《勝田報告》A.発癌実験:
なお、Prof.Moskowitzのいうaggregenを作ると、その内部でcollagen fiberの形成される可能性もあるので、まずこの武田肉腫でそのテストをはじめている。うまく行ったら、さらに、かの吉田肉腫でもそれを試み、これらがfibroblasts-originの細胞であることを証明してやろう、というのである。 Tumor cellの増殖率がある程度以上(例えば10倍/w.以上)の培地を使って培養しないと、どんな正常細胞と組合せてみても、そのtumor cellsの増殖が促進されるような結果になる。例えばAH-13がそうであったので、武田肉腫の検討を慎重にしている訳である。
[勝田]RLH-1は増殖度が高いので、あっという間に純培養になりました。RLH-2は増殖度が低いので、大分長い時間がかかりましたが現在では純培養になっていると思います。 [奥村]映画でみた後の二つの?も変異しているのではないでしょうか。効率はかなり良いですね。 [勝田]だけどtube数からいうと、まだまだ少ないでしょう。それに〈なぎさ〉帯は非常に狭いzoneだから、なんとかもっと大量になぎさ細胞のできる方法を考えてみたいと思います。dinitrophenolも培地に入れてみましたが結果は余り良くありませんでした(なぎさ様の細胞にならなかった)。 [土井田]Colonyの中の部分の方が増殖が早く、まわりに押されて独りになると増殖が落ちる、というようなことがありますか。 [勝田]Mutantのできはじめにはそういう傾向があるかも知れません。 [山田]変異という言葉の意味になるかも知れませんが、腫瘍化ではなく株化の経過を見ていることにならないでしょうか。 [勝田]しかし普通の株で、こんなに異常分裂が沢山見られるかしら・・・。 [山田]RLH-1も変異の時期をすぎて安定すれば異常分裂がなくなるのではないですか。 [勝田]RLH-1はもう安定していて、染色体も69本に安定していますが、いまだに異常分裂は沢山みられます。 [黒木]?のついているmutantらしい細胞もピペットで吸取って、RLCのcell sheetにレントゲンをかけたものの上にでも播けば増え出すのではないでしょうか。 [勝田]そうかも知れないとは思いますが、初代培養を主体としたいと思っていますから、今の段階であまり手をかけたくないのです。 [奥村]この先をどう展開させるおつもりですか。たとえば培養内で変異したものを動物へ復元する場合の問題など・・・。 [勝田]数多くもっとやってみたいと思います。その内一つ位つくのが出来るかも知れませんから。それから現在までにできているMutantsについては、もっと色々の動物に復元してみようと思います。 [関口]なぎさ細胞とそうでないのと別にとり分ける方法がありますか。 [山田]カバーグラスにキズをつけておいて、折れば良いでしょう。 [関口]digestionの問題がすぐDNAと関係するかどうか・・・。lysosome(cathepsinなど)の活性の問題ではないでしょうか。つまりDNaseなどとは別ではないでしょうか。 [勝田]いま使っているのはhomogenateですが、今後はこれを分劃して、DNprotein、DNA・・・というレベルでやって行きたいと思っていますから、そうすればそのことは次第にはっきりしてくる訳です。現在、大切なのは、復元接種で〈つく〉ということです。さっき奥村君の云ったように、transformationとin vivoでつくということの間の壁が問題です。 [奥村]Malignantということを主題とするには“つく”という段階の検討にも力を入れる必要があるでしょう。 [勝田]takeされるようなmutantをselectする、そのselectionの方向が問題です。方向がいちばん大切と思います。 [山田]勝田さんの方法は非常に正攻法です。 [黒木]RLH-1はラッテ血清でどうなりますか。 [勝田]どんどん細胞がこわれてしまいます。それが、馴らして行くとだんだん増えるようになりました。ラッテ血清はどうも色々な大抵の細胞によくないようです。 [山田]人血清を使っていての問題で、これは荻原氏の実験ですが、どうも具合の悪い血清があるので、それをしらべてみたらB抗原のあるのが良くなかったということが判った。そういうことからも、isoのものでは反って悪い結果を及ぼすことがあるのではないでしょうか。 [黒木]癌の場合にはそういう抗原抗体反応は無いのではありませんか。少くとも移植に関しては良く判っていないのではないですか。 [奥村]そうとも云えないのではないかと思います。 [勝田]Moskowitz氏がRLH-1をaggregateにして皮下などに入れるとtakeされるのではないかと云っていましたが、たしかにそれも一案と思います。
