【勝田班月報:6510:培養肝細胞の酵素活性】《勝田報告》
1〜数ケ月間“なぎさ”培養をおこなってから、TD-15瓶に継代し、これに5 or 10μg/mlの高濃度にDABを与えると、3〜4日後の第1回の培地交新のときにはDABが消費されているが、次の3〜4日後の第2回目のとき、非常に多くの例で、DABが消費されなくなっていたことはすでに報告した。 (表を展示)表はDABを加えてから0.5〜1月後に測った第1回のデータと、さらに約3月後に測った第2回のデータで、5μg/mlにDABを加え、約10万個の細胞を4日間培養した後、培地上清をコールマン比色計で450mμで吸光度測定したもので、Blankにはcell-freeでincubateした培地を用いている。第1回測定の際は4例だけが著しい消費を示しただけで、あとは消費能が著しく、或は中等度に低下していた。A株は第1回のときは消費せず、第2回のとき消費を示したが、これと同様のR株とを除けば、他はすべて、第1回のときと同じように、一旦失った消費能を回復していなかった。つまり、この“消費能喪失”はかなり安定した変化であったといえる。これら変異株の染色体数については現在分析中であり、ラッテへの復元接種試験も長期観察を準備している。
ラッテの肝細胞は他の細胞よりDABを高度に代謝することが知られている。そしてDAB肝癌にその能力のないことも同様である。それならばDABに対する抵抗性に於ても、肝細胞は低く、肝癌は強いのかどうか。培地にDABを0、1、5、10μg/mlと加え、各種の細胞について、6日間の増殖に対する影響をしらべた。(10細胞系についての増殖測定図を呈示)
:質疑応答:[奥村]“なぎさ”培養からDAB高濃度に移した場合、細胞は死ぬのですか。[高岡]はじめは余り増えませんが死んで行くのではないと思います。だから分裂を抑えているのではないでしょうか。 [奥村]Synchronous cultureでやってみたら如何ですか。TdRで抑えて揃えて・・・。 [勝田]TdRを大量に入れて揃えるのは良い方法とは思えません。 [奥村]合成をみるだけならよく判るでしょう。 [佐藤]一番困るのはTweenの問題です。Tween0.05でももうこたえる。Tween耐性(株)をつくってやってみたが、大分作用がちがいます。Tween0.05で10μgだから、10μgDABの時のTweenがかなりのshockで、DAB量としてはこれがmaximumでしょう。動物の場合でもオリーブ油などを合わせてDABをかけると、発癌能率が良いという報告がありますよ。 [奥村]Tweenで細胞の表面が変るのですか。 [佐藤]細胞質に脂肪顆粒が出ます。Tweenだけでも出るのです。 [堀 ]Tweenではbasophiliaがなくなるだけでしょう。liver cellだけでなく腹水癌細胞にも同じ作用を示します。 [佐藤]一つ有利なことは、DABはTweenを入れないとよく吸収しない。だからDABを吸収しない細胞はまちがいない。 [勝田]“なぎさ”からDAB高濃度処理ですぐ変異細胞が現れるということは、DAB単独処理で変異細胞の現われるのに要する長い期間の内の、大部分の期間を“なぎさ”が代行するということになります。しかもその作用は似た方向への細胞変化をおこなわせている訳で、DABの作用のいくつかの内の一つは、やはりcatabolic enzymesをやっつけることかも知れませんね。 [黒木]Dose responseの解析はできますか。 [高岡]1、5、10μgDAB添加群の増殖細胞数を対照群の増殖細胞数で割って100倍という式で計算してみたのですが、細胞種による傾向分けははっきりできませんでした。 [黒木]logにとったら良いのではないでしょうかね。0〜1μgはplateauで、それ以後は下がるというような・・・。blankノ吸収はどうですか。やはり450mμにpeakが行きませんか。 [高岡]450mμというのは血清培地と、それにDABを加えたものとの間で、吸光度の差がいちばん大きなところなのです。はじめにそれを測ってから使ったわけです。 [勝田]寺山さんも、この間の班会議のとき、450mμはDABの吸収のところだから、それで良いという話をしていましたね。
《佐藤報告》(表及びShemaを呈示)RLD-10 Strain Cellsを材料として、3'-Me-DAB発癌の再現を行っている表を示します。動物への復元は、C99以外は未だ結果判定日(60〜90日)に達していません。C99を含めてすべての復元動物は未だTumorをつくっていません。A、C、G、以外の実験lineは現在尚実験進行中です。次に再現実験の観察から得られた培養ラッテ肝細胞の発癌?に到るまでの形態的変化をShamaで示します。Shamaの要点は3'-Me-DABを添加すると、顆粒が細胞質に現われる。次いで細胞に空胞が生じて変性する。他方3'-Me-DABに対して耐性をもった様に見える細胞が出現する。この細胞は細胞質に顆粒が見えない。核仁が大きくなっている。この細胞は3'-Me-DABが更に追加されると、又悪性を起す。変性の中に耐性ができ、その結果更に強い耐性細胞が形成される。上記過程を繰り返して癌細胞が形成される。 復元成績については、RLD-10株に3'-Me-DABを添加して悪性化した細胞をラッテに復元した後、再培養した細胞AH-Te-86tについて、ラッテ(新生児)の脳内(i.c)、皮下(s.c.)に接種して生存日数を調べました。AH-66Fを培養して脳内及び腹腔内接種をおこなったもの、JTC-2(AH-130の培養株)を脳内に接種接種したものと比較してみました。
