実験方法
特徴,注意事項
【由来動物種の同定手法 (個別識別では無い)】
試薬,電気泳動装置一式がキット化されているので短時間で実験が出来る。細胞が由来する動物種を迅速に同定できるが、同一動物種に由来する細胞の場合は識別が不可能なので、STR-PCR法を使う。
本実験では、細胞の粗抽出液を電気泳動した後基質と反応させて酵素の移動度を検出し、移動度から酵素のサイズを推定して動物種を特定する。基質は旭硝子(株)から入手できる。またタンパク質の電気泳動に使用するフィルム状のゲル担体と電気泳動バッファーはヘレナ研究所から入手可能。また,電気泳動バッファーは各自調製可能なので下に組成を記した。
[ 実験に使用する器材の入手先 ]
本実験に使用する器材は、20年ほど前に岩城硝子㈱が日本国内での販売を開始しました。その後会社名変更・販売体制の変更などを経て現在に至り、試薬・泳動漕などは旭硝子(株)が販売しています。また泳動バッファーやゲルプレートはヘレナ研究所から販売されています。試薬や器材の形状や使用方法は基本的に変っておりません。
オーセンティキット試薬 |
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2008/10/16現在 旭硝子販売品目 |
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税別価格 |
品種コード |
品名 |
製品明細 |
旧品種コード |
保存温度(℃) |
数量/函(個) |
標準価格 |
(円/函) |
E-550 |
酵素基質NP |
Purine nucleoside phosphorylase(EC2.4.2.1) |
474NP |
2〜8 |
6 |
\32,000 |
E-551 |
酵素基質G6PD |
Glucose-6-phosphate dehydrogenase(EC1.1.1.49) |
474G6PD |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-552 |
酵素基質MD |
Malate dehydrogenase(EC1.1.1.37) |
474MD |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-553 |
酵素基質MPI |
Mannose dehydrogenase isomerase(EC5.3.1.8) |
474MPI |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-554 |
酵素基質PepB |
Peptidase B(EC3.4.11.4) |
474PEPB |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-555 |
酵素基質AST |
Aspartate aminotransferase(GOT)(EC2.6.1.1) |
474AST |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-556 |
酵素基質LD |
Lactate dehydrogenase(EC1.1.1.27) |
474LD |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-557 |
酵素基質CK |
Creatine kinase(Ec2.7.3.2) |
474CK |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-558 |
酵素基質ME |
Malic enzyme(EC.1.1.1.40) |
474ME |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-559 |
酵素基質ICD |
Isocitrate dehydrogenase(EC1.1.1.42) |
474ICD |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-560 |
酵素基質PGI |
Phosphoglucose isomerase |
474PGI |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-561 |
酵素基質PepA |
Peptidase A(EC3.4.11) |
474PEPA |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-562 |
酵素基質PGM |
Phosphoglucomutase(EC2.7.5.1) |
474PGM |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
E-563 |
酵素基質PGD |
Phosphogluconate dehydrogenase(EC1.1.1.44) |
474PGD |
2〜8 |
6 |
\30,000 |
A-475 |
細胞抽出用バッファー |
− |
474BFR-EXT |
2〜8 |
3 |
\17,000 |
R-578 |
酸素安定用バッファー |
− |
474BFR-STAB |
2〜8 |
3 |
\26,000 |
A-476 |
酵素反応停止液 |
− |
474LIQ-STOP |
室温 |
2 |
\15,000 |
R-576N |
スタンダード |
Mouse L929 Extract |
474STAND |
-20 |
3 |
\58,000 |
R-577N |
コントロール |
HeLa S3 Extract |
474CONT |
-20 |
3 |
\58,000 |
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M-471 |
冷却槽付きアーチ型電気泳動槽 |
− |
室温 |
1 |
\180,000 |
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(旭硝子(株)から許可を得て掲載)
[ フィルム状ゲルプレート(ユニバーサルゲル)の入手先 ]
ヘレナ研究所 マルチトラックシリーズ
- ユニバーサルバッファー (cat#470180)
粉末2L用×3袋
- ユニバーサルゲル/8 (cat#470100)
8検体用×12枚
株式会社ヘレナ研究所
〒336 埼玉県浦和市常盤 9-21-19
Tel:浦和 048-833-3208, Fax:03-3580-3388
Tel:大阪 06-6945-1070
【実験法】
1)培養細胞からの粗酵素抽出液調製法
◆試 薬
- PBS(-)
- 酵素安定化バッファー(岩城ガラス社製プリメード)
◆操 作
- 約 1x10^7 個の細胞を 50ml の遠心管に回収する。
以後ソニケーションまでの操作は氷冷して行う。
- 1,200rpm で5 分間遠心し、上清をパスツールピペットで取り除く。
- PBS(-)を 40ml(容量は細胞によって調整)加え、ピペッティングする。
- 1200rpm で5分間遠心し、上清を取り除く。
- もう一度、操作3.4.を繰り返す(洗浄)。
- 1mlのPBS(-)を加えて細胞を懸濁し、エッペンドルフチューブに移す。
- 2000-3000rpmで数秒遠心し、上清を取り除く。
- 細胞のペレットと等量の酵素安定化バッファーを加えて細胞を懸濁する。
- 氷冷しながら4秒間ソニケーションする(ソニケーター、Microson MISONIX, Output=3)。
- 5500rpm 10分間、4℃で遠心する。
- 上清の20ulを取り、氷冷した別のエッペンドルフチューブに移す。
- 上清と等量の酵素安定化バッファーを加え3本のエッペンドルフチューブに分注する。
- −80℃で保存する。
◆注意点
- 細胞は新鮮なものを使う。培養直後に酵素抽出を実施し、安定化バッファーを添加してから凍結保存する。培養後すぐに抽出しないとG6PDの失活を招く(田畑検討)。
- 酵素は失活しやすいので、ソニケーションした後は、氷冷しながら、手早く行う。
- ソニケーターは空の状態で発信させるとチップの破損を招く。
- 細胞調整後ソニケーションをするまでの間氷冷する。
- 酵素安定化バッファーはソニケーション前に添加する。
- 抽出液を最終的に保存する場合は、液体窒素かドライアイスで急速凍結を行ってから冷凍保存したほうが良い結果が得られる。フリーザー中で凍結させないという意味。
- 参考文献:井伊一夫, アイソエンザイムを用いた培養細胞株の同定, トキシコロジーフォーラム, 8:340-348(1985).
