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■◇■  JCRB 研究資源バンク メールマガジン                 
◆    【第32号 2009/5/29】                             
◆ ===== 医薬基盤研究所・生物資源研究部
◆          http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank.html
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メルマガバックナンバーは細胞バンクのホームページに掲載しております。
( http://cellbank.nibio.go.jp/information/magjcrb/ )

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●!★★ヒトiPS細胞分譲中★★!●
   
  ▼=分譲依頼手続きを行った方には培養指導を行っております=▼

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/ips/ips_list.html

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◆ インデックス ◆
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I  JCRB細胞バンク

 1.事業紹介   
   =JCRB細胞バンクからのお知らせ= 
   =研究倫理に関する活動=
 2.新規細胞のご案内 

II  実験動物バンク事業
 1.事業紹介

 2.新規マウスの分譲情報

 3.疾患モデルマウスの紹介
   【PGC-1αマウス 】

III あとがき
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◆I◆  ★★ 細胞バンク事業 ★★
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4月1日より、成育医療センターより寄託されましたヒト胎児肺線維芽細胞
『MRC-5』を元に作製されたヒトiPS細胞の提供を行っております。
同一細胞から9つのクローンが寄託されておりますが、そのうち
Dotcom(JCRB1327),Squeaky(JCRB1329)を分譲中です。
Squeakyは、染色体が異常となっておりますが、未分化マーカーも発現して
おり、培養しやすいクローンです。6月1日より、Ticも分譲開始を予定し
ております。

同じ細胞から作成されているにも関わらず、これら3つのクローンの印象は
ずいぶん違います。なにが違うために、これほど印象が違うのか。まだ、明
らかにされてないことは多いようです。多くの皆様にお使いいただき、研究
が進むことを願っております。

なお、分譲依頼手続きを行った方には培養指導を行っております。

http://cellbank.nibio.go.jp/cellbank/deposit/ips/ips_list.html

当基盤研究所においては、iPS細胞の品質評価法の開発を行っております。


(古江−楠田美保)

** JCRB細胞バンクからのお知らせ **

 < 受託検査業務=>
   
   @ 細胞検査業務マイコプラズマ汚染検査

   A STR分析による細胞のクロスコンタミ検査

 受託検査は有料ですが、皆様が利用しておられる培養細胞の品質に関す
 るデータを取得しておくことは科学的にも重要なポイントとなりますの
で、是非ご検討ください。
                                         
** 研究倫理に関する活動 **

● 人体由来組織・細胞と情報の研究利用をめぐる最近の動き(32)

今回は研究倫理の別の側面についてお話する。

研究倫理の問題として最近クローズアップされているのは、データの改竄
である。実験研究ではデータを改竄するという不正は古来から絶えること
のない問題であるといわれている。そのために、実験を人々の目の前で行
う公開実験というものが古くは行われていた。ここでは手品まがいの手法
が使われて、多くの人たちを魅了もしたと伝えられている。現在は、独立
追試が複数発表される形で1つの積み上げを作る。1つの研究発表、論文で
あることが決ることはまずない。その結果を別の研究者が追試して、それ
がうまくいくということが積み重なって、1つの実験の結果が受け入れられ
るのである。再現性ということが重要といわれるのである。と同時に、生
物資源のことを考えると、その実験で使った材料の共有が重要なのである。

研究論文の構成を見ると、導入、材料と方法、結果、考察と結論という構
成になっている。結果の部分が実験結果を記載する部分である。日本語だ
とあまり気にならないが、英語で書くとこの部分は過去形で書く。すなわ
ち、「これを、こうすると、こうなった」というのである。古くは、解剖
図にそのときに死体にとまっていたハエまで書き込むという念の入れよう
である。この死体にとまったハエをどのように考えるかは、本当は重要な
ことであるのだが、その点は研究の本質に属する部分であり、長い話にな
るので、此処では触れない。

この話をまた持ち出したのは、先日ある国立大学法人の工学系単科大学の
大学院生に講義をする機会があった。このときに、私の前の講師は科学記
者団体の理事であり、話題は科学における不正の話であった。聴講したの
は修士1年から博士2年の中からの志願者10名である。活発な議論が行われ
た。その後に私が、科学をするとはどのようなことか、という話をした。
科学の持つ「いい加減さ」という、その時点での「説明の成功」としての
科学というような話をしたのだ。終わりに、皆に短いエッセーを書いても
らった。これが面白かった。また、終わった後、1時間ほど学生と話す機
会があった。

