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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第10号 2007/ 5/25】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
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◆お詫び・再び◆
前回のメルマガが大幅に遅れたのと同じ理由で、メルマガ配信希望者の
登録がこの1ヶ月ほどうまく動作していなかったことが判明してしまいま
した。修復したので、この1ヶ月ぐらいの間に登録された方は恐れ入りま
すが再度登録してください。2重登録は排除しますので、不確かな場合
は再登録しておいてください。お詫びとともにお願い致します。(このメ
ルマガが届いている方は正しく登録されております。お近くに届いてな
いという方がいらっしゃいましたら、ぜひお伝えください)。

◆お礼◆
 5月14-15日千里ライフセンタ−での日本組織培養学会第80回大会におき
まして、多数の皆様にご参加を頂きありがとうございました。おかげさま
で大会を成功させることが出来、大会世話人一同深く感謝いたしておりま
す。生命科学が基礎研究の時代から、いよいよそれを私達人類に役立てる
事が出来るような、そういう時代に入って来たことを強く感じた大会でし
た。

◆☆★◆☆★◆☆★ 名称変更のお知らせ ★☆◆★☆◆◆☆★◆☆★☆★

 2006年11月に開始した医薬基盤研究所実験動物研究資源バンクは2007年
4月より「疾患モデルマウスバンク」となりました!
疾患・創薬研究を支える疾患モデルマウスの分譲、サポートサービス、関
連情報の発信を行いますので、是非ご利用ください。

◆♪∽高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)♪∽◆

京都大学放射線生物研究センターは、厚生労働省細胞バンク事業開始以来、
提携機関として事業に協力頂いてきましたが、当該研究所で1970年代から
収集してきたコレクションは、発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人
における高発がん遺伝病患者とその家系に由来する細胞です。
このたびこれらの細胞を広く公開して、疾患の解明ならびに治療法の確立
などの研究に役立てていただくことを目的に、医薬基盤研究所・JCRB細胞
バンクに寄託されることになりました。

細胞は、現在移管作業が終了してリストの整理が終わった段階です。品質
管理と分譲用細胞の作成はこれから開始するところで、まだ資源として配
布できる体制にはなっておりません。細胞の種類が膨大なため、満遍なく
作業を行うことはかえって非効率的ですので、まずは概要のリストを公開
し、分譲の希望が出てきた細胞から順に作業を開始したいと考えておりま
す。従って、興味のある細胞がありましたらJCRB細胞バンクまでご相談く
ださい。あまりに希望者が多い場合には必ずしも御希望に添えないことも
生じるかもしれませんが、出来るだけご希望に添えるよう努力したいと考
えております。

お問合せはFAX又はメールでお願いいたします。
医薬基盤研究所、生物資源研究部、細胞資源研究室
〒567-0085 大阪府茨木市彩都あさぎ 7-6-8
FAX:072-641-9851, e-mail:cell@nibio.go.jp 
         
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◆ インデックス ◆
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I 細胞バンク事業
1.事業紹介
2.新規細胞情報
3.細胞バンクが出来た頃
(第10回:マイコプラズマ検査を振り返って)

II 遺伝子バンク事業
事業紹介

III 実験動物バンク事業
事業紹介

IV あとがき

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◆T◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(10)★★
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細胞バンクでの情報提供と研究倫理のお話。

** 細胞バンクでの情報提供 **

細胞バンクでは細胞の提供にあわせて細胞情報の提供を行っています。
研究に使う細胞を選択するための情報は非常に多岐にわたり、そのすべての
情報を提供できるわけでは有りませんが、基本となる細胞の情報を提供する
ために様々な解析を行っています。また、これらの情報を研究者が利用でき
るようにデータベース化し、ホームページ上で公開しています。細胞の性状、
培養方法、写真、動画や文献情報などいろいろな情報を提供しておりますの
で、これらの情報を有効活用していただき細胞を使って研究を発展させてく
ださい。

 < ★PR★ =受託検査業務=>
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

** 研究倫理に関する活動 **

 ● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(10)
 
