【勝田班月報:7611:ラッテ肝細胞のDENによる悪性化】《勝田報告》§ラッテ肝細胞のヂエチルニトロソアミン(DEN)による悪性化この実験にはJAR-2系ラッテ肝由来のRLC-23を使った。培養を開始したのは1974年10月20日である。 (表を呈示)DEN処理は、継代2代総培養日数21日〜28日までの間、培地中に添加した。濃度は50μg/mlと100μg/ml。 悪性化の検討としては、染色体分析、ラッテへの復元、CCB添加による多核形成をみた。 染色体の分析は培養5カ月、21カ月に行った。結果は(図を呈示)、培養5カ月には対照群とDEN 50μg/ml処理群は染色体数の最高頻値は42本であり、核型も殆ど正2倍体を維持していた。しかしDEN 100μg/ml処理群は染色体数の最高頻値が40本に移行していた。21カ月後には対照41本、DEN 50μg/ml群40本、DEN 100μg/ml群は3倍体付近へと移行した。 形態的にみると、50μg/ml処理群はかってのなぎさ変異細胞JTC-21に似た形態に変化していたが、100μg/ml処理群は対照群と見分けのつかない上皮形態を保っていた。しかしこれら各群をサイトカラシンB1μg/mlを含む培地で6日間培養して、顕微鏡映画撮影とギムザ染色によって観察すると、対照群は殆どの細胞が2核でとまったのに反し50μg/ml処理群、100μg/ml処理群は異常分裂をつづけて多核となった。 ラッテへの復元は培養約22カ月に生後4週のJAR-2ラッテ皮下へ接種した。接種後3カ月を経過した現在、50μg/ml処理群は4匹とも小豆粒大から鶉の卵大の腫瘤を形成し、100μg/ml処理群も2匹とも小豆大の腫瘤がふれる。これらに反して対照群2匹には全く異常が認められなかった。復元成績はもう少し長期間にわたって観察をつづけ、又出来た腫瘤の組織像も調べねばならないと思っている。
:質疑応答:[佐藤]1週間添加し続けたのは、何か理由がありますか。[高岡]DENが培地内でかなり安定だという事と、細胞に対する毒性が非常に低くて100μg/mlの添加でも殆ど障害を受けなかったので、添加を続けました。 [乾 ]以前やっておられた実験では1mg/ml位の濃度ではなかったでしょうか。 [高岡]株細胞での実験では10mg/mlの高濃度で細胞が死に始めたので500μg/ml、1mg/mlという濃度を使ったのですが、今度は培養初期の処理なので薄い濃度にしました。 [吉田]サイトカラシンBを添加すると癌細胞が多核になるのは何故でしょうか。 [梅田]アンカープロテインの量の差によるのでしょうか。 [吉田]そこが面白いですね。 [乾 ]ミトコンドリアに対する影響はどうでしょうか。 [翠川]判っていないでしょう。現在の知見としては膜に先ず作用することと、マイクロチューブルに作用することですね。 [梅田]この種の物質の多核形成は、細胞によって経過が違います。分裂後の融合もあり、多極分裂もありますね。
《高木報告》培養細胞に対するEMSの効果培養70日目のラット胸腺由来細胞にEMS 10-3乗M 4日間作用させた実験についてこれまでの成績を報告します。 EMS処理後90日頃より処理細胞が対照細胞に比し増殖がよいことに気付いたが、124日目の増殖曲線では対照細胞は7日間で2倍であるのに対し、処理後細胞では11倍の増殖を示した。形態的に著変はみられなかったが、処理後180日目に調べた染色体数の分布では両者間に差異がみられた。すなわち対照細胞では2倍体が62%で残りは低4倍体に分布しているのに対し、処理細胞では2倍体が35%で100本以上のものが30%、残りが低4倍体であった。処理200日後に160万個の細胞をATS処理ハムスター頬袋に接種した。対照細胞では2〜3mm程の腫瘤を形成して6日目にはregressしたが、処理細胞では腫瘤は6〜7mm径まで増大し、10日をすぎてregressした。従って本移植実験でみる限り両者の可移植性にやや差異が認められたが、EMS処理細胞の腫瘍化がおこったとは未だ云い難い。なお処理後200日で調べた増殖曲線では、対照細胞は8日間に7倍と可成りの増殖を示すようになり、これに対し処理細胞は12倍と前回と殆んど変りなかった。saturation densityは対照、処理細胞それぞれ23,000コおよび32,000コ/平方cmであった。なおこの実験ではEMS 10-3乗Mを用いたが、これは50%colony形成抑制濃度が10-3乗M前後と思われるからである。しかしsubconfluentなcell sheetにこの濃度を作用させた場合には、細胞の変性像は殆んど認められなかった。さらに濃度を変え、細胞を変えて実験を重ねている。 DMAE-4HAQOによる膵ラ氏島腫の発生について 7606にのべたように妊娠ラットの尾静脈より、出産まで3〜5回10mg/kgを投与した。出生後32日目のラットを剖見したところその1匹の膵に腫瘍の形成を認めた。組織学的にラ氏島由来と考えられる。また出生3ケ月後のラットについても剖見を試みたが肉眼的には膵に著変はみられない。切片の作製を急いている。
