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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第12号 2007/ 7/21】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
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◆♪∽高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)♪∽◆

京都大学放射線生物研究センターは、厚生労働省細胞バンク事業開始以来、
提携機関として事業に協力頂いてきましたが、当該研究所で1970年代から
収集してきたコレクションは、発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人
における高発がん遺伝病患者とその家系に由来する細胞です。
このたびこれらの細胞を広く公開して、疾患の解明ならびに治療法の確立
などの研究に役立てていただくことを目的に、医薬基盤研究所・JCRB細胞
バンクに寄託されることになりました。

現在細胞は、概要のリストを公開し、分譲の希望が出てきた細胞から順に
作業を開始しております。ご興味のある細胞がございましたらJCRB細胞バ
ンクまでご相談ください。あまりに希望者が多い場合には必ずしも御希望
に添えないことも生じるかもしれませんが、出来るだけご希望に添えるよ
う努力したいと考えております。

お問合せはFAX又はメールでお願いいたします。
医薬基盤研究所、生物資源研究部、細胞資源研究室
〒567-0085 大阪府茨木市彩都あさぎ 7-6-8
FAX:072-641-9851, e-mail:cell@nibio.go.jp 
         
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◆ インデックス ◆
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I 細胞バンク事業
1.事業紹介
2.新規細胞情報
3.細胞バンクが出来た頃
(第12回:バンク設立を振り返って)

II 実験動物バンク事業
1.事業紹介
2.疾患モデルマウスの紹介

III あとがき
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◆T◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(12)★★
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細胞バンクでの研究と研究倫理のお話。

** 細胞バンクでの研究 **

日本組織培養学会では三光純薬鰍フ協力を得て、細胞のマイコプラズマ汚染
の現状調査を行っております。この調査にはMycoAlertという簡易検査キット
を使用しており、ルミノメーターを使えば20分程度で結果が出ます。これま
でに国公立研究所、大学、企業において1000検体程度の検査を実施し、25%
程度の細胞にマイコプラズマ汚染が見られるという結果が出ております。本
調査は継続して行う予定であり、従来法との比較さらにはマイコプラズマ種
の同定を行い、現状調査としたいと考えております。

 全国調査実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照

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   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。


** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(12)
 
先回お話したように「厳しい情報管理」が具体的に何を意味するのか、
イギリスの報告書から解説をしたいと思います。
これまでも述べましたようにヒトの組織を利用する研究において、そ
の組織がどのような患者のどの時期に採取された組織であるかが、重
要な情報となります。別の言い方をすると、このような情報なしに、
冷蔵庫の隅っこで見つかったようなヒト組織は利用価値がありません。

そして、病歴などの個人情報が付いた形でのヒト組織の利用の場合には、
「厳しい情報管理」が重要となります。日本の遺伝子解析研究指針では、
「組織的、人的、物理的、技術的安全管理措置」が取り扱う情報の性質
に応じて、必要かつ適切に行われることをもとめています。

この問題については、いくらでも厳しく管理できますが、それが厳しす
ぎると、制度の形骸化を生む温床となります。英国のウエルカム財団と
医学研究審議会はこの問題を整理し、現実的な解決策を模索するために、
「健康に関する研究における収集された個人情報と個人に由来する試料
の利用について」という報告書を2005年11月に公表しました。

この報告書の全文翻訳を準備中ですが、その概要について今後2回に分け
て述べていきたいと思います。先ず著者のWilliam Lowrance博士は個人
情報の医学研究利用に関する報告書をOECD、NIH、ヌフィールド財団、米
国NHGRIの依頼で執筆している、この問題に関する専門家です。

彼がまとめた報告から、私たちは何を学ぶことができるのでしょうか。
次号から述べたいと思います。

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
  http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ●

   
○ ヒト遺伝性色素異常症患者由来細胞株
  (高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション
   http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html)
  
  JCRB3003:Dch3
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb3003.htm (近日公開予定)

  JCRB3004:Dch4F
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb3004.htm (近日公開予定)


♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

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◆3◆  ★★    細胞バンクが出来た頃(第12回)    ★★
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**バンク設立を振り返って**

