【勝田班月報:7603:培養細胞の復元接種法の比較】《勝田報告》培養細胞の復元接種法の比較
:質疑応答:[乾 ]L-929はハムスターにtumorを作りますか。[高岡]作りました。 [山田]皮下接種の場合、接種細胞数をうんと多くするとtakeされる筈ですよ。AH-601の組織像もみてあります。佐々木研で皮下につかなかったというAH-7974とAH-66Fについても私の実験ではちゃんと皮下でtumorを作りました。 [高岡]動物継代のものと培養株になったものとでは異なるかも知れませんが、培養細胞で1,000万個という接種量は多い方ですが。 [乾 ]ハムスターの培養細胞を抗リンパ球血清で処理したハムスターへ接種したデータがありますか。 [難波]ハムスターのメラノーマの復元実験があります。復元する部位によってtakeされ方が違うのは免疫の問題でしょうか。 [藤井]免疫もからんでいるでしょうが機械的な問題もあるのではないかと思います。 [山田]そうですね。皮下の場合など免疫よりその部位の環境が接種した細胞に合うかどうかという事でしょうね。 [高岡]3T3をビーズ玉にくっつけて皮下へ復元するとtakeされるという報告にならって、culbTCをプラスチック板に培養して皮下へ入れてみましたがtumorは全然出来ませんでした。復元の問題はとても複雑なのですね。 [久米川]組織片を植えるのに腋の下がよくついたというデータを持っています。前眼房もよくつきますね。 [乾 ]昔、肝臓に出来た固型癌を腹水化するという実験を70例くらいやってみましたが、腹水化しない系はとうやっても駄目でした。腹水系を固型にするのは簡単ですが。 [梅田]皮下へのtakeの問題は細胞のコラーゲン産生と関係しませんか。 [永井]関係無いでしょうね。
《難波報告》26:Griseofulvin(GF)のヒト正常細胞のクロモゾームに対する影響Larizza et al(1973)は第11回の国際癌学会で(GF)がヒト正常線維芽細胞およびリンパ球の染色体のHeteroploid transformationを高率におこすことを報告した。即ち、40μg/ml1回処理または5μg/ml継続処理で45〜75%のHeteroploid transformationを起こす。 私共の行なっている現在までの成績ではヒト正常2倍体細胞の発癌実験に使用した化学発癌剤のうちで、4NQOが最も有力なことを、次の3点即ち、1)Cytotoxityが強いこと。2)DNA-repairをつよくおこすこと。3)Chromosomal aberrationsもよくおこること。などの事実によりしばしば述べてきた。 この内でクロモゾームの変化は(表を呈示)、ヒトリンパ球をPHA添加培地で2日培養後3.3x10-6乗M 4NQOで1hr処理、更に1日培養した後のHeteroploid transfromationは約15% GapsとかBreaksとかの構造の異常を示す割合は10%前後であった。 実験は各人より得たリンパ球を培養しコントロール群、BP-処理群、4NQO処理群の各50コのクロモゾームを数えた。数値は各20例の平均値。培養2日眼に10-5乗M BP、3.3x10-6乗M、4NQO、処理。3日目に染色体標本作製。 今回はWI-38と健康人より得たリンパ球を使用しGFの、1)細胞の形態的変化。2)細胞の増殖。3)細胞のDNA RNA合成に対する影響。4)クロモゾームの変化を調べた。(表を呈示) GFの臨床的に使用される血中レベルは、1〜2μg/mlと考えられる。そこで5mg/mlにDMSOの溶き、実験には0.1〜20μg/mlになるよう培地で稀釋して使用した。クロモゾームは、各実験群で100コ解析した。 その結果、GFは20μg/mlでWI-38の軽度の形態的変化をしめした。即ち、紡錘形の細胞がGF処理により、一見上皮様の形態をとり、平べったく、肥大した胞体内に空胞が目立つようになった。10μg〜20μg/ml GFで細胞の増殖及び、DNA合成阻害がみられた。20μg/ml GFはRNA合成を阻害しなかった(表を呈示)。0.2〜20μg/mlで軽度のクロモゾームの変化がおこることが判った。Heteroploidを示したすべて(28例)を核型分析したが、特別のクロモゾームだけの変化はなかった。その1核型ではC1が1本欠損し、2本の異常な染色体があった。(図を呈示) 私共の実験結果ではLarizzaの報告ほどの高率の変化はなく、またGFはヒト細胞の発癌実験には4NQOほど有効ではないと云う結論に達した。しかし、GFがDNA合成阻害作用のあること、クロモゾームの変化をおこすので、発癌性を示す可能性は否定できない。
