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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第13号 2007/ 8/21】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
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◆♪∽高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)♪∽◆

京都大学放射線生物研究センターは、厚生労働省細胞バンク事業開始以来、
提携機関として事業に協力頂いてきましたが、当該研究所で1970年代から
収集してきたコレクションは、発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人
における高発がん遺伝病患者とその家系に由来する細胞です。
このたびこれらの細胞を広く公開して、疾患の解明ならびに治療法の確立
などの研究に役立てていただくことを目的に、医薬基盤研究所・JCRB細胞
バンクに寄託されることになりました。

現在細胞は、概要のリストを公開し、分譲の希望が出てきた細胞から順に
作業を開始しております。ご興味のある細胞がございましたらJCRB細胞バ
ンクまでご相談ください。あまりに希望者が多い場合には必ずしも御希望
に添えないことも生じるかもしれませんが、出来るだけご希望に添えるよ
う努力したいと考えております。

お問合せはFAX又はメールでお願いいたします。
医薬基盤研究所、生物資源研究部、細胞資源研究室
〒567-0085 大阪府茨木市彩都あさぎ 7-6-8
FAX:072-641-9851, e-mail:cell@nibio.go.jp 
         
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◆ インデックス ◆
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I 細胞バンク事業
1.事業紹介
2.新規細胞情報
3.細胞バンクが出来た頃
(第13回:ATCCから細胞をまとめて購入)

II 実験動物バンク事業
1.事業紹介
2.疾患モデルマウスの紹介

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(13)★★
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細胞バンクでの研究と研究倫理のお話。

** 細胞バンクの技術普及 **

細胞はすでに広く研究に活用される研究資源となっており、非常に多くの
研究者が細胞を利用した研究に取り組んでいます。これだけ普及した技術
であると、誰もが気軽に研究利用を考えます。しかし、日本組織培養学会
に寄せられる研究者からの細胞培養に関する質問あるいは身近な研究者の
細胞培養手技を見ていると、細胞培養の技術をしっかりと身に付けないま
ま、細胞を培養して研究をしている研究者が非常に多いのではないかと思
われます。日本組織培養学会やJCRB細胞バンクではこれまでにもホームペ
ージや書籍を通じて細胞培養技術の普及に努めてきましたが、さらに日本
組織培養学会では第1回細胞培養基盤技術習得コースを8月30日(木),31日
(金) の2日間で開催します。細胞を扱うための本当に基礎的な技術をしっ
かりと身に付けるための技術習得コースです。今回のコースはすでに定員
に達しており、募集を終了いたしましたが、今後も継続的に開催する予定
ですので、是非この機会にしっかりとした培養技術を身に付けてください。

 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報:
http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)
   。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
  詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照

 < ★PR★ =受託検査業務=>
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。


** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(13) 

個人情報保護だけを考えるなら、ともかく塩漬けにしておくことが一番な
のです。門外不出、その個人への返却、あるいはすぐに廃棄という処置が
一番よいと言えます。しかし、個人情報、特に医療に関わる個人情報を利
用することなしに病気の研究はできません。利用するために、保護が必要
なのです。

Lowrance博士の報告書「健康に関する研究における収集された個人情報と
個人に由来する試料の利用について」は利用のための保護の問題に取り組
んでいます。まず、目次を見てみましょう。

1. 個人情報の共有を推し進める力
2. 個人情報の収集の概要と用語の定義
3. 個人情報とその利用の基礎
4. 利用の条件
5. 研究参加の承諾と個人情報の守秘についての不安
6. 科学的問題点
7. 縄張りを護ることと所有権についての問題点
8. 利用についての決定
9. 個人情報の共有のための保存
10. 観察の報告と結論

以上のような項目の中で、日本の報告書に見られない特徴の一つは、共有
の動機についての研究参加者の存在の関わり方の違いです。日本だと、研
究参加者が不安に思うのは個人情報保護だ、だからそれが厳正に行われる
ことが重要なのだというものです。しかし、この報告書では、提供した個
人情報なり、試料が有効に生かされることを研究参加者は望むという前提
から出発しています。そして、この目的の実現のためには広範で、障害の
少ない利用の枠組みを作る必要性があるという点を強調していることだと
思います。これはただ漠然と予想を述べているのではありません。1999年
に英国で起こった小児臓器の無断保存の調査研究の中で生まれ、支持され
ている考え方なのです。(この問題については内閣調査委員会の報告書が
出ています。)
次回は紙面の制限もあるので、この報告書のその他の特徴を2つ取り上げて
紹介します。

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
  http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ●
   
