【勝田班月報:6706:ハムスター胎児細胞の培養内自然悪性化】《勝田報告》
ラッテ肝由来の変異株MはDAB代謝能が異常に高いので、その代謝酵素を分離すべく、Cell homogenateのレベルでの代謝能をしらべているが、今回はJBC.176:535,1948に記載されたMueller,G.C. & Miller,J.A.の反応液を試用してみた。(組成表を呈示) 原法では肝組織のhomogenateなので、10%にできるが、こちらは培養細胞なので、500万個/2mlにsuspendしてhomogenizeし、これを約200万個/0.8mlで用いた。添加量は0.8mlである。 37℃ for 30〜60min.加温というのが原法であるが、我々は2.5時間37℃で加温、20%TCA in aceton-EtOH(1:1) 3mlを加えて反応を止め、発色させ、520mμのO.D.を測った。結果は稍減少が認められたが、原法の1/10〜1/100の細胞数なので、もっと減少をはっきり掴むためには反応時間を延長させるか、細胞数をふやす(きわめて困難であるが)ほかはないことが判った。
:質疑応答:[黒木]形態的には自分のところの変異細胞ととてもよく似ていますね。[堀川]処理後4週も経ってまだこわれる細胞のあるのは、まだ薬剤の効果が残っているのでしょうか。放射線の場合などは、もっと早く片がつくと思いますが・・・。 [勝田]Cell cycleのまわり方にすごいdelayが起って、あるところまで廻って死ぬのかも知れませんね。 [黒木]形態の変異よりおくれて悪性度が出てくることがありますから、映画の細胞ももう少しすると、つくかも知れません。 [奥村]変異細胞の出現頻度が低いというのは、むしろ変異の幅が狭いことを意味しているのではないでしょうか。また、分裂が関与しなくても、もっと分子レベルでの変化が先行することも考えられます。 [吉田]映画で核小体の大きいのが見える時期があって面白いですね。 [黒木]ハムスターでは、変異は1カ月で見られ、悪性化は2カ月で判ります。 [勝田]変異が先行するというのは、まだ変異の方向が一定していないで、その後培養内で淘汰されて行くのが悪性度の高い細胞だということでしょうかね。 [安藤]変異した時、悪性と良性の細胞が混っていて、それがしだいに選別されるのか、或は悪性まで行かなかったのが以後の培養期間中に悪性化するのか、沢山実験してみれば判る筈です。 [勝田]変異の時期で細胞をばらしてまいてcoloniesを作らせ、夫々のclonesをしらべればよいが、大変な仕事です。 [安藤]変異した細胞が全例悪性とは限らぬ−ということは確かですか。 [勝田]黒木班員の場合、1例takeされないのが出来たわけです。 [吉田]形態変異と、悪性化、という風に言葉を区別すべきでしょうね。映画の最後のカットで、分裂の多い時期、あのときは変異が一杯できているでしょうね。 [勝田]Leo Sachsたちの、放射線による変異細胞が、はじめはハムスターに腫瘤を作るが、やがてregressしてしまう。あんなのも悪性化といっていいんでしょうかね。 [黒木]私はこのごろあれも悪性化と思うようになりました。少し甘くなった。最近DABの誘導体で皮下にうって肉腫を作ったのを見附けました。(Miller & Miller;Pharmacological Review,18(1):805-838,1966)。喰わせて発癌させるのでは、どういう分解産物が効くのかまで考えなくてはならないので、こういう直接的作用のあるものを使う方が良いですね。
《黒木報告》今回は次の事項について報告します。
1.hamster whole EmbryoのColony形成いついて 前号の巻頭言の「変異か淘汰か」の問題にとりくむためにも、また、colonyの形態からtransformationを判定し、transformabilityをcountするためにも、正常細胞のcolony形成実験は重要な意味をもちます。 そこで、次の条件で“normal cells”のcolony形成実験にとりくみました。