先回は、本人がいやといっている問題を、他人が或いは、血族はどのように
関われるかという問題について考えました。そこで、今回は細胞バンクでの
生物研究資源の取扱いの基本となっている連結不可能匿名化という試料の提
供者を守る仕組みが、提供者の拒否の権利を阻害するということについてお
話します。

最初にお話しましたように、公的な研究資源バンクにおいては、研究資源は
連結不可能匿名化されることによって、誰のものかわからない状態にして試
料の提供者のプライバシーを保護しています。しかし、誰のものかわからな
くなるということは、提供者本人が、バンクでの利用はやめてくれ、という
最初の提供の同意を撤回しようとしても、現実に試料を特定して廃棄はでき
ないことを意味します。ここでは、一つのことを護ろうとして、他のことが
おろそかになるということが起こるのです。それでは、実際はどうしている
かというと、試料提供の時のインフォームド・コンセントの際に、バンクで
は連結不可能匿名化されて、承諾の撤回ができなくなることを理解していた
だいて、提供していただく様にしています。

しかし、理由を問わない撤回を認めるという原則は、先に述べたように、自
由意思での提供と裏腹な関係にあり、尊重されるべきであるという見方も強
いのです。連結可能で取り扱われる危険を冒すのか、あるいは撤回の機会を
放棄するのか、なかなか難しい問題を含んでいます。現在の研究倫理指針の
枠組みでは認められていませんが、本当は、連結可能匿名化によって研究資
源が保護される枠組みは重要であると考えています。

次は、連結可能匿名化の状態で研究資源が使われる様にするための、保護施
策について考えます。


研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
  http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ:下記細胞3株が新たに分譲可能になりました。

   
○ ヒト骨髄腫胸水浸潤由来細胞株

  JCRB1187:KMS-26
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1187.htm
  

○ ヒト形質細胞性白血病由来細胞株

  JCRB1188:KMS-27
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1188.htm

  
○ ヒト胎盤由来間葉系幹細胞株

JCRB1194:PL508
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1194.htm

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

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◆3◆  ★★    細胞バンクが出来た頃(第10回)    ★★
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**マイコプラズマ検査を振り返って**

細胞バンクが出来た頃と題して当時を振り返りながらお話を進めておりま
すが、この5月14日、15日に私どもが担当して開催させていただきま
した日本組織培養学会第80回大会において、時代が変わりつつあると感
じた点が一つありましたので、それについて触れます。

前回のメルマガで『マイコプラズマ検査の開始』と当時の様子を紹介しま
したが、当時、指導的立場におられた方々はマイコプラズマ汚染について
是非バンクで取組むようにとエンカレッジしてくださいましたし、培養学
会でもそれを取り上げシンポジウムを開いてくださったりもしました。

しかし、そういうテーマのセッションになると人が減ってしまい、次のセッ
ションになると人が戻ってくるというそんな状況でした。ところが、当時
米国の培養学会(SIVB)ではまったく逆で、マイコプラズマ汚染などの細
胞の品質管理のセッションにはどっと人が押し寄せてかなり盛況になった
のを記憶しております。10年ほど前の状況でしょうか。

正直、バンクで汚染などの問題をきちんとしておかねばと思っている私に
は大変がっかりする状況でありました・・・という愚痴はともかく、必要
なことは必要なことというのが私の信条ですし、培養における汚染の問題
はバンクでやっておかなければ誰がやるという課題でありました。という
わけで、細く長くコツコツと進めていたのですが、今年の培養学会におき
ましては、私どもが主催させていただいたということも影響しているかも
しれませんが、これまでのように細胞の品質に関するセッション(テクニ
カルセミナーとして開催させていただきましたが・・)でも人が居なくな
るということがありませんでした。これは、細胞バンクの仕事に関わって
きた私にとっては大変な驚きでした。

