《山田報告》
(グラフ呈示)HeLa-S3は翌日の観察(22時間後)で2個になっているものが50%程度、45時間後に2個になったものが50%程度で、それ以後およそ24時間毎に観察すると、それぞれが直線的に増殖し、多くの細胞はほとんどこの間に入ってきます。例外として2個の細胞が114時間の観察でまだ3個にしかなっていません。 40個の単一細胞からスタートしたものを平均しますと、Time lag4時間、世代時間26時間となります。NIHT-5の場合には、136時間の観察で細胞40個から、全く増えない1個のものまで、個々の細胞が種々の増殖度を示しております。ガラス壁面に附着した30個の接種細胞中全く増えなかったものが6個で中2個は途中でガラス面から剥離しました。すなわち、NIHT-5の1集団の中で個々の細胞の増殖度に大きな差があるわけです。全くふえなかった細胞が6個といってもfinal populationでは1%以下となるわけですから、新しくTrypsin消化をして、継代すると、p.e.から考えて半分は又コロニー形成を認め得なくなるわけです。 なお、136時間に5個以下のものは殆んど60時間以降ふえていないので、単にtrypsin消化の影響だけ(一次的な)で増殖がストップするのではないことが判ります。(集団としてのT.L.27時間、G.T.30時間) それ以後、現在手がけていることは;
:質疑応答:
[安村]そういうときは、マウスの種を変えて、たとえばAとBとして、Aに発癌させ、AとBとのF1にその癌をかけてみるとかかるが、Bにかからない−というようなやり方ではっきりさせられます。 [勝田]細胞1ケだけのColonyで、増えないという場合、他のColonyからこぼれて、1ケだけ着いた形になったという場合もあり得るから注意をして下さい。それから、2nと云われますが、数は2nでも核型はどうなのですか。 [奥村]2nだから正常といえるかどうか、核型もちがうことがあるし、たとえ同じとしても前癌状態に入っていることも有り得る。2nは必要条件であって充分条件ではないので、2n=正常とは云えませんね。 [山田]2n=正常とは考えていません。まず2nは必要条件ということからはじまって、これから正常とは、ということへ入って行くつもりです。 [奥村]正常性の証明の手段として2nをもってきてはいけないと思います。正常性を検討するつもりなら、2倍体を維持した長期継代の細胞より、初代に近いものを多く使う方が良いと思います。 [安村]初期の細胞をまいて、2nでない細胞系を作ってみて悪性をしらべたら、染色体との関係が少しは判るでしょう。 [山田]染色体だけで見て行けばそういえると思いますが、癌にならない系の裏付として2nの細胞を結び付けてみています。
B)培養細胞の復元成績:
C)L株亜株L・P3細胞へのコバルト60γ照射:
[関口]Waymouthの処方でもLeucineを入れてないものがありますね。やはり培養細胞と生体全体とでは必須アミノ酸がちがっているのでしょう。 [黒木]この映画のようなことが行われているとしたら、双子のparabiotic cultureでしらべた増殖曲線でももっと差が出て良いのではありませんか。 [安村]Contact inhibitionも、培養法によって、その性質を得たり失ったりするでしょう。 [黒木]なかの黒い顆粒は何ですか。 [勝田]中性赤で超生体染色される顆粒、三田村先生がmetachondria(顆粒体)と命名され、今日一般にはLysosomeと呼ばれているものに一致すると思います。 [奥村]顆粒の単位で、肝癌が正常細胞から物を取るという所がはっきり判らなかったのですが・・・。 [勝田]一ケ所ははっきり見えた筈ですが、他のは解析してみないと正確には証明できません。但し顆粒の単位で移って行かなくても、正常細胞内で液状(位相差で見えない状態)のものが、肝癌内に吸いとられてから顆粒状になって核の方に進んで行く場面は沢山見られたでしょう。肝癌は要するにcytosis作用で正常細胞の細胞質の中から色々のものを吸収しているわけで、その吸取る場所と吸取られる場所はどちらもEndoplasmic reticulumから通じている細胞質の穴のところだと思います。 [山田]細胞内では色々な構造が恒久的でなく、変るものと考えてよいと思います。 [勝田]Mitochondriaなんか切れたりくっついたりしています。 [山田]放射線照射の場合ですが、培地組成をうんと簡単にしてX線などをかけると変異がはっきり出るでしょう。 [寺山]変異とは単に栄養要求が変っただけのものを変異と呼んでも良いのですか。 [安村]菌の場合は呼んでいます。そしてその変異したもののDNAを親株にかけて、親株を変え得るなら、たしかに変異株と云って良いでしょう。 [土井田]大きな場合は染色体の単位、小さな場合はgeneの単位の変異をmutantと云います。マウスの骨髄に計900r照射するのに、100r/min.でかけると、50%変異が現れますが、1〜2r/min.では0〜8%にすぎません。前者では細胞が殆んど死にます。そして残ったわずかのものが増えてくるので変異が認め易いのですが、後者では死ぬのが少いので変異が認めにくいのです。しかしgeneには変異があるかも知れません。照射量の少いときは一旦切れた染色体が、またくっつくという場合があり、そのとき必要なenergy源を供給せずにもう一度照射すると矢張りやられてしまいます。 [安村]大量照射の場合は、ほとんどの細胞がやられますから、変異というよりselectionということの可能性の方が大きくありませんか。 [奥村]集団として仮に2,000r.かけた場合、変異を起すと一応皆生きられない筈です。たまたまその変異した内の何ケかが生き延びて増えた場合は、変異型というわけですが、その2,000r.に対して初めから耐性のある細胞が残った場合はselectionによるものと考える。後者の方が前者の場合よりcolonyの形成が早いです。 [土井田]Selectionはspontaneous mutantを拾ったものと思います。そしてこの場合X線はselectorの一つと云えます。
前号につづきAH-130(腹水肝癌・動物株)による腫瘍発現性の検討を行っています。
Exp.No.3は3匹しか仔が生まれないで注射後全例死亡して失敗しました。 :質疑応答:
[寺山]組織量として50mg必要です。(wet weight) [山田]それなら培養細胞でも代謝はみられますね。1gまでとれますから。 [勝田]肝癌になるとDAB代謝がないというのは何かの酵素系がなくなるためでしょうか。それから腎臓の細胞の培養でもDABが減少するのはどういう訳でしょう。 [寺山]腎も肝の1/10位の機能があります。DAB-methylaseをみているのか、DAB-reductaseをみているのか良く判りませんが。 [山田]連続投与していることはselectしていることになりますね。 [佐藤]DABに耐性の細胞から癌が出てくる可能性があります。 [寺山]n-oxideは腹腔内接種すると毒性が強いです。 [高岡]映画のEhrlich細胞の動き方は、露出間隔のちがいを考えると、うちで撮ったAH-130の動きよりおそいようですね。 [山田]Lで走行距離を計算している報告がありますね。
Hamsterは次のように分類されます。
chinese h.は特殊な目的(染色体)に、european h.は日本にいないそうです。Syrian h.は通常毛の色が黄褐色ですのでGolden h.又はSyrian golden h.と呼ばれています。この他Syrian h.にはvariantとして、albino、Pandaの二型があります。すなはち、Syrian h.はgolden、albino、Panda、となります。 今回は、これらのうち、albino型が実中研より入りましたので、吉田肉腫を100万個から100個inoc.し、Goldenとの感受性の比較を行いました。8/11'63移植ですので、まだ最終的な結果は分りませんが次の様になります。
IV.Cortisoneの影響(Exp.192 8/11 inoc.) 異種移植にCortisoneを用いたのは、Toolanが最初です。(1953) その後異種移植の際は、必ずと云ってもよい程、Cortisoneが使用されるようになり、その効果は確認されています。Foley,Handlerらの報告によりますと、Cortisoneの効果は細胞数にして平均10倍(0〜100倍)程度のようです。(HeLa、KBはCortisone処置とは関係なく1.0x10で(+)) この実験は、吉田肉腫を用いてCortisoneの効果をみたものです。恐らくtransplantabilityと増殖経過の両者に関係すると思はれますが、まだ、実験開始後1ケ月ですので、前者についてのみ記します。 Cortisone処置の方法はFoley,Handlerらの方法に従いました。即ち、移植直後より週二回、Cortisone acetate(日本Merck萬有“Cortone”25mg/ml)を2.5mg(0.1ml)/Hamster、皮下に注射します。この実験では0、3、6、11、14、17、21、24、27にinj.しています。
