細胞培養の準備

細胞バンクを上手に利用するために

HSRRB, 榑松美治


『細胞培養 なるほどQ&A』が参考になります。

INDEX

はじめに 細胞バンクより細胞を入手するにあたっての準備
現在供給されている培養細胞の起源 顕微鏡で観察される培養細胞の形態
細胞を手に入れる JCRBカタログの見方
受付・発送 細胞培養操作の流れ
培養の準備をするⅠ:機器のセッティング 培養の準備をするⅡ:培養容器の選択
培養の準備をするⅢ:培地の選択 培養の準備をするⅣ:血清の選択
培養の準備をするⅤ:その他の試薬 培養の準備をするⅥ:試薬、器具を滅菌する
細胞の培養を行う 細胞の解凍と培養の開始
細胞の継代 細胞の凍結法

参考資料

培養関連技術の一般的注意事項 浮遊系細胞の一般的培養方法
アンプル開封法 付着系細胞の一般的培養法
培地組成(LE, YLE, LH, YLH 添加物組成
緩衝塩類溶液 グルタミン,重曹の添加
市販合成培地 培地・培養液の調製方法
簡易凍結法



1.[はじめに]


2.[当細胞バンクより細胞を入手するに当たって必要な準備]


3.[現在供給されている培養細胞の起源]


4.[顕微鏡で観察される培養細胞の形態]


5.[細胞を手に入れる]


6.[HSRRBカタログの見方]

カタログ記載例(ホームページ情報もほぼ同様の記述方法を取っている)
(カタログの元データは、JCRB細胞バンクのホームページに掲載されております。アドレスは、
http://cellbank.nibio.go.jp/


7.[受付・発送]



8.[細胞培養の流れ]


(流れ図)





9.[培養の準備をする I:機器のセッティング]



10.[培養の準備をする II:培養用容器の選択]


  1. 培養容器の形状
      通常はディシュあるいはフラスコを用います。取り扱いのし易さや経済性などを考慮して選んで下さい。

      長所短所
      ディシュ安価 閉鎖系の培養は行えない
      フラスコ開放系と閉鎖系の両方の培養が可能高価

  2. 培養容器のサイズ
      培養容器の大きさは細胞の生細胞数によって決まります。 生細胞数は血球計算板を用い0.5%トリパンブルー溶液などで染色して数えます。 培養液量は下記容量を目安として下さい。

      ディッシュ径ディッシュ面積培養液容量
      35φディシュ9 cm^21〜2ml
      60φディシュ21 cm^24〜6ml
      100φディシュ59 cm^28〜15ml

  3. 接着系細胞の培養容器

  4. 浮遊系細胞の培養容器


11.[培養の準備をするⅢ:培地の選択]



12.[培養の準備をするⅣ:血清の選択]



13.[培養の準備をするⅤ:その他の試薬]


    培地以外でも高頻度に使用する試薬類を準備して下さい。いずれも無菌条件下で使用する事が基本です。

  1. PBS:細胞の洗浄などに用います。培地と同様に粉末や液体で市販されています。
    メーカーや処方によって使用方法が異なるので、取扱説明書に従い調製を行い貯蔵して下さい。 なお、通常PBSと書くと Dulbecco's Phosphate Buffered Saline のことを指し、マグネシウムとカルシウムを含んでいます.細胞の剥離処理などに使用するには Mg, Ca イオンを除かなければなりませんので、その場合は Ca,Mg free PBS を使用してください.組織培養用と記載されている市販品はCa,Mgフリーとなっているはずですが、確認してください.なお、プロトコルを作成する場合は、PBS(-)と書くのが良いでしょう.