思い出すままに細胞バンクが設立された当時を振り返っておりますが、あ
まり表には登場することが少ないお役人についても知っていることをちょ
っと書いておきます。研究者は研究を使命とするものだと豪語する方は多
いのですが、資源バンク事業を運営するには何が必要になるかを総合的に
見ることが出来る方は少ないようです。一方、お役人は総合的に見るのが
仕事ですから、そこはやはり私達研究者とはまた違う視点で研究現場をよ
く見ていることを感じさせてくれます。

対がん10ヵ年総合戦略の話が持ち上がった時に細胞バンクを設置しようと
いうことを最初に誰が言い出したのかは私にもわかりませんが、どうやら
お役人の側だったのではないかという印象があります。当時厚生労働省の
厚生科学課におられた課長の下田氏と補佐の池谷氏がお役人の側の当事者
として随分と奔走してくださったと聞いています。そして当時審議官だっ
た北川氏ががん研究振興財団や船舶振興会に説明に赴いて、その重要性を
説いて研究資源事業をスタートさせるのに力を尽くしてくださったようで
す。その時の経緯を振り返ってがん研究振興財団が発行している「かに」
誌に北川氏が思い出を寄せておられますので、リンクを貼っておきます。
「かに」誌をOCRで文字化してHTMファイルとしてから細胞バンクホームペ
ージの中にしまっておきました。そこへのリンクです。

(財)がん研究振興財団発行、「かに」誌1998年第25号より
http://cellbank.nibio.go.jp/information/history/jcrb/kitagawa9812.htm

そして、リサーチリソースバンク事業をスタートさせるに当たっての説明
資料であったパンフレットをコピーしてWEB上に置いておきましたのでリ
ンクを貼っておきます。このパンフレットをスキャナで取り込んだのはだ
いぶ前で、解像度があまり良くありませんがご容赦ください。

リサーチリソースバンクパンフレット
http://cellbank.nibio.go.jp/album/album00/page00001.html

厚生大臣官房総務課ライフサイエンス室の監修となっていますが、作成した
のは医薬品食品衛生研究所の石館基先生だったと記憶しています。

                        
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◆V◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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**疾患モデルマウスバンクの事業**

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

**疾患モデルマウスの紹介**

 BKマウス(GM1ガングリオシドーシス幼児型モデルマウス)
 資源番号:nbio018
 由来:医薬基盤研究所実験動物開発研究室
 分譲条件:無条件

 前回、典型的なライソゾーム病であるGM1ガングリオシドーシスのモデル
マウスとして、β-ガラクトシダーゼ・ノックアウトマウス(BKO)を紹介しま
した。実際の本症の患者さんの中には、酵素活性のほとんど無いタイプから、
多少の酵素活性(残存酵素活性)のあるタイプがあり、発症時期も異なり、
乳児型、幼児型、成人型が知られています。BKOマウスは最も重症型の乳児型
に相当します。本症の幼児型に認められるアミノ酸変異(R201C)をもつ変異
型ヒトβ-ガラクトシダーゼ遺伝子をBKOマウスに導入したのがBKマウスです。
BKマウスは、マウスのβ-ガラクトシダーゼは持たず、ヒトの変異型β-ガラ
クトシダーゼを持ちますので、いわばヒト型マウスです。BKマウスはBKOマウ
スに比べ、残存酵素活性を持ち、脂質蓄積速度が遅く、神経症状も軽く、ヒ
トの幼児型GM1ガングリオシドーシスモデルと考えられます。変異酵素の活性
化を目指した新たな治療薬(ケミカルシャペロン)の開発に利用されています。

分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。

医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
 分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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あとがき
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梅雨が明ける(いつかは気象予報士の方にお任せしますが・・・)と夏本番。
学校は夏休みと言うことで家族で旅行を計画されているかたも多いと思います。
地域では夏と言えば!祭り!ですね。
彩都でも恒例の夏祭りが開催されます。街が誕生して間がなく、地域組織が発
展途上の当地では有志による実行委員会が地区に関わる団体に協力を求めて奔
走し、自治会を巻き込んで夏祭りの主催運営を行なっております。今年は盆踊
りが中心で阿波踊りに始まり、子供たちのドラえもん音頭、シニア倶楽部の江
洲(ごうしゅう)音頭など各世代の踊りが体験できます。模擬店も多数出店し
ます。是非お越し下さい。
-----8月4日(土)(雨天8月5日順延)18時から 彩都西小学校校庭にて----