:質疑応答:[乾 ]GFで処理するとunscheduledDNA合成が増加する事はありませんか。[難波]みてありません。 [梅田]GFはマウスに投与すると肝癌を作る事が判っていますから、肝細胞を使えば形態的変化や変異が起こるのではないでしょうか。私の実験ではラッテの肝細胞の多核形成がみられました。 [難波]私もいずれは肝細胞を使うつもりでいます。が、今の所ヒトでは線維芽細胞しか使えませんので。
《佐藤報告》
:質疑応答:[乾 ]PEとコロニーサイズは別の現象だと考えるべきではないでしょうか。[常盤]PEは変わらないのにコロニーサイズが小さくなりましたので、それがDAB処理での一つの性質かと考えています。 [高岡]折角精密な染色体分析が出来るのですから、実験期間だけでも対照が変異しない細胞系を選べば、実験群の変化がもっと正確に捕らえられるのでははないでしょうか。
《梅田報告》
:質疑応答:[高岡]寒天の上へ、液層は全く無しで濾紙をおくのですか。[梅田]そうです。 [堀川]濾紙の上から細胞浮遊液をまくのですね。細胞は濾紙から下へ抜けませんか。 [梅田]コロニーは全部、濾紙の上に出来ます。 [山田]死細胞の方がヘマトキシリンで染り易いのですが、死細胞はどうなりますか。 [梅田]うまい具合に固定すると死細胞は浮いてしまいます。始の想像では濾紙を新しい培地へ移してやれば、小さいコロニーが無くなるのではないかと期待したのですが、実際には大きいものも消えてしまったので、そこをもっと工夫しなくてはと思っています。
《高木報告》膵ラ氏島細胞の分裂促進物質について前報で、現時点でもっとも高いsingle-cell rateとcell viabilityがえられるラ氏島細胞の分散法を報告した。この方法で分散した細胞は機能的にも障害がきわめて少なく、植込み1時間後には実験に供せられる。培養をつづけると細胞は再び集塊を形成するが、これにinsulinの合成もしくは分泌を促進すると思われる物質を作用させてDNAの合成をRadioautographyにより観察した。 前回の実験では(月報7512)、生後3ケ月のラット膵を材料として集塊形成後の細胞におけるH3-thymidineの取込みを検討したが、取込んだ細胞はきわめて少なく、ブドウ糖1mg/mlでは1%以下であった。ラ氏島細胞をうる動物のageおよび培養に諸物質を作用させH3-thymidineを加える時期などを検討しなければならないが、今回はin vivoでラ氏島のvolumeが急激に増大するとみなされる時期のラット膵(6週齢)を用い分散した細胞の植込み直後から諸物質を作用させ同時に1μc/mlのH3-thymidineを4日間加えてDNA合成をみた。 対照としてブドウ糖1mg/mlを用い、実験群はleucine 13mM、theophyline 0.5mM、5mM、Tolbutamide 100μg/ml、Secretin(Pancreozynine-Secretin testに用いるcrudeなブタ上部消化管抽出物)1単位/mlを加えた。細胞500ケあたりH3-thymidineを取込んでいる細胞数を算定し、対照のブドウ糖1mg/mlの場合の取込み細胞数に対する割合を出した。この場合対照のブドウ糖1mg/mlでは4.3〜8.8%の細胞に取込みがみられた。結果は(表を呈示)、Secretinをのぞき他の物質ではDNA合成細胞数の抑制がみられた。これらの細胞の同定を光顕的にA&F染色で行なうと、Radioautography後は染色性悪く判定が困難である。電顕的観察が必要である。
:質疑応答:[堀川]H3-TdR 4日間添加でこの程度のラベルというのは随分低いですね。[加藤]それからラベルされた細胞は島の縁の方に多いようですが、島の内部の細胞は分化しているのでしょうか。 [高木]よく判りません。H3-TdRを取込んだ細胞を同定したいと思っています。 [山田]島の表面に内皮細胞がいて、H3-TdRを取り込んでいるとは考えられませんか。 [高木]それも考えられます。
