【勝田班月報:7312:サイトカラシンBの効果】《勝田報告》ラッテ肝細胞の初代培養法について:ラッテ肝の初代培養をはじめるのに、どんな方法で細胞を分散させるか、ということが、いつも大きな問題であった。従来のメスで細切して回転培養する方法を第1法とし、本報では第2法としてIypeの変法、第3法は新たに開発した新しい方法を紹介する。 第2法は0.05%のCollagenaseでPerfusionした後、0.25%のTrypsinでdigestionする。特徴は、生きている細胞の率は低いが、adult ratの肝の培養には適しているということである。またセンイ芽細胞の混入率が低く、ほとんどが上皮様細胞である。培養開始後2〜4週間すると、細胞の生え出しが見られるようになる。(表を呈示) 第3報では、新しく開発中のenzyme、細菌中性proteinase(商品名:Dispase;合同酒精)を用いている。これは細胞障害性が低く、長期間培地に入れ放しでも大丈夫なので振盪培養などには適するど思われる。Subcultureのとき上皮性細胞の方が短時間の内に剥れるので、細胞の撰別にも便利である。それに1月以内に大量の上皮性細胞が得られるという利点もある。(表を呈示) このDispaseとTrypsinとの効果の相違を表に示したが、Dispaseの方が培養内の増殖率も高く、ほとんどの細胞が上皮性であることが判る。 このような方法で作ったラッテ肝細胞の培養株RLC-14〜RLC-21の詳細を表に示す。
:質疑応答:[佐藤]Adultラッテ肝を材料にすれば、分化型の肝細胞とれるかというと、そうではありませんね。初期の生存率の低い事から考えてかなり撰別されて幼若型のものばかりが増殖してくるようです。私達の方法はトリプシンだけで充分大量に上皮細胞がとれます。[高岡]ラッテの肝細胞の培養法については、既に沢山の方法が報告され、使われているのですが、今日の報告では、材料を胎児、乳児、離乳後からそれぞれ株を作りたい事、誰にでも出来る簡単な方法で、培養に移してからなるべく短い期間に大量の上皮性細胞を使えるようにする、という事に焦点をおきました。 [吉田]酵素を全く使わないで培養するとどうなりますか。 [高岡]若い、たとえば胎児とか初期の乳児ではセンイ芽細胞が優勢になりますし、離乳後では上皮性の細胞がなかなか生え出してきません。
《佐藤報告》T-6)
ST-5) RAL cell linesの核型について(続き) 前号No.7311において、RAL-4がB1Trisomyが0であったが、(表を呈示)培養74日で67%、培養115日で98%になった。従って成熟ラッテ肝細胞の培養では5例とも、少なくとも100日前後の培養で、高率のB1Trisomyが出現したことになる。発生の機構についてが今後、検討する必要があるが極めて興味のあることである。 (図を呈示)RAL-4の染色体分布は培養74日では42本、培養115日で43本であった。(核型を呈示)培養115日目の染色体数43の核型を示す。現在の検索では光顕的形態によって、並べられているので、今後、Banding等を利用して、更に詳細に検討されねばならない。
:質疑応答:[堀川]B1にtrisomyがあるという事をどう考えますか。[吉田]事実であれば大変面白いですね。しかしB1だけでなく他にもtrisomyが出ているのではありませんか。Adultラッテを材料にした場合の特徴でしょうか。或いはトリプシンによるセレクションなどは考えられませんか。DMBA処理でC1にtrisomyが出てくるという報告はありますね。ラッテの系特異性ということはどうでしょうか。 [乾 ]自然悪性化の時の変化にtrisomyはありませんか。 [佐藤]2倍体を拾っていってもtrisomyが出てくる事もあります。幼若系でB1以外のtrisomyを見つけてもいます。2倍体は大体増殖が遅く従って2倍体を拾っていると、増殖の早いものを捨てていく事になりますので、もし増殖の早いものを拾ってゆけばB1trisomyが多くなるという事も考えられます。 [吉田]Colcemid reversal法でtrisomyを拾う事が出来ますが、ラッテでは大きな染色体のtrisomyが頻度高い様です。Adult liverの特異的な現象でなく、ラッテ細胞ではこのtrisomyをもった細胞がin vitroのgrowthに適しているのかも知れませんね。 [乾 ]In vivoで発癌剤を処理すると小さい方の染色体が異常を起こす様ですね。 [吉田]In vivoの癌化とin vitroへのadaptationとは違うでしょうね。 [勝田]矢張りbandingをやってみないとはっきりした事は言えませんね。 [高岡]DAB給餌のラッテ肝から培養した弱い腫瘍性をもつ株細胞は、その腫瘍性に変化はないのですか。 [佐藤]培養開始して2年位になりますが、その間腫瘍性は変わらないようです。大体4NQOは一度傷を与えたらそのまま癌化へと転がり出すが、DABは給餌或いは培養内添加を中止すると、その時点で悪性化が止まってしまうのではないかと考えています。 [高木]その株を使った場合、どの位の期間で実験を終わる予定ですか。 [佐藤]処理しないものが90日で腫瘍を作りますから1カ月位で実験を着る予定です。 [勝田]In vitroでの発癌実験の問題点として、(1)発癌剤を処理してから動物にtakeされて腫瘍を作るようになるまでに数カ月という長い時間がかかるのは何故か。悪性化そのものに時間がかかるのか。それとも悪性化した細胞が少数でそれがtakeされる数に達するまで増殖するのに時間がかかるのか。(2)動物へ復元接種してからその動物が腫瘍死するまでに時には1年以上という長い時間がかかるのは何故か。動物の体内で更に2段3段の変異が起こるのか。(3)Spontaneous transformationとは何なのか。といった事があると思います。 [吉田]ラッテは42本、マウスは40本という染色体数が生体内では厳密に維持されるのに、in vitroでは変わってくるのは何故でしょうか。In vivoでは何らかの変異があるとselectされてしまう。そういう環境の中で変異して、なお生き残るから癌は悪性度が強いのだと言えませんか。 In vitroではそういうselectionがないので、悪性度の度合いが弱いものから強いものまで色々あっても不思議はないのかも知れません。 [佐藤]そういう考え方から培養にもラッテの血清を添加するとか、何か抗血清を使って抗原性の変わったものを除外するような方法を考えています。 [勝田]昔、なぎさ変異の実験をしていた頃、ラッテにtakeされる方へ変異の方向をもってゆこうとして色々と試みましたが、みな失敗しました。 [藤井]In vitroで悪性化したものでも、一度動物にtakeされたものの再培養は、ずっと早く動物をたおすようになりますね。 [勝田]復元の条件はなかなか複雑ですね。昔、雑系継代AH-130由来の細胞をウィスター系のラッテへ植えてみました。初代はtakeされて動物は死ぬのに、その腹水を次のウィスターに植えますとtakeされないという現象にぶつかったことがあります。
《藤井報告》培養ラット肝細胞株(RLC-10)の培養過程ならびにin vitro発癌後の同系リンパ系細胞刺激能について:さる11月の、京都での培養学会研究会シンポジウムに発表するのを機に、今まで折々に施行してきたRLC-10系の肝細胞株とその4NQO発癌後の株細胞についてのリンパ球腫瘍細胞混合培養反応を、勝田教授のつくられたculture courseにあてはめてみました(図を呈示)。各細胞株は、医科研癌細胞研究部より貰ったあと、私共の研究室で維持してきたもの。培養液はRPMI 1640でfetal calf serumを10%に添加。混合培養反応2日前よりラット血清に代えて培養した。対照のRLC-10およびin vitro変異株RLT-1はリンパ球刺激能(リンパ球の反応係数で示されたもの)が低いが、Cula-TC、Culb-TC、Cule-TCなどは高い。Culb-TCは培養日数を経るにつれリンパ球刺激能は高くなるが、その腫瘍性−移植生着能−は依然として高い。この高いリンパ球刺激能が、腫瘍拒絶にはたらくリンパ球(T-cells)のものか、あるいは液性抗体をつくるリンパ球(B-cells)のものかを区別することによって、リンパ球刺激能と腫瘍性の一見矛盾する関係がわかると思われる。
:質疑応答:[永井]長期間培養したCulbTCでリンパ球の刺激が高くなるというのは、培養期間の問題で、正常細胞でも培養していれば矢張りリンパ球の刺激が高くなるような気がします。この方法で免疫的にひっかかる細胞と腫瘍細胞とを関係づけられるでしょうか。[高岡]単純に考えて、昔のCulbTCを抗原にした抗血清を使って、現在のCulbTCが免疫的に変わったかどうか調べる事は出来ませんか。 [吉田]免疫に関する面白い動物で“かやねずみ”というのがあって、これはどんな異種の動物の腫瘍もtakeして死んでしまうそうです。
《高木報告》
前報に引きつづきCytochalasinBのXP、WI-38、RLC-10、Sg、RFL-N2、RFL-5およびRRLC-12細胞に対する効果を報告する。これらの細胞につき簡単に説明すると次の通りである。
以上調べた範囲でまとめると、培養期間の比較的短い、あるいは所謂正常細胞と考えられるWI-38、RLC-10、Sg、RFL-N2および培養期間の短いXP細胞では大体2核までにとどまり、正常組織由来であるが培養期間の長いRFL-5および肉腫細胞株のRRLC-12では2核以上の核数の細胞が多数みられた。RFL-5細胞は現時点では移植して腫瘍は形成しないが長期間培養しているので所謂transformed cellsと考えてよいのかも知れない。さらにいくつかの細胞種について検討し、移植成績と比較してみたい。