:質疑応答:[翠川]生後10日と生後3カ月の膵ラ氏島の大きさの違いといっても、それぞれ大きさのバラツキがあるでしょう。[高木]勿論バラツキはありますから平均的な大きさをお見せしました。 [山田]ラ氏島腫の場合、インシュリンの分泌はどうですか。 [高木]分泌しています。 [吉田]ラッテの細胞ならラッテへ復元する方がよさそうに思いますが、ハムスターへ復元されたのは何故ですか。 [翠川]この場合は本当に可移植性の悪性腫瘍になっているかどうかは問題ですね。ハムスターの頬袋では膨れても、同種同系に復元して腫瘍ができるかどうか。
《山田報告》ラット培養肝細胞株の染色体及び電気泳動度の経時的変化:ラット正常肝由来培養株RLC-16、-18、-19、-20、-21の経時的な染色体及び細胞電気泳動度の変化をまとめて、中間報告します。 比較的よく両者が平行して変化したのがRLC-21です(図を呈示)。(この系のみにmarker chromosomeが出現しています−既報)すなわちRLC-21は培養後100〜130日目の頃染色体はdiploidに80%以上もあり、その電気泳動度も比較的均一でしたが、800〜900日目にその構成にバラツキが出現しており、この性質は染色体と電気泳動度の両者に平行しています。1154日では両者のバラツキがさらに著しくなりました。 RLC-20は(図を呈示)773日目に染色体数がバラツキ、これよりややおくれて1023日目に電気泳動度もバラツイて来ました。879日目に再びdiploid周囲に染色体が減少したのにつれて1038日目に電気泳動度も再び均一になりました。 この二系はよく両者の成績が平行した例ですが、残りのRLC-18、-16、-19は染色体測定と電気泳動度の測定時期が必ずしも対応出来ませんので現在得られている成績を示すに留めます(図を呈示)。 次ぎにRLC-21から多数のクローニング株を作り検索中です。今回は電気泳動度の差とConA 2μg/ml処理後の変動についての比較した値を示します(図を呈示)。その構成純度もConAに対する反応性も細胞系により異りますが、この性質と染色体の成績及びその細胞形態について次回にまとめて報告します。
:質疑応答:[佐藤]ラッテの肝由来の培養細胞の染色体は私達も随分調べましたが、たいてい400〜600日位培養すると2倍体から崩れてしまいます。この培養株の場合、数は42本でも核型は正2倍体ではなくなっているのではありませんか。[角屋]系にもよりますが、500〜700日培養しても42本の核型はほぼ正2倍体でした。 [吉田]42本が一度崩れて又42本になるというのは、どういう機構によるのでしょうか。或いは始めのは正2倍体で後のは違うのでしょうか。しかし又テラトーマで長期間継代されていたものが、正常な組織を発生し得るという話もありますね。それなどは正常性も保持しながらテラトーマとして継代されていたということでしょうか。 [山田]ヒトの場合ですと、テラトーマというのは本当の腫瘍なのか奇形なのか問題だと思いますよ。 [翠川]腫瘍性はありますよ。 [山田]しかしin vitroでの単一な細胞集団とは違うでしょうね。