《乾報告》◇純系ハムスター使用の経胎盤培養内化学発癌(I)今回は、1)経胎盤的にBpを作用して、可移植性のMalignant transformed Colonyを観察する目的、2)In vivoの経胎盤化学発癌実験の標的臓器と胎児を培養に移した場合の臓器におこる、染色体切断、Transformation Rate、Mutation Rateの間の関係を解析する第1段階の実験を行なった。 妊娠11日目のアルビノ・ハムスターにBp 100mg/kgを投与24時間後、胎児を摘出、Back skin、Total body、Lungは0.25%トリプシンで、分散、胎児肝は1000unit/mlのディスパーゼで消化分散した後、先とまったく同様な方法で培養した。結果は(表を呈示)培養2代目の細胞のTransformation RateはIn vivo chemical carcinogenesisの標的臓器である肺起原細胞(上皮様細胞と線維芽細胞の混合集団)で著明に高く(3.70%)、線維芽細胞では中間の値を示し(1.45%、0.93%)、肝起原細胞ではTransformed colonyが見られなかった。しかし、肝起原細胞は、上皮様細胞が多く、形態的にTransformationを判定するにむずかしい。 培養後1回目の染色体解析は、本実験では、細胞数が少なく一般に困難であるが、Total body起原細胞で著明に増加した。突然変異細胞も同様、34ケ/1,000万個cellで、Bp投与の場合も対照に比して著明な誘導がみられた。今後初代培養における各臓器よりの培養細胞の増加を考え、Hepato carcinogenであるDMN、神経系に作用するMNU等を併用して、In vivoとIn vitroの標的臓器における発癌性の解析を行なっていきたい。 ◇AF-2経胎盤投与による胎児細胞の突然変異の濃度依存性 すでに前号迄の月報でAF-2経胎盤投与による、Transformed Colony出現率、染色体切断率、Mutation誘導率を報告して来たが、本報告でMutation誘導率に非常に著明な濃度依存性がみとめられたので付記する。 (両対数グラフによる図を呈示)母体へのAF-2投与濃度に依存して、突然変異コロニーが出現した。しかし、現在AF-2投与にOトレーランスが存在するかはっきりしない。なおAF-2の経胎盤投与の場合図に示したのは、注射による結果であるが、100mg/kg投与では経口投与の場合より高い変異コロニーが出現した。
:質疑応答:[難波]上皮様細胞と線維芽細胞のコロニーの割合はどの位ですか。[乾 ]50:50です。 [難波]HGPRTはX染色体上にあるとすると、胎児をまとめて使った場合、♂♀が混じるのは問題がありませんか。 [堀川]♀のXXのうちの一つは酵素活性が不活化されていますから問題ないでしょう。8-AG耐性と悪性化との相関はどうでしょうか。 [乾 ]計画してはいますが、まだ調べられていません。 [堀川]どういうマーカーが悪性化と平行しているのでしょう。 [勝田]経胎盤投与の場合もっと母体に長時間投与するとどうなるでしょうか。 [乾 ]胎生8日より前では胎児が死んでしまう率が大変高いのです。胎生期間が短いので、なかなか長時間投与は難しいですね。 [堀川]経胎盤投与では殆どの薬剤がバリアなしに通ってしまうのですね。
《山田報告》正常ラット肝由来の培養細胞の染色体の変化について前報で報告しましたが、今回はこの染色体の変化とその細胞電気泳動的な性質とを比較してみました。(表を呈示)未処理の細胞をみるとRLC-16とRLC-21の平均泳動度がより高く、また(図を呈示)その分布が広く、そしてノイラミダーゼ(5単位、30分37℃)感受性が比較的高く、悪性化株に近い感じがします。RLC-21は従来教室で維持した株にも、また今回改めて戴いた株にも(図を呈示)marker chromosomeがり、最も変異した株であることは確かです。RLC-16は今回の株にはmarker chromosomeはありませんが、従来維持してきた株には一度出現した株であり、またこの株は電子顕微鏡でもこの5株のうち最も単純な細胞内構築を示したものです。RLC-19はノイラミダーゼ感受性は高くありませんが、その分布が広く、しかもこの株のみが、ConA(10μg/ml)により泳動値は高値を示しました。すなわちこの株が次に変異の可能性があると思われました。RLC-18と-20が最も変化のない株と思われます。