この実験ではalbumin med.を用いて、feeder layerの検討を行った。また、次に示すHA-8、NQ-5のcontrolでもある。(表を呈示)feeder layer(+)10,000個/dは数えきれないcolony(正確に云えば、colonyの間もcell sheetで、colonyであるとはっきり云えない)が生じたが、feeder(-)10,000個/dのcolony数はfeeder(+)1,000/dにほぼ匹敵し、それぞれ、1.0%、6.0%前後である。他の実験でもfeeder(+)1,000個/d≒feeder(-)10,000個/dの関係が認められた。これは後者ではcolonyを作り得ない細胞が丁度feeder lay.の如く働いていることを示すのかも知れない。 colonyの形は(スライド及びpetri dish供覧)比較的transformedの如く“dense”にみえる。しかし、実体顕微鏡等により詳しくみると、colonyの1/4は方向性をもったfibroblastのcolonyから成っていることが分る。残りの3/4はflatの細胞のcolonyであった。このセンイ芽細胞から成るcolonyは細胞の増殖が極めて活発であり、かつ方向性を保ったまま重るためにdenseにみえるのであろう。random orientationのcolonyは、total 434ケのうち、1例もみられなかった。 しかし、このように“dense”のcolonyが出現することは、transformationのかんさつを困難にすることが明らかである。 そこで、oriented fibroblastsはalbumin med.により特異的に選択されるのではないかという予想のもとにalbuminとStandard med.の比較をおこなった。 §Exp465§ この実験ではfeeder layerを用いずalbuminとstandard med.の比較に限った。Falcon Plasticsの35mmφPetri dishを用いた。 (表を呈示)colonyの数はalb.でもstd.med.でも、また1,000個/dでも500個/dでも大差はないが、albuminの方がsizeは大きく、また形もそろっている。 fibroblasticのcolonyはalbumin med.では1/7に認められた。しかも、この細胞は増殖がよく、前回のExp.と同様にdenseにみえるものもある。std.のmed.では、fibroblastic colonyは少く、またgrowthもalbuminよりは低く“thin”である。 現在、さらに、feeder layer、albumin med.、standard med.の組合せで実験が進行中である。予備実験の結果からstandardになるようなcolony形成法をみつけ出し、cloningなどの実験に入りたく思っている。 2.発癌剤処置のコロニー 前回のExp450と同時に行った。 細胞はHA-8:発癌剤処置9日、終了直後。NQ-5:4NQO 10-5.5乗M4日、終了後5日。 (表を呈示)colony形成率、そのうちのoriented fibrobl.のしめる割合はcontrolと大差がない。しかしcontrolにはみられなかったrandom orientation colonyがみられた。 このcolonyの形は、Sachsらのいうtransformed colonyと同一のものか、あるいは、発癌と関係あるものかは、現在のところ不明であるが、一応transformed colonyとして扱うと、4HAQOでは10-4乗、4NQOでは10-5乗でtransf.していることになる。 これが正しいかどうかは、更にいくつかの実験により確かめる必要があろう。 残されたもう一つの問題は、ここに示したrandom orientat.のcolonyが本当に悪性化に連るものかどうかである。というのは、HA-8が悪性化したときのcolonyはrandomというよりは、むしろ方向性のある配列を示しpile upしているdenseなcolonyだからである。 この問題は、このcolonyをひろってさらに継代する膨大な実験によって解決されるものと思はれる。(colonyの写真を呈示) 3.4NQO、3-methyl 4NQO処置細胞について transformationであることの証明には、いくつかの事項が考えられますが、例えば、