《黒木報告》ハムスターチークポーチ内移植法の基礎的検討:
前報でRLH-1細胞をch-p内に移植したときの経過を報告しました。その経過からみて、一応移植細胞が増殖した率は次表のようになります。
このED50(50%effective dosis)を求める方法は母集団が正規分布をしているときには、Mean、Mode、Medianと一致し、もっとも精度の高い方法です。この方法を用いると更にED50の信頼限界、二直性の平行性、効力比の有意性の検定も行うことが出来ますので、今後、実験腫瘍の分野にもっと取り入れられてよい方法であると思っています。 (RLH-1細胞のTPD50の計算式を記述)RLH-1のTPD50は5.0x10の3乗(1,000〜24,500)であった。 (20)RLH-1の組織像 前々回報告したRLH-1の組織像は無処置ハムスターのものでした。しかし今度コーチゾン処理のを作ってみたところ前と大分趣きを異にしていることが分りました。(スライドを呈示) 1)反応の仕方:無処置のものには強い細胞反応がみられたがコーチゾン処置のものには殆んどみられない。中心部necrosisは同じようにみられるがいくらか軽い。 2)移植細胞:形態は大分違う。無処置のものは空胞が多く弱々しかったがコーチゾン処置のものは核も原形質もしっかりしている。ところどころに胞巣を形成している。又血管内に侵入している像もみられた。 異種移植でこのような胞巣がみられるのは珍しく、文献的にはKoike,A. Moor,G.E. Cancer,16,1065-1071,1963が記載しています。 RLH-1は悪性と云う感を強くしましたが、いかんせんheteroでは、ここまでが精いっぱいです。Homoでtakeさせることが第一でしょう。
[山田]前にうちに居た男が、spongeに細胞をしませてラッテの中に入れておいたら、spongeの中の細胞が、それぞれHeLaはHeLaらしく、LはLらしく構造ができていました。 [高井]Tumorができた、という判定は何日目にするのですか。 [黒木]別にきめてありません。出来たことを確めて色々処置をするのです。 [高井]大きさはどの位にまでなりますか。 [黒木]RLH-1では1cm位にはなります。cortisoneの接種量はラッテなら2〜3mg/100g、2〜3回/wやりますが、2週以上つづけてやるときはこの量では多すぎます。感染を起さないように抗生物質を併用する必要を痛感しました。 [勝田]肝癌細胞を入れると、やはりalveolar structureか何かできますか。 [黒木]マウスの肝癌を入れてみましたが、まだ組織標本ができていません。
《土井田報告》新生児マウウえのL細胞の移植実験:
T-2:CBA系マウス 8月6日生まれの計5匹のマウスにL細胞を6日、10日11日の3回腹腔内に注入した。8月15日終日停電断水した。8月16日、母親はじめ全部死亡、死亡の原因は不明。 T-3:NH系マウス 8月8日生まれのマウスにL細胞を同様に注入した。接種細胞数は8月10日に240万個、8月11日に140万個。 A・8月10、11日に接種し8月21日観察中に死んだので、直ちに腹水を採集したが、採集できなかった。次いで解剖し、腎、肝、脾臓、および小腸を培養した。L細胞を検出することを目的にしているので、培地は5%牛血清を含むYLHを用いた。以後3〜4日目毎に培地の交替をしているが、その間小腸壁を培養したものに軽度の感染が起ったので、ペニシリン・ストマイを加えて感染を抑えた。 脾臓を培養している瓶で、図に示したような(写真を呈示)細胞がみられた。(測定したわけではないが、目安で)もとのL細胞よりやや大きく思われる。この細胞がLか否かを染色体を手懸りに調べようと考えているが、生育が思はしくなく、現在(9月20日)やや退化の方向に向っている。 