【勝田班月報:7502:高張処理による細胞の変化】《勝田報告》
:質疑応答:[堀川]Arginine-free培地で培養すると、上皮細胞が生き残って、fibroblastは死んでしまうというのは、何を意味しているのでしょうか。[勝田]合成能力の違いだろうと考えています。 [佐藤]要求性の面からみますとモーリス肝癌の中にはArginine要求の非常に高いものがありますね。正常肝細胞も要求性はあります。 [勝田]可欠アミノ酸を含まない培地でどんどん増殖を続け、且つその可欠アミノ酸を自分で合成しては培地中に放出しているといった系でも、外からその可欠アミノ酸を添加してやるとそれを消費するし、又増殖もより盛んになります。その場合、きっと細胞は培地にあれば使うし、無ければ合成するという事ですね。能力さえあれば。 [堀川]Arginine-freeにして、fibroblastが先に死んでしまうのは増殖が早いために手持ちのArginineを先に使い切ってしまうとは考えられませんか。 [高岡]この場合は、むしろ上皮の方が増殖度は高いようです。 [佐藤]ラッテの肝細胞の培養では色んな条件が判りました。例えば回転培養をするとfibroblastより上皮に有利だとか、ラクトアルブミン培地の方が合成培地より上皮細胞選別に優れているとか、炭酸ガス培養にする時は少数でまいた方が上皮が残るが閉鎖培養の場合はなるべく多い細胞数をまいて継代する方が上皮細胞が維持されるとか。しかしこれらの事はヒトの肝細胞の培養には殆ど当てはまりませんでした。 [高岡]このディスパーゼを使う初代培養法では、もとの組織の中にあった種々の細胞があまり選別されずに培養に移され、しかもかなり長期間共存しているようです。
《山田報告》培養ラット正常肝細胞の微細構造:培養されたラット正常肝細胞の形態学的特徴を調べてみようと思い、まず、H.E.、Giemsa、Mallory。PAS等の染色標本を作製して詳細に観察してみましたが、光学的レベルでの形態によっては、それぞれの特徴を見出すことが困難でした。しかし大掴みにみますと、 Embryo由来の細胞は、かなり混合した細胞集団であり(RLC-21、RLC-18)、Adult由来の細胞の方がむしろ単調な細胞像であり(RLC-16)、多核細胞も少なく、大部分は肝細胞由来と考へられますが、ごく一部にはkupffer cellが混合している様に思いました。PAS染色ではどの細胞系でもグリコーゲンは染まらず、またMallory、銀染色を施した標本から、あまり特記すべき所見は得られませんでした。そこで電顕的に観察した所(模式図と写真を呈示)、RLC-16、-20には幾つかの特徴がみられました。 RLC-16、RLC-20培養肝細胞のME所見の特徴: 一般的特徴:
RLC-16とRLC-20の相互の差:
まだ二系統の細胞の微細構造しかみていないので細かい特徴を決定的に云うことは出来ませんが、少くとも形態学的に肝細胞を同定するにはやはり電顕で見る他はない様な気がして来ました。 今後の観察には、1)グリコーゲン顆粒の星状凝集の程度。2)lysosomeの発達の程度。3)平滑な接触面の残存の程度(正常肝細胞の微細構造内シェーマにみる様な平滑接触とデスモゾームの形成の程度)とmicrovilliの発達の程度との比較。4)星細胞を初めとする混合細胞の形態。等の所見をポイントにして他の株を観察して行きたいと思って居ます。 これらの電顕像は2%glutaraldehydo(Cacodylate buffer pH7.3)で前固定(1.5h)した後に1%OSO4により本固定した細胞を観察して得たものです。そして細胞はガラス管壁についたものを機械的に削り落として得たものですが、次回から準備の出来次第、テフロン(?)の上に増殖させてそのまま薄切してみたいと思って居ます。