:質疑応答:[乾 ]In vitroで発癌剤処理した場合、ラッテでは1〜10番の染色体には変異が少なく、17〜20番に動きが多いようですね。[吉田]1番はトリソミーになり易いですよ。小さい方の染色体にはあまり重要な遺伝子が乗っていないのではないでしょうか。 [山田]染色体に出てくるマーカーが細胞の電気泳動度に関係すると面白いのですが。 [乾 ]Mutantが出た時の泳動度の変化をみた事はありますか。 [山田]まだありません。 [吉田]染色体の変化が先行して変異が起こるようですね。細かい分析は矢張りクロンを作る必要がありますね。
《堀川報告》従来、私共はChinese hamster hai細胞から分離した栄養非要求株prototroph、栄養要求株auxotroph、さらには8-azaguanine感受性株、および8-azaguanine抵抗性株を用いて2組の前進突然変異系と2組の復帰突然変異系の都合4種の突然変異検出系を組みたてた。そして、放射線、各種化学発癌剤および変異剤による誘発突然変異の検出能をテストした結果、prototrophを用いた前進突然変異検出系が最も鋭敏な突然変異検出系であることが判った。今回はこれらより更に確実で鋭敏な系、しかもDNA損傷修復能と突然変異誘発能の関連性が把握できる系として除去修復能を欠くXeroderma pigmentosum細胞を用いることにした。このXPの細胞は阪大、武部氏により6才のXP患者の女の子から得た細胞であるが、突然変異の研究等に適するよう、これも同じく阪大、微研、羽倉氏によってSV-40virusでtransformedされagingの防止がなされている。名づけてXP20Sとよばれる細胞である。これまでの基礎実験からこの細胞の培養には75%Eagle's MEM+10%TC-199+15%calf serumが最も適していることがわかった。それでもこの培地でのXP20S細胞のgeneration timeは約36時間であり、plating efficiencyは10〜15%である。SV-40でtransformedしただけに染色体数は異常で80本近くにモードをもって広く分布する。しかし、紫外線に対する高感受性という特性は(図を呈示)いまだに保持しており、対照のHeLaS3細胞に比べて極度の高感受性を示す。これはこのXP細胞がendonucleaseを欠くためであって、これこそこの系に使用出来る大きなmarkerである。つまりこのXP20S細胞のend-がend+にrevertする変異をこの突然変異系に使用しようとするものである。これに加えて8-azaguanine抵抗性獲得という突然変異系を併用し、除去修復能を欠くXP細胞が事実変異性が高いかどうかを検討するための基礎実験を現在進めている。
:質疑応答:[乾 ]XP細胞のlife spanはどうですか。[掘川]正常とあまり差がありません。 [乾 ]6TGでは5μg/mlの濃度で8AG 20μg/mlの毒性と同じ程度ですね。耐性の出来方もかなり違いますね。 [堀川]この濃度も細胞によって大幅に違います。
《久米川報告》BC細胞の(Rat肝臓由来)電子顕微鏡像梅田先生の分離されたBC細胞の電顕的観察結果については、1月の月報で一部報告しましたが、その後の観察結果を加えて報告します。 前回までの報告ではこの細胞は上皮様(tight junctionが見られる)であるが、肝実質細胞の特性は認められない。細胞の結合部に陥凹があり、この部分にfibrousな物質が観察される。ときにはcollagen様の構造が見られると報告して来た。 その後の観察結果から、BC細胞には、内皮様細胞が含まれているのではないかと思われる。(写真を呈示)petri dishの底面とほぼ直角に切ったと思われる超薄切片から撮った電子顕微鏡像でみると、BC細胞は2層になっている。細胞は非常にうすく、tight junctionで隣の細胞と結合し、接合部にはmicro villiが観察される。細胞の内側表面には不完全ではあるが、basal lamina様構造が所々に見られる。しかも細胞表面には多数のpinocytotic vesiclesが認められ、内皮細胞の特性をそなえている様に思われる。さらに2層の細胞間にはfibrousな物質が存在している。この物質は明らかにcollagen fiberである。 以上の観察結果から、BC細胞は少くとも2種類以上の細胞から成っており、その1つは線維芽細胞(collagenの存在)であり、他の1つは内皮様細胞ではないかと考えられる。
