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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第23号 2008/6/26】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )
       
トピックス

 ○第6回国際幹細胞研究会報告

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◆ インデックス ◆
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I JCRB細胞バンク

 1.事業の紹介
    −第6回国際幹細胞研究会報告−

 2.細胞バンク近況 [出来た頃(第23回)はお休み]

II 実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウス分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【ADAMTS13 KOマウス (正式名称 129+Ter/SvJcl-TgH(Adamts13) NCVC)】

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(23)★★
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**JCRB細胞バンクから研究と倫理のお話**

━第6回国際幹細胞研究会報告━

今年で、開催6回目を迎えるInternational Society for Stem Cell Research
は、6月11日から14日まで、米国・フィラデルフィアにて、が開催されました。
昨年の学会で、京都大学・山中教授は、マウスiPS細胞を発表され、来年はヒト
iPS細胞を報告しますと予告された通り、ヒトiPS細胞についての講演が行われ
ました。今回の大会では、ポスターの演題は、毎日600題以上を数えました
が、ISSCRの会長George Daleyは、ネイチャーのインタビューに、今年のトレン
ドはなにかと聞かれ、Shiyamaniaだと、答えています。

http://blogs.nature.com/news/blog/2008/06/isscr_2008_its_shinyamania.html

この学会で、30以上のiPS細胞の演題が発表されていました。世界は、先に進
んでいるのです。ヒトES細胞の分化についての研究もずいぶんと進んできてい
ます。これまで難しかった内胚葉系への分化についての発表が増えていました。
ヒトES細胞からのD.Melton教授やG.Kellar教授による膵臓や肝臓への分化方法
が発表されましたが、そのほかにも、間葉系幹細胞から分化させた細胞を医療
に応用するべく、トランスレーショナル研究が増えてきていました。臨床応用
に近いのは、間葉系幹細胞だという認識は、共通しているようです。また、ヒ
トES細胞でできないことは、iPS細胞でもできません。この両者の比較が、今後
進んでいくものとと思われます。

International Society for Stem Cell Research
 http://www.isscr.org/

International Stem Cell Forum
 http://www.stemcellforum.org/

UK Stem Cell Bank
 http://www.ukstemcellbank.org.uk/overview_new.html

National Stem Cell Bank (NSCB)
 http://www.wicell.org/index.php?option=com_content&task=category§ionid=7&id=303&Itemid=252

NIH Stem Cell Information Home Page
 http://stemcells.nih.gov/index.asp

ATCC Stem Cell Products
 http://www.atcc.org/CulturesandProducts/CellBiology/StemCellProducts/tabid/170/Default.aspx

Stem Cell Policy World Stem Cell Map
 http://www.mbbnet.umn.edu/scmap.html

                           (古江−楠田美保)

 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報

 開催予定(広島大学にて:募集人員10名前後)平成20年8月28日-29日 
          
       詳細は http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)参照
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
       詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照
  
 < ★PR★ =受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 参照
                          
                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(23)

 先回の続きの英国の事情を書こうと思っていたのですが、先週訪問(6月12,
13日)した米国での聞き取り調査の中で、ヒト試料の研究利用に関する問題とし
て気になる点ありましたので報告したいと思います。
 
 NIHの中のNHGRI(国立ヒトゲノム研究所)でのヒトゲノム研究に利用される
研究資源の話を聞いたときの話です。インタビューは集団ゲノム学研究事務局
の事務局長、集団ゲノム学に関する所長付き上級諮問官のテリー・マノリオ博
士と上級研究政策諮問官、健康政策分析官ローラ・ロドリゲス博士に対して行
いました。マノリオ博士はフラミンガム研究にも関わっていた経験を持つ集団
を対象としたゲノム疫学研究に専門家であると同時に、医学研究院(National
Academyの一部)でも当該研究領域に関する政策文書の作成に関わっています。
それに対してロドリゲス博士は議員秘書として健康政策に携わった経験を持つ
など、多彩な臨床医療政策と倫理問題に対する経験を持っています。

(ア) 米国は大規模なヒトゲノム研究の時代が来る中で、研究資源の共有化、
研究成果の共有化の話を進めています。ここで注目すべき点は、研究助成機
関が関わった、バイドール法にも関わるような助成機関権限の使用と、その
際に政策文書の中に、研究者の利害問題を無視するような姿勢を貫いている
ことです。政策的に、この問題に触れていないようです。

(イ) 英国で話を聞くと、あんなものうまくいくわけがないという返答が返っ
てきます。まあ、順当な反応でしょう。ヨーロッパと米国の対立というか、
均衡を保とうとする働きは大きなものです。対米戦略としてヨーロッパでの
研究資源の統合がEuronpean Forum for Research Infrastructuresの中で進
んでいて、今年の2月から準備予算がついてEU圏内の研究施設の研究資源統合
へ向けた動きが始まっています。