:質疑応答:[佐藤]培養細胞の電顕像をもっとよくみるという方針には賛成です。しかし株になったものだけをみるのは自然悪性化への経過をみる事になるかも知れません。もっと培養の若いところが見てほしいですね。[山田]今は色んな細胞をなるだけ数多く電顕でみたいと思っています。 [佐藤]ラッテにDABを喰わせて悪性化してゆく、その各時期の肝細胞の電顕像をみた仕事がありますが、悪性度が増すについれてmicrovilliが増えるようです。細胞の接触面は培養法によって、例えば細胞集塊の状態とcellシートの状態では違うでしょうね。 [難波]私達の実験でも悪性化した培養細胞はmicrovilliが発達していて、mitochondoriaが少ないですね。 [高岡]Glycogen顆粒は培地のglucose濃度を上げると出てくるはずです。 [勝田]しかし、それは肝細胞特有の現象ではありません。培地のglucose量を増やすとHeLaでもglycogen陽性になるというデータがあります。 [乾 ]PAS染色でみるには、0.5MのHClで加水分解してから染めるとよく染まります。 [加藤]Glycogenはembryonic epithelialを培養すると、どの組織でも出てきます。そしてprimaryのglycogen granuleが消えないと分化しませんね。 [難波]Chick embryo liverの場合は培養するとglycogenが急激に増えますね。 [堀川]それを継代するとどうなりますか。 [難波]消えてしまいます。
《佐藤報告》T-15) DAB発癌実験−復元実験−これ迄、in vitroで、くりかえしDAB処理の続けられて来た細胞が非処理細胞(コントロール)との間に、造腫瘍性の上で、何らかの差を見い出し得るか否かを検討した。実験はDAB処理細胞、非処理細胞の各々の100万個細胞/0.1ml/48hr以内newborn rat、を皮下移植し、移植後30日間を観察期間(予備実験より決定)とし、腫瘍の触診を行った。 この結果は(図を呈示)、CD#3.C-1(コントロール)、CD#3.10(10μg/mlDAB処理細胞)、CD#3.40-1(40μg/mlDAB処理、細胞障害少なく)、CD#3.40-2(40μg/mlDAB処理、細胞障害大きく)。結果より、DAB処理群では、コントロールに比し、腫瘍発見迄の日数の短縮が明らかとなった。このことから、必ずしも速断は出来ないが、in vitroでのDAB処理は、本細胞の悪性化(増強)を十分、進め得るものと推定される。一方、DAB処理群の間ではCD#3.10とCD#3.40-2が類似したパターンをとり、CD#3.40-1との間でやや異なる様相を示しているが、この点に関しては現在検討中である。 尚、復元実験は発癌実験開始後246日と264日の間で行われた。
:質疑応答:[黒木]Tumorを作るようになったのは培養何日目位からですか。[常盤]250日です。 [堀川]DAB処理群はDABの結合蛋白に違いがあると考えているのですか。 [常盤]いいえ、違いはないのではないかと考えています。 [梅田]性質が変わるのは何時頃からですか。Saturation densityはどうですか。 [常盤]性質は150日位から変わります。増殖度やsaturation densityは変わりません。 [佐藤]DABの様に長期間の間に段階的に変化してゆくような発癌剤での、増殖誘導ということと、悪性化ということを別々に調べてみようとしています。
《乾報告》経胎盤In vivo-in vitro試験管内発癌(小括)昨晩春より手掛けて参りましたTransplacental in vivo-in vitro chemical carcinogenesisの仕事について、2、3の化学発癌物質(MNNG、DMBA、2FAA等)を除き一応一段階のスクリーニングを終わり、2月7日“癌の基礎的研究班”のシンポジュウムで話すことになりましたので、現在得ておりますDataを小括し、御批判していただきたいと思います。 実験方法: 実験方法は再三申し上げている通り妊娠11日のハムスター(純系、APG、雑系)母体にDMSO、Bp、3'm-DAB、DMN、DEN、NMU、4NQOおよびAF-2の8種の化学物質を20〜2000mg/kg腹腔内注射し、24あるいは48時間後胎児を培養し、その一部は24時間以内に染色体標本を作製、他の一部はそのまま培養を継続し、培養2、4、6代目の細胞をシャーレ一枚当り、1万個播種しTransformed Colonyの判定に使用した。一部の薬品を投与した動物の細胞については、ハムスターのチークポーチに200万個もどし移植をおこなって3週〜6ケ月間観察した。使用した化学物質の培養細胞染色体への直接の影響を観察する為、各物質を細胞が再増殖し得るminimum Dose(0.5〜1000μg/ml)3時間作用し、24時間以内に染色体標本を作製した。 