ヒトiPS細胞の継代の手順
JCRB細胞バンク:古江-楠田美保
Last update: 2009.Apr.2.
印刷用
準備するもの
- 液体窒素
- 25cm²フラスコ:Corning #430639(注1)
- 0.1%ゼラチン溶液:ミリポアEmbryomax #ES-006-B
- MEF用培地
- ヒトiPS細胞用培地
- ヒトリコンビナントFGF-2:Sigma F0291
- 15ml用遠心チューブ
- 50ml用遠心チューブ
- 37℃ウォーターバス
- マイトマイシンC処理済みC57/BL6 mouse embryonic fibroblast(MEF)(液体窒素保存)(注2)
準備
- 25cm²フラスコに0.1%ゼラチン溶液を2mlずつ入れる.
- 37℃インキュベーターに30分静置 (室温の場合、2時間以上).
- MEF用培地を作成(注3).
- ゼラチン液を吸引.PBSにて洗浄.各フラスコにMEF用培地を4mlずつ入れ る.
- 15mlチューブにMEF培地を9ml入れる.
- 液体窒素に入れたまま凍結MEFバイアルをクリーンベンチ近くに持ってくる.
- バイアルの蓋をクリーンベンチ内で開けてバイアルのN2を抜く.
- 37℃ウォーターバスに入れ、半分ぐらい溶解状態でクリーンベンチ内へ移動し、MEF培地でピペッティングしながらすばやく溶解.
- MEF浮遊液を15mlチューブに入れる.
- 1000rpm で3分間遠心
- 新しいMEF用培地にMEFを浮遊させる.
- MEF細胞浮遊液を1mlずつ各フラスコに入れる.
- MEFをCO2インキュベーターに入れて、24時間培養.
- MEF用培地からES用培地(FGF-2なし)に交換し、24時間培養(注4).
細胞継代
- 培地を吸引する。
- 1unit/ml Dispase (Roche/ 解凍後3日以内に使用)を1ml入れる(注5).
- 3~10分間(注6)、37℃・CO2インキュベー ターに入れてインキュベーション.
- Dispaseを吸引.
- ヒトiPS細胞用培地10mlを入れて、10mlピペットをつけたピペットエイ ド(強にする)で培地を吹きかけるようにしてコロニーをはがす(できるだけ回数を少なくする。2回程度のピペッティングでコロニーがはがれないような場合は、セルスクレーパーを使用してコロニーをはがす).
- 顕微鏡でコロニーの分散状態を確認する.
- 15mlチューブに細胞浮遊液を入れて、2分間、300rpm にて遠心(大きいコロニーのみを回収する).
- 新しいヒトiPS細胞用培地を入れて細胞浮遊液とする(ピペッティングはしない).
- MEFの培地を吸引.
- 各フラスコに細胞浮遊液を入れる (Splitの割合は株による).
- 顕微鏡でコロニーの分散状態を確認.
- 24時間、CO2インキュベーターに入れて培養.
培地交換
- 接着率が悪い株の場合、翌日の培地交換は行わない場合もある.
- 培地交換に必要なヒトiPS用培地をチューブに分取し、FGF-2を入れる.
- 37℃ウォーターバスで培地を温める(注6).
- 細胞の状態を顕微鏡でチェック.
- 温めた培地を取り出す.
- フラスコの培地を吸引.
- 温めた培地を入れる.
- 細胞の状態をチェック.
- CO²インキュベーターに入れて、培養.
- 基本的に毎日培地交換を行う(注7).
注
- メーカーによって細胞の生着率や継代時のディスパーゼの処理時間な ども変わってくる.BD、スミロンは、Corningとほぼ同等.
- 成育医療センター樹立iPS細胞は、C57/BL6マウスのMEFを使用して樹立されている.市販のものでは、マイトマイシンC処理済みHygro Resistant Strain C57/BL6(ミリポア)が使用可能であることを確認している.MEFバイアル1本を30枚の25cm²フラスコに播種している.ただし、ロット差があるため、新しいロットの際には、密度を変えて播種してチェックする必要がある.
- high glucose, L-gluthamine、10%牛胎児血清(ESグレード)含有DMEM
- MEFは播種してから24時間後では十分に広がっていないため、2日後以降に使用する方が望ましい.継代する前に、事前にヒトES用培地に交換をしておき、MEFをヒトES培地になじませておくとよい.
- Dispaseの活性は解凍後3日以後急激に低下する.細胞分散の処理時間を一定にするためには、要時解凍して使用するのが望ましい.また、提示されている酵素活性が同様であっても、会社によって微妙にその活性は異なる.当細胞バンクではRoch・Dispase 1unit/mlで使用できることは確認している.MEFのロットによって、Dispase 1unit/mlx1mlでは、細胞がはがれてこない場合もあり、その場合には2mlに増やして時間は10分以上は作用させないようにする.
- Dispaseに対する感受性は株によって異なる.新しいロットのDispaseあるいは新しい細胞株の場合には、まず、3分37℃で処理して顕微鏡でコロニーの状態を確認する。ES、iPS細胞のコロニーのエッジが光って、少しだけ丸くカールしていたら、すぐにDispaseを除く。コロニーが巻きあがるようにカールしている場合には処理時間が長すぎる.その場合、簡単に揺らしただけでコロニーがはがれてしまう可能性があるため、Dispaseは吸引せずに、培地を加えて遠心してディスパーゼを除く.2~3回培地で洗った方が生着率が良い.
- 平日は毎日培地交換を行うが、週末は土曜日か日曜日のどちらか1回のみにしている.ただし、その場合、コンフルエントでない状態にしておく必要がある.
cellbank@nihs.go.jp