:質疑応答:[野瀬]この細胞のアルブミン産生はどうですか。[梅田]過去に+だった系ですが、今は−です。 [山田]内皮細胞は沢山見られるのですか。又は一部に見られるのですか。 [久米川]あまり多くはないようです。切り方が断層をみるやり方なので、確かな頻度は判りません。 [山田]いわゆる線維芽細胞らしいものは見られませんね。 [久米川]しかしcollagenがあるので、どこかに線維芽細胞がいると考えたのです。 [勝田]線維芽細胞だけがcollagenを産生するとは断言できないでしょう。 [梅田]昔の話ですが、ラッテ肝由来の系をクローニングする前に大きな形の上皮細胞と小さな上皮細胞が混じっていることに気づき、小さい方が肝実質だと私は考えていました。この系はその小さい方から出ていたので、細胞間に溜まっている物質は胆汁ではないかと思ったのですが、その物質がcollagenだったという事でした。
《野瀬報告》Collagenase又はDispaseで分離したラッテ肝細胞の比較rat肝をcollagenase又はdispaseで潅流して実質細胞が分離でき、どちらの方法でも形態的には似た細胞が得られる。今回は主に機能の面から比較検討した。 (表を呈示)1匹のadult ratからとれるviable cells(erythrosinBで染まらない)の数を数回の実験で比較してみると、dispaseの場合collagenaseとくらべて細胞の収量は約1/5程度であるが、viabilityには差が見られなかった。 次にTyrosine aminotransferaseの誘導性を見た(表を呈示)。2つの方法で分離した肝細胞をシャーレにまき、培養後2〜8日各時点でdexamethasonを8.5x10-7乗M加え24時間後の細胞のTAT活性を測定した。collagenaseの場合は6日目までは誘導性が残っているが、dispaseの場合4日目ですでに誘導性が低下している。またTAT活自身もやや低い。またTAT誘導は細胞密度によっても変化するので多少問題はあるがdispaseで分離した肝細胞が誘導性を保持していることは間違いないことと考えられる。 albuminの生合成能は培養した肝細胞の培地にH3-leuを加え、培地に抗ラットアルブミン血清を加え、免疫沈降物中のカウントを測定して見た。細胞タンパク当りのH3-アルブミンの合成量はdispase、collagenaseどちらを用いて分離した細胞でもほぼ等しかった。以上の結果から2種の方法でとった肝細胞は機能の上からはほぼ等しい活性を持っていると結論できる。細胞の収量はcollagenaseを用いた場合の方がはるかに高いので、一般的にはdispaseは肝細胞の調整には不適当と考えられる。しかし長期間の培養で増殖してくる細胞をとるにはcollagenaseより優れている。例えば(図を呈示)初代培養の初めからdexamethasonを加えておくと、上皮様の細胞が増えてくる。今後は増殖系になった肝細胞の機能を再び発現させることを試みてみたい。
:質疑応答:[梅田]株細胞の場合も継代してから2日位がアルブミン産生が高い時期です。[高岡]アルブミン値については培養0日の基準値を知っておく必要がありますね。 [久米川]再生肝ではどんな細胞がとれますか。 [野瀬]正常なものと全く同じでした。 [関口]この場合デキサメサゾンはどういう作用をしているのでしょうか。 [野瀬]機能の活性化に働いていると考えています。又ステロイドホルモン添加でアミノ酸輸送が変わるようですから、その作用もあるかも知れません。 [山田]この実験の材料は成熟ラッテですが、生後数日の乳児肝から培養した時は造血細胞もかなり混じっているでしょうね。
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