結果: 培養後2、4、6代目の細胞をシャーレに播種後形成したTransformed Colony形成率およびシャーレ1ケ当りのTransformed Colony形成率(図を呈示)は、対照に使用したDMSO投与群ではTransformed Colonyはほとんど出現しなかった(シャーレ30枚中3ケ)。それに反し、Transplacental Carcinogenesisが動物実験で著明に知られているNMU投与群ではTransformed Colonyの出現率は高かった。DEN、DMN等in vitroで直接細胞に投与した場合Carcinogenesityの非常に弱い物質投与群においても同様の結果を得た。 動物実験においてTransplacental Carcinogenesisが証明されていない3'm-DAB投与群において、早期に高頻度のTransformed Colonyが観察された。純系ハムスター(APG)を使用して行った実験のうち、DEN(4代)、NMU(4、6代)、Bp(8代)投与群の細胞をハムスターチークポーチにもどし移植した結果(200万個/Hamster)Bp投与群では、移植細胞は2週間以内に消失した。DEN投与群の一系列でも同様に消失したが、他の一系列では移植後18日、細胞の残存が認められた。NMU投与群(G-4)では、3匹中2匹のハムスターに小腫瘤が形成され、内1匹においては移植後3週間目に血管造成を伴う暗血色、米粒大の腫瘍が残存している。現在DEN、NMU、6代目(培養後23日)、Bp 11代目の細胞を移植観察中である。雑系ハムスターを使用した実験中、DMN、3'm-DAB投与群2代目の細胞を同様ハムスターに移植した各2系列中、各々1系列において移植後2週迄、DMN(1/3)、3'm-DAB(3/3)に腫瘤残存が観察されたが、移植後5カ月の現在腫瘤形成は認められない(移植Dataの詳細は次月報以降に報告の予定)。 経胎盤的或いは直接細胞に前記化学物質を投与した場合の染色体切断を中心にした異常細胞の出現率をまとめた(表を呈示)。 DMSO(500μg/kg)直接投与群の異常染色体をもつ細胞の出現率は3%、経胎盤(20mg/kg)投与群のそれは、6.5%であった。DMN、DEN、3'-DABを経胎盤、直接投与した群で出現する染色体異常をもつ細胞の出現率は低く、10%以下であった。 経胎盤的にこれら物質を投与した場合の異常細胞の出現の頻度は直接投与群のそれに比して高く、特にDEN投与では経胎盤投与群11%、直接投与群3.4%とその差は著しかった。 Bp投与群でも同様の傾向を示したが、異常細胞の出現率はいずれも30%以上であった。これに反し、NMU、4NQO、AF-2、投与群では直接投与群に現われる異常細胞の出現頻度は経胎盤投与群のそれに比して高かった。これら3化学物質投与群における異常染色体をもった細胞の出現頻度は著しく高く経胎盤投与で15〜23%、直接投与群で34.2〜55%であった。観察全染色体当りの異常染色体の出現頻度についてまとめた(図を呈示)。 異常染色体の出現頻度はBp、3'm-DAB、DMN、DEN、投与群では直接投与群に比して経胎盤投与群で明らかに高かった。これに反しNMU、4NQO、AF-2、投与群の異常染色体は直接投与群に高頻度出現した。 以上の結果を総括すると(図を呈示)、Transformed Colony形成率は、NMU、4NQO、に高く、DMN、DEN、3'm-DABがこれに次ぎ、Bp、AF-2、投与群で低かった。 DMSOを経胎盤的に投与した場合、Transformed Colonyはほとんど出現しなかった。 もどし移植の結果は、現在迄明らかでないが、純系ハムスターを使用したNMU作用群で培養後、13日目の細胞を移植した例において血管造成を伴う腫瘤が認められている。 染色体異常はBp、3'm-DAB、DMN、DEN、投与群では経胎盤投与の場合高頻度に出現し、NMU、4NQO、AF-2、投与では直接投与群に高く現われた。以上の事実に基ずき、Bp、3'm-DAB、DMN、DEN、等の物質は母体において代謝活性化され経胎盤的に胎児細胞に作用すると考えたい。 なお、移植実験結果、Transformed Colony出現率、染色体異常の型の詳細な結果は次号以下に報告したい。