:質疑応答:[勝田]脳内に接種して出来た腫瘤を、ラッテの腹腔に継代接種すると、どうなりましたか。[佐藤]2例やってみました。勿論つきますが、死ぬのにはやはり50日位かかりました。脳内接種で死ぬということと、脳の内にtumorが出来るということは、区別したい。 [勝田]腫瘍性を確めるという意味では腹腔内接種の方がたしかでしょう。脳内接種で死んだのでは、死因が不明確なのでもう一回腹腔に継代してみなくてはなりませんから。 それから、接種細胞数が少ないとき、動物の延命日数にばらつきが大きいように思われますが、 理由として、
この二つが考えられますね。 [黒木]接種細胞のばらつきが大きく影響するでしょう。 [勝田]RLD-10以外の細胞も使ってみる必要がありますね。 [佐藤]だんだん細胞をかえてみたいが、まずは再現性をたしかめてみます。 [勝田]再現性を確めるには、箒星形細胞の株などより、別の実質細胞の株について確めるべきでしょう。 [佐藤]RLD-10の色々な処置群の内、(系図を呈示)左の半分の群がいづれもつかないで右半分だけがつくというのは何故か、ということですが、DABの与え方が影響するのではないかと思います。図では入れ放しのように見えるところでも、増殖具合によって、ときどきDABを抜くことがあったのです。primary cultureでもはじめていますが、1μg/mlでも細胞の消滅して行くことが多いので難しいです。 [黒木]477日→840日の変化は再現できないのが問題ではないでしょうか。また840日後の所ですでに腫瘍化しているのではないでしょうか。 [佐藤]それは考えられますね。 [黒木]primary cultureで1μg/mlが限度ということは、477日位で10μg、800日位で30μg、477−840日の間のDABなしの培養が問題になるのではないでしょうか。 [佐藤]株分けする前に癌になっていたのか、それとも細胞のcontamiがあったのか、という点ですが、枝分けしてできた細胞が夫々かなり違っているのでcontamiでないことはいえるでしょう。10μg4ケ月の方ですが、DABを与えていないからなるべく培地交換をしなかったので、これが問題かも知れません。継代をした方が癌を作り易いのではないか、といま思っています。それから細胞濃度によって、例えば10,000と100,000とで、DABの作用が違うようです。 [勝田]DABの消費具合はどうですか。そんな高濃度に加えていれば、培地交新のとき目でみても判る筈ですが・・・。 [佐藤]まだやっていません。細胞数が違うとものすごく違うから、目で見るのでは問題と思います。癌化した分も測ってみるつもりです。 [勝田]知りたいことは、あの系図のどこで消費が変ったかということですね。 [佐藤]手間がかかって今の方法では出来ません。 [勝田]君の方法は1μg/mlで測っていますが、routineに10μgも入れていれば、変化があればすぐに判るのではないでしょうか。わざわざ測らなくても作業中に判る筈です。 [佐藤]そういう意味なら、今の細胞はほとんどDABを消費していません。それから、この実験はここで中止して、今後は色々の注意を生して、再現実験をした方がいいと思っています。そして実験のときには形態、特に核に念を入れるつもりです。 [黒木]10μgに対する耐性ですが、他のlinesで長期培養したもので、DABに対する耐性がありますか。 [佐藤]primaryで1μgだから、株ならすごく耐性があるとはいえます。しかし10μgの方も完全に耐性というわけではありません。ときには抜いて細胞を増やしますし、継代にも注意しています。 [黒木]primaryからやるときも、10μgまで持って行かなくてはいけませんが、DAB(-)で数百日かかるところを、DAB(+)でどの位かかるかが問題ですね。 [佐藤]殖えるようになったらいいのではないですか。primaryを早く増殖系にもっていくにはどうしたらいいかということも同時に考えています。シャーレのコロニー法を考えています。 [勝田]寒天法はどうでしょうね。効率は悪いけれど・・・。 [高岡]DAB耐性は、株によって個体差がすごく大きいようです。そして耐性は株の培養日数とは一概に結びつきません。 [奥村]耐性とcarcinogenesisと直接関係がないということにはなりませんか。 [高岡]まだはっきり判りません。DAB肝癌ならばDAB耐性かと思ったのですが、そうとは限らないのですね。 [黒木]耐性と消費を区別しなくてはならないということになりますね。 [佐藤]培養日数を長くしたら変ることがあるのではないですか。 [高岡]RLC-5は現在使っている株のなかでは培養日数が長い方ですが、それでも他の株よりも多く消費します。 [勝田]考え方として、消費と耐性とは区別した方が・・・と思います。 [黒木]本来は区別されますね。消費そのものが細胞のdamageと同義的なものならいいのですが。 [佐藤]DABがなくなることは、DABの一定の所が切れたためとは限りません。 [黒木]azobandが切れるということではないのですか。 [佐藤]そうとも限りません。培地でみているのだから、細胞の蛋白にくっつくだけのも、分解されるのも、いろいろあります。 [奥村]耐性とはどういうことでしょうね。 [佐藤]生体でDAB肝癌が出来ることは、少くともDABでやられるような細胞なら存在できない筈で、だから生残る細胞、耐性細胞でなければ、癌細胞とは考えられないということになります。 [奥村]生残ること即ち耐性ということより、非感受性的ということも考えるべきでしょう。つまり、いわゆる耐性と、みかけ上の耐性があるでしょう。かなりgeneticな意味としての耐性と、消費しないということは、区別しなければいけないと思います。 [佐藤]耐性を遺伝的にはどういう風に考えますか。 [奥村]耐性因子の概念を考えます。 [佐藤]増殖率を耐性としてみるのかどうかを、消費の方と両方をためしてみたいと思います。 [土井田]普通は死ぬかどうかの生存率でみます。それに対し、最近bacterial geneticsの領域では、molecular levelでやっているものがあります。大腸菌にUVをかけると、thymine dymerができます。UV耐性のはこれを放り出して、あとrepairするのです。このように耐性の意味が判っているものがあります。 [佐藤]耐性というより、増殖率、消費率といった方がいいでしょう。 [土井田]resistanceということがあります。 [佐藤]生死ということを基準に耐性を云えばよいのですか。 [勝田]細胞浮遊液をシャーレにまいて、集落のでき方をみるというのも、増殖をみているわけですから、結局生死よりも増殖を基準にしている方が多いですね。 [佐藤]生きていても増えないものもあるし、DABにやられながらも殖えるものがあります。 [奥村]耐性より抵抗性の方が広い意味があるのではないでしょうか。 [勝田]生死の場合は、耐DAB生存率というような言葉を使うべきでしょうね。
《堀 報告》月報6507に書きました様に、培養肝細胞のグリコーゲンやphosphorylase活性は、培養後3hrs.にして全く検出不可能になってしまうことが既に判りましたが、その際用いた方法は、8立法mm位の組織片をカバーグラスにのせて回転培養し、時間を追ってその組織片をとり出して凍結切片にするというやり方でした。今回は比較的大きい組織片(0.1〜0.2立法cm)を作り、これを炭酸ガスフランキ中で(1)培養液を用いず、(2)LD-20にinsulin(0.1〜1u/ml)、または、phlorizin(1〜10mM)、または、cortisone(1〜20μg/ml)を添加した培地と共に静置培養し、2、4、6、8hrs.後に取り出して凍結切片とし、そのグリコーゲン、phosphorylase、G6Pase、G6PD活性を染色により調査してみました。insulin、phlorizin、cortisoneはいずれもin vivoにおいて肝グリコーゲンの増加をもたらすと同時に、cortisoneはG6Pase活性の上昇をうながすといわれています。またphlorizinはphosphorylaseのinhibitorともなりえます。 結果は、意外なことに(1)mediumを用いず唯、単に炭酸ガスフランキ中に放置しておいた組織片が一番長く酵素活性とグリコーゲンを保持しており、(2)insulin、phlorizin、cortisoneなどの添加は殆ど何の影響もなく、無添加培地を用いたときと同程度の酵素活性の消失を示しました。更に、これら3物質を培養1週間のliver cellに作用させてみましたが、PAS、G6Pase染色の増加は全く見られませんでした。唯、G6PD(G6Pdehydrogenase)活性は上記組織片での実験では、殆ど検出不能な程の活性しか示さなかったのに反し、培養して組織片からoutgrowthした細胞では、組織片に接している部分の細胞に限り、明かに強い増加した活性を示し、組織片から遠い細胞程、弱い反応を示しました。目下の処、調査した数少い物質の中、培養した細胞で活性乃至は含量が増加したものはこのG6PDのみです。
:質疑応答:[勝田]薬剤の効果は投与期間にも関係あるでしょう。[堀 ]コーチゾンでは、いろいろやってみましたが、10μg以上では変性におちいります。1〜5μg1〜2週ではG6Pは変化ありません。 [勝田]migrateした細胞の内で、植片に近い細胞の方がG6Pase活性が高いように染っていましたが、ギムザ染色などでも染まり方はそのようですね。 [堀 ]本当は肝細胞についていい染色があって、癌化したかどうかを染色でみられる方法があればいいと思います。 [黒木]G6PDHでisozyme patternはどうでしょう。 [堀 ]普通の方法では1〜2本出ます。 [黒木]isozyme patternで違うものが出ればinductionと見るのですか。 [堀 ]まだ調べていません。培養の場合は、組織量が少いので抽出してみていません。生体材料ならば簡単に抽出できるのだから、何か有効成分があっても良いのですが、それを調べると、生体でのincucerの実験になってしまうので、その点ためらっています。 [勝田]固定法はどうするのですか。 [堀 ]-70℃のアセトンで固定して脱水し、いきなり染めます。 [黒木]培養しているとisozyme patternが変ってくるということを今度癌学会で発表する報告がありますね。 [奥村]ハムスターでは1本になります。ふえるのではなくて減る方の変化ですね。 [堀 ]Minimal deviation hepatomaではG6PDHが他の肝癌より割合に高いですね。G6Paseも他のに比べると高い。肝臓の悪性化はG6PDHの活性に関係があるように考えられます。また酸性ヘマトキシリン染色で細胞を染めると、肝細胞は染まりませんが、肝癌は染まるのと染まらないのとあります。 [勝田]うちのラッテの肝細胞の株でやってみたらいいのではないでしょうかね。 [堀 ]冷アセトンで固定して送ってもらえばやりますよ。 [勝田]G6Paseもcheckしてみたいですね。 [堀 ]冷アセトン固定のほかに、1%フォルマリン固定し直した方がよいこともありますから、送り方については、もう少し検討しましょう。