ここで最後の項目は必ずしもtransformationの確証とはなりませんが、重要な所見となることは確かです。 そこでin vivoで絶対に発癌性がないことが明らかであり、4NQOの対照としてふさわしいものを国立癌センターの川添豊氏に選んで頂き、またsampleも少量恵与して頂いた。10-5乗Mの濃度で5回処置を行ったが、transformationは得られなかった。(図を呈示) この物質は全体に毒性も少く、10-5乗Mでもcytopathic effectはなく、また“early changes”もみられなかった。この実験から、4NQO及び4HAQOによるtransformationはその物質の発癌性によることが強く示唆された。 4.浮遊状態の細胞と発癌剤の接触 ウィルスによるtransformationは、virusと細胞をmonolayerかあるいはsuspended stateのどちらかで接触感染させている。これはvirusのとりこみが細胞のpinocytosisによるため、両者の衝突の頻度(確立)が感染率を決定するというvirusの特異性によるのかも知れない。しかしchemicalでもsuspended stateの処置がいくようになれば、技術的には一つの進歩であると思はれるので、次の実験を行った。 logarithmicに増殖している細胞を0.025%pronaseで剥離し、培地中に10万個/ml〜50万個/mlにsuspend、種々の濃度の発癌剤を加え、37℃で2時間振盪した。2時間後、遠心により発癌剤を洗い、TD-40に培養した。結果は、4HAQOでは、細胞の変性、criss-crossなどのEarly changesさえも全くみられなかった。 細胞の変性のほとんどみられないのは、4HAQOが毒性の低いことの他に、不安定であるためであろう。(図、表を呈示) 結局、4NQOは非常に毒性が強く、ほとんどの細胞がやられてしまう。 この方法が全て失敗した理由としては、transformationに向う変化よりも、細胞の死に到る変化の方を強く起すことによるのであろう。 また、細胞からみても、damageを受けたうえに、さらにガラス壁に附着しなければならないことになり、selectionの機会が一つ増えることになる。 以上の理由から、4NQO、4HAQOは、suspension contactでtransformしなかったものと思はれるが、今後、処置時間を短かくするなどの方法ではtransformationにもっていけるかも知れないと思っている。 5.4HAQOのdose-responce-relation ship 4HAQO 10-5.0乗M、10-6.0乗M,10-7.0乗Mの3段階、各5回9日間処置により、transformationの成否をみた。結果はcumulative growth curveで示すように、HA-8のみがtransformした。10-6.0乗M、10-7.0乗Mは、controlと同じようなgrowth curveを示した。なお、このHA-8は前号の月報に示したregression→growthの経過を示した培養細胞である。(図を呈示) 6.4NQOのdose-response relation shipについて 4NQO、10-5.5乗M,10-6.5乗M、10-7.5乗Mで調べた。10-5.5乗Mは2回処置のとき、cell damageが強いので以後の処置を中止した。他は4HAQOと同様に5回9日間つづけた。(図を呈示)cumulation growth curveでは、10-5.5乗M処置のNQ-5のみがtransformした。興味あるのは、NQ-5が培養27日、発癌剤処置後23日で動物移植によりfibrosarcomaの像を示したがregressしたことである。 またNQ-5のcumulative growth curveに変曲点の認められることも、興味をひく。とくにhistologicalにmalig.featureを示しながらも、in vitroの増殖が次第に低下し、そのあとで“transformed focus”が出現して、growthが急速に上昇したこと、さらに、focus出現後も、動物に移植するとregressすることは、増殖能と悪性化は分離して考えるべきものであることを示唆しているように思はれます。今後、経験を重ねるに従って、種々のtransformationの様相が明らかにされ、そこから何らかの知見がひき出されるように思はれます。 また、以上の実験で、dose-responseがはっきりしないように(doseがcriticalに働くように)みえますが、これは、1/1、0/1の判定基準ですので、さらに多くの例を重ねる必要があると思っています。 7.15分間処置によるtransformation 4HAQOはneutralで15min.