2)電気泳動−染色
写真による電気泳動・染色の手順(参考)。
- 試薬,装置1式は,コーニング,岩城硝子社のキットを使用
◆試 薬
検定する細胞の酵素抽出液
0.1M PHAB
0.05M PHAB
スタンダード ;岩城ガラス製 L929 抽出物(474STAND)
コントロール :岩城ガラス製 HELA S3抽出物(474CONT)
(スタンダード及びコントロールは自分で調製した抽出物を使用することも可。但し十分に性状確認のなされた細胞を使用すること。)
ゲルフィルム
酵素基質
D.W.
◆電気泳動用ユニバーサルバッファー
◆器 具
◆操 作
- 電気泳動糟カバーに氷水を詰める。
- 泳動糟に 0.05M PHAB を 200ml入れる。
- ゲルフィルムをプラスチックカバーからはがし、1分間乾燥させる。
- サンプル、スタンダード、コントロールを freezer から取り出し氷水上で解かす。
凍結サンプルの融解はゲルにチャージする直前に行う。融解後は特にG6PDの失活が早いので注意すること。
- サンプルアプリケータで、サンプルの1ul又は2ulをゲルの溝にのせる。
- 同様に、スタンダード、コントロールを各々1ulずつゲルにのせる。
- 試料がゲルの中に吸収されるのを待つ。
- ゲルの面を内側にし、かつゲルの+側と泳動糟の+側とが合う様にして、泳動糟カバーにセットする。
- 泳動糟にカバーをのせ、専用のタイマー付パワーサプライで25分間泳動する。
- 泳動終了5分前になったら、酵素基質を 0.1M PHAB 0.5ml で溶かす。基質によっては、溶け難いものもあるので、良く振る。また、基質は、分解しやすいので、良く氷冷する。
- 泳動が終ったら、ゲルを泳動糟から取り外し、余分な水分を充分に取り除き、ゲルの上に水滴を残さないようにする。
- ゲルをキムワイプの上に置き、一端に5mlピペットを置く。
- 酵素基質溶液をゲルにかけ、5mlピペットを引きずらないで回転させながら全体に塗り広げる。
- 専用のトレーに湿らせたキムワイプを一枚のせ、その上にゲルを置き、蓋をして37℃20分間反応させる。
- 洗浄用バットにD.W.を入れ、スターラーで撹拌しながらゲルを洗う。
- 完全に脱色したら、60℃のオーブンで乾燥させる。乾燥後所定の用紙に添付し保管。
◆G6PDのバンドを出すコツ (榑松・飯塚、2001.June.)
G6PDの失活防止策がポイント。泳動直前まで凍結保存、融解後は手早く泳動する。以下に注意点を記す。
酵素抽出時の注意点
- 酵素液抽出時において、細胞破壊のためのソニケーションは 4 秒とする。
- ソニケーション終了後、微量遠心機(r=5cm)で 4℃, 5500rpm で遠心しているが、上清が分離しない場合は、10000rpm でさらに数十秒遠心する。
- 上清が透明なときは細胞が壊れていないようである。この場合はうまくいかないことが多い。
泳動時の注意点
- 電気泳動を行う直前までサンプルを液体窒素中で凍らせておく。サンプルを運ぶときも液体窒素中に浸けて運ぶ。
- 装置・バッファー・ゲル等、全ての準備が整ってから、サンプルを液体窒素から取り出して氷の上に移して融解する。融解したら直ちに用意しておいたゲルフィルム(G6PD用)の溝に添加し(1-2 ul)、このゲルフィルムだけ先に電気泳動を開始する。LDH、NP用のサンプルのチャージと電気泳動はそのあとで行う。
- サンプルの融解後、ゲルフィルムにチャージしてから泳動を開始するまでの時間が短いほどG6PDのバンドは出る。
3)結 果
- JCRB細胞バンクでは,動物種の同定に,G6PD(Glucose-6-phosphate dehydrogenase), LDH(lactate dehydrogenase), NP(nucleotide phosphorylase)の3種を使用している.
- ヒトのG6PDはtype A と type Bがあり,type A はHeLa 細胞特有のバンドとされているので,このパターンがHeLa細胞以外から検出された場合はHeLa細胞によるクロスカルチャーコンタミネーションが疑われる.このような場合は,染色体分析及びDNAプロファイリング法(Honma,M.et.al.In Vitro Cell.Dev.Biol.28A:24-28;1992, Kataoka,E.et.al.In Vitro Cell.Dev.Biol.28A:553-556;1992)により詳細な分析をおこない確認する.
◆WWW上での結果の表示
- 各細胞株の個別情報中のImages の項にある「Isozyme」をクリックすることにより写真情報が表示される.酵素ごとに独立したゲルのパターンとして得られた画像をフォトレタッチソフトウエアによって1枚の画像に合成する.
- 該当データが無い場合は,今後画像データを作成する予定であることを意味する.
アイソザイム写真データの表示例
アイソザイム分析結果参考例
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