○ ヒト骨髄由来細胞株

  JCRB1196:KMS-20
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1196.htm
  
○ ヒト骨髄腫胸水浸潤由来細胞株

  JCRB1195:KMS-34
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1195.htm

○ ヒト胎盤由来間葉系幹細胞株

  JCRB1197:PL509
  http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1197.htm

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● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

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◆3◆  ★★    細胞バンクが出来た頃(第13回)    ★★
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ATCCから細胞をまとめて購入

厚生労働省によって設置された細胞バンクは、当時新聞や雑誌にも紹介さ
れたりしました。ATCCから100種類ほどの細胞を購入して、国内の癌研究
者に無償で提供するということもかなり大きく報じられました。ところが
『ATCCから細胞を購入してきた一行』という写真が新聞に掲載された時に、
ちょっとしたハプニングがありました。ATCCから帰国した一行が成田で荷
物を待っていたのですが、何故かいつまでたっても細胞が出てきません。

一行真っ青になりました。そのうち、荷下ろしにミスがあって飛行機は細
胞を積んだまま南米まで飛んで行ってしまったという情報が伝わってきま
した。私は、研究室で待機していましたので、その間情報がわからずはら
はらのしどおしでしたが、幸いなことに、その飛行機は南米からすぐに折
り返して成田に戻ったために、一日遅れで無事細胞を受け取ることができ
ました。それにしても、長時間放置されてしまったのに細胞には何の問題
も生じなかったので、ATCCが使っていた細胞運搬用断熱箱と詰め込んだド
ライアイスの量は凄いということになりました。

日本の研究者が汚染したり、クロスコンタミした細胞をたくさん使ってい
るという状況を早いところ何とかしなければならないと、当時細胞バンク
事業を私達に委託した「がん研究振興財団」はATCCから細胞を購入して癌
研究者に無償で配布しようということになったのです。150種ぐらいの細胞
をATCCから直接購入して無償配布しました。各細胞10本づつぐらいのアン
プルを購入して、細胞バンクでは一切開封したり培養したりせず、そのま
ま提供しました。

この努力のその後というわけでもないのですが、今年(2007年5月)の日本組
織培養学会でマイコプラズマフィールド調査への興味がかなり大きかったの
で、その後これをさらに進めて国内の複数の研究機関にお伺いして直接マイ
コプラズマ検査を実施させていただいています。いずれ結果は正式に報告す
る予定ですが、平均してしまうと 20% 程度の汚染率というのが現在の日本
の培養細胞を利用している研究者の状況のようです。当時に比べれば若干汚
染率は下ったと言えるでしょうか。

                     水澤 博   
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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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**疾患モデルマウスバンクの事業**

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

**疾患モデルマウスの紹介**

 CGマウス、CKマウス(ヒトβ-ガラクトシダーゼ過剰発現マウス)
 資源番号:nibio011 (CG), nbio019 (CK)
 由来:医薬基盤研究所実験動物開発研究室
 分譲条件:無条件
 
引き続き、ライソゾーム病であるGM1ガングリオシドーシス関連のモデル動物
を紹介します。
CGマウスはヒト正常型β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を全身で高発現するト
ランスジェニックマウスであり、マウスの内在性β-Galも発現しています。
一方、GM1ガングリオシドーシスモデルマウスである β-Gal ノックアウトマ
ウス (BKO)にヒト正常型β-Galを導入したマウスがCKマウスです。このマウ
スはマウスの内在性β-ガラクトシダーゼを欠損し、ヒト正常型β-ガラクト
シダーゼを過剰発現しますので、いわゆる「ヒト型」マウスです。 CKマウス
は神経症状や脂質蓄積は示しませんので、ヒトβ-Galトランスジーンによっ
て病態がrescueされています。CGマウス, CKマウスは、疾患モデルマウス
(BKO)の脳を対象とした再生医療の実験において、効率の良い移植細胞の供
給源としても利用されています。

  分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。

医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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III あとがき
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記録的猛暑が続いておりますが、皆様のお住まいの地域は如何でしょうか。

私ごとですが、兵庫県の西脇市へキャンプに行ってきました。山里で夜は
しのぎ易く、わらびや栗、近くの池では川えびを観察することが出来まし
た。池のまわりでは鹿の足跡、夜は鳴き声も耳にしました。夜空は星座早
見盤以上の満天の星を観ることが出来、ペルセウス流星群と思われます流
星が沢山流れ、天の川も美しく、自然の中でリフレッシュ出来ました。

西脇市には北緯35度東経135度に位置する日本のへそがあります。他にも日
本のへそは色々ある様ですが、岐阜県郡上市には人口の重心があるそうな。
各地で自己PRをしている昨今、当地は将来何がPRされるのでしょうか・・・。