:質疑応答:[難波]Bpはin vivoで24時間以内に活性化され代謝されるには時間が短すぎませんか。[黒木]Inductionではないから、24時間で充分のはずです。 [堀川]染色体異常のデータはin vivo、in vitroを分けて纏めた方が判りよいですね。 [黒木]内容はin vitroとin vivoで違った点がありますか。 [乾 ]染色体型での変化とchromatid typeの変化という見方で違ってきます。 [堀川]そこはどう考えますか。 [乾 ]Activationを考えています。Placental barrierは無さそうです。 [堀川]Mutation frequencyをみたらどうですか。 [乾 ]それはぜひやってみたいと思っています。それか今回のは全胎児を使ってのデータですが、次には臓器別に培養してみたいと思っています。 [梅田]このシステムではこんなに高率に変異コロニーが出るのに、経胎盤的に発癌剤を与えても産ませて発癌率としてみると、ずっと低率で、しかもずっと日が経ってからしか掴まえられないのは何故でしょうか。 [堀川]In vivoでは免疫とかselectionがあるからでしょう。 [加藤]Teratogenesisはembryoのage-dependencyがあります。胎生17日まではin vitroに移してもteratogenesisが起こります。色んな日数の胎児を培養したものに発癌剤を処理した時の染色体変異と、経胎盤的に発癌剤を与えた胎児の培養の染色体変異との間に何か共通の傾向がありますか。 [乾 ]まだみていません。11日の胎児を使った理由は各organが出来る第1日目だとされているからです。 [佐藤]変異細胞の染色体は調べましたか。 [乾 ]まだです。 [黒木]In vitroとin vivoのdoseはどうやって決めたのですか。 [乾 ]In vivoでは24時間動物が死なずに耐えられる最高濃度を使うようにし、in vitroでは細胞が死滅せずに再増殖を起こすことの出来る最高濃度を使いました。 [黒木]そういう決め方でin vitroとin vivoの変化を対応させていいでしょうか。In vitroとin vivoの変異の違いがそういうdoseの違いから出るとも考えられませんか。 [乾 ]その点に問題は残っています。しかし、どういう決め方をするかという事は大変難しいですね。
《難波報告》9.ヒト正常2倍体細胞の4NQOによる発癌実験経過報告昨年、ヒト肝由来の細胞を4NQOで癌化することに成功したが、その結果を一層確実にするために追試実験を進めている。現在まだこの追試実験でヒト細胞の癌化には成功していないが、しかし4NQO処理細胞は癌化にかなり近づいているようなので経過中の実験結果について報告する。報告の内容は、細胞の形態、増殖、染色体についてである。
:質疑応答:[堀川]ヒトの細胞の悪性化の最終決定は何ですか。[難波]ヌ−ドマウスの抗リンパ球血清で処理した動物への移植性で見る積もりです。 [佐藤]染色体数の少ない方への変異は問題があるかも知れません。DNA量としても少なくなっているという細胞系はありましたか。 [乾 ]人細胞系で1系ありましたが、染色体数の変化とDNA量の変化は平行しません。 [堀川]種が違ってさえDNA量は同じなのだという人もありますね。 [乾 ]1本少ないというような時は、核型も検討してみる必要がありますね。 [黒木]ビタミンEでlife spanが延びるという実験データの真偽はどうでしょう。 [難波]あまり信頼性がありません。 [佐藤]Agingの原因は今どう言われていますか。物質の欠乏ではないようですね。 [堀川]消耗説は否定されています。物質がdeficientになってagingになると考えると、細胞内に収まりきらない程の量を始に持っていなければならない計算になりますから。 [勝田]DNAの擦り切れ説とか、酵素活性の低下に伴うという説は残っていますね。しかし、もっと理想的に培地を改良すれば、agingもなくなると思いますがねえ。 [堀川]それはそうかも知れませんが、これはこれで良いシステムですよ。 [難波]現在の培地なら対照は必ずagingを起こすので実験群の変異がはっきりします。
《高木報告》