上記XP細胞につき、正常人皮膚の生検材料からえられた細胞との比較においてUV感受性を調べてみた。XP細胞は少数シャーレにまいてもすぐゆ合して個々のcolonyを形成しにくいためUV照射して1週間後の増殖曲線で比較する方法をとった。 UVは15wの殺菌燈を100cmの距離で照射し、時間は5"、10"とした。正常細胞では5"照射で2日目まで増殖しなかったが、以後7日目まで対照と同様の増殖を示した。10"では2日目まで細胞数は一時減少したが以後立ちなおり増殖した。XP細胞では5"照射で細胞数は7日目まで接種時の2.1万から1.1万と次第に減じ、10"では4日目まで急速に減じ以後やや恢復したが対照とは明らかな差異が認められた。UV感受性がXP細胞において高いと考えられる。
:質疑応答:[吉田]サイトカラシンBの作用は核だけが分裂して細胞質が分かれないのですね。[堀川]多核になった細胞と腫瘍性との関係はどうですか。それからサイトカラシンBのもう一つの作用の脱核と、多核が出来ることとの関係はどうなっていますか。 [高木]濃度が高いと脱核を起こします。 [梅田]多核が出来る濃度でも4核になってから、その中の1コが脱核して3核細胞になるという事もありました。 [藤井]多核細胞の運命はどうでしょう。 [高木]サイトカラシンBを除いてしまえば元に戻って、又正常に分裂できるようですが、私達はそこまでみていません。 [吉田]この多核化は分裂期阻害でしょうが、写真でみると後期の阻害のようですね。 [高岡]無添加の対照細胞の核数は・・・。 [高木]どの細胞系も多分1コの所にピークがあるとは思いますが、調べていません。
《梅田報告》
:質疑応答:[堀川]放射線照射後の回復物質も追ってゆくとnucleosideらしいという所まではきていますが、まだはっきりしてはいません。[梅田]形態的にはきれいに回復しているのですがね。 [堀川]効いたり効かなかったりするのは、細胞の状態によるようです。 [吉田]核小体が小さくなる時はヘテロクロマチンも少なくなりますか。 [梅田]分布状態が変わってきます。 [吉田]ヘテロクマチンが消えてしまうのですか。又は染まらなくなるのですか。 [梅田]一様にプツプツと小さくなるようです。
《堀川報告》細胞が細胞周期を通じてX線、紫外線あるいは化学発癌剤4-NQOなどに対して感受性に大きな違いを生じることは、これまでの私共のColcemid-採集法を用いて得たHeLaS3細胞の同調細胞集団を使った実験結果からも明らかにされている。しかしこうした各種物理化学的要因に対する細胞の周期的感受性変化の原因となるものについて、その本体はまだ明らかにされていない。例えばX線についてはOhara and Terasima(1970)はnon protein(acid-soluble)sulfhydrylsの細胞内含量変化がX線の周期的感受性と密な関連性をもつようだという実験結果を出しており、このことは最近私共の研究室においても再確認されている。しかし、これでX線に対する同調的感受性曲線のすべてを説明出来る訳ではなく、秘められた多くの問題を残していると思われる。さてこういった意味から本実験ではさきに当研究室で確立したcolcemid-採集法を用いて得たHeLaS3細胞の同調細胞集団を用いて紫外線に対する細胞の周期的感受性変化、さらにはこうした周期的感受性変化の原因となる要因解析を試みているのでこれについての結果を今回は報告する。 (図を呈示)100ergs/平方mmのUV照射に対してM期とmiddleS期の細胞がコロニー形成能でみると最もsensitiveであることがわかる。これに対して200ergs/平方mmのUVを照射したとき細胞内DNA中に形成されるthymine dimer(TT)はこれらsensitiveなM期とmiddleS期において最も多くinduceされることがわかった。 一方、このようにしてDNA中に形成されたTTがどの様に除去されるか、つまり細胞周期によってTT除去能に差違があるか否かを検討した(図を呈示)。各時期の細胞をUV照射した直後のTT除去率を0とおいた時、種々のincubation後にどのように細胞からTTが除去されるかについては、TTの除去能に関して各時期の細胞間には大きな差違は認められない。 またこれまでの実験結果が示してきたようにヒト由来のHeLaS3細胞においてはどの時期においても全TTのうち約50%のTT除去がmaximumである、ということもこれらの結果から再確認された。 以上の結果はUV照射に対する細胞の同期的感受性差はDNA中に形成されるTT量の多少に依存しており、TTの除去能の差違には依存しないことを暗示していると思われる。ではM期及びmiddleS期の細胞内DNAに何故特異的にTTが形成されやすいか、その原因解析は今後の問題として残されている。
