスターや細胞増殖を制御しているサイクリン依存性キナーゼインヒビター遺伝子CDKN2A/2Bが失われていることが明らかとなりました。また、VERO細胞のゲノムに内在するサル・D型レトロウイルスの配列多様性も明らかとなりました。これらの情報は、ゲノム編集技術によって新しいVERO細胞株を作製することや、細胞の品質管理をゲノムレベルで行う新手法の開発に役立つ基盤研究成果となると考えられます。