印象的だったことは、大学院生たちが感じている将来への不安と、今の制
度を作り維持している年寄りに対する怨念、競争の激しさ、そしてそれ自
体が生み出すデータ改竄すれすれの話である。データはそのまま出版され
るわけではない、例えば棄却検定と呼ばれる方法などを駆使してデータの
見せ方を工夫するのは重要なことである。また、写真のごみ消し、トーン
の変更などは今やデータ作りの大切なステップである。はっきりとした改
竄はわかりやすい、しかし、今や技術的なものも含めてグレーゾーンが広
がっているのである。例えば、Cellなど超一流誌にでる論文でも、読むと
やっているはずの仕事の記述がなかったり、ストーリーを作るために苦労
している様が手に取るようにわかる。あるいは、Natureにでる論文の半数
は再現性に問題があるという。私も米国にいたときに自分の関係するもの
について問い合わせた。再現できないのだという答えがあって、びっくり
したことがあるが、同僚たちは「あーーあれは週刊誌だからね」というい
たって平静な対応であった。すなわち、過去形で書かれたものについては
事実である。論理的になんらおかしなことではないのである。過去に起こ
ったことが、今起こることを保証はしないのである。

それにしても、現在の大学院生の不安の大きさはすごいと思った。この講
義に集まっている学生は書かせたものや議論を聞いても大変に優秀である。
彼らは明らかに自分たちにできることと、できないことを見切っている。
制度として現在の大学院生余りの状況を改善しない限り、問題は解決しな
い。現在文部科学省は博士の就職を受け入れた企業に500万円という、ばか
げた対策をはじめたという。これで、問題が解決をするはずがない。そし
て、優秀な(これが学問的な意味であるかは別として)学生が大学院へ進
まない状況が続くことが今後の日本にとってどのような問題であるか明白
である。このように、大学院定員の削減が、研究倫理の問題となっている
のである。
(増井 徹)

研究倫理に関するページ (JCRB細胞バンクホームページ内)
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/kiban01/index.html

ご質問やご意見があれば、是非 cell@nibio.go.jp へお寄せください。

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◆2◆  ★★    新規細胞    ★★
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● 新規分譲細胞のお知らせ ●

○基底細胞母斑症候群患者由来不死化細胞
(高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション)

JCRB3009:BCNS1KO hTERT

http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb3009.htm

○ファンコニ貧血患者由来細胞
(高発がん性遺伝病患者由来細胞コレクション)

JCRB3010:FA20P
http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb3010.htm 


♪☆=--=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-♪☆

● JCRB細胞バンクのホームページから細胞株の情報を入手できます。
   http://cellbank.nibio.go.jp/
                            (小原 有弘)

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◆II◆  ★★ 実験動物バンク事業 ★★
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●今年3月に新たに27系統のマウスが分譲可能となり、現在、全部で94
系統が利用可能です。今後、疾患研究や創薬研究に有用なモデルマウスをさ
らに収集し、分譲しますので、どうぞご利用下さい。下記の新規マウスの分
譲情報をご覧下さい。


●分譲マウス一覧に、関与遺伝子別一覧を追加しました。遺伝子名から目
的のマウスを検索できるようになりました。次をご覧下さい。
http://animal.nibio.go.jp/j_gene_mice.html


1.疾患モデルマウスバンクの事業
  ――――――――――――――

○疾患モデルマウスの収集/収集したマウスの品質管理、凍結胚での保存

◆★疾患モデルマウスの寄託をお願いします!★◆

○疾患モデルマウスの分譲
   マウス胚50個/チューブを融解し、胚移植後、生まれた産仔すべてを
分譲します。 (97000円/1件)

○凍結胚・凍結精子の保護預かり業務(動物の情報は非公開で預かります)
   クライオチューブ4本保管で 11000円/1年
   ストロー16本/1年保管で 11000円/1年
        凍結胚・凍結精子作製サービスも行っています。