:質疑応答:[乾 ]細胞周期間での感受性の変化の報告はかなり沢山出ていますが、種による差はありませんか。[堀川]同じだとみてよいでしょう。細胞周期の違いはあるでしょうが。 [乾 ]では、もし違う結果が出て来た時は何か技術的にまずかったという事ですね。 [堀川]各時期におけるchromatinの構造変化、DNAのlocalizationの差などが問題になるでしょう。もう一つは“filter”的な役割をもつ蛋白の変化などが考えられます。 [乾 ]4NQOの結合がlateSでほとんど無いというのは面白いと思います。 [吉田]X線ではどうですか。 [堀川]G2レジスタントという意味では、X線、UV、4NQOみな同じです。 [吉田]G2では染色体が1本になっていて、感受性が高まるような気がします。どちらかといえば、何か弱々しい感じのする時期ですがね。 [堀川]染色体レベルでtranslocationが多いから感受性も高いとはいえないと思います。変異や発癌はresistantのstageに多いのではないでしょうか。sensitiveのstageはkillingに働くのではないかと思います。 [乾 ]DNAレベルで何らかの影響を受けていて、それがG2期で染色体異常として出てくるのかも知れません。 [吉田]組み替えも起こるでしょう。 [乾 ]全細胞を分母にすれば、G2は変異率が高いと出るでしょうが、survivalの細胞数を分母にしてみても矢張りG2の変異が高いのでしょうか。 [堀川]大抵survivalの細胞数を分母にして計算しています。
《野瀬報告》Alkaline Phosphatase(ALP)-Constitutive Strainの安定性について:CHO-K1からMNNG、EMSの処理により、元々なかったALP-I活性を持つ株がとれたことを既に報告した。これらの株を継代して、経時的にALP-I活性と、colonyをつくってALP-染色を行ない、ALP-陽性colonyの頻度を見てみた(表を呈示)。3つのALP-陽性株のうちAL-151は、最初、高い比活性をもっていたが、colonyを単離してから80日目くらいから活性が下りはじめ、同時に、ALP-陽性colonyの頻度も減少してきた。AL-323、AL-431は、少なくとも90日間は活性は安定に保たれ、ALP-陽性colonyも97〜99%であった。AL-151のみが見かけ上、ALP-活性に関して不安定で、継代してゆくうちに陰性細胞の割合が増加してくることがわかった。この増加は本当にALP-陽性細胞は陰性になったためなのか、それともはじめに少量混在していた陰性細胞が増殖してきたためなのか現在のところ何とも言えない。増殖曲線の上でCHO-K1とAL-151との間にdoubling timeの差はなかったが、壁への付着力の差などの違いによりpopulation changeが生じることは考えられる。 ALP-以外の形質の安定性の比較をするため、8-Azaguanine耐性、Proline-prototrophへの変異率を比べてみると(表を呈示)、AL-151が特に変異しやすいとは言えない。 次にCHO-K1からcolonial cloneをいくつか単離し、それぞれの細胞集団中のALP-陽性細胞の頻度を見たが(表を呈示)、量的差はあるが、どのcloneにも10-6乗〜10-5乗の頻度でALP-陽性細胞が混在していることがわかる。従ってALP-陽性細胞はCHO-K1(ALP-陰性)のALP-遺伝子のactivation(又はderepression)によるのか又はpoint mutationのback mutationによって生じたもので、CHO-K1がALP-遺伝子欠損であるとは考えられない。現在ALP-Iに関して安定なAL-323、AL-431を用いてcell hybridization法によってALPの調節機構を研究したいと考えている。 ALP-Iの精製について: ALP-IがdibutyrylcAMPによって誘導されることがわかったが、その機構はde novoの酵素合成によるのか、単なる活性化によるのか、まだ不明である。その点を明らかにするためALP-Iを精製し、抗体を作って抗体による滴定を行なおうとしている。材料はrat kidneyを用い、Butanol抽出、Sephadex G-200、DEAE-cellulose、DEAE-Sephadexによって精製していった(図を呈示)。G-200のelution profile、DEAE-cellulose上でのelution profileを示す。A-50のpeakの段階で約450倍に精製された。この最終産物をdisc gel電気泳動を行なうとタンパクのbandは2本あり、そのうち一本はALP-活性と一致するが他の一本は一致しなかった。従ってまだ完全な精製はできていない。また、活性も2つのbandに分れてしまい、chromatoでは単一のpeakでも、ALP-Iには2つのisozymeが存在するのかも知れない。(精製法の要約図を呈示)収量に関して、DEAE-celluloseのstepで下るのが今後の問題である。