:質疑応答:[難波]プラスチックシャーレの滅菌法によって細胞の増殖が違うというのは困ったことですね。X線滅菌というのも出ていますが、どうですか。[高木]紫外線滅菌でなくては駄目だそうです。 [山田]PHAでラッテの血球が反応しにくいというデータは私も持っています。あと腫瘍細胞とリンパ球との混合比とか、反応させてどの位の時間で測定するかとか、いろいろ気をつけてやらないと失敗しますよ。
《堀川報告》ヒト由来のHeLaS3細胞とマウス由来のL細胞に各種線量のUVを照射した際、(夫々に図を呈示)両細胞ともに線量に依存してDNA中にTTが誘起される。ところが例えば200ergs/平方mm照射されたHeLaS3をその後repair incubationすると、約50%のTTがDNAから除去されるが、マウスL細胞においてはこのようなexcision repairはまったく認められない。しかるにコロニー形成能による線量−生存率曲線を求めた両細胞間には感受性の差異は全く認められない。これは不思議なことである。TTのexcision repair能を欠くL細胞がHeLaS3細胞とUVに対する感受性を一にするにはマウスL細胞には何か秘めたるrepair機構をもつに違いないことを示唆している。この問題を解析しようとするのが本実験の趣旨である。幸い、caffeineがこの方面の秘めたるrepair機構をblockすることが以前から知られているので、このcaffeineを使ってこの分野の検索を行うことにした。未照射の正常L細胞を各種濃度のcaffeineを含む培地中でコロニー形成させると、caffeineの高濃度のところでコロニー形成能は低下するが、低濃度域ではそれ程大きなeffectをうけない。一方、200ergs/平方mmのUV照射されたマウスL細胞を同様に各種濃度のcaffeine培地中で培養するとコロニー形成能は更に一段と低下する。こういった実験をマウスL細胞とHeLaS3細胞について行い、それぞれのpercent inhibitionを求めると、200ergs/平方mm照射されたマウスL細胞の生存率はHeLaS3細胞のそれに比べてcaffeineによりはるかに抑制されることがわかる。これを更に線量−生存率曲線を求めてconfirmしてみた。L細胞の生存率はcaffeineの濃度に依存して低下する。L細胞とHeLaS3細胞について行った実験結果をもとにcaffeine濃度に対してDo値の変化をプロットしてみると、これからも照射されたL細胞の生存率はcaffeineにより大きく影響されることが判った。(以下、次号)
:質疑応答:[勝田]ハイドロキシウレアそのものは紫外線で影響を受ける事はありませんか。[堀川]ハイドロキシウレアという物は精製すると効果がなくなるとか、色々と問題もあります。紫外線照射で何か起こるということも考えられますね。 [黒木]ConservativeDNA replicationにカフェインが取り込まれるのは何故ですか。 [堀川]カフェインはプリンのanalogですから入るのかも知れません。結合しているかどうかは判りません。 [黒木]紫外線照射でカフェインの取込みが下がるのはDNA合成が下がった為ですか。 [堀川]そう考えています。DNAの取り方についてはもっと検討する必要があります。 [黒木]Bagで透析するとnonenzymaticにカフェインがくっついてしまうのでは・・・。 [堀川]カフェインはnonenzymaticにbindするという方が考え易いでしょう。 [黒木]酵素的にではなく入ったカフェインが再生に関係するというのは、一寸考えにくいのですが、どういうことでしょうか。 [二階堂]カフェインのinsertionはどうなっているのですか。 [堀川]全く判っていません。まき込みというような表現で詳しい説明を逃げています。 [黒木]BUdRはなぜdimerの所へ入るのですか。 [堀川]DNAに紫外線を照射してdimerを作り、新たなDNA合成を起こさせて、dimerの所へgapを作りBUdRを取り込ませるという訳です。
《梅田報告》前々回の班会議(月報7410)で報告した試験管内発癌実験のその後の実験と、前回の班会議(月報7412)で報告したin vitro metabolic activationの仕事について報告する。