○疾患モデルマウス関連情報発信

2.新規マウスの分譲情報
  ――――――――――

 今年3月より次のマウスの分譲を開始しました。どうぞご利用下さい。
 ADAMTS13 KO (C57BL/6Cr congenic、血液凝固不全)
 GLUT4-ERE 1/D(糖尿病)
 GLUT4-ERE 2,3/A(糖尿病)
 GLUT4-NF1(4ライン、糖尿病)
 GLUT4-1K/A(糖尿病)
 GLUT4-506(2ライン、糖尿病)
 GLUT4-550(2ライン、糖尿病)
 GLUT4-582/B(糖尿病)
 GLUT4-700/A(糖尿病)
 GLUT4-Mut582(3ライン、糖尿病)
 GLUT4-Mut701(糖尿病)
 Liver-UCP2(2ライン、肥満・糖尿病)
 MUSCLE-UCP3(肥満・糖尿病)
 C3G KO(細胞接着異常)
 hC3G Tg(細胞接着異常)
 Meg1 Tg(4ライン、糖尿病)
 
3.疾患モデルマウスの紹介
  ―――――――――――
【PGC-1αマウス】
資源番号:nbio095〜097(B, D, Eの3ライン)
由来:(独)国立健康・栄養研究所 基礎栄養プログラム
樹立者・寄託者:三浦進司先生
分譲条件:提供承諾書が必要

骨格筋特異的にPGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor γ
coactivator-1α)を過剰発現させたトランスジェニックマウスです。マウス
PGC-1α cDNA(2.4 kb)をヒトαアクチンプロモーター(-2000bp)の制御下
に発現しています。このマウスでは骨格筋の赤筋化、ミトコンドリアの増加
が認められ、週齢が増すと筋萎縮をおこします。
PGC-1αは、核内受容体PPARγのコファクターで、ミトコンドリアの合成を
促進することが知られています。ミトコンドリア筋症の一種であるルフト病
のモデルマウスと考えられています。

参考文献
Miura S, Kai Y, Ono M, Ezaki O. Overexpression of peroxisome
proliferator-activated receptor γ coactivator-1α down-regulates
GLUT4 mRNA in skeletal muscles.
J Biol Chem.2003 Aug 15;278(33):31385-90. Epub 2003 May 30.
(PMID: 12777397)
Miura S, Tomitsuka E, Kamei Y, Yamazaki T, Kai Y, Tamura M, Kita K,
Nishino I, Ezaki O.
Overexpression of peroxisome proliferator-activated receptor γ
co-activator-1α leads to muscle atrophy with depletion of ATP.
Am J Pathol. 2006 Oct;169(4):1129-39. (PMID: 17003473)

                         (松田潤一郎)

分譲をご希望の方は、larb@nibio.go.jpまでご連絡ください。

医薬基盤研究所 疾患モデルマウスバンクのホームページ
 http://animal.nibio.go.jp/

分譲可能な動物、サポートサービスの情報はこちらのホームページで
公開しています。


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III あとがき
5月18-19日獨協医科大学にて日本組織培養学会第82回大会が開催され当研
究室のスタッフも参加致しましたので感想を紹介致します。

「場所は、栃木県下都賀郡壬生町おもちゃの町。おもちゃの町なんて聞く
と、電車を下りて駅のホームを抜けるとゼンマイが背中に付いた兵隊さん
が出迎えて、ブリキのバスに乗ってテケテケテー♪な感じがしますが、そ
の名前の由来は、玩具メーカー、トミー工業(現タカラトミー)の富山栄
市郎が工場を誘致したことから来ているそうです。現在は、バンダイミュ
ージアム、おもちゃの博物館があり、ガンダムやりかちゃん人形、鉄道模
型などが展示されているということで、大変興味深い町でした。
今回の学会で、私は演題発表の機会を頂きました。最初の発表だった為、
発表後は発表が終わった興奮と、反省の間で悶々しながら聞いておりまし
たので、他の発表者の発表や、答弁が、かなり今後の勉強になりました。
特に、聞いていて印象的だったのが、東京大学医科学研究所の先生の、骨
髄中における造血幹細胞が骨髄中のニッチと呼ばれる場所で、細胞周期が
止まっている状態でいる機構についての研究発表でした。整然としたわか
りやすい説明で、「ニッチ」と何度もしっかり力強くおっしゃるところか
ら、自身の研究への愛情というものを感じました。自分の研究を好きにな
り、打ち込んで、伝えようという意思があふれた発表にやたら感動してい
ました。今回の学会では、細胞のシグナル解析、細胞の分化誘導、臨床・
創薬応用、解析ツール等々、様々な分野の方の研究の発表を聞くことが出
来ました。私自身は「聞くことが出来ました」で終わってしまいましたが、
発表終了後や、その後の懇親会で発表された先生方との活発な議論をされ
ている方々のように、もっと積極的に議論できるよう、普段から研究につ
いてよく考える愛情をもっていこうと思いました。 D.T.」