ドイツ細胞バンク(DSMZ)訪問記(1)
田辺秀之
留学先
Hideyuki Tanabe, Ph D.
Institute of Anthropology and Human Genetics
Ludwig Maximilians University, Munich
Richard Wagner Str. 10/I, 80333 Muenchen
Germany

DSMZ写真紹介

DSMZ(ドイツ細胞バンク)に行ってきました。大変興味深いものでした。Dr. Hans G. Drexlerをはじめ、4名のchief scientistsの皆が1日中、とても親身につきあってくれました。何から話しましょうか、まず基本的なことはすでに彼らのホームページに記載されていますので割愛します(DSMZのIntroduction、Profile、Function、Historyなど)。

周知のように、DSMZ は Braunschweig という田舎にありまして、1979年に GBF という大きな会社の一部として吸収され、その敷地内の1つの建物中に存在しています。また DSMZ は Cell Bank だけではなく、以下の4つの大きな部門(Depatment)から成り立っています(4が細胞バンク)。

    1. Microorganisms
    2. Plant Cell Lines
    3. Plant Viruses
    4. Human and Animal Cell Lines

    Drexler博士は1987年に Chicago から戻って以来、ちょうど DSMZ が Goettingen から Braunschweig に移転するのを契機としてバンクの Head をしているそうです。

    ではまず、

●培養細胞部門の Staff について−−−現在、総勢16名(cf;下記の図)。

    その構成は図に示してあるように5つのラボからなり、それぞれ各1名のStaff Scientistを筆頭に2〜3名で成り立っています。

    Head:Dr. Hans G. Drexler
    Secretary(セクレタリー):Mrs. Angelika Effern




    Molecular Biology(分子生物学):Dr. Willi Dirks (Identification)
    Cytogenetics(細胞遺伝学):Dr. Roderick MacLeod
    Immunology(免疫学):Dr. Hilmar Quentmeier
    Cell Culture(細胞培養):Dr. Klaus Steube (Customer service)
    Virology(ウイルス学):Dr. Cord Uphoff (Mycoplasma)


    それぞれのラボの役割についてはホームページの Quality Control の欄に詳細が書かれているので省きますが、これだけでも品質管理重視の徹底した姿勢が覗えると思います。ラボといっても実際の部屋は目的に応じて共通に使っている実験室とオフィス(コンピューター)で、例えばWilliとHilmarは同じ部屋にデスクがあります。

DSMZ 培養細胞部門の組織図

organization

    5つのラボがあることを紹介しましたが、そのうちImmunology担当のHilmarはPatent Depositの業務も請け負っています。

    新規寄託細胞はまずHilmarのところに行き、細胞ごとに責任者を割り振って品質管理に回すそうです(詳しくは品質管理の項で述べます)。

    またCell culture担当のKlausとConerの2名が細胞の発送業務と利用者からの培養に関する質疑応答を行っているということです。

●細胞の発送について

    細胞は年間で合計約2500アンプルほど発送しているそうです。そのうち約7割がドイツ国内、3割が国外となっています。国外のプロファイルはUSAが第1位でその5割程度を占め、ついでUK、Franceなどヨーロッパ近隣諸国、日本は第6位か7位に位置していました。また、細胞の発送は凍結アンプルだけでなく、培養フラスコでの発送も行っているそうで、年間数十件はリクエストが来るそうです。この培養フラスコの発送は注文が殺到してしまうと、人手と手間と時間がかかりとても通常ではやっていけないので、コストを上げて(凍結細胞の2.5倍ほど高価に設定)凍結細胞を注文してもらうようにバランスを図っているそうです。

    現在の価格は1アンプル当り凍結細胞で200DM、培養フラスコで500DM、これに発送料が加算されるそうです(ドイツ国内では100DM)。また、アンプル当りの細胞の数も利用者側からクレーム(戻し培養に失敗した、少ない、など)防止にも備える意味からat least 5x10^6 cells/ampに厳守しているそうです。具体的な発送曜日などは担当者のKlausがその日に不在だったために、後日、E-mailで質問して下記の回答をもらいました。

Klausの説明

    Monday and Tuesday are our shipping days:

    Monday to all destinations abroad (Europe, USA, Far-East); especially when shipping dry-ice parcels. Sometimes, growing culture were sent on Tuesday, but only within Europe. To the US or Japan, only Mondays.

    Within Germany we using an 24-h service and despatch the cells on Tuesdays.

    (In rare cases also on a Wednesday).

    Growing cultures were shipped in several containers. First, the culture flask or tubes are filled with medium, then wrapped into 'protecting plastic' or lab-tissue paper.

    Shipment within Germany we use normal cardboard boxes, for longer distances we use styrofoam boxes.

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