《永井報告》ラッテ肝癌細胞AH-7974の毒性代謝物質ラッテ正常肝細胞に細胞毒性を示すラッテ肝癌細胞AH-7974の毒性物質については、これまでに比較的低分子の物質で、耐熱性、耐アルカリ、耐酸性であることがわかっています。又、強酸性イオン交換樹脂Dowex50に強く吸着し、4Nアンモニアで溶出される劃分に強い活性が現われ、弱酸性イオン交換樹脂Amberlite IRC-50でも0.6N HClで活性分劃が得られることから、本物質は強塩基性の物質と考えられる。この活性物質の単離精製を試みていますので現在の研究状況を報告いたします。 Amberlite IRC-50で得られた劃分をDowex50にかけて、脱塩し、水洗後4Nアンモニアで溶出する。溶出液を濃縮後再びDowex50により同様の操作をおこなう。この際に樹脂に吸着しない劃分(F-1)と4Nアンモニア溶出劃分(F-2)を各々毒性試験しました(表を呈示)。 樹脂に吸着されない劃分にもかなりの活性があることがわかりました。F-2劃分をTLCで調べたところ、ニンヒドリン陽性物質を8〜9スポット検出した。この中にはAla、Leuに一致するスポットがみられたが、これらはAmberlite IRC-50により完全に除去されていなかったものと思われる。次にこのF-2劃分をセルロースカラムクロマトグラフィー(溶媒:n-BuOH-HOAc-H2O)により分劃した後のTLCの結果は(図を呈示)、F〃-1劃分に強い活性がみられていることがわかりました。この劃分にはLeu、Valに相当するスポットがみられます。またF〃-6〜F〃-8劃分で、試験の前に高圧滅菌をおこなった場合と濾過滅菌の場合に差があることがわかり、熱安定性について再検討する必要もあると思われます。 F〃-1劃分の残りを再びカラムクロマトグラフィー(溶媒;n-AmOH-Pyr-H2O)にかけ、分劃し、毒性試験したところ、(表を呈示)F〃-3に強い活性がみられた。この劃分にはTLCでLeuとさらにもう一つの未知のニンヒドリン陽性物質がみられました。この物質が毒性物質であるかはさらに精製し、検討する必要がある。 以上に述べたように、分劃によって活性の高い劃分も得られた反面、活性の劃分が分散している傾向がみられ、又精製の回数を多くした割に比活性が上がらない事等が問題点として残った。
:質疑応答:[高岡]最終的なもののスポットはロイシンと何かが混じっているのですか。それともロイシンに似た何かなのですか。[新村]混じっているようです。
《加藤報告》インド・キョン細胞の培養1976年3月4日、班員によってIndian Muntjac(♂)の耳の皮膚より得られた細胞は、直ちに初代培養を行ない、その後継代4代目に50%conditioned medium(2日間培養した培地を遠心して上澄使用)を用いて、コロニー形成のための少数培養を行った。約一カ月後、できたコロニーから、トリプシン濾紙で細胞を拾い、やはり50%conditioned mediumで1ケ月間培養し、ほぼ均一な線維芽細胞のcolonial cloneを得た。そのうち形態の異なる3種類のcloneが現在まで維持されており、それぞれMm-14/cl1、Mm-14/cl5、Mm-14/cl6と呼ばれている(写真を呈示)。 培養条件は5%炭酸ガス、95%空気からなる混合ガスの解放系で、10%または15%の牛胎児血清(GIBCO)を含むHamF12(日水)を使用、容器は35mm及び60mmのFalconプラスチック・シャーレを用いている。培地交換は1日おきに行なひ、8日毎に1枚のシャーレを5枚に継代している。継代時のcell densityは20〜30万個cells/φ60mmである。 得られたcloneのdoubling time(D.T.)は、mixed populationの細胞の50〜60時間に較べ、かなり短かい。D.T.は血清濃度の影響をうけ、10%では約40時間、15%ではおよそ30時間であった。更に15%の血清濃度で毎日培地交換することによって約20時間に短縮された。 それぞれのcloneにおける2n染色体の比率は(表を呈示)、cl1については99%と特にその比率が高い。またcl1はconfluent stateに達したのちしばらく放置しても正常の形態を崩すことなく、浮遊してくる細胞もほとんどないことからcontact inhibitionのかかり易い細胞であると考えられる。 9月20日現在、cloningから6代目の細胞を維持しているが、growth rate、核型ともに大きな変化はみられない。
