培地,培養液

培地・培養液の調整法

JCRB細胞バンク:大西清方
cellbank@nihs.go.jp
1995.Nov.27


高等動物由来の細胞培養に使用する培養液(培地)は, 緩衝塩類溶液(Balanced Salt Solution = BSS)を基本溶液とし, これに種々のアミノ酸, ビタミン類および各種動物血清などを加えて調製する.

汎用される培養液と調製法


高圧蒸気滅菌可能な粉末培地の使用法


保存培養液の一般的な調製法

  1. 使用前に室温,または 50 ℃ 以下の乾燥機に瓶ごと入れて常温に戻す.常用量として 1 L 分 を秤量し,200〜300 ml のビーカーに水を 8 分目程度入れて,マグネチックスターラーで撹拌する.

  2. 1 L メスフラスコに水を 600〜800 ml 入れ,ビーカーの内容物をメスフラスコに流し込む.約 50 ml 程度の水で 5〜6 回ビーカーを洗い出し,全量をメスフラスコに流し込む.その後水を足して目盛り線を合わせ,スターラーにより約 30 分ほど撹拌する.

  3. 100 ml のメスシリンダーを使用し,正確に 100 ml ずつ 10 本のガラス瓶に分注する.綿栓またはスクリューキャップをつけ,蓋をゆるめて高圧蒸気滅菌する.綿栓を付けるときはアルミ箔、または硫酸紙などで瓶の口を覆う.滅菌時間に注意し,瓶が均一に且つ充分に加熱されるよう注意する.

  4. 高圧蒸気滅菌器の圧力が十分に低下してからガラス瓶を取りだし,スクリューキャップの場合 はきつく締めてから、瓶に培養液の種類,日付を記入して無菌室内のガラス戸棚に収納して室温で保存する.綿栓を付けたガラス瓶で滅菌した場合は,高圧蒸気滅菌したシリコン製のゴム栓に付け換えておく.なお、瓶を無造作に扱い瓶中の液体が蓋に付着しないよう注意を払うこと.

  5. 使用に際しては,表7に従って規定量のグルタミン,NaHCO3 その他を必要に応じて添加しなければならない.

無菌試験


市販粉末培地を使用する際の注意点

  1. 合成培養液一覧表に記載されている培地で,粉末の製品を購入するときは,その包装単位を確かめねばならない.通常は1L,5L,10L 用のアルミ箔ラミネート包装になった製品である.粉末培地を溶解するときは,アルミ箔ラミネート包装の内壁に付着した粉末も全て水で洗い出して溶解しなければならない.

  2. 使用頻度が少ない培養液を調製するのに,大容量の包装単位の粉末培地を購入するのは不経済である.また大容量の包装単位から小出しして使用することは,品質の安定性を考慮するとき好ましい方法とは言えない.

  3. 大容量用の粉末培地,例えば10L 用の粉末培地を購入したときは,5又は10倍濃縮した培養液として2L 分を調製して 200 ml ずつに分注しておくなどとすると便利である.溶解した培養液は密栓して−20 ℃で凍結保存し,実際に使用するまでグルタミンや重炭酸ナトリウムなどを添加してはならない.培地中の金属イオン成分が炭酸と錯塩を作り不溶性の沈殿を作るためで、濃縮培地では特にこの注意が重要である.

  4. 使用するときは 200 ml に小分けした瓶1本を温水で解凍し,正確に希釈して1L とする.希釈後規定量のグルタミン,重炭酸ナトリウムなどを添加する.オートクレーブをかけられない培地の場合は、添加後0.2umのメンブランフィルターで濾過滅菌する.

    オートクレーブ滅菌する場合はグルタミン・重炭酸ナトリウムを添加する前に滅菌する.

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