:質疑応答:[堀川]マウスの年齢による違いはありませんか。[梅田]今の所一定の年齢を使っていて、年齢を変えてのデータは持っていません。 [黒木]3T3継代の細胞のcontact inhibitionはどうですか。 [梅田]AKR系からの系はかかりますが、DDD系由来株はかかりません。 [堀川]AF-2ではどうですか。 [梅田]Mutationが起こります。Liver homogenateによるactivationもあります。
《黒木報告》
:質疑応答:[堀川]肝細胞をfeeder layerにする時はX線などをかけて使うのですか。[黒木]FM3Aと合わせて使う時は何も処理せずに、そのまま使おうと思っています。肝細胞はガラスによく張り付き、FM3Aは全く張り付かずに浮いて増殖する細胞ですから。 [堀川]3T3法で接触阻害のかかる細胞がとれるというのは、何か意味がありますか。 [黒木]Confluentになってから長くおくとovergrowthする細胞をselectする結果になるのではないでしょうか。3T3法ですとそういう状態にならずに継代する訳です。 [佐藤]私の経験では接種細胞数を大きくして継代するとmarker染色体が出て来ず、小さくするとspontaneousな悪性化が起き易いようです。一定の接種細胞数にしてあまり少なくならないようにして、きちんと継代するとかなりよく2倍体を保てます。 [黒木]肝細胞ではsaturationが低い時に継代する必要がありますか。 [佐藤]ある程度cell sheetが出来た時、倍位に薄めて継代すれば2倍体が保てます。
《野瀬報告》高張処理による細胞の変化細胞の表現形質を変化させる方法としては、変異剤が広く用いられるが、それ以外にも染色体構造にある種の変化を与えれば何らかの機能変化が起こるのではないかと考えている。そのため、細胞を高張処理をした時の生理条件をいろいろ検討してみた。 用いた細胞は主にCHO-K1で、これに各濃度のurea、KCl、NaCl、sucroseなどを加え37℃で60min処理した後、trypsinizeしplating efficiencyを見た。KClの場合0.2〜0.3Mの間で細胞の生存率は急激に下り、ureaでは0.8〜0.9Mが生死の境になる。この傾向は再現性あり、CHO-K1以外でもJTC-16を用いても同様の傾向だった。NaClの効果はKClと同じだったが、sucroseは0.4〜0.5Mで致死的でureaよりやや毒性が強かった。 これらの濃度の塩を含む培地の浸透圧は(表を呈示)最高1416mOsであった。大体800mOs程度まで上ると細胞は生存率がほとんど0となるが、この濃度は等張とくらべ2.5〜3倍であり、かなり高張の条件でも細胞は生存できることを示している。高張処理して、トリプシン処理をした細胞は、ureaの場合は細胞質が突出していたり、KClの場合は浮遊状態なのにfibroblasticになったりかなり形態が変化していた。 コロニー形成で見た生存率は下ってもerythrosinBによる染色でみると(表を呈示)ほとんど変化がなく、染色によって生死を判別する方法はこの場合使えない。 urea処理した細胞の増殖をみたところ、生存率が0になれば全く増殖はなかったので、細胞の分裂能は失われているといえる。しかし、処理直後のタンパク合成能は残っているので、生死判別の結果と考え合わせると、urea処理直後の細胞は分裂以外の生理機能はある程度残っていると考えられる。 以上の高張処理が細胞機能にどんな影響を与えるか予備的に調べてみた。8-aza-guanine耐性の出現率には全く変化を与えなかった。またラッテ筋由来のfibroblastには多少形態的変化を与えたがあまり大きな変化とは言えない。今後更にいろいろの細胞を用いて機能変化の可能性を検討し、malignant transformationに結びつかないか調べてみたい。
:質疑応答:[梅田]UreaやKClを添加する時、培地そのものの塩は調整していますか。[野瀬]培地は正常に調整して、物を添加しています。添加物0状態が等張です。 [佐藤]浸透圧は培養後に変化していませんか。 [高岡]殆ど変わりません。 [堀川]アルコールの影響なども調べて下さい。 [野瀬]今回の実験では高張から低張にもどす時のショックで死ぬようでした。戻し方を工夫すればもっと生存するのかも知れません。
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