で失活するという遠藤さんのdataから考えて、4HAQO 15分間処置でtransformが起るように思はれました。 そこで、短時間処置によるtransformationを、くり返し試みてみたところ、cumulative growth curveでみて、濃度を3倍上げた10-4.5乗M群にのみ、transformationがみられたのです。(図を呈示) (なお10-4.5乗Mは24h.処理すると、細胞は強く傷害を受け、増殖不能になる。このことは、4HAQOが15min以上、少なくとも細胞にdamageを与えるという活性は保持していることを示している) このHA-15はvacuolusをもったcellとfibroblastの共生状態がつづき、pile upの傾向も少いようです。まだmalignantにはなっていません。 さらに経過を追う必要がありそうです。 8.Spontaneous transformationについて hamster whole embryoを培養すると、増殖はやがてとまり、fibre、meshwork arrangementなどの変化がおこること、また、このようなlimited life spanがtransformation(induced)のselectionに対して都合のよい条件であることは、すでにくり返しのべてきました。これに対して、一部では「establishできないような培養法」は、悪い条件の培養であるという考え方もあり、establishする培養法にきりかえるべきであるとの意見も聞かれた訳です。(この考え方には少し疑問があります。機能を維持する培養、あるいは目的に沿った培養法が、establishすることよりも重要なのではないでしょうか) 4NQO-transformationの対照細胞はすべてgrowthが止っても、定期的にmedium changeをつづけ、経過をかんさつしてきたところ、そのうちの一つZen-4が培養後311日にestablishしました。 この細胞のhistoryを少し詳しく記します。 1966.3.5 explant outgrowthで培養 3.10 liquid airに凍結保存 6.24 liquid airよりthawing、凍結106日(thawingのときの細胞生存率85%) 7.3 第3代 7.9 第4代 7.15 第5代 7.22 第6代、以後うえかえせずに1967.5まで維持(増殖はみられなかった) 1967.4.26 focusを発見、継代、以後denseなlayerを形成し、活発に増殖 5.4 染色体標本 5.4 移植→sarcoma 以上の結果から、hamster胎児細胞は300日以降にはSpontaneous transformationの起る可能性のあることが明らかになりました。 従って、induced transformationは100日以内に起させないとまずいようです。
:質疑応答:[奥村]あのスライドのcoloniesの写真は培養何日位ですか。[黒木]12日頃です。 [奥村]それであの大きさでは、初めが1コではなく100コ位づつかも知れませんね。 [勝田]映画をとっていて思うのですが、2〜3コの塊からはすぐどんどん増え出すのに、本当の1コからは仲々生え出してきませんね。 [吉田]Mutation rateは普通は10-6乗位のorderです。10-3乗位というのは4NQOが変異に有効に働いていると思いますね。 [安藤]細菌だと10-8乗位ですが、薬品を使うと10-2乗位にまで上げられます。 [奥村]一つのcolonyがいくつ位の細胞から出発しているかを考え、あの数値は1order上げておいた方が良いのではありませんか。 [黒木]3T3が変異の最高で60%位にもなります。 [勝田]Mouseのfeeder layerを使うと、それとのHybridができてしまうのでは・・・。 [黒木]Feederを使わないと細胞数を10倍位にしなくてはならないし、出発が1コでないという問題も起ります。 [奥村]Conditioned mediumを使うことを検討すべきでしょうね。 [勝田]復元したらtumorを作ったがregressし、その後は本当にtakeされたという、その2時期の間に細胞は何回位分裂した計算になりますか。 [黒木]10回位でしょう。 [堀川]はじめの頃は対照群が300日も保たなかったわけですね。若し300日保てば自然悪性化してしまうものかどうか・・・。 [黒木]この1例だけですが、とにかく300日たったら悪性化していたわけです。とすると実験は100日以内に勝負をつければよいと思います。 [奥村]100日でも長すぎるのではありませんか。 [堀川]4NQOが悪性化を促進しているだけですか。 [黒木]発癌剤というものは、そういう働きを持っているのではありませんか。 [佐藤]DABの実験からも思うのですが、発癌剤は発癌を促進またはselectするのだと思います。 [奥村]発癌のためにはどの遺伝子を何回どう叩けばよいかがはっきるするような実験法を用いるべきでしょう。 [黒木]現在の時点でそんなことができますか。実験法について色々検討したのですが、Rafajko,R.R.:JNCI,38:581-591,1967にHamster whole embryoにAdenoをかけるのに、5%炭酸ガスを使うと変異が非常に高率になるといいます。炭酸ガスフランキは癌化に何らかの役目を果たしているのではないでしょうか。 [奥村]自分の所で自然悪性化した例は、みな炭酸ガスフランキで培養したものです。 [黒木]できるできないではなく、頻度が上るのではないでしょうか。 [勝田]私のところで仲々癌化しないのは、炭酸ガスを使わないためですかね。 [吉田]炭酸ガスが変異の頻度を上げるということを蚕で実験している人があります。 [安藤]炭酸ガスで変異促進というのは、培地のpHを下げるという意味もあるかも知れません。他のmildな酸で酸性にしてみたらどうでしょう。 [奥村]pHを上げないようにすると自然悪性化の頻度を上げられると思います。 [堀川]こういう発癌とウィルス発癌とは同じ機構でしょうか。 [奥村]同じとは云えないが、似ていることもありますね。昔ウィルス発癌がうまく行かなかった頃の条件をしらべてみると、pHが高すぎたようです。 [堀川]変異のprimaryの変化は、duplicationの時のbaseの読みちがいですか。 [安藤]そうですね。たしかにbase changeでしょうね。 [吉田]4NQOは吉田肉腫に与えるとheterochromatinの部分を特異的にattackします。 [黒木]特異的といっても細胞質だってやられるでしょう。 [堀川]それは放射線でも同様です。 [奥村]Synchronous cultureでやってみると、もっとどういう時期にヒットするか判るでしょう。 [吉田]染色体レベルでみて、SでもG1でも染色体異常は起らず、G2期にあったものだけが異常を起すということを、私は発表しています。 [安藤]Double-strandのDNAにはよくつくが、Sinleではつかない。その考からだけ行けばG1、G2両方に効くように思えますが・・・。 [勝田]生化学者にしても染色体研究者にしても、或薬剤が効いたということのcriterionとして、DNAがきれたとか、染色体に異常が起ったとかを重視していますが、それで良いのでしょうかね。むしろそんな細胞は増えられずに死んでしまい、別のが増えるのではないでしょうか。 [堀川]染色体レベルの変異をみるのならhybridのやり方を採用するのが良いと思いますね。 [奥村]黒木氏の今の目的は変異の機構を整理したいのか、悪性化させたいのか、どちらですか。前者ならSynchro.など、後者ならそれだけに攻め方をしぼるべきでしょう。 [勝田]過程としては処理後、変異→悪性化となる、その変異のところでcloningをやって悪性化への過程をしらべることも必要ですね。
《高木報告》
:質疑応答:[三宅]白い毛が生えたことについてですが、組織標本はありますか。[梶山]まだありません。 [藤井]皮膚移植ではそういうことがあります。神経を切ってしまうためでしょうが、C57BLでも白毛が出てくることがあります。 [勝田]移植直前まで発癌剤を添加し放しでは、発癌剤のついたまま移植することになります。 [加納]Autoの動物に戻したらどうですか。 [藤井]この実験は、つきすぎる位よくついています。培養したためでしょうかね。技術的に云いますと、もっと大きなgraftを使った方が良いと思います。 [黒木]発癌実験をcell levelでなくorgan cultureでやる利点は何ですか。 [三宅]組織として、夫々の細胞集団での変化が見られます。 [勝田]組織レベルでの変化を見て、復元してまた組織学的に検討できます。その意味で、組織像をみていないのはうまくありませんね。 [藤井]培養したバラバラの皮膚の細胞を移植するという技術も開発されています。ハムスターは雑系ですから、マウスの純系を使って実験した方が良いと思いますね。