《高井報告》今回はbEVI、及びbEVIII群のその後の経過と、in vivoで作られたActinomycin肉腫(固型腫瘍)のprimary cultureについて報告します。
:質疑応答:[勝田]接種したマウスは、当分半年以上は観察した方が良いですね。[高井]繰返して投与する法、その他でもう少し長く培養してみます。それからアクチノマイシン耐性も培養でしらべてみたいと思っています。これは一度やってみたのですが、余りちがいが出なかったのです。LD50でみると差が出るのではないかと思っています。DABとちがって、アクチノマイシン発癌は注射した場所からの距離によって作用が違うと思います。 [勝田]それなら耐性のできることが必要条件ではないでしょう。 [高井]割合早くできているかどうかです。 [勝田]佐藤君がDABでやったように、発癌経過を追って、逐次動物の局所を培養してみたらどうですか。 [高井]それはやってみたいのですが、どこから出来るかわかりませんので、in vivoで発癌したもののin vitroでの性格をしらべたいと思っています。奥村班員が以前に仁の数について話して居られましたが・・・。 [奥村]仁の数がハムスターの場合、増えるということですね。 [勝田]紡錘形の細胞が増えるのを待ってから復元したらどうですか。 [高井]それがあんまり増えないので困っています。 [勝田]佐藤君、in vitroでDABで肝癌になった細胞の増殖率は? [佐藤]1週間に10〜20倍で、あまり変りません。 [高岡]発癌もしない内から、ずい分増殖するのですね。うちの正常肝細胞株は週にせいぜい5倍位です。 [佐藤]アクチノマイシン発癌で、マウスで日を追ってしらべたのがありますか。 [高井]ありません。アクチノマイシン発癌は、病理の部屋でも、まだやっていませんから。 [勝田]病理的データがないというのは困りますね。まずそれからやる必要がありますね。染色標本でもつくって詳細に見るべきですね。 [高井]癌発生の再少量なども知りたいです。 [黒木]Act.Dで出来なくて、Act.Sだけで出来るというのは、どこが違っているからでしょう? [高井]ペプチトがついていますが、その一部が違うだけです。
《黒木報告》ラット胎児細胞への4NQの添加(2)「耐性を通しての腫瘍性のかく得」という佐藤二郎先生の方針を受けついで、4NQOでも10-7乗Mから1/2〜1/4 logMolづつ濃度を増していきました。前報では10-5.5乗Mまでを報告しましたが、その後、濃度を更に1/4 logMol増加させたところ細胞変性と巨細胞の形成がみられるようになり、一応の目的を果すことが出来ました。しかし4NQO 10-5.25乗Mol添加を少しよくばり4日間続けたため、細胞の変性はなかなか回復せず(培地から4NQOを抜いても)に終ってしまいました。というのは、TD-15を炭酸ガスフランキに入れて培養すべくMetalcapしたまま普通のincubatorに入れ2日間放置するという失敗を演じたためです。(顕微鏡写真と継代略図を呈示) REL(Rat Embryonal Lung)の継代 Ratのembryoからとった細胞の継代は思いの他むつかしく、継代図でも分るように1G、2GはうまくGrowthするのですが(REL-130では1G、2Gをそれぞれ6日及び8日でtransferしている)、3代目はGrowthが極端に落ちてしまいます。REL-130では、約2ケ月間transferできず(full sheetを作らず)現在に至っています。 しかし、ビンのところどころにfocusができていますので、そこから増殖度のよい細胞が増えてくることと思はれます。現在までの培養したRELの1G、2G、3Gのうえつぎは次の如くです。
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Exp# | Cell Name | 1G | 2G | 3G | 4G | 5G |
#306 | REL-123 | 3day | 4day | 4day | nig. | . |
#297 | REL-101 | 10 | 5 | 4 | 14 | nig. |
. | REL-103 | 4 | 4 | 4 | nig. | . |
. | REL-105 | 6 | 13 | 10 | 65 | 9* |
すなわち現在まで継代されているのはREL-130(これはGrowthは不安定)及びREL-105の二つです。transferしたらMetalcapで栓をし、炭酸ガスフランキに2〜3日入れるとよいようです。 封入体の形成 L-cells,REL-130,Yoshida Sarcomaに10-5乗M、10-7乗Mの4NQを加えたのでは封入体は見られませんでした。しかし、HeLaを用いたところ遠藤英也氏の記載のような封入体を見ることが出来ました。(写真を呈示) 4NQOよりは4HAQOの方が明瞭であり、また、24hrs.処理は3hrs.処理の方が著明です。この本態については、RNPとされています(GANN,52,173-177,1961)が、時間及び核内の場所から考えても核小体の変性物のようです。 なお、Yoshida Sarcomaは10-7乗Mの4NQで完全にdamageされます。 今後の問題 上述のようにラットの細胞は3〜4Gにcrisisがあるため、発癌Exp.