:質疑応答:[堀川]クローンは1コから拾ったのですか。[野瀬]コロニアルクローンです。 [吉田]酵素活性の落ちた方は出発時の陽性コロニーが98%で、活性の維持されている方は100%というのが一寸ひっかかりますね。つまり落ちた方は出発時の陽性2%と言うのが増殖したとは考えられませんか。 [佐藤]染まるものと染まらないものとは、形態的に違いがみられますか。 [野瀬]少し違うような気もします。 [堀川]ALP活性マイナスの株はその酵素活性を誘導できますか。 [野瀬]CHO-K1については誘導できません。 [堀川]だとすると原株の−から変異させた+の中から又−に変わったものは、原株の−とは違う性質をもつ可能性もありますね。私の拾ったアミノ酸要求性株の場合と似ています。+と−の中間タイプかも知れません。 [吉田]染色体はどうですか。 [野瀬]一寸特徴があるようですが・・・。 [梅田]CHOは悪性ですか。 [野瀬]そうです。
《山田報告》Spermineの細胞表面に及ぼす影響について検索していますが、細胞が思う様に増えてくれず充分なる成績は出ていませんが、今回はJTC-16に対する影響について報告します。RLC-10(2)についても同様なことが云えますが、Spermineの影響はそのtargetの細胞の増殖状態如何によりかなり異ります。一般にその平均電気泳動度の速い状態、即ち増殖の盛んな状態ではSpermineの影響が強く出る様です。JTC-16について一回目、二回目の実験では、低濃度のSpermineにより、やや電気泳動度は増加しましたが、RLC-10(2)にみられた様な高値ではありません。3.9μg/mlの高濃度のSpermineにより10〜15%の表面荷電密度の減少が生ずる様です。これはRLC-10(2)のそれよりも、やや低下の程度は少ない様です。培養時にみる様な両者の差はない様です。(repairのことも考慮する必要があるかもしれない)(図を呈示) Spermineを加へるメヂウムに1/2濃度のLD-mediumを加へた所、このSpermineの細胞表面に及ぼす影響は完全にブロックされました。なほ作用機序の詳細はラット腹水肝癌を用いて検索する予定です。
《乾報告》ニトロソグアニジン誘導体8種の癌原性:月報7310、7311に引きつづき、本月もENNG、nPen、NNGの毒性、変異誘導性の濃度依存性を観察した。 前2回の報告でニトロソグアニジンの一連の誘導体では、CH3-基の側鎖の長さに略々比例して毒性変異誘導性が弱くなっていくこと、この方法では変異コロニーの同定がむずかしく、これらのコロニーに判定基準を与える必要があることが分かった。 今回は動物実験、培養で発癌性、バクテリヤで突然変異誘導性のあるENNGと、発癌性の証明がなく、バクテリヤでの変異誘導性が(±)であるnPen、NNGの2者についての実験を行なった(表を呈示)。明らかな発癌性物質であるENNGはnPen、NNGに比して、変異コロニーの形成率が高く、P.E.がDosesに依存して、低下すると共にTransforming Rateは逆に作用Dosesに依存して上昇するが、現時点では投与DosesとTransforming Rateの間に数学的な平行関係はないようである。 これに反しnPen、NNGではPE、Transforming Rate共にDoses依存性が殆ど認められない。以上の結果、及び前号迄の報告を併せて考察すると、毒性、変異誘導性がDosesに依存する物質には発癌性があり、依存しない物質には、これがないのか?と推察される。これらの結果は染色体切断、修復が投与Dosesに依存して現れる物質はバクテリヤに対し強いMutagenであり、Doses依存性のないものはMutagenesityがないか少ないと言う結果によく一致している。今後この一連の化合物について、染色体切断頻度も併せて検討したい。 次の問題として、変異コロニーの判定の難かしさがある。同一人物が判定の基準をきびしくした時と、ややあまくCriss-Cross、Piling upの判定をした場合とを、4種の物質(0.5μg/ml)について表にしてみた。この数値の違いをみても、この種の実験では、今一つ厳格なtransformed colonyの形態的定義が必要と思われる。 |