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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第24号 2008/7/31】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )

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◆ インデックス ◆
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I JCRB細胞バンク

 1.事業紹介   

 2.細胞バンク近況 

II 実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウス分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【TAK1flox マウス】

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業の紹介(24)★★
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**JCRB細胞バンクのお知らせと倫理のお話**

 ▼細胞培養基盤技術習得コースに関する情報

 開催予定(平成20年8月28日-29日は満席となりました) 
          
 次回など詳細は http://jtca.umin.jp/(日本組織培養学会)参照下さい
  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ◎全国調査継続実施中(無償でマイコプラズマ汚染検査を行います)
 
       詳細はhttp://cellbank.nibio.go.jp/fieldtest/ 参照
  
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   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 る データを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなります
 ので、是非ご検討ください。

 ▼高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション(京大放生研)

   発がんの遺伝的背景の解明に役立つ日本人における高発がん遺伝病
   患者とその家系に由来する細胞です。詳細は

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/kurbsummary.html 参照
                          
                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(24)

先月の米国の調査研究に続いて参加した英国での国際会議と講習会について
ご報告いたします。
最初に参加したのはバイオバンクの管理・規制・自律(Governing Biobank)
という国際会議です。この会はOxford大学であり、35カ国から140名の参加が
あったものでした。主催者は50名程度、多くても70名ということで計画をした
ので、全体会議が2箇所にわたってしまうという、予想の2倍の参加を見た会議
でした。この会議は、Oxford大学のEthoxという研究機関の法学研究者Jane
Kayeが主催をした会議でした。約60%が法学関係研究者でした。その他は、哲
学、文化人類学、社会学の研究者でした。科学研究者は、Cambridgeから一人
参加していたMartin Babrow教授だけでした。彼は、英国の大きなゲノム研究
のすべての予算決定にかかわった大物です。この滞在の最後にインタビューを
したのですが、これまで私が得てきた情報を裏打ちするものとなりました。
私は最後の全体会議で招待講演をしました。この講演はうまくいき、声のかけ
にくかった人からも声をかけてもらったり、反響がありました。話したのは、
Biobank研究が次世代を支える研究であることが、この活動の管理・規制・自
律にどのような影響があるのかという問題についてです。「未来に属する」と
いう問題について、まとまった形の発表がなかったので、好感を持って迎えら
れたのであると思います。この会議をはさんで2つの活動がありました。

会議の前の日は国際共同研究をするということで20名ほどの研究者が集められ
て議論がありました。この会の成果がどのような研究へとつながっていくか、
私自身もひとつ研究課題を提出していますが、これから調整が始まるものと思
います。ちょうど、7月8月はバカンスシーズンで全く連絡がつきません。国際
共同研究に結びつくのが重要と考えています。

会議が終わった次の日は、Jane Kayeの元で研究をしている法学と文化人類学の
大学院生が計画をしたゲノム情報の流通に関するセミナーがありました。ここ
に参加をして、大学院生たちの活気に関心しましたし、それを生かす場が支え
られていることが印象的でした。国際会議、またその前後の活動は、Wellcome
財団の費用でまかなわれたようです。私は研究費で参加をしたので、請求しま
せんでしたが、旅費等の清算書が渡され、すべての費用をWellcome財団が出し
てはくれるのです。海外からの主だった研究者だけでもかなりの数ですから、
本当にお金のかかった国際会議であると思いました。
この一連のOxfordでの会が終わってから、Manchester大学で今度はPractical
Biobankingという2日間の講習会がありました。ここでは、私は日本の研究資源
の全体像について話をしました。この会は、前の会とは全く違って、Biobankに
かかわる実務家たちの会で、どうやったら異なった研究機関の間でDNA濃度を正
確に計ることができるかという問題。あるいは、多量のサンプルでのデータク
リーニングの話などがありました。最初の会と同様に、20カ国から40人ほどの
参加のある会でした。受講修了書が出るのですが、講師にはでないということ
でがっかりしました。
これら2つの会に参加して、どちらにも参加していたのは、スペインのBiobank
から参加した女性研究者と私だけでした。しかし、PracticeによってGovernance
の重点・スタイルなどが大きく変化することを考えると、この2つの会が独立し
てあったことが不思議なことであると同時に、大きな障害でもあるように思い
ました。
この会の後に、英国の主だった研究者3名の英国内での大規模研究の相談を聞く
機会があったのですが、日本で私たちが研究班を組むために相談をするときと
同じように話が進んでいくのが面白かったです。

次回は、国際学会での論点についてご報告したいと思います。

   (増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。


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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●
   
○ 網膜芽腫(片側性)由来細胞
JCRB1221: NCC-RbC-92

http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1221.htm

○ ヒト胃(腺がん)由来細胞
JCRB1228: NCC-StC-K140

http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb1228.htm


♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/

                            (小原 有弘)

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◆3◆  ★ 細胞バンクの近況 ★
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細胞のクロスコンタミネーションについて日本細胞生物学会で紹介

培養細胞のクロスコンタミネーションの問題について広くお知らせしなけれ
ばならないと考えておりまして、今年は少し積極的に書いたり発表したりと
いう作業を行っております。そんなわけで今月初めに開かれました、日本細
胞生物学会でもこの問題をポスターで発表させていただきました。『細胞の
誤謬に関して細胞バンクからの警告』と少々刺激的なタイトルをつけさせて
頂きました。