には適さないように思はれます(4NQで、耐性からcell damageへと来ても、丁度crisisと重るため継代出来ない)。 そこでドンリュウから純系のBuffalo、及びハムスターに動物をきりかえようとしています。特にハムスターは山根教授のところで基礎的なdataを出していますので仕事はやりよいかと思はれます(アルブミン添加培地による繊維芽細胞の継代)。 ただし、ハムスターのin vivoのExp.がないのでそれを平行して進める積もりです。 次の問題として、4HAQOの不安定さがあります。pH7.2で30分でこわれる程なので、Exp.に使いにくく困っています。4HAQOのAcetyl化により安定にすることを考えているところです。 封入体の問題はcellによって出たりでなかったりするので、どれだけの意味があるか疑問ですが一応H3-TdRによるAutoradiographyを用いてDNA合成能のcheckだけはするつもりです。 *附 継代培養された吉田肉腫のLife Cycle 134G.1663days cultureの細胞にH3-TdR 0.04μC/ml処理し(30分間)、Life Cycleを調べました。さくらNR-M2使用、1W露出後、Konidol現像、Giemsa染色という順の操作です。 G.T.:14.0〜14.6hrs.、G1.:1.4〜2.0hrs.、S.:9.0hrs.、G2.:3.1hrs.、M.:0.5hrs.、L.I.:46%、M.I.:3.4%という成績です。Grainの分布表にもとずき10ケ以上を“positive”“labeled”としました。 1.5時間毎に48hrs.に恒りサンプリング、%Lab.mitosisの推移を表にしました(表を呈示)。二晩徹夜のおかげできれいなカーブがとれました。 今迄に発表された成績との比較では松沢氏の成績がもっともきれいです。
:質疑応答:[佐藤]胎児の日数はどうやって決めるのですか。[黒木]3日位mateさせて妊娠したものを使うのです。3日位の程度差で出来ます。 [佐藤]何日ぐらいのを使うのですか。 [黒木]15〜16日以後のです。肺はピンセットで簡単にとれます。 [勝田]4NQOを増やしていった実験はまたはじめて欲しいですね。 [黒木]logで濃度を上げていくと、細胞がやられるとき、急にやられてしまいます。はじめ限界の見当がつきませんでした。 [高岡]濃度を上げたときのsubcultureは? [黒木]していません。 [勝田]核小体が抜けるというのは、うちでもサリドマイドか何かを入れたとき同じような経験があります。 [黒木]発癌性のあるものの場合にあんなことがおきるのでしょうか。何かがとけ出すのではないかと思います。 [勝田]細胞のRNAは? Unna-Pappenheimか何かで染めてみましたか。
《高木報告》#5)Skin organcultureの予備実験の一つとして先ずsuckling rat skinの培養に及ぼすChick embryo extractの影響を観察した。方法は生後5日目のWistar rat skinを用い、70%Alcohol及びハイアミンに各々5分間づつ動物ごとつけて消毒後、Hanks駅で洗い背部のskinを切り取って3x3mmの切片を作り、Lens-paper上に二片宛置いてteflon ringで支えmediumを切片の下縁がやっと浸る程度に入れた。mediumは20%B.S.を含むEagle's basal media(但しPyruvateを含む)に10%Chick embryo extractを加えたもの及び加えないものにつき検討した。 培養組織は、3日目毎に培地交換し、一部組織をBouinで固定し、H & Eで染色して観察した。 9日目まで主として表皮は比較的よく維持され、これまでに報告したものと大体同様の所見で、真皮にはnecrosisが強く、核濃縮及び細胞質の染色性の低下をみた。embryo extractを加えたものと対照の間にはほとんど差が見られなかったが、9日目のものでは表皮の状態はむしろC.E.E.を入れないものの方が幾分良い様に思われた。10日以後のものでは全体にnecrosisが非常に強いので培養を中止した。 以上の結果から生後のRatを用いる場合、C.E.E.は特にその組織を維持する上に良い影響は及ぼさない様であった。尚、生後のRat skinを培養する場合、その消毒法が問題になるが、これまで動物を70%alcohol、次いでハイアミンに約5分間つけて消毒し、組織片を切り取って、これをHanks液で洗っていたが、この最後の洗いが不充分であった様に思われる。従ってこれら薬液によるtoxicな効果が、組織片の維持を短くしていたとも思われる。次回はこの点を検討したい。 #6)mouse skinをorgan cultureしこれに及ぼす4NQOの影響をみたが、今回は特に高濃度、即ち4NQO最終濃度10-4乗Mol及び10-5乗Molを入れた場合に組織細胞がどの様に反応をみせるかを検討すべく計画した。 生直前と思われるfoetal mouseの背部より3x3mmの皮フ切片を取りLenspaper上に置いてstainless meshで支え、組織片の下縁にLiq.mediaが丁度達する様にして培養した。MediumはC.E.E.、B.S.を夫々10%含むEagle's basal mediaを用い、これに4NQOを10-4乗及び10-5乗Molになるように加えた二群をおいた。3%炭酸ガス97%酸素混合ガスを送気して培養後、24hrs.、48hrs.、72hrs.