B・は同様に8月10日、11日に接種し、8月27に死んだが、死亡時刻が定かでなかったので、腎、肝、脾臓および小腸をCarnoy第2液で固定し、パラフィン切片を作成した。組織標本はHaematoxylin-eosinで染色した。組織に変性があるか充分検討していないが、死後時間をへているためか、分裂像はみられていない。 今後、無処置の新生児マウスの組織標本を作成し検討しようと思っている。 C・8月22日に死んだcontrolは、死後解剖したが死因は不明であった。他の個体にくらべ生育がおそく、授乳不足か何かが原因であろうと思われる。 RLH-1の染色体: 先月につづいて核型分析を続けている。RLH-1を特長ずける染色体はみられていない。dicentric chromosomeを有する細胞や最長の染色体と同じか、それよりやや大きい長さを有するacrocentric chromosomeなどもみられたが、いづれもRLH-1を特長ずけるものと考えられない。 dicentric chromosomeを有する細胞は染色体数68であることが多く、このことより、RLH-1の確立後生じたものと思われる。(dicentric染色体の有る2n=68と、acrocentric染色体の有る2n=69の核型分析を呈示)
[山田]たとえばLでも正常のマウスの染色体を残しているのに、RLH-1の場合には全部の染色体がかわるということを考えなくてはいけない訳です。しかも大体2本宛対になっているということはどういうことだろう。 [奥村]〈なぎさ〉の辺で6倍体とか8倍体が一杯できて、それが元になってできたのではないか、とは考えられます。 [土井田]正常なものと、この全く変った染色体の核型との移行がどう行われたかは、創造するほかないが、現在のRLH-1は非常に安定した核型をもっています。 [奥村]むかし武田肉腫の腹水をしらべたことがありますが、V型が多かったです。 [土井田]人の染色体で、モンゴリズムの場合、Gの21、22あたりの染色体の下半分だけ移るのがあります。こんなのは見かけは46本ですが、pseudo-diploidという訳です。 [勝田]RLH-1の場合、今後はどうしてこんな核型になったか、その過程を想像してみて欲しいですね。 [土井田]私はこうなる途中の細胞を分析してみたいです。 [勝田]ところが途中で染色体標本を作ってしまうと、そのしらべた細胞の子孫が得られないしね。 [奥村]でもやっぱり、あのなぎさの所の細胞がどんな核型か、ということを見てみた方が良いですよ。多分非常にhighploidyのものがあるのではなかろうか。 [勝田]さっきslideで紹介した論文の内、一寸云い落したのですが、micronucleiの場合それがどんなに小さくても、核小体様のものを含んでいる場合にはDNA合成をする。しかし持っていないものは合成しない。だが合成しても、それは母核の分裂とは無関係で静止核のまま居る、ということです。とにかく分裂にRNAが、特にDNA合成に密接に関与していることを物語っていますね。染色体が形成されるとき、核小体のRNAが各染色体に分散されるのではあるまいか。micronucleiというのは分裂のときの、chromosome fragmentsが静止核になったとき出来るのだから。 [土井田]植物では特に仁染色体というのがあって、何番目と何番目に核小体がくっついているということが判っていますが・・・。 [山田]この核型をみていると余りきれいすぎるので、その移行が考えにくい。 [勝田]私はまずendoreduplicationでtetraploidができて、さらにoctoploidになり、それが3極分裂したのではないかと想像するが、どうでしょう。とにかく3極分裂する細胞は大きさがとても大きいですからね。 [奥村]そう考えて考えられないこともありませんが、一寸考えにくいですね。というのは3極分裂にもホモとヘテロとあって、若しそのようなことが起るとしたらそれはhomoでしょうが、homoというとその頻度は物凄く少いですから。それからmetaとacroの比率をとってみますと、大まかに人、猿とかマウスとかわけられます。それで傾向をみると、RLH-1は人や猿に近い方になってしまいます。 [黒木]この細胞で3極分裂の頻度はどの位ですか。 [勝田]かぞえてありませんから正確な%は判りません。しかしタンザクのcultureで、いつでも1枚に1ケはつかまえられる位です。 [山田]HeLaなんか何百に一つ位しかない。 [土井田]3極分裂した細胞がまた生き残るというのが僕らの常識ではあまり考えられませんね。 [奥村]生体では有り得ると思います。 [勝田]3極分裂のあと、その内の二つがfuseして2核細胞になることが多いですね。それから、なぎさの状態をみていると、3極分裂してなお生きていられる、ということはあります。 [土井田]動物では中心体というのがある筈だから、3極分裂では中心体が三つということを考えねばなりません。でも前にみた映画の中で静止核がfuseするところがありましたが、ああいうことになると、また中心体が倍になる訳ですね。 [黒木]後の方の仕事についてですが、L細胞が新生児マウスのどこかで増殖するかどうかということを見てみたい訳ですね。 [土井田]そうです。 [黒木]腹腔内に刺したのだから毎日でも腹水をとってしらべてみたらどうですか。細いCapillaryならとれる筈ですが。 [土井田]その必要はあると思いますが、子供をいじるとすぐ食われてしまうので仲々大変なんです。 [勝田]皮下へさした方がふくれ具合が見られて良いんじゃないですか。それからこの研究目的は? [土井田]培養細胞を動物に入れると、消えてしまうのは何故か、ということをしらべたいのです。Immunotoleranceを道具にして、培養細胞を戻すということを手掛けたいと思います。試験管内で変異を起すということと、その変異を起したものが動物へ復元して癌を作るということを全く分けて考えたい、と思っている訳です。そしてその片方の、動物に復元して癌を作るという所のmechanismを知りたい、という訳です。
《伊藤報告》
アクチノマイシン0.01μg/ml添加群、0.002μg/ml添加群及び対照群に分けて観察を続けた結果、培養17日目頃で、添加群に変化がみられ始めました。まず第一に気がつくのは対照群ではfibroblasticな細胞が比較的方向性をもってきれいな配列を示すのが普通ですが、この細胞の配列に乱れがみられ始め、更に核のpleomorphismが目立ってきます。此の傾向は日数と共に段々強くなり、35日目ではfibroblasticな細胞は殆んどなくなって、むしろepithelialな細胞になってしまひます。又細胞数も大分に減少しているようです。 残念ながら今回の実験では対照群の20日目以後の標本がとれなかった為、この現象がアクチノマイシンの作用によるものである事を確信出来ませんが、これ迄の経過からみて、まづはアクチノマイシンの作用により此のような変化がきたと考えています。現在、もう一段階濃度をあげて変化を観察しています。 復元時期の点は、今見られたような時期この細胞を集めて復元するのと、一方此の状態で培養を続けて、in vitroでの増殖の盛んな細胞の出現を待って復元する事も考える必要ありと思ひます。
[山田]アクチノマイシンS0.01μg/ml、35日添加のものでは核小体が濃く染まっているのではないかしら。 [伊藤]さあ、はっきりそうとも思いませんでしたが・・・。そうかも知れません。 [勝田]こういう風にWhole embryoを使うとむずかしいですね。はじめから混っていた上皮様の細胞が、fibroblast様のよりも薬剤に強くて、残って行くのであるかも知れないし・・・。1ケ月でアクチノマイシンを除いて、あの細胞を増やして見なくてはね。しかしmouse embryoでは3ケ月培養で悪性化してしまうというのだから、勝負を早くつけなくてはならないし・・・。 [黒木]対照はどの位長く培養していますか。 [伊藤]50日というのがあります。2回subcultureしてあります。 [黒木]50日で2回とは、増殖がおそいですね。 [奥村]btkマウスというのは? [伊藤]微研で増やしているマウスです。 [山田]自分で経験はないが、mouse embryoでは、初めはどんどん増殖するが、1ケ月というともう増殖度が落ちるそうだから、アクチノマイシンSを添加して1ケ月位でどんどん増えるようにでもなれば矢張り変異といえるでしょう。 [伊藤]培養から復元するところの壁を、RLH-1が乗切れないとすれば、RLH-1のように変異して純粋な系になってしまったものでなく、その途中の、色々な細胞の混っている段階のものを生体でselectしてから、動物につくものをふやして系にする、ということも考えてみたらどうでしょう。 [勝田]はじめの出発材料をもっと純粋にとることを図ってもらいたいですね。せめて90%位がfibroblastsというように・・・。 [伊藤]mouse embryoでは皮下組織をとるのは仲々むずかしいです。 [奥村]私のところでは新生児ハムスターでやっていますが、かなりきれいにとれます。皮膚を剥しながらピンセットでくるくると捲きとって行くのです。それをトリプシン消化します。 [山田]Earleのところで、trypsinを使って皮と皮下組織を剥して分けるというのがありました。 [勝田]新生児より若マウスを使ってみたら? [奥村]若いのでは皮下はとてもとれません。細胞がトリプシンでばらばらにならないのです。 [勝田]とにかくこれで伊藤君の仕事は一応方向付けられた訳で何よりです。
《山田報告》Chromomycin A3の作用機構:
A)RNA-dependent RNA synthesisに及ぼす影響: PS-Y15細胞内、日本脳炎ウィルス(JEV)の増殖に及ぼすchromomycin A3の影響を調べた(武田、青山)。細胞のRNA合成をほとんど完全に阻害する2μg/mlのchromomycin A3添加培地内でのJEVの増殖はPSにおけるプラックカウントで測定して無処置細胞群とかわらず、蛍光抗体法によるviral antigen産生細胞の出現頻度も同じである。H3-uridineのとりこみは宿主細胞だけの場合には、この濃度のchromomycin A3でほとんど認められないが、JEV感染細胞では4〜6時間後よりとりこみがはじまり、8時間で最高値に達する。uridineのとりこみはすべて核内で起る。その時間的関係をシェーマで示す。以上の結果は、chromomycine A3がactinomycin Dと同じく、RNA-dependent RNA synthesisを阻害しないことを示している。 B)Chromomycin A3のDNAのtemperature profileに及ぼす影響(山田・大場): 仔ウシ胸腺DNAとin vitroでふった後、東大薬学部にある装置を使ってDNAのtmを測定した。対照としてactinomycin Dを用いた。いづれも4μg/mlの濃度である。図でみられるように、actinomycin Dではtmの明らかな上昇が認められるが、chromomycin A3では認められない。chromomycin A3はmethnolに溶解した後、水で稀釋してもちいるので水溶液でないことが影響しているかも知れないと考え、水溶性のchromomycin Sを用いてみたが結果は同じであった。この成績から、actinomycin Dで考えられるDNAとの結合がchromomycin A3では確證が得られない。そこで現在、in vivoでchromomycin A3を作用させ、そこから得られるDNAのtmについて検討する予定である。 以上の成績のほか、伝研小田氏にvaccinia virus(DNAウィルス)の増殖に及ぼすchromomycin A3の作用を調べてもらい、感染価と共にウィルス抗原蛋白(HA)の合成が阻害されることを観察中である。
[山田]核内でVirusが作られて、それが細胞質へ出るというところが他のものとちがう所ですから、そのためかも知れません。 [勝田]90分吸着というのは長すぎませんか。つまりその間にもうVirusのRNA合成がはじめられていると、準備のできてしまったものにはもはや薬剤が効かない、という可能性は? [山田]よく判りません。 [奥村]Growthのone stepは何時間ですか。 [山田]18時間です。 [奥村]ずい分おそいですね。 [山田]増えている細胞の色々な合成の形態についても、もっとはっきり判らせる必要があると思います。それもまた発癌につながることと思います。 [勝田]RNA virusにDNAが少し混っているという説がありますね。 [奥村]Rousがそうですね。 [山田]僕は知りませんでした。