《三宅報告》試験管内での発癌が変異であるのか、それとも混在していた既存の悪性乃至は準悪性の細胞のSelectionによるものかという、前回の月報の巻頭にかかげられた言葉は私達、胎生のOrganを対象に用いるものにとっても、大切なsuggesionであると考えた。Organizeのpatternでの悪性腫瘍に馴れて来た私達が、良性の細胞のComponentから出来ていると信じきっていた胎生の組織の中に悪性か、それとも、まことに不安定(形態学的にも、機能的にも)な細胞を、それと名ざすことは、まことに困難であるが、皮膚という組織の構成成分について、そのどれが最も不安定な細胞であるかを、推察することぐらいのことはできそうである。皮膚の表皮では解剖学的にはBasal layerのみでしか分裂をみることがないこと、これを培養に移すと、角化という現象は、素晴らしい勢でのびるがDowngrowthが無いこと、又この上皮性細胞はDedifferentiationという言葉で示される通りアメーバ様の性格を持って来るが、決して異型性を示さぬこと、またもっと大切なことはBasal layerの細胞が僅少であることなど、4NQO、MCAの添加によっても、こちらの目的通りには、動いて呉れない、と考えるようになった。所が表皮の下にあるdermis以下の細胞−それは神経もあり、血管もあるが、その主体となるfibroblast likeな細胞は、Andresen(J.N.C.I.,38,169,1967)によるC3H発癌実験でも知られる通り、すこぶるmultipotencyを持っていて、C3Hの前眼房の中に戻されると、骨や軟骨を作る性格をあらわして来る。私達の皮膚のOrgan cultureでも4NQO(10-6乗M/ml)を黒木氏の方法で作用させたものでも、表皮は極めて温順で角化を示す反面、fibroblast likeの細胞は核の大さが増し、Hyperchromatieになって、細胞の濃度も増して来るという具合いにAtypismを示して来るのである。もちろん、これだけで悪性云々の言葉を、さしひかえるべきであるが、今これにH3-TdR、H3-Ur.、H3-Conpundをtakeさせる、一方でHeidelbergerの方法に従って、platingをやるかたわら、動物に戻す実験を行いつつある。 Fibroblast like cellという細胞系といっても、まことにアイマイな表現になることを、おそれるが、胎生のWharton's jellyを作る細胞というようなものに関連のふかいものと、お考えいただき度い。
:質疑応答:[吉田]Epidermisの細胞がsponge内に入りこんでくるのはorientationを失った為ですか。またそういうものが悪性化とつながりますか。[三宅]初期段階としてはそう考えたのですが・・・。 [勝田]Heidelbergerのように、あの変異したようなセンイ芽細胞をcell cultureに移してふやし、復元してみたら如何ですか。彼の場合は上皮性の変化があったのに肉腫になりましたが。 [三宅]今試みております。上皮性のものでも肉腫状所見を呈してもかまわないと私は思います。 [黒木]あのセンイ芽細胞はcell cultureすると、criss-crossを呈するんではないでしょうか。それから溶媒としてプロピレングリコールも良いと思いますが。 [吉田]あれは毒性がありますよ。新生児には無理でしょう。 [奥村]ホルモンの実験に使った限りでは、培地でうすめると細胞にあまり影響はないようです。 [勝田]Sponge中へactiveに入って行く細胞の方が、より悪性、ということはありませんか。 [三宅]今まであまりしらべてみて居ません。なお瓶は5%炭酸ガスを入れ、ゴム栓をしています。
《佐藤報告》◇RLN-187細胞及びRLN-E7細胞を使用してPuromycinで細胞増殖をおさえた場合、DAB吸収(48時間1細胞)がどの様に変化するかを実験しました。
◇DAB発癌 3'-Me-DABをdimethylsulfoxideに溶解して培養肝細胞に添加する方法で20μg/ml1ケ月位で形態学的な変化がおこるが未だ復元までいっていない。 ◇4NQO→ラッテ
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