、5日目、7日目、12日目にBouin固定し、H & E染色にて観察を行ったが、先回4NQO 10-5乗Molで培養した時は5日目で已に組織がnecroticになった事を再検討する為とChang Liver cellに4NQO 10-5乗Molを作用させると、24時間後に已に核内封入体を生じたとの報告があるので、その点をたしかめる為、この様な短間隔で観察した。 培養後、24時間で両群共に角質の肥厚を認め特に10-5乗群に著明であった。48時間後のものでは24時間目のものに比しあまり変化が見られず、72時間後に至り10-4乗群で表皮の一部に肥厚の傾向を認め、対照群及び10-5乗Mol群に見られた核周囲の明庭もみられず、核は一般に濃染し表皮表層部にて細胞質内空胞の増加を認めた。この傾向は5日目、7日目にても同様であったが、培養後日数の経過につれて全体的にnecroticになり、特に真皮にその傾向が強く見られた。培養12日目では、10-4乗で表皮の肥厚が見られず表皮細胞の状態は5日目、7日目のものと、ほとんど変化がなかった。10日目までで培養を中止した。Chang liver cellに4NQOを入れたとき、24時間後にみられたと云う核内封入体の如きものは認められなかったが、表皮の肥厚が培養数日中に見られ、10-4乗Mと云う高濃度でもかなり長期間培養にたえることが分った。 動物に発癌剤を作用させる場合は、可成り高濃度のものが用いてあり(Mouseに4NQOを塗布する際は0.05mgを1回量とする。HamsterにDMBAを注射する時は5mgのPelletを用いる)この意味からin vitroでもDMBAの如くpelletの形で作用させることも考慮している。また、これまでにskinは少し小さく切りすぎた感があり、もっと大きく切ってみたい。 これまでの成績で培養があまりうまくいかぬ原因として、先に述べた皮フの消毒の問題、組織が“しめりすぎ”になってしまう傾向があること、またskinは培養の場合まるく巻いてしまう性質があること、などが挙げられるが、上記の培養日数をへた組織の所見で表皮と真皮とが剥離する所見が見られたのは、Lenspaperから組織片を剥す際の外力による障害ではないかと考えられ、その点、rayon acetate meshの使用等も考えねばならない。
:質疑応答:[勝田]組織がレンズペーパーについたままで固定して薄切したら、組織がこわれずにうまくゆきませんか。[高木]レンズペーパーがうまく薄切出来るでしょうか。 [奥村]濾紙でさえちゃんと切れます。 [高木]いろいろ試してみようと思っています。 [勝田]現在の技術では、長期間のorgan cultureが出来ないのですから、organ cultureでの発癌実験は無理ではないでしょうか。Cell cultureに切りかえるか、organ cultureで続けるなら、それをまた動物へ戻してみるという手があります。 [高木]胎児組織でなら、2〜3ケ月培養できますから、その間に勝負をつけたいと思います。Organ cultureではCell cultureでかけられないほどの高濃度がかけられるという利点があります。 [黒木]4NQOの動物での発癌実験では120〜150日もかかると云われていましたが、今では最低1回の接種で割に簡単にできるのですね。 [高木]私は3週から1ケ月の所見で発癌をみています。 [勝田]どうしてもOrgan cultureでやるのなら、Culture内で一定期間4NQOを与え、その皮膚植片を同系の動物に移植し(同系ならtakeされますから)どの位culture内で処理したのが皮膚癌を作るか−をみる。それができれば、またculture内の観察に戻って、その処理期間の間に細胞にどんな変化が起るか、をみれば良いわけです。これはぜひやってもらいたいですね。 [黒木]動物に注射して、その部位をOrgan Cultureするのはどうですか。 [勝田]それで何が判るのでしょう。in vitroでの性質の変化を追いたいのです。 [佐藤]胎児をすりつぶして同種の動物に接種したらembryomaができたという報告がありますね。また、別のことですが、発癌物質のattack後、何回か分裂がなくては発癌しない、という考えがあります。 [奥村]Geneの変化がcumulativeだと考えて良いのでしょうか。 [黒木]Heidelbergerの考えだと、DAB発癌の場合、あんなに長く期間がかかるのを説明できないでしょう。 [勝田]不思議に思うのは、発癌剤の場合、組合せで加算的に行くということです。各発癌剤は夫々ちがう処をattackしている筈なのですがね。だから非特異的な破壊作用をしているのにすぎないのではないか、とも思ってしまします。 [奥村]Polygeneの考え方がありますね。作用過程は別だが結果は同じ、ということが考えられます。 [勝田]加算説は正しいようですね。ネズミに煙草の煙を吸わせただけでは発癌しないが、これに発癌剤を少し与えると肺癌ができる、という実験がありますね。 [奥村]煙草のアルコール抽出物でラッテに100%確実に癌ができるそうです。“憩”の抽出物です。