《奥村報告》A.ウサギ子宮内膜細胞の増殖に対するホルモンの影響:月報8月号にProgesterone、Estradiolが内膜細胞の増殖に何らかの影響を与えているらしいという推測を可能にするデータを報告しました。特にEstradiolが促進効果(増殖に対し)を示し、Progesteroneは投与後2〜10日間は若干促進効果を示すが2週後にはcontrolぐんと殆んど差がなかった。これらの結果を再検討するためとEstradiolの増殖促進効果を詳しくしらべるために以下の実験を試みた。 Exp.1は培地:199+CS20%(全べてのtubeをcontrolと同じ培地で1日培養し、2日目にhormoneを添加。培地更新は6、12、16日(ホルモン添加後)に行った。結果はやはりEstradiolを0.01μg/mlに加えた群が増殖を促進する結果を得た。これは8月号月報の記載の結果と一致することが判った。 Exp.2でEstradiolの濃度と細胞数(植込み)との関係を明らかにしておく必要があるので、それを試みた。植込み細胞数:50,000/ml/tube、培地その他の条件はExp.1と同じ。やはりEstradiol 0.01μg/ml添加による増殖促進を確認している。現在、seed sizeを100,000/mlと10,000/mlの実験を進行中。 次に予定している実験はEstradiolのdoseを0.01μg、0.1μg、1μgにして、又colony formationを利用して細胞レベルでのDNA、RNA合成の分析をする(autoradiographyを用いる) B.JTC-4細胞のGENOME分析の試み: ParentのJTC-4細胞(仮にJTC-4Yと呼ぶ)から度々cloneを分離し、現在まで58ケのcloneを得、そのうち18ケのcloneからrecloningを行い、出来るだけchromosome numberの少ない細胞系を樹立すべく努力を重ねている。しかし、どうもchrom.no.の少ない細胞はかなり不安定のようで、2代目(継代)になると増殖が極度に悪く(2〜2.5倍/1週)しかも3代目にsomplingしてchromosome analysisをするとdistributionが拡がっている。現在苦慮中。cloneの中で最も安定している型はchrom.no.が34〜37本ぐらいの分布をしているもので、この種の細胞は炭酸ガス-airの条件下では8代〜12代になっても若干distributionが拡がるだけで殆んど変らない。 :質疑応答: [勝田]長期継代しているendometrium cellsはありますか。 [奥村]今年の2月から続いているのはありますが、増殖はあまり良くありません。 [山田]実際にcolonyをとるのにはカバーグラスを入れてやっているのですか。 [奥村]いや、シャーレのまま標本を作っています。このごろ底の真平なシャーレを作らせることができたので、それを使っています。 [山田]Colonyのままで10とか15とか染色体をみるのは良い方法ですね。 [高井]ホルモンは何にとかしたのですか。 [奥村]プロピレングリコールです。これは使用濃度では培養に影響ありません。 [土井田]染色体数の少い細胞を継代して行けるのですか。 [奥村]今までは少いのを継代して行くための条件を検討してなかったから、継代できなかったのではないか、と思います。これからその条件を検討すれば継代できる可能性はあります。 :勝田班長: 今後の、近い将来の研究計画を話して下さい。 [黒木]今までの仕事を全部論文にしてから、培養実験として、Rat embryoをはじめからplatingして、4NQを組合せて発癌実験をやってみたいと思います。 [勝田]奥村君の仕事は両女性ホルモンを組合せて使ってみる必要があると思います。生体で完全に片方だけになるということは考えられないのですから。それから高井君は伊藤君の仕事のあとを続けてやってくれるのでしょうか。 [高井]ええ、当分はそのつもりで居ります。fibroblastsだけを純粋にとり出す方法も考えなくてはならないと思って居ります。 [奥村]兎を使うのに一寸音をあげて居ます。高いですから。ハムスターに転向しようかとも考えています。 [勝田]折角基礎データが出はじめたところだから続けてやって下さい。
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