そうしましたところ、多くの方が足を止めてくださいましたので成功したよ
うに思いますが、あまり成功するのも問題があるような気がして複雑な気持
ちです。

ともあれ、日本細胞生物学会は原核生物から真核生物までと幅広い材料を相
手にしている有力な学会ですし、米国の細胞生物学会ともタイアップして活
動していると考えておりましたが、私どもの発表を聞きにきてくださった先
生方の話では米国の細胞生物学会でクロスコンタミネーションの問題を取上
げていたことについてはご存知なかった方が多かったことには少々驚きまし
た。やはりこういう問題については私達細胞バンクを担当しているものが積
極的にアピールしなければならないと責任を強く感じた次第です。

ともあれ、私ども『JCRB細胞バンク』とつくばの『理研細胞バンク』で
はこれまでに収集したヒト由来の細胞株についてクロスコンタミネーション
の有無を調査して、その一覧表を実験医学の2008年3月号に発表しました。
是非参考にしてください。結構名前が知られている細胞が実は別の細胞だっ
たということがありますので、注意が必要です。この実験法についても同誌
の6月号に報告させて頂いておりますので、参考にしてください。

この方法はDNAのパタンで同定するのですが、個々の先生方が、ご自分の
手元にある細胞のDNAフィンガープリントを得ても比較する相手のデータ
がなければどうにもなりません。そこで、私達JCRB細胞バンクではこれ
まで収集した約700種弱のヒトに由来する細胞に関するDNAフィンガープ
リントのデータをホームページ上に公開して比較するプログラムを公開して
おりますので是非ご利用ください。この方法の優れている点は、個々の細胞
で得たデータを細胞バンクで既に得た古いデータと容易に比較できるという
点にあります。

理研細胞バンクとJCRB細胞バンクで国内の培養細胞について調査した結
果では平均約10%ほどの細胞が誤っているという結果を得ております。や
はり、このような状況で研究を進めるのはかなり問題があるだろうと思いま
すのでどこかで確認をする必要があるのではないでしょうか。是非ご検討く
ださい。

もし、それぞれの研究室で実験を行うのが難しければ有償にはなりますが受
託して検査をいたしますので一度ご相談下さい。

                           (水澤 博)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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1.疾患モデルマウスバンクの事業
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○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信


2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

▼近々、次の8系統のマウスの分譲を開始します。どうぞご利用下さい。

 FAT-UCP2/X (生活習慣病/肥満関連)
 AMPK-DN/C (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 AMPK-DN/E (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 LKB1-DN/B (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 LKB1-DN/C (生活習慣病/肥満、糖尿病関連)
 NDRG1 flox (コンディショナルKO/末梢神経変性など)
 SIK2-KO (C57BL/6) (生活習慣病/糖・脂質代謝)
 SOCS5 Tg (line5-1)(免疫異常)


3.疾患モデルマウスの紹介
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【TAK1flox マウス】

 資源番号:nbio061
由来:大阪大学微生物病研究所
樹立者・寄託者 :審良静男先生
分譲条件:提供承諾書が必要

TGF-β-activated kinase 1 (TAK1)はMap3k7遺伝子にコードされている
哺乳動物の MAPキナーゼキナ−ゼキナ−ゼ(MAPKKK)ファミリ−に属する
キナ−ゼです。
 このTAK1floxマウスは,大阪大学微生物病研究所の審良先生のグループ
により標的改変によってMap3k7遺伝子の第2エクソンを挟むようにloxP配
列を導入した129/Ola系マウス由来ES細胞(E14.1)を用いてキメラを作成
後,C57BL/6系マウスとの交配によって樹立された系統です。Cre酵素を
発現するマウスとの交配により,TAK1を消失させることができます。特
にCre酵素の発現を誘導するプロモータを選択することにより時期や組織
特異的消失が可能となっており,このTAK1floxマウスは時期・組織特異
的なTAK1の研究に有用な系統といえます。
 なお参考文献によりますと,Creリコンビナーゼを生殖細胞で発現するマ
ウスとの交配で「TAK1ノックアウトマウス」も作られましたが,胎生致
死であったそうです。また,組織特異的ノックアウトを導入すると
Toll-likereceptor/IL-1Rシグナルの異常が見られるそうです。

参考文献
Sato S, Sanjo H, Takeda K, Ninomiya-Tsuji J, Yamamoto M, Kawai T,
Matsumoto K, Takeuchi O, Akira S. Essential function for the kinase
TAK1 in innate and adaptive immune responses. Nat Immunol 2005;6:
1087-1095.
 
分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。
 
医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/
分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで公開
しています。

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III あとがき

いよいよ夏本番ですが、これから先が思いやられるくらい暑いですね。
彩都は里山に隣接する自然環境豊かな街なので都会に比べると涼しい様ですが、
日中は沿道の木々がまだまだ低木なので照り返しが強いですし、開発中の山林
もあり緑は徐々に減っているように感じますので、年々暑くなっているような
気がします。夏休みに入り、朝はプ−ルバッグと水筒を持った子供たちが元気
に学校へ通う姿が沢山見られ、日中は戸建て前の駐車場にはかわいいビニ−ル
プールで水と戯れる子供たちが沢山見られるのが夏の彩都の街の風景でしょうか。
週末の8/2(土)には恒例の夏祭りも開催されます。当地に足を運ばれるときは、
日傘と飲み物が必携です・・・・。
                              (E.T.)