《土井田報告》今月は前月にひき続きRLH各系の細胞遺伝学的研究につき報告するが、前月月報に記した以上に大きな進展はなかった。私自身の努力の足りなかった点もあるが、教室が私一人になり、その上国際生理学会のあふりを食って外人来訪が相ついだため、此の一月朝から晩まで殆んど自分の時間がなかったことにもよる。国際放射線学会に菅原教授を無事送り出し(菅原、土井田で発表)、9月にRLHの細胞遺伝学的研究を終る心算だっただけに雑用に追い廻されたことを、かえすがえす残念に思っている。「核型分析の結果」 RLH-3系:染色体数が経時的に63から58、更に55と減少した。最初の63本を有する系(6501)ではMeta-、Submeta-、Subterminal-centric chromosome数は約20本(18〜22)あり、残りはTelocentric chromosomeであった。58を有する系(283)では前者が20本あり、残りはTelocentricであった。55本を有する系(285)ではMeta-、Submeta-、Subtelo-centricが25本に増しており、残りの30本は末端動原体染色体であった。核型相互間の変動についての決定的な根拠は何一つないが、Telocentric染色体の間で結合が起ったためによるかも知れない。 RLH-4の核型分析は充分進んでいないが、RLH-1のそれに極めて類似している。Telocentric染色体数はRLH-1で14〜15本、RLH-4でも14本を示した。 RLH-2は17本のTelocentric染色体を有し、他はMeta-、Submeta-、Subtelo-centric染色体であった。
:質疑応答:[勝田]RLH-4は染色体数モードも核型もRLH-1と同一です。ここで考えられるのは、RLH-4を作るとき、途中でRLH-1のhomogenateを加えていますが、このhomogenateからRLH-1がcontamiしたか−ということと、もう一つはRLH-1の核が貪食されて、いかれた核にとってかわったという、一種のtransformationの可能性とこの二つが考えられます。しかしRLH-1のhomogenateを作るときは、colchicineを一晩入れたあと、水処理を30分してから、homogenizeし、あとはそのまま保存しているのですから、生きた細胞がその中に入っているということは非常に考えにくいのです。また継代して2コに分けた内の一方の容器にだけ変異細胞が現れたのですから、homogenateの内に生きたRLH-1が混っていたとすると、期間もかかりすぎるし、少し変です。[土井田]染色体数がふえているhybrid cellが出来てもいいゆな気がします。 [勝田]今後うちにないような細胞の核を入れてみるより他はありません。 [土井田]Natureにhybridの論文が出ていましたが、hybridは簡単に出来るが、やがて無くなっていくようです。RLH-1とRLH-4のchromosomeは全く区別がつきません。 [奥村]RLH-3はRatの染色体らしい感じがしますね。acrocentricの多いところなど・・・。RLH-1はRatらしくありませんね。 [勝田]originが違います。RLH-3はRLC-3から出来ましたが、他の3つはRLC-2から出来ています。 [奥村]RLH-2はHumanのととてもよく似ていますね。 [高岡]RLH-2は多核が非常に多い系です。 [奥村]Hybridが出来るとき、2n+2n=4nでなくて、acro→meta的な変かでnがふえ、遂にHybridとなることがあり得ると思います。 [勝田]Translocationですね。 [奥村]Ratのnormalのchromosomeをお見せしましょう。(写真を呈示) [勝田]RLH-1ではcellのfusionは見ましたが“なぎさ”ではまだ見ていません。今後はHybridをぜひやろうと思っています。蛍光抗体でみると、HeLaとLでもhybridができるという報告がありますね。阪大微研の岡田氏の、ウィルスによる細胞質fusionを応用した人がありますが、これではあとでvirusを除けないからCO60でも使ったらと考えています。 [奥村]それだとDNAをたたいてしまうのではありませんか。virusだと一杯ついてしまうし・・・。 [勝田]子供が両方の性質を持っていなければ本当のHybridとはいえませんね。 [黒木]Hybridをselectするのにずい分低い温度(29℃)を使っていますが、これは問題ではないでしょうか。 [奥村]温度を上げるとbubblingしますね。
《奥村報告》培養細胞の変異に関する研究培養細胞の変異を分析しようとする場合にある特定の形質をmarkerにする方法が一般的であるが、それはPhenotypeの変化をみるだけに止まることが大部分である。Isoantigenの様にgeneとの関連性が比較的容易に判る場合は別として、一般にはGenotypeとPhenotypeとの関連性は観念的には結びついてもそれを実証することは難しい。特に培養細胞を用いて細胞遺伝学をやろうとする場合、非常に変異の大きい細胞ばかりでなかなか細胞集団の特性を論ずることが出来ない。一応細胞の遺伝性は染色体及びDNA compositionのlevelにあると考え得るが、その染色体の変異も生体内の細胞よりも培養細胞の方が複雑であって、染色体をmarkerにした遺伝学も極めて多くの難点がある。そこで私共は培養細胞を全く別個(生体内とは)の生物という仮定を基に、培養環境内に長期間増殖しつづける細胞の遺伝的必須単位を採ってみようと考えた。それ以来6年間、先ず第1のねらいとして染色体数の少ない細胞の分離を試みた。現在まで多数の細胞株を用い、諸々の分離法を試案して来たが、なかなか思う様に進まず5年半を経過した。幸にして昨年(1964)の後半からJTC-4細胞からのcloneの中に染色体数の少ないものを見出すことが出来た。その細胞系はJTC-4/Y2と名づけられ、現在継代中である。染色体数のdistributionは狭く30〜35に集中し、核型レベルでもかなりpurityの高いものである。少くともKaryotypeのレベルで、正常核型との比較検討が比較的容易である。この細胞は染色体が少いばかりでなく、核当りのDNA量も生化学的定量、MSPによる測定のいづれに於いてもDiploid range以下であることが最近になって実証された。