(ウ) 閑話休題。NHGRIでは2000年にConsent Templateを公表してインフォー
ムド・コンセントの標準を図っていると思ったのですが、話は考えていたよ
りも複雑でした。ここで書く話はまだうまく裏が取れていません。しかし、
重要なことなので断片的とは言え書いておきたいと思います。

(エ) HIPPの施行の影響もあるのか、米国でも包括同意をやめて特定された同
意を得る努力がされたようです。宇都木伸先生がHAB学術機構から得た米国の
インフォームド・コンセントのシートを分析して、米国でも限定された同意
を得る動きがあるようだと話をされたのが2003年ごろでありました。

(オ) この動きは、もちろん研究機関が終わったら収集されたヒト試料を廃棄
する動きと連動していたようです。その動きはカナダではさらに激しく多く
のものが失われたといいます。

(カ) 現在、米国でもカナダでもそれはいけないということで、積極的に包括
同意を求める動きがあるようです。

(キ) もう1つ面白かったのは、匿名化された試料を用いたゲノム研究がヒト
を対象とした研究ではないというOHRP(ヒト研究保護事務局)の決定に伴っ
て連邦法の適応除外規定が使えなくなったために、ヒトゲノム研究の試料に
対するインフォームド・コンセントの免除要件が法的根拠を持たないものと
なったということである。この問題は、明確な規定の基に適応除外を当ては
めることを困難にした点で、中々おおきな問題であるようです。

以上の点を指摘しておきたいと思います。
   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ 網膜芽腫(片側性)由来 JCRB1200:NCC-RbC-53(近日公開予定)

    http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1200.htm

○ 網膜芽腫(両側性)由来 JCRB1212: NCC-RbC-56
    http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1212.htm

○ 網膜芽腫(片側性)由来 JCRB1190: NCC-RbC-57(近日公開予定)

    http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1190.htm

♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

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◆3◆  ★ 細胞バンクの近況 ★ [出来た頃(第23回)はお休み]
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ここ何年か、様々な種類の細胞に分化するES細胞や間葉系幹細胞などの研究が
活発になっておりましたが、それにiPS細胞が加わりさらに活発になってきま
した。このような時代の中で細胞バンクは今後どのように機能すべきかという
ことを考えておりますが、いずれはそれらの細胞の配布に私達が関与するよう
になる日が来るだろうと考えております。

一般的に言えば細胞バンクは『培養細胞という研究材料』を効率良く流通させ
るための交差点のような存在ですから、物を預かって別の研究者に提供すれば
良いという極めて単純な機能を多くの方は考えておられると思います。しかし、
細胞バンクは『単なる細胞の配布機関』だったとしても、配布される細胞には
問題が無くて当たり前で、間違っていたり汚染された細胞が頻繁に配布されれ
ば大問題になることは間違いありません。公費により維持している私達の仕事
が研究者から信頼されなければそれは公費の無駄遣いとの批判を頂くのは自明
ですから、間違いが無いよう細胞の品質を保証するために努力することが私達
の中心課題となります。

こうした努力の中で最も重視しているのは、誰よりもまず『私達自身』が納得
できる情報を提供するという点なのです。私達が納得できる情報とは、まずは
私達自身の手で確認した情報ということになります。しかし、同じことの繰り
返しでたいして面白く無い実験だといわれる方もいると思いますが、ホントに
そうなのでしょうか?良く考えてみると、こうしたデータはバンクとして大量
の細胞を収集しているからこそ得られる貴重な情報であるとも言え、一般研究
室では得られない貴重なデータでもあるのです。データとは、大量に蓄積した
時に意味が出てくることは多々あり、そこから新しい疑問が浮かび上がって来
るのです。こうして生まれる疑問からはバンク特有の研究テーマが生まれてく
ると信じております。それこそ私達にとって面白いテーマということになりま
す。

少々の強がりも入っておりますが、こうして私たちは仕事の重要性を認識しつ
つ細胞バンクの維持や管理を全うする研究に邁進しております。

ES細胞やiPS細胞の研究の発展に伴っていずれ私達もそうした細胞に何らかの
かかわりを持って行く事になるだろうと想像しております。そうした点を考え
て今年の2月から研究員を1名新たに迎えることになりました。本メルマガに
も既に原稿を出してもらっていますが古江‐楠田先生です。ヒトES細胞の研究
経験が豊富な方で今後細胞バンクが機能性細胞を扱う際には心強い存在となる
ことと思います。

以上、JCRB細胞バンクの近況でした。
                           (水澤 博)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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1.疾患モデルマウスバンクの事業
  ――――――――――――――