恐らく、細胞を使った疾病の治療がいよいよ現実の課題になったというこ
とを示しているのではないかと感じた次第です。

そうした状況を察知して、当細胞バンクでは、日本国内の培養におけるマ
イコプラズマ汚染率調査しなければならないと考えるにいたり、今回の大
会をきっかけに『マイコプラズマ汚染出張鑑定団』を行おうということに
なりました。既にいくつかの大学や研究機関にお願いをして調査させてい
ただいたのですが、マイコプラズマ汚染はまだまだきちんとした対策を講
じる必要があるだろうというデータが出ておりますので、ご興味のある研
究機関、研究室は当細胞バンクにご相談ください。こちらから職員を派遣
してサンプルを収集して検査結果をお返しします。勿論、サービスという
側面もありますが、単にサービスすることが目的ではなく、国内の汚染状
況を調査することが目的ですので、宜しくお願いします。

連絡は、cell@nibio.go.jp までお願いします。

             生物資源研究部(JCRB細胞バンク)水澤 博 
 

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◆U◆  ★★ 遺伝子バンク事業 ★★
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■ マウス129系統BACクローンの分譲開始

JCRB遺伝子バンクでは、マウス129/Ola系統BACクローンのスクリーニン
グ分譲サービスを2006年12月1日より開始いたしました。この BACクロー
ンは東海大学医学部大塚先生より寄託を受けたものです。

129/Ola系統はES細胞作製に用いられるマウスの系統で、そのBACクローン
はトランスジェニックマウスやノックアウトマウス作製に有用です。納期、
価格、スクリーニング方法についての詳細はWebサイトをこ参照ください。

http://genebank.nibio.go.jp/gbank/bac_mouse.html


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◆V◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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**名称変更のお知らせ**

2006年11月に開始した医薬基盤研究所実験動物研究資源バンクは2007年4月
より「疾患モデルマウスバンク」となりました!
疾患・創薬研究を支える疾患モデルマウスの分譲、サポートサービス、関連
情報の発信を行いますので、是非ご利用ください。

**疾患モデルマウスバンクの事業**

 ○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存
 ○疾患モデルマウスの分譲
      マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔す
      べてを分譲します。97000円/1件)
 ○ 凍結胚・凍結精子の保護預かり業務
      (動物の情報は非公開でお預かりします)
        クライオチューブ4本保管で11000円/1年
        ストロー16本/1年保管で11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っております。
 ○疾患モデルマウス関連情報発信

**疾患モデルマウスの紹介**

 CD40L Tgマウス
 資源番号:nbio010
 由来:東京医科歯科大学
 樹立者・寄託者 :鍔田武志先生
 分譲条件:共同研究に限る

 CD40リガンド(CD40L)をB細胞に過剰発現させたトランスジェニックマウ
スです(バックグランド系統はC57BL/6です)。 全身性エリテマトーデス
(SLE)モデルとして利用可能です。12-14か月齢で抗DNA抗体、抗ヒストン
抗体など自己抗体を産生し、 正常コントロールマウスと比較すると血清中
のIgG量は2倍に増加します。 約半数がループス腎炎を発症し、糸球体内に
IgG, IgM, C3が蓄積します。
分譲をご希望の方は、mouse@nibio.go.jpまでご連絡ください。

 医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
 分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで
 公開しております。


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あとがき
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日本組織培養学会第80回大会スタッフ一同、運営は初めてでしたが、
貴重な経験をさせていただきました。今はホッとしております。
そして、気がつけば、メルマガの配信予定日を過ぎておりました・・・。

今回の参加型プログラムではマイコプラズマ汚染検査を実施しました。
実験に使用されている細胞は問題なかったでしょうか?
今回900検体の検査を行い196検体において陽性判定となりました。

汚染率:21.8%です!!

現在私たちは研究現場でのマイコプラズマ汚染の調査を継続して行なって
おります。マイコプラズマは、人に常在するものですので、実験中での混
入も想定されます。是非この現状を認識していただき、定期的に実験され
ている細胞の検査をお勧めします。

新緑の美しい季節になりました。スタッフの一人は学会の抽選会で折りた
たみ自転車をゲットしたのですが、防犯面が気になって乗ったのは1日だけ。
緑の中をサイクリング出来る日はいつでしょうか・・・。