《乾報告》経胎盤In vivo-in vitro combination chemical carcinogenesisにおける標的臓器の解析−1−昨年来行なっている経胎盤的に化学発癌剤を投与して胎児細胞を培養、Transformationを観察する系を使用して、経胎盤in vivo carcinogenesisの発癌標的臓器の比較を、Morphological transformation、Mutation、Chromosome breaksを指標に行なった。 使用した発癌剤はin vivoの実験で、肺がTargetであるBp、肝の血管腫を作るDMN、脳、及び神経系がTargetであるMNUを使用し、100〜200mg/kgの薬剤を妊娠11日目のハムスターに投与、24時間目に胎児を摘出、従来の方法で、Transformation、Mutation、Chromosome breaksを観察した。 (各々表を呈示)Bp 200mg/kg投与ではTransformationは肺に高率に出現し、肝、腎ではほとんど表われなかった。Mutation、Chromosome aberrationも略々同様の結果が表われin vivoのTargetと一致した。 DMN 200mg/kg投与の結果は、Transformation、Mutation、Chromosome aberration共肝起原細胞に明らかに高かったが、第2のTargetである腎起原細胞には、これらの変化がほとんど表われなかった。 MNU 100mg/kg投与では、細胞変異は脳由来細胞に著明に高く出現した。 以上の結果を綜合してみた。問題点として、肺、肝、腎、脳等を培養した場合、培養されてくる細胞は、実質細胞は少なく、多くの場合、線維芽細胞様の細胞である。したがって、標的臓器を解析する場合出来る限り多量初代培養を行なって、解析をつづけていきたいと考えている。 結果: 動物で経胎盤発癌実験とIn vivo-in vitro transplacental assay法の標的臓器を比較する目的で、妊娠ハムスターに、Bp、DMN、MNUを投与し、胎児臓器を培養して次の結果をえた。
:質疑応答:[難波]Bpの代謝は母体で起こっているのですか。 [乾 ]胎児にも18日位だとAHH活性はあるようです。活性化された物質の細胞との親和性は問題があります。《難波報告》36:培養ラット肝細胞のグリコーゲン合成60mmのシャーレに細胞が一杯に増殖したとき(800万個cell/plat)5ml MEM(1g/glucose)+10%FCSの培地にかえ、経時的に培地中のグルコース消費を調べてみると、培地更新後、急速に培地のグルコースがなくなり、24hr後ではほとんど0に近くなる。(図を呈示)また培地中に1u/mlでインシュリンを添加しておくとグルコースの消失は著しい。この急速に培地が消失するglucoseはglycogenになるとすれば、培地更新後4〜6hrでグリコーゲンを調べればよいことになる。 いま、タンザクを入れた培養ビンを傾けて、しばらくの間、肝細胞を培養すると細胞密度勾配ができて、まだ増殖できるスペースがある部分の細胞は大きく、反対にビンの底に近ずくにつれて細胞密度が高く細胞は小形になる。この培養の培地を更新して4〜6hr後タンザクをPAS染色すると、密度の薄い部分の細胞にはglycogenがよく認められるのに反して、タンザクの底に近いところの細胞密度が高い部分の細胞には、ほとんどglycogenが認められない。ただもっとも底にくるタンザクの端の部分にはグリコーゲンが認められる。PAS陽性顆粒は唾液で消化されるのでグリコーゲンと思われる。 いまプラスチックのカバースリップを使用し電顕写真を撮った。グリコーゲンと思われる顆粒が胞体内に多数存在するが生体内の肝にみられるグリコーゲン顆粒と少し所見が異なる。細胞は胎児ラット由来の培養肝細胞(RLC-18)、グリコーゲン顆粒が胞体内に散在する(写真を呈示)。このグリコーゲンの出現が、1)細胞密度に依存しているのか。2)細胞の増殖時期に依存するのか。を検討するために、2枚の60mm径のシャーレの一方には非常に多くの細胞を、他の一枚には少数の細胞をまき込み、3日後多くまいたシャーレの中の細胞は十分密度が高まり、また少数の細胞をまいたシャーレの細胞が対数的に増殖している時期に培地を更新して、4hr後、PAS染色した。上記のタンザクの実験結果より少数まいたシャーレによくグリコーゲンが出現すると予想していたが、結果は予想に反して、グリコーゲンの出現はそれほど著明でなかった。また多くまいた方もグリコーゲンの出現は殆どない。 これは何を意味するのであろうか? その条件を目下検討中である。この条件を検討するために、培養肝細胞のグリコーゲンの定量を以下の方法で行なった。 37:グリコーゲンの定量 上記の実験を進めるためにグリコーゲンを定量する必要があるので以下の方法で培養肝細胞のグリコーゲン定量を行った。