V.YS 1000個−非処置Hamsterの再実験(Exp.194 8/11) 第一報(月報6310)で非処置HamsterにYS 1000個inoc.のときの成績は0/8(I=4、II=4、III=0、IV=0)と100個の3/8、10個の1/8に比較して移植率が低かったため、やり直しを行いました。前回のHamsterは生後26日、体重62、58、56、70gです。今回の動物は生後45日、体重72、70、80、74gとやや大きいものです。その結果は8/10と可成りよい成績です。異種移植のDataはばらつき易い傾向があるのですが、それにしても一寸ひどいようです。
Cheek pouch移植法の仕事は、吉田肉腫についてやっと一通り終ったところです。今後の方針としては次の様なものがあります。
[奥村]種別の組合せによってずい分ちがうでしょう。 [勝田]正常の細胞もやってみて、質的なちがいがあるか、数的なちがいだけなのかも調べて頂きたいですね。消える前に次に植継いだりすることも・・・。 [山田] コブができていても組織学的にみると殆んど正常細胞しか残っていないことがあります。 [安村]そのコブがハムスターの癌になっていて、もうラッテへは戻らなくなっていたら困りますね。 [奥村]やはり同種の動物に復元することが望ましいと思います。 [安村]ハムスターという動物の良し悪しでなく、hamsterの“cheek pouch”が特異的に免疫学的に適当ということです。それから前回の月報での勝田批判への釈明ですが、1)脳内接種と皮下接種の比較は、前のデータは脳内へは5,000ケ、皮下へは100万個と、入れた細胞数がまるで違うので、必ずしも同じ見地からは比べられません。2)生後24時間のマウスと1週のマウスとは、違いがあることもあり、無いこともあります。 [黒木]それは細胞によってもちがうでしょう。吉田のように増殖の早いものは違いが少いですが、7974のようなのでは24hrの方が48hrよりつきが良いです。 [安村]自分のデータでは、果糖肉腫では皮下より脳内の方が感受性が高いです。 [佐藤]発生した臓器にもよらないでしょうか。 [黒木]癌になると臓器特異性はなくなるのではありませんか。 [勝田]私のparabiotic cultureのデータでは、やはり(肝癌←→肝)(肉腫←→センイ芽細胞)という関連が見られます。安村君にやってみて頂きたいのですが、正常細胞と癌と色々な割合に混ぜて接種したらどうなるか、データをとってみて下さい。腎細胞と果糖肉腫とか。 [安村]やってみましょう。おそらくfeederになってtakeがよくなるでしょうね。 [勝田]Goldblattたちがembryoの組織を使ってやってますが、cell countはとっていません。
此の結果、全経過を通じて、核数増加と考えられるものは、分母:全試験管数、分子:核数増加の認められた試験管数として、対照:1/42、DAB7日添加:6/42、DAB継続添加:3/42、と云ふ事で、此の増加が、DABによる増殖誘導と考え得るかどうか甚だ心もとない感じはありますが、或は実際に此の程度の割合で増殖が誘導されるのかも知れません。 ☆次の実験を11月10日に開始しました。 実験群は前回と同様の3群とし、実験開始後10日目、20日目、30日目に各回、各群15本づつの試験管について細胞核数を計測して各10日間に於ける核数増加の頻度の大略を知らうとしました。
[奥村]核の染まりの悪いという肝細胞でも生きているのですか。 [勝田]生きているよ。Catalase活性も残っているし・・・。核の染まりが悪いのではなくて、肝実質細胞は他の細胞よりクエン酸に対して強いので、細胞質が残ってそれが染まってしまい、核が見えないのです。 [寺山]DABをくわせて前癌状態のとき、全肝臓の細胞数がふえています。これはnecrosisに伴うregenerationなのか、それとも真の増殖促進でしょうか。 [勝田]東大病理の斎藤氏は前者と考えるようですが、我々は後者と思います。 [山田]DABを長期たべさせたりしないで、肝に直接注入して1回位で早く出来させられませんか。 [寺山]メチルDABのデータですが、ゾンデで週1回大量にやってみましたが出来ませんでした。つづけてやるということに意味があるらしいです。 [山田]伝研製の純系ラッテでDABをやってみたら・・・。