:質疑応答:[勝田]Collagenをつくっていますか。[奥村]はい、つくっています。 [勝田]JTC-4のoriginal lineの染色体数は何本ですか。 [奥村]60〜70本です。 [勝田]2nから直接少ない染色体数のものが出来たのなら2nと比較できるが、一たんふえたものから分離した染色体数の少ない系の核型を、2nから変化したと言っていいでしょうか。 [奥村]DNA量、chromosomeの長さから云えるということで、DNAの質的な点については全くわかりません。 [勝田]diploid cultureから染色体数の少いのがとれると良いですね。もっとも効率は低いでしょうがね。そうして初めて比較できます。 [奥村]Genotypeとphnotypeが問題ですが、これも行きづまるでしょう。最近HeLaやFLでもcollagenをつくるという報告がありますから、collagen産生が必ずしもmakerにはならなくなりました。 [高木]JTC-4は、S期が長いので定量が問題です。MSPでみると少し多目に出ることがあるでしょう。 [黒木]MSPでみて2つのピークとしてみる時、ピークだけで比較すれば、それで良いのではないですか。 [勝田]対照として肝細胞を使うのは考えものですね。 [奥村]肝はこれまでに、ずい分よくしらべられて、いろいろ判っているからです。 [勝田]MSPのtailingでG2期はどのぐらいですか。 [奥村]4時間位です。 [勝田]コルヒチンを入れれば良いでしょう。 [奥村]コルヒチンを入れる時間がむずかしいのです。2〜2.5時間位でやっています。 [黒木]metaphaseを測るとうまくいきます。これまで染色体数が2nより少いと云われた細胞でも、実際のDNA量は2n以上ですか。 [奥村]2nと同じ位のものもあります。 [勝田]別の話ですが、再生肝では4nが2つに分れて、それだけでふえるのではないでしょうか。 [高木]いや、やはりH3-TdRのとり込みがあると報告されています。 [奥村]肝ではG1でcell cycleがとまっています。 [勝田]4NQOをJTC-4にかけたらどうでしょう。 [奥村]もっと生化学的なことを確かめてからにしたいです。plating efficiencyが40%位で一定になるようにして・・・。 [黒木]染色体が移動することについて、そう言っている人はどの位信じていますか。 [土井田]培養細胞について、はっきり言っている人は少いです。late labelling chromosomeについては? [奥村]やはりsex chromosomeのようです。これはWistarの♂のようです。 [勝田]土井田君、RLH-3の場合の染色体の減り方はどうですか。 [土井田]RLH-3ではSubteloが二つくっついているのがありました。 [奥村]JTC-4/Y2にもそういうのがあります。 [土井田]そのものが、分れる時、反対方向に紡錘体ができると駄目ですが、一方向ならうまく分れます。確立1/2で。 [高岡]RLH-3については、今後も定期的に染色体をしらべる必要がありますね。 [勝田]Spindle fibersは何でできているのですか。 [土井田]染色では、Carbohydrate、RNA、S-S結合があるとされています。このS-Sは、fiberのできる時期だけS-HがS-Sになり、また元に戻ります。 [勝田]分裂のとき核小体のRNAがここに行くのではないでしょうか。 [土井田]行く可能性もありますね。 [奥村]染色体のキネトコアから出てくるという説があります。素材のarrangementは、もっと前に出来ていて、chromosomeについているとみなければならないでしょう。 [勝田]これまでのendoreduplicationの定義について説明して下さい。 [土井田]1936年Geitlerがendomitosisを定義を下しました。それは、染色体はPro.、Meta.と見えてきて、Ana.、Telo.と消えていく。核膜はどの時期にも残っているが、spindle fiberはどの時期にも見られない。これをendomitosisとしました。これに対して、染色体が4本宛組になっているものばかりの時、endo-reduplictionといいます。 [黒木]Endomitotic-reduplicationといえば良いのではないですか。 [勝田]核が分れて細胞質の分れないのをendomitosisといっていいのではないかと思いますが。 [土井田]細胞質が分れないで核だけ分れるのはKaryokinesisといいます。細胞分裂をKaryokinesisとっCytokinesisより成っているとするわけです。 [黒木]Pairの内一方の染色体だけにdamageを与えるうまい方法はありませんか。 [土井田]軟X線などでやっています。そして染色体がdouble helixでできているということが、発生のモザイク卵などを使って証明されつつあります。1963年頃のNatureには、染色体の微細構造がシェーマできれいに出されていました。
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