  2. EDTA−PBS:通常PBS(-)に0.02%EDTAを加えたものを言います。酵素溶液を調製する時などに用います.慣例として、EDTA-PBSと書くことが多いのですが、正確には EDTA-PBS(-)とするべきです.

  3. 細胞分散用酵素溶液:Trypsin溶液・Collagenase等。初代培養や接着系の細胞の継代時に用います。
    培地と同様に粉末や液体で市販されています。酵素の精製グレード・種類によって調製方法や使用方法が異なります。それぞれの細胞の使用条件を確認した上で購入・使用して下さい。

  4. 生死判別用染色液:血球計算板を用いて細胞数の計測をする時、生細胞と死細胞を染め分けるのに使用します。
    0.5%トリパンブルー溶液や0.02%エリスロシンB溶液など、調製済みで市販されているものもあります。

  5. 凍結保存用培地:細胞を凍結保存する時、用事調製し用います。
    予め増殖培地(合成培地に無菌的に牛胎児血清などの増殖因子を加えたもの)に 5〜10%のDMSO(分析用)を加え、使用するまで冷蔵しておきます。市販の凍結保存培地を使用する場合は、取扱説明書に従い調整して下さい。


14.[培養の準備をする VI:試薬・器具を滅菌する]


15.[細胞の培養を行う]


16.[細胞の解凍と培養の開始]

    浮遊系、接着系ともに同じ操作をします。

  1. 増殖培地10mlを15ml遠沈管に入れておく。

  2. アンプルに凍結した細胞をディープフリーザーまたは液体窒素タンクより取り出し、直ちに37℃で温浴し振蕩して解凍します。(速やかに解凍する事は、細胞の生存率を高く保ちます。)

    ◇ 液体窒素からアンプルを取り出すとき、アンプルが爆発する事が有ります。必ずフェイスプロテクターと手袋を着用し、顔や腕の皮膚の露出を避ける事

  3. アンプル(特に頚部)を酒精綿で良く拭き、滅菌ピンセットで滅菌ガーゼを取り、ガーゼを折り畳んだ内部にアンプルを包み込むようにして、頚部を折ります。

    ◇ 金線の入ったアンプルは容易に折れますが、金線の入っていないアンプルは力が要りますので手を切らないように注意して下さい。

  4. 先の細い(アンプルの底まで挿入できる)ピペットを用いて、アンプル内の細胞浮遊液を吸出し、1、で用意した遠沈管内へ静かに移し、1,000rpm 3分間遠沈します。
    ◇遠心をあまり強くすると細胞が痛む場合も多々あるので、1,000rpm 3分程度に押さえておいたほうが良い場合が多いようです.これで十分に落ちない細胞では、1,400rpm 5分間ほどに上げてみてください.

  5. 遠沈後上清をピッペト又はサクションで吸引除去します。遠沈管をやや傾けて細胞ペレット(底の塊)のやや手前から吸引すると、細胞のペレットを吸い上げないで安全に上清を除去できます。

  6. ペレットをタッピング(軽く弾く)してほぐし、新しい培地を加えます。

    ◇ 手荒に扱うと細胞生存率が低下する事が多いので注意してください。特にタッチミキサーは使わないほうが良いと思います.

  7. 遠沈→上清除去→タッピングによってほぐされた細胞ペレットに増殖培地1mlを加えて再浮遊させ、無菌的に一部を採取して、生細胞数を数えます。

  8. 生細胞数を計算してから細胞浮遊液を、播種濃度になるように、増殖培地で希釈して、培養容器へ播種します。播種濃度は解凍後の細胞傷害を考慮して、継代時の推奨播種細胞数の2倍程度にすると安全です。

  9. 1本のアンプルを解凍して最初の培養には、T-25フラスコ1本、または直径 6cm のシャーレ1枚に戻して培養を開始してください.

  10. 翌朝細胞の状態を顕微鏡下に観察します。凍結保護剤に感受性の高い細胞の場合接着系であれば、培地を更新しておくことは細胞の状態を良好にします。

  11. その後は、必要に応じて培地の更新し、継代を繰り返し維持します。


17.[細胞の継代]


18.[細胞の凍結法]


19.[培養関連技術の一般的注意事項]


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