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼今年2月と3月に、次の合計20系統のマウスの分譲を開始しました。
当バンクのホームページhttp://animal.nibio.go.jp/ に解説があります。
どうぞご覧下さい。

 nbio023 FOXO1マウス(廃用性筋萎縮モデル)
 nbio060 TAK1floxマウス (コンディショナルKO、免疫異常など)
 nbio061 ADAMTS13 KOマウス(血液凝固系異常)
 nbio062 NDRG1 KOマウス(末梢神経変性)
 nbio063 Ubc13floxマウス (コンディショナルKO、免疫異常など)
 nbio025 Lck-Cre(T細胞特異的Cre酵素発現)
 nbio034 GLUT4-2K/C(生活習慣病関連)
 nbio035 GLUT4-423/A(生活習慣病関連)
 nbio036 GLUT4-423/B(生活習慣病関連)
 nbio037 GLUT4-442/C(生活習慣病関連)
 nbio038 GLUT4-442/E(生活習慣病関連)
 nbio043 GLUT4-MEF2/B(生活習慣病関連)
 nbio044 GLUT4-MEF2/D(生活習慣病関連)
 nbio047 FAT-CDO(生活習慣病関連)
 nbio059 MEF2A(生活習慣病関連)
 nbio064 Cmah Tg VH-G(免疫系異常)
 nbio065 Cmah Tg VH-H(免疫系異常)
 nbio066 Cmah Tg VH-JA(免疫系異常)
 nbio069 C57BL/6-ypc/ypc(貧毛)
 nbio070 SLW(軟骨形成不全、消化管機能異常)
 

3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――

【ADAMTS13 KOマウス (正式名称 129+Ter/SvJcl-TgH(Adamts13) NCVC)】

 資源番号:nbio061
由来:国立循環器病センター研究所 病因部
樹立者・寄託者 :宮田敏行先生
分譲条件:提供承諾書が必要

フォンビルブランド因子(VWF)を特異的に切断する血漿プロテアーゼである
ADAMTS13のノックアウトマウスで、 ADAMTS13の機能と血小板減少症に関する
研究に有用なモデルです。VWFは血小板の粘着や凝集に関与する糖タンパク質
で、ヒトでADAMTS13活性が欠損すると、非常に分子量の大きなVWFマルチマー
が血中に蓄積し、全身の細動脈系で血小板血栓が出来、血栓性血小板減少性紫
斑病(TTP, thrombotic thrombocytopenic purpura)を引き起こすことが知られ
ています。ノックアウトマウスでは、血漿中に超高分子量VWFマルチマーが存
在しますが、少なくとも通常飼育下ではTTP様の症状は示しません。また、ノ
ックアウトマウスへのコラーゲンの静脈内投与によって顕著な血小板減少症を
示しますが、それだけではTTP発症に至らず、何らかの付加的要因が発症に関
与する可能性が考えられています。

参考文献
Banno F, Kokame K, Okuda T, Honda S, Miyata S, Kato H, Tomiyama Y,
Miyata T. Complete deficiency in ADAMTS13 is prothrombotic, but it alone
is not sufficient to cause thrombotic thrombocytopenic purpura. Blood.
2006 Apr 15;107(8):3161-6.
 
分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。
(松田 潤一郎)
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III あとがき

明けそうで明けない梅雨ですが、気温もどんどん上がり、これから植物は
どんどん成長して行くのだと思います。我が家の家庭菜園もイチゴが終わ
り、今はトマト、サトイモ、ジャガイモ、キュウリ、ナス、ピ−マン、枝
豆が所狭しと成長しつつあり、もうすぐ枝豆が食べれそうなので楽しみに
しています。梅雨は、水をあげる必要のない日が多いのであまり観察しな
いのですが、なんとなく、かわいいじゃがいもの花を眺めてると、なんと
みどり色のプチトマトのような実がついてるのです。?と思い基を確認す
るとやはりジャガイモと同じなんです。我が家では野菜くずは庭の土に埋
めているのですが、そこから出てきたジャガイモです。だからプチトマト
もなる?なんてことはないでしょうから、調べてみるとジャガイモの実が
ありました。よく食するメ−クイ−ンや男爵では出来にくいそうですが、
とうや、ホッカイコガネなどの品種や生育条件に左右されるそうです。
今年は暑いのか、否か・・・。食べれそうですが芽と同じくソラニンやチ
ャコニンというアルカロイドを含むようなんでプチトマトのようにはいか
ないようです。ジャガイモの品種も沢山あることに驚いた次第です。普段
美味しく頂いていたジャガイモにも色々エピソ−ドがあるんだなあと感じ
ました。
                              (E.T.)