この方法で0.2〜5μgのglycogen量、10万個以下の細胞数で十分測定できる。 細胞のシートを冷PBSで3回洗う→冷蒸留水1ml/60mmシャーレを加えラバークリーナーで細胞をはがす→凍結(-20℃)→融解後100℃5分→14000g 15分遠心→上清0.1mlに1N HCl 0.9ml加え100℃1hr、1ml1N NaOHで中和して、この0.4mlを使用→1.33ml Tris buffer(0.1M、pH7.8)、0.66ml MgCl2(10mM)、0.1ml ATP(10mM)、0.01ml NADP+(10mg/ml)、0.01ml G6PDH(0.2mg/ml)、0.01ml Hexokinase(1.0mg/ml)、30℃、30分→測定(蛍光分析)(測定原理の表を呈示)。いま60mm径のシャーレ内で対数増殖期にあるRLC-18 Rat肝細胞のグリコーゲン量を上記の方法で測定すると、1μg/10万個cellsであった。いま、この定量法で種々の培養条件でのRLC-18 Rat肝細胞のグリコーゲン合成を調べている。
:質疑応答:[高木]グリコーゲン合成は細胞の分裂周期には関係なく行われているのでしょうか。\ [難波]これから調べてみたいと思っています。 [乾 ]グルコース量を変えるとどうなりますか。こういう微量定量にはイムノ・マイクロ・スペクトロ・フォトメーターなどを使うといいでしょうね。 [高木]定量値は細胞当たりの数値ですか。 [難波]細胞当たりがよいのか蛋白量当たりがよいのか考えています。
《梅田報告》
:質疑応答:[高木]高張にするには何を使いましたか。又カルシウムの影響はどうですか。[梅田]カルシウムについてはみていません。高張にするにはNaClを使うかウレアを使うかで大分違う結果になるでしょうね。
《常盤・佐藤報告》
:質疑応答:[乾 ]この仕事の狙いは何ですか。[常盤]2倍体の細胞系でもDABに対する感受性が同じかどうかを調べたいのです。 [佐藤]培養70日という若い系からも単個からのクロンが拾えるようになりました。
《榊原報告》§培養肝細胞によるコラーゲン及び酸性ムコ多糖産生:BCcloneがcollagenに加えてacid mucopolysaccharide(AMPS)を培養内で産生することは既に報告したが、今回はこれらの量的変化について検索した結果を述べる。BCcloneは培養100代目。500万個cellsを500ml入り培養びんに入れて回転培養し、10、24、31、38日目と経時的に2本づつより機械的操作を以って細胞を集め、AMPS及び、hydroxyproline(Hy-Pro)の定量を行なった。培地はHam'sF12+CS(10%)。集めた細胞はacetone及びmethanol・chloroform処理により脱脂した上、乾燥粉末化し、秤量する。次いでPronase-Pにより蛋白分解を行ない、Cetylpyridinium Chloride(CPC)を加えてAMPSとのcomplexを作る。遠沈により得られた上清部分はHy-Proの定量に、沈降部分はAMPSの定量に用いる。沈降物を洗った上、冷TCA処理を行って、蛋白のコンタミを取り除く。ここで得られる蛋白もHy-Proの定量にまわす。以後、AMPSについては透析、濃縮、電気泳動へともってゆき、電気泳動図はAlcian blueで染色した上、densitometryにかける。Hy-Pro定量はProckopらの方法に準じて行う。結果は(図表を呈示)densitometryは各出発材料0.53mgより抽出されたAMPSについてのものである。検量線の作成が遅れた為、吸光度を平方mm単位で表した。要約すると、
:質疑応答:[翠川]鍍銀染色は何法ですか。[榊原]アンモニア銀法です。 [翠川]マッソンはどうですか。 [榊原]出ます。出ないのはエラスチカだけです。 [翠川]線維芽細胞は混じっていないのですね。 [榊原]クローニングしてあります。 [佐藤]腫瘍性はありますか。 [榊原]ハムスター・チークポーチには今までtakeされませんでした。 [佐藤]総培養日数はどの位ですか。 [梅田]約3年です。