今までの各実験例において、培養したroller tubeの本数に対する細胞増殖をおこした本数を百分率であらわしたものを日齢別に整理して図示すると次の如くなります。(1図を呈示)各日齢において一般に実験群の方が高率になっていますが、特に100日以上では、対照群の増殖が悪いのに比して、実験群では若いところとほぼ同じ様によく、対照との間の差が顕著になっています。これは薬剤の作用濃度、期間などの違った実験例も全部含めてあらわしたものですが、これらの実験例のうち、stilbestrol 10μg/ml、4日間作用だけをとり出して図にあらわすと(2図を呈示)大体傾向としては1図と大差はありません。20〜30日の比較的若いところで実験群と対照群が1図よりもはっきりと分れていますが、勿論数が少いので断言は出来ません。 次に性別に分けてみますと、(3図を呈示)日齢別にみても全体的にみても性別による差は殆んどありません。 又、先頃からmarkしている空胞様変化を伴った上皮様細胞団についてみますと(4図を呈示)100日以上では実験群、対照群とも低率で(尤も3例しかないのではっきりは云えませんが)一方、70日以内のところでは実験群で比較的高率に出たものがあるのに反し、対照群では50%以上のものがありません。4図を1図と比較した場合、1図では全体的にみれば、対照群も実験群も同じく高率のものがあります。しかし4図では対照群では実験群と同じく高率を示した例がないというところに違いがありました。 空胞様変化を伴った細胞自体には増殖能はあまり期待出来ないが、それに混在する上皮様細胞には増殖能を期待出来ると思われるので、今後もこの細胞団はmarkして追跡するつもりです。 それと同時に、前報にも書いた様にも少し長期間細胞を維持出来る様に工夫することに主力を注ぎたいと思います。そのためには使用する動物の日齢を下げるということ、即ち今までは20日以内のものはあまり用いていないので以後は出来る丈20日以内のものを使用する様にしたいと思います。今まで行った実験のうち20日以内のを用いたのは廻転培養2例を含めて3例で、偶然かも知れませんが、例の特徴ある上皮様集団が出ませんでしたが、そのご行った実験では16日のもので実験群に高率に出ています。
[ 杉 ]Hyperplasiaが見られたという報告はありますが、その実験条件は不明な点が多いのです。 [寺山]ホルモン以外に、細胞をattackするということが発癌では大切です。 [安村]Stilbestrolが上皮細胞に効いているということを目標にしているのなら、ずっと長く入れておくと無くなってしまうのですか。 [寺山]さっき勝田さんがDABを入れるのに7日以下にしろと云われたのはどういうことですか。細胞がやられる位の方が発癌の可能性があるのではありませんか。動物に食わせるときも、初め1ケ月位、肝細胞がどっとやられて、それから新しいのが出てきて、半年位で肝癌になるわけです。 [伊藤]細胞がやられてしまわない内に一寸やめて、又入れる、というのをやってみようと思っています。 [高岡]動物ではDABを休み休み6ケ月位投与すると如何ですか。 [寺山]Total doseのDABが投与されれば、期間とは無関係に発癌するという人がありますが、しかしやはり或程度期間と関係があって、Total doseだけではないと思います。途中で休むと癌ができないですね。 [安村]Tumorは徐々にふえて大きな癌になるのですか、それともsleepingしていて急に増大するのですか。 [奥村]DABを加えて起るdamageに対する再生がくりかえされることによって癌になるのではありませんか。 [関口]肝癌の場合には質的な特異性があると思います。単なる再生のくりかえしから起るとは思えません。 [山田]再生肝(肝部分切除)をくりかえして1年つづけたが肝癌になりませんでした。生体では1回の刺戟で出来ることもありますが・・・。 [黒木]初代でDABを連続投与して、継代したとき壁につかなかった、という細胞は死んでいるのですか。 [勝田]判りません。その着かない細胞に悪性化したのがいるのじゃないか、と山本正氏も云っていました。 [黒木]腹水肝癌各系の中には硝子につかないのが沢山あるのですからね。 [佐藤]幼若ラッテはDAB代謝能が弱いのではありませんか。 [寺山]そうです。4日間だけ投与してまた新しい培地にかえると、折角そこでmetabolicalに変っていたものが、また戻る可能性があります。 [勝田]つまりn-oxideを使うと良いだろう、ということですね。 [佐藤]ラッテの肝細胞に長期間加えるとどうでしょう。増殖させない状態で。
1930〜1950年代の文献から用語、核型のあらわし方、などについての解説(省略)
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