《翠川報告》§A/Jax系マウス脾臓線維芽細胞の長期試験管内培養によって樹立された自然退縮性腫瘍株について生後150日のA/Jax系オスマウス脾臓線維芽細胞をHank's BSS、Eagle vitamin、Lactalbumin hydrolyzate、L-glutaminならびに15%コウシ血清を加えた培地で静置培養を行って経過を観察していたが、培養142日で新生仔マウスに移植可能となった。この細胞を成熟マウスに移植した場合、移植直後からかなり急速に腫瘤を形成し、移植8日前後で最も大きくなる(2.0x1.3cm)(写真を呈示)。ところが移植10日頃より腫瘤は縮少しはじめ18〜24日の間にこの腫瘍は完全に消失するにいたる。私たちはこの細胞系に対して現在m-cellと命名しているが、このm-cellを新生仔マウスに移植したもの、あるいは成熟マウス移植7〜9日例の組織学的所見では細胞の異型性が強く、有糸分裂像も多くみられ、典型的な線維肉腫像であった(写真を呈示)。 しかし移植10日頃から腫瘍の中心部が急激に融解壊死におちいる所見が出現し始め、同時に浮腫性変化が強くなるとともに腫瘍の壊死像も著しくなり、これに対して軽度の組織球ならびに好酸球反応がみられるとともに最後はすべての腫瘍が完全に結合織細胞によって置換されるにいたる(各々写真を呈示)。 腫瘍の壊死のみられる初期には何等細胞反応がみられないこと、ならびに全過程を通じてリンパ球の浸潤のみられないことも注目された。 なおこのm-cellを移植する場合、腫瘤形成の大きさに性差がみられ、一般にメスマウスに移植された場合より大きな腫瘤形成がみられ、自然退縮に要する日数もメスマウスの方が約4日長かった。 この様なm-cellにみられる形質は培養をさらに長く続けることにより、(1)いわゆる悪性の程度が強くなり、成熟マウスをすべて腫瘍死させるようになるか、(2)このままの状態が続きうるのか、(3)あるいは可移植性がむしろ完全に消失するにいたるかを検討すべくcloningを行いながら、長期にわたって観察を行い現在まで約8年経過している。その中の1つのcloneは、実験開始6年頃より腫瘤を形成しなくなり、新生仔マウスに移植を行っても可移植性がみられなくなっている。しかしこのcloneも現在ヌードマウスに移植したさい、腫瘤形成がみられ移植腫瘍は大きくなり1ケ月を経過しても自然退縮像をみていない。 なおm-cellについては多くのcloneを分離し、それぞれの長期培養をくりかえしているが、現在まで正常成熟マウスを腫瘍死させるclone、すなわち典型的な悪性腫瘍細胞株はいまだえられていない。
:質疑応答:[関口]復元に使ったマウスの年齢は・・・。[翠川]3カ月です。始の間は乳児にはtakeされましたが、今では乳児にもつきません。 [佐藤]結節が出来たら消えない内に取って再培養して次へ植えたらどうですか。 [翠川]やってみましたが、つきませんでした。 [佐藤]脳内接種はどうですか。 [翠川]それはまだです。やってみましょう。 [佐藤]私も復元実験を色々試してみましたが、接種部位による違いは大きいですよ。
《久米川報告》癌細胞chromatinの培養肝細胞への影響担癌動物では肝臓の酵素活性に変動があることは古くからよく知られている。さらに癌組織から抽出した物質によって肝臓のcatalase活性は低くなり、一方pyruvate kinase(PK)活性は高くなる。中村等は癌細胞のchromatinが同様の性質を持っていることを明らかにした。すなはちchromatinの接種によってcatalase活性は正常肝の約70%となりPK活性は165%となる。さらにPKのisozyme patternでもPI 7.8と6.1の値が高くなる。今回はRhodamine sarcomaから得たchromatinの培養肝臓への影響について調べた結果を報告する。5日間培養したマウス胎児肝臓にchromatin(0.5mg/ml)を2日間添加した場合、catalase活性は対照群の82%と低下し、一方PK活性160%とin vivoと近い結果を得た(表を呈示)。 さらにPKのisozymeを調べてみた(図を呈示)。培養前胎生13〜14日目マウスの肝臓はSがmainでLはみられない。培養8日後ではSはまだ残っているがLもみられるようになった。しかしまだ完全に肝臓型には移行していない。培養肝臓に6日目から2日間chromatin(0.5mg/ml)を加えて培養した場合、PI 6.1とPI 7.9の値が高くなり、in vivoとPKのisozymeの上でも同様の結果が得られた。従って癌組織のchromatinはdirectに肝臓(酵素)に影響をもたらすことが明らかになった。 |